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    第二話「落っこちた、ふりかけ。」ショッピンデー
    桜木県梶市の住宅街、その真ん中ほどの七階建てのマンション、小鳥遊ガーデンの五階の隅部屋。表札には『綿貫』の二文字。
    綿貫家の台所の入り口にカレンダー。三月一日に赤丸。ちなみに今日の日付。
    冷蔵庫にマグネットで張り付けてある紙。合格通知、赤丸の入ったバーゲンのチラシ、日用雑貨が書き連ねられたメモ。チラシとメモを女が取った。そこへ丁度、台所の向かい、リビングに寝間着の少女がやってきた。
    「おはよ、ママ」
    ママと呼ばれた女は、挨拶を返して、少女に言った。
    「和海、今日はショッピンデーよ。ツユリ起こしてきて」
    その少女、もとい和海はリビングを出て、廊下の奥、自室の隣に入っていった。
    和海はベッドに横たわる児女を揺さぶった。
    「ツユリ、ツユリ、ショッピンデーだぞ。起きろー」
    ツユリと呼ばれた児女は、閉じた瞼を擦りながら上半身を起こした。
    「んむむ」
    ツユリのボサボサの長い髪を、和海がとかし、ヘアゴムでツインテールを作る。
    その向かいの部屋で布団を頭まで被る男。ママがその布団をむしり取った。
    「パパ、ショッピンデーよ」
    この男、もといパパはベッドから起き上がると再びベッドに横たわり、もう一度眠る。今度は、ママは強烈にパパを揺さぶった。
    「あわわわ」
    パパは再び起き上がり、テキパキ、身支度を始めた。
    これは合格通知を受け取った後の、冬休みを過ごす綿貫和海15歳と綿貫栗花落12歳の日常の一コマである。

    だし巻き卵サプライズ
    しばらく経って、所変わって、リビング。
    二メートル×一メートルの食卓、その上に並べられた食器。白米、出し巻き卵、納豆、金平ごぼう、豚汁、水。上座に右からパパとママ。下座に右から長女の和海、二女のツユリ。合掌を終え、朝食に箸を伸ばす。
    「ショッピンデー! ショッピンデー! 今日は月一、ショッピンデー!」
    ルンルン元気のツユリが納豆をかき混ぜながら歌っている。
    パパが豚汁を啜り、ママに尋ねた。
    「今日は何買うの?」
    ママは食卓の隅に置かれたメモを手に取った。
    「今日は鶏肉と卵が安いから、倍買うでしょ、それからトイレットペーパーとティッシュが切れそうだからこれも買う。後はいつもと同じ」
    「ティッシュと言えば、そろそろ花粉の季節なんだよっ」
    そう言ったツユリの隣で、納豆に卵を割り入れた和海が不快そうに口を横に広げた。
    「高校行きたくねー」
    「鼻水と将来、どっちが大事なんだ、お前は」
    パパがそう言って、割っただし巻き卵を口に入れた。
    「イタっ!」
    眠そうな目を見開いたパパ。中身に赤い輪っか、唐辛子が混じっただし巻き卵。横で白米を口に掻っ込むママが言う。
    「今日も運転頑張ってね」
    パパがぼやく。
    「せめて先に言ってほしかったよママ…」
    パパの前でだし巻き卵を頬張るツユリ。
    「あま~い!」
    同じく、だし巻き卵を口に入れた和海が驚いた。
    「あまっ!」
    和海がよく見ると、だし巻き卵の中に砕いたチョコが入っている。
    ママが誇らしげに言う。
    「進学した君たちには、優しいお母さんからのご褒美だぞっ」
    「ちなみに、チョコは食べると頭が良くなる手助けをしてくれる栄養があるのだ。特に糖分の少ないビターチョコなどが良いのだ」
    と、言っているママの横でパパは、昨夜、ママが台所の隅でいつ買ったか思い出せない板チョコの袋を開け、白い粒が浮いていたのをかじり、「食べられるな、まだ。」と言っていたのを思い出したのだった。
    ちなみに、チョコを適当に長期間保存しておくと、白い粒が浮いてくるわけだが、これは脂肪であって、食べても問題は全くない。が、何らかの要因で食べると腹を下すことも十二分に在り得るので、よい子は自己判断、あるいは、周りの大人に相談しよう。

    イン・ワタヌキ・カー
    小鳥遊ガーデン一階駐車場、エレベーターの扉が開く。降りた綿貫家族。電動自動車に乗る四人。シャッターが上がり、マンションの外へ出て、住宅街の広い道をゆっくり走行する。
    後部座席の和海がシートベルトを伸ばし、ツユリに尋ねた。
    「ツユリ、今日は何買う?」
    「ツユリは板チョコをたっくさん、買うんだよっ」
    ツユリは両手を車の天井へ向かって大きく広げた。
    前部座席からママが言った。
    「一日一枚よ」
    ちなみにチョコを摂取し過ぎるとビタミンビー群とカルシウムが体内で消費され過ぎてしまうので、よい子はパンや貝類、豆乳などで補おう。
    そしてママは、買い物メモにアサリや豆乳などを書き込んだ。
    その時、後部座席で和海が言った。
    「じゃあ、私もチョコ沢山買おーっと」
    ママはまた、メモに書き込む。
    そして今度はパパが言った。
    「じゃ、僕も沢山チョコ買うぞー!」
    ママはそっと、メモをしまうのだった。

    チョコと菓子
    積まれたカゴ。押されるショッピングカート。野菜、魚・お肉のパック、日用品が盛られていく。ツユリは色とりどりのお菓子が並ぶ棚の通路でしゃがんでいた。
    「板チョコ、板チョコ、らんらんら~ん!」
    上着をまくって、その布上に沢山の板チョコを載せていく。その後ろで和海はサイコロチョコの袋詰め、ココアのマーチ、トッキーなどのチョコ菓子をカゴに盛った。
    その横で、菓子でいっぱいになったカゴを提げるパパ。
    ママが言った。
    「スナック菓子は体に悪いと思うけど?」
    ばつが悪そうに、菓子を棚に戻すパパなのであった。

    怪奇!エコバッグ人間!
    ピッピッピッピッとレジに通される商品。
    沢山積まれたカゴのチョコや日用品、食品をテキパキとエコバッグへ詰めていく和海とママ。「パパ、これ持って」
    小さな手提げに板チョコを詰めるツユリ。
    「チョコがいっちまーい、にーまーい…」
    「パパ、これも」
    開く自動ドア、手ぶらの和海とママ、小さな手提げを提げるツユリ、両手・両上腕・両手首・両肩・首と、全身にエコバッグを提げたパパ。
    どうでもいいが、その後、パパは小鳥遊ガーデンのエレベーターでまた、エコバッグ怪人となるのだ。頑張りすぎだ、エコバッグ怪人。手伝ってもらおう、エコバッグ怪人。

    友達は春風と共に
    広大な高原。その果てには青々とした山脈が連なり、その先まで快晴の青空。高原の原っぱを涼風が撫でる。羊や牛が大地に生い茂る草を噛みしめる。まだ土の付いた人参や大根、ゴボウ、ジャガイモなど野菜が入った藁の荷袋。その隣でつくしの茂る草原に寝転がり、猫じゃらしで猫と戯れるツユリ。桜が舞う、突風がツユリたちを襲った。
    「きゃあっ!」
    大きな影がツユリたちの真上を通過し、空から金髪の美少年が降り立った。
    その少年は金色に輝くサラサラな髪を風に揺られ、歴戦の傷跡が残った銀製の鎧を身に纏い、背中には一本の大剣を携えていた。
    「どったのツユリん、今日は一段と上機嫌だね」
    美少年の上に表示された『キャノン』の横四文字。
    リビングでツユリはキーボードを叩いた。
    「中学受験に合格したんだよ!」
    所変わって、薄暗い部屋を照らすパソコンの前で、キーボードを叩く児女。
    「おめでとー!! でもそういうのはネットには書き込まないほうがいいよ」
    モニターのログが更新された。
    「ありがとー!」
    顎をさする児女。セロリーメイトやカップヌードルの容器の山に寝っ転がった。児女の金髪のくせっ毛が残り汁に浸かる。
    「中学受験ってことはもしかして、同級生になったりするんやろか? まーでも、ネッ友が同級生とか、分からんわな~」
    その時、児女がもたれていたゴミの山が崩れ、児女は埋もれた。合格通知に染みるヌードルの残り汁。
    「アカン、掃除せな」

    デバッガーは笑う
    無数に浮かぶ色とりどりの英語、数字、記号、点と点を繋ぐ線、変動する数値、古武道を舞う点と線の人型、人型が動く度に大きく揺れ、右から左へ流れていく棒グラフ。人型の手らしきところから数多の点と線が放射状に飛沫する。
    薄暗がりの部屋で、複数のモニターに照らされ、パパが含み笑いを漏らす。
    所変わって、リビング。コンパクトディスクを掲げ、やってきたパパ。
    「和海ー、新しいキャラを追加したぞー!」
    ソファに横たわって、ゲーム情報雑誌を眺めていた和海。本来とは四倍の大きさの弁当箱と呼ばれるゲーム機に、パパが持ってきたディスクをセットした。
    ドカッ バキッ ズドーン… 決着!
    「なんでお前は制作者の僕より強いんだよ…」
    困惑するパパに、ニヤリと、得意げに笑う和海。

    解凍系主婦
    台所、冷蔵庫の下、冷凍室から豚肉と玉葱、ネギ、人参などの冷凍された塊を取り出すママ。それをグツグツに煮た鍋にすっと、投じて、フタをした。
    ゲームをする和海とパパ。
    「くそっ、このっ、ぐっ、うおおおおお、まだだっ! まだ、終わら―。」「うるさい」
    パパにもたれかかるママ。
    それからしばらく経って。
    二メートル×一メートルの食卓に集う綿貫家、その上に並べられた食器。白米が下から顔を出す豚肉の生姜焼き、沢庵、切り干し大根の煮物、かに玉汁、水。そして七味唐辛子の小瓶。
    合掌する綿貫家。
    「おいしいんだよ!」「今日も手が込んでるなあ」
    世の主婦は、もう少し頑張ってると、思う。たぶん。

    アイアマ・チャンピオン
    食器を洗うママ。リビングの大画面モニター前でコントローラーを操作する和海とツユリ。
    「新キャラかっこいいんだよー!」
    二人の後ろで、したり顔で笑うパパ。
    「クックック、実はキャラ選択画面で秘密コマンドを入力すれば、ダメージ無効の無敵キャラが選べるのだ」「すごいんだよー!」
    パパに入力してもらったツユリ。スーツ姿で腰まで伸ばした黒髪長髪の男がゲーム画面左に登場する。対して、和海は肩までくせっ毛を伸ばした神父姿の男を選択した。
    ひたすらしゃがんだり、わざと攻撃を受けに行く神父。
    「な、なんだその動きは。きもいからやめろっ」
    「!?アレ!??」物凄い勢いで削られる画面上部の体力ゲージ。突然に、スーツ姿のキャラが吹っ飛ぶ。遅れて鳴るゲーム音。
    ドドドドドドドドドバキッー!
    決着!
    目が点になるツユリ。
    「ギャー!」
    驚くパパ。
    「そうか、乱数調整か!!!」
    乱数調整。ゲームにはランダム性を出すために乱数というものが存在するのだが、それを調整する、分かりやすく、一言で言うと、運命を操作する特殊な入力コマンドである。無論、一朝一夕で習得出来る技術ではない。
    してやったり、と言わんばかりににまつく和海。和海を振り返るパパ。
    「乱数調整はズルだぞ!」
    食器洗いを終え、リビングにやってきたママ。
    「それをアンタが言うな」
    ヨモギンヌ Link Message Mute
    Mar 6, 2019 10:34:43 AM

    第二話「落っこちた、ふりかけ。」

    #綿貫家の日常一コマ #日常 #空気系 #ほのぼの #オリジナル #コメディ #現代ドラマ #ライトノベル

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