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    第五話「冬休みの憂鬱」制服コッペパンは偉大制服②コッペパンは偉大②ビターチョコ落っこちた、ふりかけ鮭フレーク歯磨き春一番カレーライス冬休みの憂鬱制服 綿貫家のリビングに備え付けられたエアコン。朝早くに設定された時間通りに点いて、温風で肌寒かったリビングを暖めています。その温風でふわりふわりと揺れている学生服。
     いつものツインテールがまだ結われていない、ロングの栗毛がなびきます。
     ツユリは四月の入学式から着る制服をジッと見つめていました。

    スタスタスタスタッ――バンッ
    「わーい! 見てみてー!!」
     パパとママの部屋へやってきたツユリは、両手をブンブンと振りながら、四月から通う中学校の制服姿を見せつけます。
     遮光カーテンをスライドするママ。
     その横でむくりと起き上がったパパが、眠たげな目を擦りながらツユリに目をやると、涎あとの付いた小汚い口を大きく開けました。
    「おおおおおおう゛――!」
    「うるさい」
     パパは眼前に広がる光景に、雄叫びを上げました。
     が、隣のママが、猛るパパの顔面を枕で押さえつけました。
     ツユリは見せるだけ見せると、満足そうに部屋を出て行きました。姉の和海に、見せに行ったのだと思います。
    「お゛お゛お゛おおおおお!!」
     パパは、ツユリが部屋を出た後も、枕越しに猛っていました。
    「お゛お゛おお! お――…… ママ、あの、ど、どかして、息…が……」
     パパは手をピクつかせ、ママの背中に回すと、ママの寝間着越しにブラジャーのホック。
     パパはなんとなく、ホックを外しました。
    「ぶはっ、いやーごめんごめ――」
     ママが枕を剥がしてくれました。
     ですが代わりに、ママの冷徹な眼差しがパパの双眸に映りました。
     パパは、ふにゃふにゃした笑顔を青ざめて凍りつきました。


    コッペパンは偉大 トースターとオーブンレンジで食パンがトーストされています。
     ママはフライパンをコンロに載せると、火を点けて、卵を割り入れました。
     ジュワ~と生卵が熱され、ママが長いお箸でかき混ぜます。
     横でツユリが不満そうに文句を言いました。
    「ツユリは食パンよりも、コッペパンが食べたいの! トーストはやだ!」
    「んなもんねーよ」
     ママが一般家庭の主婦の総意を口にすると、リビングからパパがやってきました。
    「給食に出たコッペパンって柔らかくて甘くてボリューミーで美味しかったよなあ……」
    「ねー!」
     ツユリがにこやかな笑顔をパパに向けると、パパは、にへらっと笑い返しました。
    「ママ、ないの?」
    「ないの」
     パパは一瞬、ママの苛立った横顔が見え、すいーっと、リビングへ回れ右をしました。

     その後もツユリは粘りましたが、ないものはないと言われ、諦めて食卓に着きました。
    「コッペパンが食べたい!」
    「ツユリ、知ってるか? コッペパンは日本人が考案したパンなんだ」
    「そうなの!?」
    「そうだぞー? 終戦直後は米粉がなかなか手に入らなくてな? でも代わりに米国からパン粉が安く手に入って、コッペパンが出来たんだ。コッペパンは保存場所も労働も省けて、しかも、安くて旨いし、栄養もある。その頃は、まだパン食があまり普及してなかった日本だったけど、すぐに広まったんだ」
     ツユリが
    「凄いんだー!」
     と言おうとしたところで、パパが前のめりになりました。
    「しかもそれだけじゃない! コッペパンはジャムやチョコを塗れば菓子パンになるし、熱々のコロッケや焼きそばを挟めば惣菜パンの出来上がりだ! そしてなんと日本各地に、それぞれご当地コッペパンというのがあってだな……!」
    「食べたーい!!!」

    「おい」

     ピョンピョン跳ねるツユリの後ろで、ママが冷や汗をかきながらパパを睨んでいました。
     食欲湧かせてどーする。
    「あ、あはは……」
     申し訳ない、と頭に手をやって苦笑いするパパだった。


    制服② 食卓に並べられた食器。こんがりと焼きあがったトースト、半熟のスクランブルエッグ、肉汁で今にもはち切れそうなポークウィンナー、トマトサラダ、イチゴとブルーベリーのジャム、水。
    「服よごれるよ」
     ママの制止を無視して、ツユリは制服を着たまま、トーストにジャムをたっぷりと塗りたくると口を大きく開けて、頬張りました。
    「大丈夫なんだよー!」
     もむもむ、と口一杯のトーストとジャムを味わうツユリ。
     その手元で、トーストに分厚く載ったジャムが――

     ぼたっ。

    「ギャー!」
     ママは斜め向かいの席で、目を細めながら、額に汗を垂らしました。
    「だから言ったじゃないの……」

     その後、洗濯機にかけられたツユリの制服は綺麗に汚れが落ちたらしく、今朝のように、リビングの隅でハンガーに掛けられ、エアコンの温風でふわりふわりと揺れていました。


    コッペパンは偉大② 桜が密生する森には桜吹雪。霞みがかったのどかな晴れ空。青々とした草原には、ちらほらとタンポポや、つくしが生い茂り、鹿やイノシシが草むらから顔を出します。
     ドドドドドドドド!!!
     ドラゴンが四つん這いで大地を這ってきました。背中の両翼をばたつかせ、背後から追ってきた狩人に向かい打ちます。
    「紅蓮斬り!」
     その掛け声と同時に、金髪美少年の大剣の刃先が煌々と熱を発し、ドラゴンの頭めがけ、斬りかかりました――。

    「コッペパンは偉大なんだよ」

    「コッペパン?」
     美少年の顔の横当たりに半透明の四角いモニター――チャットログが更新されました。
     パソコンデスクに前のめるノンちゃん――社杜樺音は、なんら脈絡がないコッペパンに、目を細めました。
     現実・ネットともに友達のツユリから送られたチャットです。
     その後、ノンちゃんはツユリからパパの受け売りを聞かされましたが、いや、正確には読まされたわけですが、
    「偉大やなー」
     とだけ返して、ツユリと合流しました。
     なっちゃないよ、ノンちゃん。


    ビターチョコ 白とピンクを基調とした部屋。白塗りのタンスの上には、魔法少女モノのヒロインのフィギュアが飾られ、その横にはトレーディングカードが敷き詰められたプラスチックの箱が置かれています。
     卓上のデスクトップパソコンに向かって、ツユリは座っていました。
     ツユリが机の一番上の引き出しを開けると、沢山の板チョコの包装紙とアルミホイルのゴミ、そして一枚だけ、まだ未開封の板チョコがありました。
     ツユリはその板チョコを手にすると手慣れた手つきで包装紙とアルミホイルを破くと、焦げ茶色の、なんとも甘そうな板チョコを、がぶり、がぶりと食べました。
    「もうなくなっちゃったんだよー」
     最後の一枚を食べ終えたツユリが言いました。鼻血を垂らして。
     その時です。ツユリの背後から影が伸びました。
    「ツ・ユ・リ~?」
    「ママ!」
     ツユリが振り向くと、背後にはなんと、ママが腰に拳をあて、仁王立ちしていました。
     ママは眉間にシワを寄せ、引き笑いをしてツユリを見下ろしています。
    「食べ過ぎ。これから昼飯だっつうのに……。つーか、一日一枚までって約束でしょ?」
    「ご、ごめんなさい……」
    「そんなに食べたら後でお腹壊すんだからね? 約束も守らないし、朝だって――」
     その後、数分間、ガミガミ、ガミガミとママに叱られたツユリは、口内にふんわりと残っていたカカオの甘味が何故だか、苦く感じました。


    落っこちた、ふりかけ 長方形の弁当箱が二つ、食卓に並んでいました。
     弁当箱の左半分には、ご飯が敷き詰められ、その中央にはとても酸っぱそうな梅干しが載っけられ、右側にはおかずが盛りつけられています。
     小ぶりの焼き鮭、タコウィンナー、鶏の唐揚げ、だし巻き卵、金平ごぼう、大学芋。
    「四月からのお弁当よ」
     ママがそう言った横で、和海は微妙な顔になりました。
     私の中学は給食だったのに……。
    「わーい!」
     ツユリは食卓に両手で乗り出し、足をパタパタします。
    「あれ? ふりかけないの?」
     パパが尋ねました。お握りに混ぜたり、お弁当のお供のふりかけがありません。
    「いや、おかず味付いてるし、いらないかなって。つーか、どこいったっけ、アレ」
     ママがそう言うと、ツユリも和海も素直に
    「「いらなーい」」
     と言って、パパも
    「そーだな」
     と苦笑しました。
     四人が食卓でそう言っていた頃、台所の棚のどこかで、忘れられたふりかけが独りでに落っこちました。


    鮭フレーク「僕らのごはんは……?」
     パパにそう聞かれ、ママは台所の隅を指さしました。
     おにぎりです。塩と海苔と鮭フレークのお握りが皿に盛られてました。そしてその横に、弁当のおかずの余りもの。
     和海がおにぎりを食卓に持ってきました。
     すると、含み笑いをしながら、おどろおどろしく言いました。
    「この中の一つに大量のワサビが……」
     フッフッフッと笑う和海にパパが
    「なんてこったい」
     と、腰を落として驚きました。
    「まさかのロシアンルーレットライスボール!?」
     なげーよ。

     パクッ
    「ぐっ、これは……塩のみ! セーフ!」
     パクッ
    「やった! これも入ってない!」
     パパは海苔のお握りを口に入れると、リスのように頬を膨らませながら、鮭フレークのお握りをジッと見つめました。
    「後は鮭フレーク……」
     パパの額に冷や汗が垂れました。
    「入ってると知りながら食べちゃうっ!」
     パクッ
    「入って……――ない!」
     パパが一人でわちゃわちゃしている横で、淡々とお握りを食べながらママは思いました。

     いつ入ってるって言ったよ。


    歯磨き「ツユリ~。ツユリはもう、板チョコ全部食べちゃったのか~?」
     洗面所でパパとツユリが歯を磨いていました。ツユリが、バッと、パパの顔を覗きます。
    「板チョコあるの!?」
    「ない」
     二人は冷や汗をかきながら、ゴシゴシと、歯を磨きます。
     その後ろで、和海が二人に微妙な顔を向けていました。


    春一番 ビュオオオオ!

    「春一番だな」

     ビュオオオオッ!!

    「春の報せなんだよっ」

     ビュオオオオッッ!!!

     ツユリとパパが、強風が吹く窓の外を、カーテン越しに眺めていました。
     春風は「当たりに来いよ―――――――!!」と何度も綿貫家の窓へアタックしますが、二人は奥へ引っ込んで、対戦ゲームを始めたのでした。


    カレーライス 強風が吹いていた窓の外はすっかり暗くなり、パパが遮光カーテンを閉めています。
     台所ではツユリが元気に跳ねていました。
    「わーい、わーい! 今日もカレーなんだ!」
     台所にて、ママが冷蔵庫から鍋を取り出しました。
     鍋には昨日食べたカレーの残りが入っています。
    「ゼリーみたいなんだ!」
     カレーはゼリーのように固まって、プルプル震えながらコンロの上に置かれました。
    「あぶないから台所に入っちゃダメよ。……つーか、アンタ」
     コンロを点火すると、ママはツユリを見て、手を止めました。

    「脱ぎなさいよ、その制服」

     ツユリはそう言われ、固まりました。
    「はーい……」
     しょぼくれて、ツユリが自室へ戻っていきます。
     それを見届けると、ママは微妙な顔になりました。
     流石にカレーは落ちねーよ。

     ツユリが私服に着替えて、リビングに戻ってきます
     食卓にはすでに夕食が並べられてありました。
     カレーライス、福神漬け、トマトサラダ、水。
     ドロドロとしたカレールーにスプーンを付けて、パパが言いました。
    「二日目のカレーはコクがあっていいよなあ」
     パパはルーとご飯を掬い、口の中へ運ぶと、スパイスの香ばしい匂いが口一杯に広がり、ピリッとした辛み、ゴロゴロの野菜と鶏もも肉がとろけます。
    「おいしー!!」
     ツユリもパクパクと、カレーを口へ運びました。


    冬休みの憂鬱 冷蔵庫にマグネットで留められたプリント、合格通知書です。
     それを和海が恨めしそうに睨んでいました。
    「ぐぬぬ……」
     と唸ると、風呂上りのツユリに呼ばれて、風呂場へ向かいました。
     シャカシャカシャカ。
    「ぐぬぬ……」
     とまた唸ると、泡だらけの髪をシャワーで流します。
    「ぐぬぬ……」
    「暑いよ、お姉ちゃん」
     そう言うツユリをギュッと抱きしめながら和海がまたまた唸っていました。
     食卓でパソコンを開いていたパパが尋ねました。
    「ど、どうしたんだ和海」
    「うが――! もう少しで冬休み終わっちゃうよ―!! 絶対たくさん宿題出るんだ!!春休みなんて嫌だ――――!!!」
    「おま、高校の後は大学受験が控えてるんだぞ!? 地獄だぞあそこは!」
    「高三にもなって遊んでるからだろ」
     後からやってきたママにグサッと刺されたパパは、ガックリと肩を落としました。
    「和海も、アンタが入れるぐらいの高校なんだから、どうせ大して出ないよ」
     和海にもグサッと刺さり、真っ白に燃え尽きました。
    「つーか、ツユリが一番宿題出されるでしょ」
     グサッと、ツユリにも刺さりました。
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    Mar 22, 2019 10:46:49 AM

    第五話「冬休みの憂鬱」

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