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    しおり
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    しおり
    その花が向日葵になるまで存在証明の花砂の夢1~3雨の後日談 ※アカ平だけど主軸がしげると安岡さん純透の向日葵<神平からのアカ平>

    ・・・・存在証明の花
    そこに存在が無かったとはしない為に。
    真っ赤な花を添えてやろう













    「アンタが死んだら、赤い花をくれてやるよ」




    冗談のつもりで俺が言えば、平山はいつだって泣きそうな顔で焦る
    その顔が俺には愉快なもんなんだけど・・
    今もその冗談に顔を青くさせてる奴は、体をプルプルと震わせて何か言いたげだ
    さぁ、どんな言葉が出てくるのか。






    「え、縁起でもないこと言うなよ・・・」

    「俺なりの冗談だ。そこまで気が滅入るお前が悪い」

    「え、コレ俺のせい!?違うだろっ!!?」






    いちいち人の言動にツッコミを入れないと気がすまないのが、なんとも凡夫らしい
    ぎゃあぎゃあと煩い
    (まぁ・・視界としては悪い光景じゃ無い。蹴りは入れないでやろう)


    なんと無しに過ぎるこの部屋の時間。
    既にこの部屋は、家は、半分は俺と繋がっている
    もう半分は元々の家主の平山と時間を繋げていて、特別何をするわけでもないけど
    時間を消費するのは大半が此処
    そもそも特別なことなど俺は望んでない
    それは恐らく、平山もそうなんじゃないだろうか
    ああでも、コイツのことだ。

    言わないだけなのかも知れない



    俺からすれば、過ぎる時間を此処で流すのは悪くない







    「アンタは?」

    「え・・?」

    「アンタは、俺が死んだら何もくれないのかよ」






    どんな反応が返ってくるのか。
    それが楽しみだ
    案の定、平山は目を何度も瞬きした後に「あ?え・・うーん・・・」などと、
    唸りながら腕を組んで考えてる
    最初はこんなにも単純なヤツじゃあなかったのにな(初対面はもう少し利口そうだった)
    今は誰よりも考えの解りやすいヤツだ


    俯いてた顔が、俺を捉えたのはその10秒後。






    「そ、そもそも・・アカギが死ぬ、って話が考えられない・・気が、」

    「へぇ・・でも、悪いな。俺も人間だから死ぬ時は死ぬよ」

    「そうなんだろうな・・でも、うん、」






    俺には考えが浮かばない。


    一言、最後に付け加えられる
    あまりにも真剣に言うモンだから、一瞬からかってやろうかとも思った
    本当に凡夫だな。と、言ってやっても良かったんだが
    久々に見た平山のその表情を台無しにするのは、つまらなく思えて。
    しばらく眺めてやると今度は警戒し出す
    やたら人を見る目がビクついてる






    「な・・なんで、急にそこで黙るんだよっっ」

    「黙られると困るのか・・ククッ」

    「大体な!!お前みたいな人の恨み買いまくってるヤツは、長生きするんだッッ!」






    だから俺は、お前に何もやらない!!



    最後を締めくくった言葉に、ふとある考えが浮かんだ
    多分それを言ってしまえばこの凡夫のことだ
    泣き出して狼狽するような面倒事になりかねない
    そうなったら殴るしかないだろうけど。






    「ああ、それでいい。でもアンタはよく覚えてなよ、」

    「覚えるって??」

    「真っ赤な花。アンタが死んだ時、誰がくれたか忘れないように」

    「・・なぁ、お前って死後の世界とか信じるようなヤツだった??」

    「信じてねぇよ。よく人が言う『もしも』って話だよ・・」







    もしも。なんて、
    いい話じゃない

    幻想、曖昧、不確かな予測なんてしたところで何の意味もない
    明確でない話は現実に存在をしてないから
    平山も大分、人を不思議そうに見ていた
    何か言ってくるだろうか・・と、思ったけど
    そこからしばらくはどちらとも言葉を発しなかった















    某所山中、8月には決まって赤い花が置かれている
    何もない様なありふれた場所に突如として『赤』が目に飛び込む
    それ以外には何も置かれていない






    『果たして、アイツは覚えているだろうか・・・?』









    ―存在証明には、赤い色が一番なんだよ―






    20090801
    平山命日の為に。
    最後のしげるさんは20代でも40代でもいいです。
    ギャグのようでシリアスですみません。;^ω^
    砂の夢1~3雨の日には、誰かに出会うもんだ
    俺の場合はそれは
    南郷さんだったり、鷲巣とも・・・思えば雨に出会っていた




    雨の日には、唐突に誰かに出会ってしまうものなんだと思う














    特定の場所に長く居つくのはあまり心地良くない
    昔から性分に合わないのだろうと、自分でも分かっていた
    直ぐに離れる方が落ち着く
    真新しく、臭いのついていない空間が好きだった
    誰かに寄り添うのも、時間を共有するのも、この先は無いだろうとどこかで気付いていた。
    俺は恐らくあの泣いてばかりだった奴と、過ごしたその時間だけを
    どこかで馬鹿馬鹿しい程に望んでいた
    だけど俺はその願望を、見ない振りして、無視していた


    どうして?と、聞かれても俺にもそれは答える術が見つからなかった


    望んだそれは、日を追うごとに失われるものだと分かりきっていた癖に。
    もう泣いていた顔も思い出せない位、霞んでいる。
    どんな風にして泣いていたのか、頭の中を幾ら探しても霞んでいた



    存在した証明に花を毎年贈る。と、
    覚えていろと言ったのは自分で。



    その癖、俺はアンタと話していた事を覚えているのに
    アンタの顔を忘れ始めている事は、どうすれば止まってくれるんだろうと思う
    それはまるで、手の上に乗せた砂が零れ落ちるのを見ているようなものだった
    分かりきっていた事。
    知って居るくせに。








    それが『諦められない』という事だというのを知るのは、もっと歳を重ねてからの話。
    今の俺には、胸の端を酷く鈍く焦がすものだと認識していた・・・



















    『明日は雨らしいですよ。濡れないよう、気をつけてくださいね』



    日も落ちた頃、
    古びた小さな旅館の、白髪交じりの年老いた女将は
    銭湯帰りの俺にその言葉だけを告げて
    木製の廊下の端でその姿を左の部屋へと消した
    あの端の部屋には確か食堂があったな・・と、ぼんやり思う
    俺はこの旅館を使うようになったのは、鷲巣との事があった翌年からだ。
    半日もここで過ごしては無い
    でも、決まって来る夏のある前日。
    女将は俺の顔を覚えているらしいと、今ので知った



    明日の朝にはもう此処に居ない。
    毎年そうだ
    朝には知り合いに赤い花を渡す
    地図にあるその場所へ、花を手向けに行って欲しいと言うだけだ。




    自分でその場所に行ったのは一度きりのこと
    行けば思い出すものも、あるのかも知れないのに・・
    自分でその場所へ、もう一度向かうことは出来なかった
    誰も居やしない
    あるのは雑木林の中に一つ、丁度足首の高さほどある、重さある石。
    それは目印の役目を兼ねていた


    二階の部屋に向かうまでに、肩に掛けたタオルで
    もう一度髪を拭いた
    ここに来るまでの間僅かに乾きつつあったが、それでもまだ湿っぽい
    廊下と同じ材質の階段は小さく軋んだ
    上がってすぐの襖を開けば、そこが今日の俺の寝床だ・・・






    ―ザァアアアア・・・・―









    『もう降り始めたみたいだぜ、ばあさん・・』





    窓の外ではさっきまでの静けさは無く、雨の音がひたすら鳴り響いた
    遠い街灯の明かりが点々と浮き流れている
    賑わいの無い、物寂しい町は雨のせいもあってか
    既に眠りに入っているように見えるほど暗かった
    夏の肌に纏わりつくような煩わしい空気はここに不思議と無い
    一歩、畳の部屋へと踏み入れて戸を閉める



    『このまま眠れそうだな・・・』



    雨が引き連れた空気が、少しずつ部屋に渡っている
    きっと眠りにつく頃はこの部屋はもっと、夏から遠ざかるような
    そんな気がした・・・





    ――――・・・・











    「・・・―――言っとくけどな、さっきの話。俺がお前より早く死ぬってなんか確定してるみたいだから止めろ。俺だって、長生きの予定なんだ」


    「・・・何?」


    「何?じゃ、ない!!!ちゃんと人の話聞けよ、アカギ!!!」





    目の前に、知ってる顔
    見慣れた風景
    掠れて見えなくなっていたものが全て、今目の前に在る
    平山が目の前に居る
    そして、ここは奴の使っていた安アパートの部屋だ
    あの旅館のように風通しがいい物ではないから、やたらと夏は過ごし辛かった
    たまに通る風がそのせいで酷く心地良いのを覚えている

    それが今、ここに在る


    夢なのだろう。すぐに思った
    それにしては全てが、鮮明すぎた
    後頭部から風を感じる
    じわりと肌に這っている汗も、



    久々に見た平山の顔も。



    真正面に座って、不満をあからさまに表情に出しているその姿に見覚えがあった
    いつだかこんな話を二人でしていた記憶もあった
    だからこれは、夢が勝手に人の忘れていた部分を暴いているのだと知った
    こんなに鮮明なほど、知っていたのに
    どうして俺は忘れていたんだろう・・・
    そう、思う



    平山は何も言わない俺を訝しんで、顔を覗き込むように見る






    「なんだよ・・具合でも、悪くなったのかよ・・・??」

    「・・・ククッ。心配、してくれんの??」

    「部屋に吐かれたら迷惑だから聞いてんだよ」





    誰が心配なんかしてやるかよ。と、悪態ついて舌を出した平山の姿を見て
    勝手にその手は奴の片手を、そのまま畳の上に着いたまま
    自分の方へと引き寄せる


    そうしてそのまま、その赤い舌に噛み付いて
    小さく震えた肩をそのまま<逃がさない。>と、空いていた手で押さえた
    一瞬の出来事に、平山は逃げようと後ずさろうとするが
    それは叶わない話だ


    逃げ出す余裕なんて、最初から与えるつもりも俺に無い



    じりじりと、痛みを与えるようにして噛めば
    その目を瞑って耐える顔に<噛み千切られる!>と、書いてあった
    そんな勿体無いことはしないのにな。と、頭の隅で思いながら
    やっとその舌を解放してやる






    「――っ!!――~~~~・・・っは、あ!!!」


    「――・・なぁ、噛み切られるって思った??」


    「おっ、ま・・え・・・な~・・・っっ!!!!」






    目の端に朱を。
    僅かに潤んで瞳からは涙が出ても不思議はなさそうだった
    同時に解放された片手で口元を押さえながら「痛いし、怖いだろっっ!」と、抗議の一文を口にする
    そうだったな・・お前はそういうの嫌いだったな

    恐怖することも、痛みを受けることも、遠ざかって生きて居たかった
    そんな奴だった



    ねぇ、





    「俺に、出会わなければ良かったってどれ程思った?」







    見開かれた目が、色付きの眼鏡の向こうに。
    自分でも、どこに潜めていたのか分からない・・ヘドロのように流れない言葉が
    口元に残る

    自分に怖いものなどありはしない。
    痛むことは、生きている事だ
    そうしなければ生きているとも思えない
    だから俺にとって命は賭す物でしかない



    俺の真逆を生きていたアンタなら、思っていただろう?



    アンタが死んでから、そんな事をどこかで思っていた
    今となっては知る術は無い
    なら、この際夢でいい
    都合よく答えればいい。




    目に戸惑う色を持った平山の口元が、下りた手元から見え動く





    「・・・アカギ?」


    「・・教えてよ、平山さん」


    「なんだよお前・・その呼び方久々に聞いたけど、なんか違和感しかないな」




    苦笑して、少し困ったように。
    俺に感じているだろう・・他にもあるはずの違和感を感じながら
    平山は俺を見る






    「何考えて言ってるか知らねぇけど・・何度も思ったよ」


    「・・・・」


    「でも遅かれ早かれ、安岡さんと関わらなくても、『この世界』に俺は居て・・・お前に会ってたと思う。って、考えてる」






    ―もっとも、こんな風にお前に家に上がりこまれて、好き勝手やられてたかどうかは分からないけどな―
    そう答えて溜息を一つ、わざとらしく吐いて肩を落とした


    一体どこまでが俺の夢で、どこまでが俺の記憶を辿って居るのだろう


    このやり取りが本当にあったのかどうか
    平山の顔を忘れかけていた俺には、怪しかった
    真実は死んでしまった平山しかもう分からないというのに・・・・

    都合の良さを、望んでる反面
    過去に本当に在ったことの境界線を自分で見失おうとしていた
    どの道、どっちであったとしても結局





    『俺を、通り過ぎて行くだけだ』





    目を醒めた向こうで
    平山は、死んでいるんだから。







    「・・・・・」

    「??・・なぁ、アカギ」

    「なに??」






    意識を平山に向ければ、
    人の顔を覗きこむようにしていた体勢を取っていた事に気付く
    室内に入り込む風が、急に強まる
    まだ遠い雷の音が、どこかで雨が降っていると知らせてくる

    薄い、橙色の
    カーテンが風で煽られて泳いでいた





    「お前でも・・"後悔"とか、すんのかよ?」





    再び、畳の上に下ろされた平山の手がぎゅっと結ばれる
    それに反応したように、目元がさっきまでの朱色を違う形で取り戻していく
    知っている
    これは、コイツが泣きそうな顔。
    その予兆のような目元の歪み
    ツライだとか、
    カナシイだとか・・言う前の
    そんな時の泣き顔のだ。

    流石、よく涙を浮かべるだけあって色んな泣き顔をコイツは持っている

    そして俺はこの時の顔だけは、どういう風にしてやればいいのかが
    昔からよく分からなかった
    それは夢の中の今も、同じだ
    正直、



    (楽しいとは・・・あんまり思わないから)



    それでも、凡夫の涙を見るのは嫌いでもなく
    どちらかと言うと水源が枯渇するまでの様を見たい気持ちはあった



    だから、"泣くな。"とは、言わない
    ただ、凡夫が日頃"その顔はやめろ!"って言っていた・・薄笑いをしてやる





    「――ないよ。一度も」

    「そっか・・だよ、な」

    「・・・俺に後悔して欲しいの?」

    「やめろ!絶対すんな。世界一似合わないから」

    「(世界一ねぇ・・)自分は俺と会った事、何度も後悔してるくせにね」

    「あ・・そ、れは・・・」





    何ともバツの悪そうな、僅かに青い表情と小さく体をビクリと震わせて。
    正直すぎるコイツは・・本当にどうして俺の前に現れたのか、
    それが不思議な位俺と真反対を生きている
    そう、俺は思っている
    なのに巡り巡って、どういうわけか知り合ってしまった

    俺と"似て、だが異なる"


    それだけの理由で。







    「――・・この先も後悔することは、俺は何一つしないよ。アンタは、そういう事する俺は見たくないみたいだし・・」






    そう呟いて、壁に背を預け
    ポケットに入っているだろう煙草を手探りで見つけ、卓袱台上にあったマッチに手を伸ばして火をつける
    薄い白煙は一息で部屋に散り散りになる
    反応が一向に返ってこない平山の様子を見れば、何故か唖然とこっちを見ていて・・
    どうにも間抜けな顔にしか俺には見えなかった

    「おい?」と、声を掛けてやると
    やっと意識が戻ったらしく、無意味に顔を横に振っていた
    平山の耳に、目元にあった朱色がどうやら移動したらしい。




    「べ!!別に俺はお前の後悔している姿が見たくないとは・・・っっ!!!!」

    「?何照れてんの??そもそも、似合わないんでしょ?俺はそういうの。同じ意味じゃない」

    「~~~~っああ、もう好きに受け取れよ!!畜生!!!」




    そう言い放って、整った頭を面倒そうに掻きあげて
    平山は目を閉じて小さく息を吐いた
    自分でも驚くよ

    俺は、本当はこんなにアンタを覚えていたんだ

    知っていたのに、
    何で今まで失くしていたんだろうね・・・
    今が夢だとしても、アンタの顔も、仕草も、知っていたんだ



    酷く馬鹿げた話だけど、この夢のアンタは『生きてる』



    失くした様に見えていた俺の過去で、アンタはまだ歩いている
    ひょっとしたら、俺の悪態を知っていたのかも知れない
    だから今、目の前に平山がいるという事も・・・数えればきりがない"もしも"の内の一つだろう。
    勝手に忘れる事を、コイツが拒んでいるのかもしれない
    そうあったらいい。


    だって本当は―――・・・・。





    「クククッ・・・そうしとくよ」

    「~はぁ。ついでだから」

    「?」

    「ついでだから・・・言ってやる」



    風が妙に冷たさを増したのを肌で感じる
    平山は何を言うのか・・それを黙って、見て、待つ
    人を指差して、平山はそのまま言葉を続ける




    「二度と、言わないけどな。お前と―――――・・・・









    ザァァァァアア―――・・・・・・















    「――・・・」


    目を開けば、まだ夜の暗がり。
    上半身を起こして窓の外を見れば、まだ雨が降っていた
    当然そこにさっきまで俺が見ていたものは何一つありやしない
    あるのは、雨の音とそのせいで下がった室温と夜だ


    でも、決定的に寝る前と変わったことは
    今の俺はちゃんと平山の姿を思い出せること。





    『そう簡単に忘れるなよ。って、事だと思っておくよ・・』





    暗闇になれた目は、あの外のぼんやりとした街灯の明かりが目に映った
    雨が止む気配は一向に無い






    『たまにはそうやってこれからも出てくればいいよ』






    そんな事を考えた口元は、
    雨夜に浮かばないはずの三日月を描いた
















    (二度と、言わないけどな。お前と・・会った事後悔しても、やっぱり会わない自分がどこにも居ないから)

    ―例え後悔しても、会わなかったら。という、選択肢の自分を考えられない―






    夢の中のきみに、今年も赤を捧ぐ





    END




    ○いやぁ・・・途中までサクサク行って、放置してしまったので(←)難産でした。;
    でも自宅の赤平のやり取り久々に描けて満足。´∀`
    この話は"実は"というまでも無く、微妙に続いているシリーズになりますね。
    <存在証明の花><純透の向日葵>そしてこの話になります。
    話の流れとしては、<存在証明の花>と<純透の向日葵>の間の出来事になりますが・・・。
    自宅にしては珍しいくらい、しげるさんがセンチメンタリストな話ですね。苦笑
    人の記憶は確実に覚えているようで流れちゃうものですって言いたかった話。
    覚えていたくても、それを止める物は何も無いって話なんですが・・まぁ、しげるならそんなの無視してくれるだろうという希望が詰まってます。
    あと幸雄は結局後悔しても、後悔に勝る程どこかでしげるに追いつきたいとか自分もその存在になりたいとか思っていたと思いたい。
    だから"会わなければ"と思ったところで、しげるに会わなかった自分を想像出来なければいいと思うんです。

    本当はこれ幸雄命日に上げる予定だったんですけど、神域命日としてこのお話を。
    そしてお世話になっているT子さんにこっそり捧ぐ。(よければ貰ってくださいな^^)

    20120928雨の後日談 ※アカ平だけど主軸がしげると安岡さん
    だって本当は―――・・・・。
    (俺が、忘れることを嫌い・・必要以上に遠のけないんだ)













    夢で平山を見た数日後に、夜店立ち並ぶ街の隅で
    悪徳刑事と久々に顔を合わせる事態になったのも
    偶然にしちゃよく出来ている。と、頭の隅で思った
    安岡さんはどうやら相変わらず、本業とこっちの世界を行ったり来たりしているらしい
    久々に会った記念だ。なんて事言いながら、適当に屋台の空いている席についた


    夢で平山を見た。というと、安岡さんは
    言葉のまま、目を丸くして俺の事を見る



    「ほんとか・・・??」

    「ああ。つい最近。もう、顔も思い出せないって思ってた頃にね」

    「そー・・かい。俺ァ、お前の顔見ればアイツをはっきり思い出すよ」



    すでに俺と会う前から酒を飲んでいたのだろう・・
    安岡さんは分かりにくい程度に、顔に赤みが掛っていた
    隣で日本酒を一杯、一気に煽って
    その空になった小さなグラスをゆっくり置いた



    「アイツには・・お前のニセをさせてたのに、妙な話だがな・・・」



    その言葉に俺はふっと笑って、目を閉じた
    全くだ。と、思ったからだ
    この人が俺と似ているという理由で、アイツを拾ったのに
    今は俺を見て平山を思い出すというのは・・矛盾と可笑しさの両方を持つ
    それは安岡さん自身が一番知ってんだろう・・・

    「にしても、」と、続く言葉が聞こえて
    首だけ安岡さんの方に少しだけ向かせておく




    「死者を夢でみるなんぞ・・お前にどーも似合わねぇなぁ」




    そこから安岡さんが言うには、死者の夢は未練の象徴みたいなものだという
    ここでも俺はどうも後悔とは無縁の人間という見方になっているみたいだな(間違っちゃいねぇけど)
    妙に夢の話に語っているのに気付いて「安岡さん、行きつけの店のママさんは最近は夢占いでもハマってるの?」と、言えば
    それは全く図星だったらしい
    辻褄は合った

    夢の中で死者が楽しそうにしていれば、いい事があるとかなんとか・・聞いても居ない話が次々来る

    殆ど耳に入らず、そのまま適当に聞き流していながら
    一杯目の日本酒を飲み終えてやる




    「まぁ・・結局は、自分がその夢の捉え方が良ければいい夢なんだとよ。悪けりゃあ、悪いそうだ」

    「ふーん・・・」

    「ああ、それとな・・・死者と喋った夢にはまた別の意味があってな、」








    <病気を暗示するらしいぜ・・?>






    と、安岡さんはグラス片手にニヤリと俺を見て笑いながらそういう
    一瞬、間を置いた後に俺はそのまま「そう・・」とだけ、返して再びグラスに口をつける
    安岡さんは「ノリ悪ぃーぞお前ぇ・・」と、もう立派な酔っ払いになりつつあった
    完全に出来上がるまでに席を離れよう
    この人の酔いの後始末する程、俺には親切心は無い


    でも、





    「案外・・当たるかもな。それ」

    「へ?」

    「よっぽど現実的な事だって話だよ。その内何かの病気になっても不思議じゃねぇよ」

    「お前がかぁ??なんだ、風邪気味なのか??」




    違うんだよ、安岡さん
    別に俺は今・・体調が優れないだとか、病気になりそうなわけじゃあ無いんだよ


    ただ、






    (病気で死ぬっていうのも、あるんじゃねぇかって)







    よっぽど当たり前の事だと、思ったんだ
    どこまで行っても俺はただの人間だから、そういうのもあっておかしくないだろう。
    そう思っただけの事


    つまりそれは、

















    『"アイツ"がアカギを<呼んだ>としても・・・アイツにアカギを連れて行ける器量があるようには思わねぇがなぁ・・』






    安岡さんがそんな考えをしていたのを、俺は知らない
    そして、それは俺の考えと交差しているということも。

    互いの酒は知らぬ間に空を迎える






    END

    ○『砂の夢』のおまけになります。
    自分で書いていて死者が夢に出るというのは、占いではどういった意味を持つのか気になって色々調べました。
    死者が未練の象徴っていうのは、これは私の考えなので占いとは関係ありません。
    他は色々なサイトさん参考にしました。
    病気の暗示っていう一文を見たときは電流走りました。
    しげるは病気で直接死んだわけじゃないけど・・発症して、それに殺される前に命を絶つわけなので。
    私もやっさんと同じで幸雄にしげるを連れて行ける器量は無いと思ってます。←
    逆にしげるに幸雄が連れ回されそうだよね。



    冒頭の部分は<砂の夢>でしげるがはっきり言わなかった部分の答え。

    20120930純透の向日葵<神平からのアカ平>この季節になると、ふいに悲しさが舞い込む














    「よぉ」



    じりつく太陽だけを背にしていると思っていたのに、
    その声が背後から降ってきたのに驚いた
    気配でも意識して消してたのかと考えてしまう
    いや、この男は意識しなくても気配消せる。
    そんな芸当の持ち主だって言うのは昔から知ってたけどよ




    「なんでアンタが此処に来るんですか?・・・赤木、さん」


    「それを俺に言うなら、その言葉そっくり返してやるよ」




    楽しげに意気揚々、クク・・ッと喉で笑うその姿を
    逆光の中で捉えた
    太陽が鬱陶しく、煩い位の光を放っていた
    この人の背を隠すものが何もないこの場所を少しばかり恨む
    思わず視界に日陰を与えるために眉上に手を広げた
    砂利を踏む足音が聴覚を焼きつけるようで、




    ジャリ。





    「なぁ・・なんで此処にお前が居るんだよ、平山よぉ」





    ジャ・・・。




    少しばかりの苦笑は、白い光に消されないで俺の視界にちゃんと届いた
    匂いも声もさっきよりずっと強く届く
    何せその距離、30cm弱。
    纏わりつく温い風すらどうでも良くなってしまう
    俺はきっと、目を見開いてこの距離に驚いている
    近づいてくれた
    ただそれだけ。


    でも、









    どうしてアンタ、俺がアンタの墓に来るって思ってたの?











    「クッ・・なんだよ。近づいた途端、そんなツラか」


    「だ、だって!!アンタ、本当になんで・・・!!!!」


    「此処は今の俺の家じゃねぇか。その主が此処居て何がおかしいんだ??」





    嘘付け
    知ってるんだ
    普段は居ついてないで彼方此方フラフラしてるって。
    アンタは死んだって不良中年だろ??
    今日に限ってここに居るなんておかしいじゃないか
    なんで今日は此処に居るんだよ




    「久々に会ったんだから、んな悲しいも酷さも含めたような顔すんなって」




    向日葵みたいになってくれよ。という、そんな赤木さんの方が向日葵のような
    子供っぽい笑顔を俺に向けて頬を撫でる
    撫でる指の皺が俺には心地よくて、今在る表情を消したくて目を強く瞑ってその感覚に身を任せた
    鬱陶しい日も温度も、少し冷たい指先に流されていく
    頬を行きかう指は、向きを変えて
    今度は手の甲でこめかみ辺りに移動する


    ゆっくり・・と、目を開けた






    「居ついてねぇ俺が悪ぃな・・まさか8月に毎年『来客』してる奴が居るとは思ってなくてよ」







    通りで今までお前にだけは会えないわけだ。

    ああ、どこから聞いてしまったんだ
    そんな話。
    知らなくていいのに・・・
    語る顔は優しくて、俺は自分の女々しさに消えてしまいたくなっちまう
    そう。
    アンタの指している8月の『来客』は間違いなく、俺だけの事
    大概アンタの所に来るのは9月だから
    赤木さんの命日月。



    8月はアンタの月じゃない






    「自分の命日の時くらい、なんで自分のところにいねぇんだよ・・」


    「――・・アンタには絶対分からない事だから・・ほっといてくれよ」


    「俺は、平山んとこ何回も行ってたんだぜ??」


    「は・・・??」





    思わぬ言葉が飛び込んでくる
    同時に、頬を撫ぜた手は引っ込んで
    かち合う視線が離れない

    この人は今、なんて・・?





    「生きてる間も花上げに行ったしな・・それは知ってンだろ?」


    「ま、まぁ・・それは『見てた』から・・・・・」




    強い夏風が吹き抜けて、湿り気を一時だけ連れ去った
    実体の無い身体としても分かっている
    それでもお互いにその感覚だけは生きているように感じるのだ・・
    ざわめく木々は心地よい


    どこかの花弁が風に乗って、赤木さんの後ろで舞い上がる
    恐らく黄色と白の聞くの花弁


    それは俺にとってとても不思議な光景に映った
    見知らぬ異国の地を連想されるような光景。




    『見ていた』
    それは本当に一度だけの事だったけど、
    でも・・ソレで良かったんだ
    甲斐甲斐しくお前が毎年俺のところに花なんて供えてたら気味悪くてどうしようか、なんて思ってたから
    一度だけでいい。
    そして残念なことに本当に、一度だけ・・お前は俺のところへ来た
    残念と思ったのはきっとお前が来なければ、此処には誰も来ないと知っていたから。
    安岡さんにも来ては欲しかったけど、あの人は優しいようで残酷だと分かっていた


    アカギは来た
    俺がこの世と別れた翌年に。
    目立つ赤の大きな花、一輪だけを持って。




    『死に急いでいるのは俺の方だったのに、な』




    見えたのなら、触れられたなら
    とても近い距離に居たあの時
    俺にしか見えないその背中が言った言葉は今も忘れられないで・・・だから俺が今、此処に居るようなものなんだけど
    確かに思ったのだ
    結果、生きたかった俺は生を失って
    お前は俺よりも生き抜いた不思議



    死んでからたった一つ知った事実は、
    あの手向けの花を置いた背中が俺の知らなかった気配を持っていたという事
    不器用と天邪鬼と言われても仕方が無い程、俺は死んでから幸せを知った
    たった一つ、それだけの事だったけど
    それはあまりにも大きな幸せだった・・・――――










    「あれからは人づてに頼んで、花・・置いてたけどな」


    「それも知ってる・・花の色で気付いた、から」




    今になってそんな話になるなんて思わなくて、なんだか気恥ずかしい気もした
    近づいた距離を一歩分減らして赤木さんは後ろを向く
    眩しい太陽を見上げて、本物の向日葵のようだった





    「歳ってーのは難しいな・・若いうちは自分らしさ、年食ってからは融通利かなくなるのが大半だ・・・俺の場合は前者が長々と続きすぎて、結果的にもう一度お前のとこに花上げに行くのが出来なかった」


    「別に気にしてない、です。あの一回だけの方がアンタらしかったから、そんな事言わないで下さいよ」




    思わず苦笑してしまう
    あの赤木しげるからそんな話が出てくるなんて
    本当に歳だなと思う
    俺が笑ったその一瞬に、風向きは変わり
    周りの音が少しばかり大人しくなった



    ジャリ、と
    再び振り返った音が聞こえて目を開けた






    「ねぇ・・その敬語やめなよ。俺と喋るアンタってそうじゃないだろ・・・??」






    一瞬にして、時間が遡る
    目の前に居るのは『俺が知るアカギ』が煙草片手にそこに居た
    いつもの喰えない笑みを浮かべた表情をして、俺を見ている奴がそこに居る
    何故か頬が少しばかり緩んだのが自分でもよく分かった





    「コッチの住人になってから、命日の度にアンタに会いに行ったけど・・そこにアンタは居なかった」


    「・・・」


    「で、風の噂で・・・俺の命日以外の日で決まって来る奴が居るって知った」


    「うん、」


    「8月の初めに来るソイツといつまで経っても会えない奴が結びつくのは道理だろ・・」





    赤木・・アカギが、一定の場所にいるような奴じゃないって言うのはよく知っていたから
    来ても会えないのは知っていたけど俺にはもう、居場所が無かった
    アカギが死んでしまったら俺の居た場所を知る人間がいない
    本当に自分が消えてしまったから・・だから居ついた場所はすぐに捨てれた
    結果、その果てにあらゆる所漂いながら一年の内に一度だけアカギの墓地に行くことを覚えた
    本来ならアカギの命日に行くべきなんだろうけど、それは俺が可哀想だから止めた
    沢山の人間に慕われ在る墓所に行った日には「自分はなんて孤独なんだ」とか思いたくない。
    アカギにもそんな事で妬ましいとか思うのも嫌だったから



    だから俺は、自分の為に8月の初めにアカギの墓に行くことを覚えた






    日差しが、傾く
    それでも尚日の長い夏の太陽は強烈に光を放つ
    地面すら溶かしかねない陽光の元、俺たちは互いの幻を見た
    出会ってしまった
    生と死で隔たれてた壁はもうそこに無い



    不謹慎にも思う
    『ああ、やっとか』と。
    死んでから得れたあの小さくとも俺にとっては大きな幸せを思い出す
    今もそう
    アカギ、俺・・自分の事を馬鹿だと思った事は一度も無いんだ
    だけど今は相当な大馬鹿野郎だと思ってる




    お前以外に居場所が思い浮かばなかったとか、
    無駄足だとしって8月に来ること。
    きっと居るだろうお前の命日にだけは行かなかったこと




    全部ひっくるめて、本当に大馬鹿だよなぁ・・と思う
    こういうとこが意地張ってると思うし、不器用だと自分で思う
    お前にだけはいつまで経っても「素直でいる」という事を覚えられないまま
    俺は今に至っている
    悲しいけど、それが自分だとも理解している・・・








    「気付かなくて・・良かったのになぁ」


    「何言ってんの・・?堪え性なくて、その癖突っぱねてるアンタは―――・・・」






    煙が、夏風に攫われる
    向日葵が眩しく俺に向かう








    「俺が『迎えに来た』・・とでも言わないと、飛び込んで来てはくれないだろ?」








    さっきよりも子供のように笑わないその向日葵は
    俺が一番欲しかった言葉を送ってくる
    死ぬことは絶対に幸せなことではない
    でも、俺にとってそこから得られたものは確かにあった
    そして・・それからずっと欲しかったものもあった




    ズルくても格差でも、目の前の男が自分を傍に居ることを許したのなら
    「素直」に認めたい
    いや・・自分が離れたくないのだ
    俺が一緒に居たいだけ
    その事を「素直」に認めることが出来る日が欲しかった





    だから、







    気付けば自然と抱きつくように、アカギに身体を飛び込ませていた
    唐突なことにアカギは煙草を落としてしまったらしい






    「平山・・??」





    暑苦しいとか言われるだろうか
    張り付く素肌が例え互いに幻でもいい
    長い時間忘れていた感覚が切なくて、心が痛い










    「お前・・カッコよすぎなんだよっ。いっつも・・そーやって・・・・っっ」


    「・・照れてんの??」


    「すげー恥ずかしいっっ!!でもっっ!!!!・・・・――――・・。」






    アカギの耳に聞こえる程度に耳打ちする
    誰も聞こえやしない言葉なのに、でも俺にとってはそれが今は精一杯の『素直』
    只でさえも真夏日なのに、高潮する頬は止まらない
    体温は上がる一方で。





    「・・・っ」


    「ふーん・・もっと、言ってもいいんだぜ?凡夫」


    「これだからお前は・・調子に乗んなよって」


    「無理。やっと会えたし、そんな事言われちゃあ・・しばらくこの姿でいた方がよさそうだな」


    「・・どーいう意味だよ。ソレ」


    「可愛がりたいって事」


    「な・・・・!!!!?」





    ああ、でもやっぱり時間が経っても
    アカギが変わるって言う事はない様だ・・・
    やっぱり「素直に」なんてしない方が俺らしかっただろうかとちょっと後悔した
    自分の身が心配になる





















    『でもっっ!!!!・・・・嬉しい、よ・・。』



    次のない今だからこそ、
    本当にアンタを手にすることが出来る
    長い月日は詰まらないものだと感じた事もあったが・・・予想外の反応はその月日が齎したものなのだろうと思う
    それを考えればいい物だったと思える


    夏日よりも熱を発するその顔を引き寄せて黙らすとしよう
    勿体無いから言葉は全て俺が呑み砕いてやる
    後で溜め込んだ言葉残らず全部聞いてやるつもりだ・・・




    赤木の墓前には見えない花が咲いている





    20100825
    *ちょっとパラレル?なのかなー。
    死後の二人という事で書いたのですが、描写がアバウトでスンマセン限り。orz
    前半赤木さんのお姿、後半しげるさんに変身してるのは死後ならではの事です。笑
    とりあえず死後行き違いに互いのお墓行ってて、会えなかったという事です。
    しげるさんはどう考えても一定の地に居ないだろうし、幸雄も覚えてくれる人のいないお墓に居ても意味無いとか思っちゃってという。
    ちょっとしたバカップルですね。/(^o^)\
    死後赤平の糖度は異常。


    タイトルの『純透(じゅんとう)』は造語になります。
    『純粋に透明』というまんまの意味。^^
    錦シギノ Link Message Mute
    2019/11/03 1:49:36

    その花が向日葵になるまで

    サイトで意図せず連作になったもの。時系列順にしてみました。
    幸雄生前~死後までのパラレル入り話。
    アカ平と『純透~』のみ神平も入ってます。
    表紙はこちら(https://www.pixiv.net/member.php?id=454210)からお借り致しました。有難うございます。
    ##fkmt  #福本作品女性向け  #アカ平

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