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    レンギマログはつこい(小話)ホンノ些細な、(レン←ギマ)私に酔って(レン←ギマ)幻獣は夢に溺れる △アントライアングル1~8(レンギマ+カトレア)食するということ X実物残像(レン⇔ギマ)はつこい(小話)
    君は格闘馬鹿
    猪突猛進、真っ直ぐにしか物事を考えられない
    そういう奴で居て欲しかった。
    大体、格闘やっている人間ってそういう物だと私は思っていたのに


    君は肝心な時にそうでなくなってしまうから、本当に困るよ。





    射抜く目線が嫌いだよ
    選ぶ言葉に震えるよ
    私はこんなにも臆病なんかじゃないんだ





    私のココロを還してくれ







    (知らず、奪ったカードをどうか私の手元に)

    ホンノ些細な、(レン←ギマ)
    常にきっかけとは、ホンノ些細な事























    挑戦者が訪れない時は四天王同士で戦い、
    互いにその力を高め合う場合がある
    先週はシキミ君の挑戦を。
    3日前にはカトレア嬢が「退屈だから」と言う理由でバトルをした
    タイプでは圧倒的に彼女たちより、私の方が優位ではあったものの
    四天王であるだけあってタイプという枠だけで勝てるような、生易しい戦いにはならなかった
    楽しみながらもそこに全力を注ぐ自分がいた












    そして、












    「勝負だ。ギーマ」











    今日は『彼』という訳だ。











    自分の部屋で寛いでいた私はソファーでシキミ君から借りた小説を読んで居たんだが、
    前方に仁王立ちしている彼・・レンブの影が小説を読むのを強制的に遮断する
    見上げればいつもと変わらず、愛想の無い生真面目な表情をしていて。















    「私を相手にするよりも、カトレア嬢を相手にしてる方が鍛錬とやらになるって言ってなかったか??」




    「言っていたがお前と対戦しないとは一言も言ってないが?」




    「シキミ君と対戦したらどうだい?」




    「アイツは今原稿とやらに夢中だ」












    それで私というわけ、か。
    とりあえず私は小説を両手でパタンと閉じ、テーブルへとそれを乗せた
    そして再び、私を見下ろす彼の様子を見れば
    一向に目線は私から離れず張り付かれている
    レンブと見詰め合うという奇妙な図になっている事で、思わず溜息が毀れた




    君はまるで動物か子供のような男だな・・・(一点から目を離さないなんて)















    「私のタイプでは君の鍛錬には程遠いんじゃないかな・・・?」




    「己の可能性を否定するな。お前は四天王だ・・勝負はタイプだけが全てではないと悟(わか)っているはずだ」




    「―――・・・それは、」




    「それとも、お前は負け戦は最初から投げ出すような男だったのか??」




    「そんなわけないだろ」











    思わず感情的に、だが静かに
    声は怒気を孕んで部屋に張り詰めた
    レンブを見上げるこの目が、釣りあがって厳しさを増したのが自分でもよく分かった
    眉間にもプライドが寄り集まっている
    そんな私の様子が変わっても、レンブの表情が変わることは無く・・
    彼の何気ない言葉だったのか
    それとも完全なる狙いを定めた煽り言葉だったのかは、全く理解出来ない




    しばらく、どちらとも目を離さない状況が続いたが
    先に目を閉じたのは彼の方だった
    愛想の無い表情が、目を閉じて、笑って。















    「・・・だろうな。お前は"勝負師"だからな」
















    あ。
    なんだ・・こんな表情も出来るのか



    なんて、



    レンブが私に見せた初めてのその表情に
    率直にそんな言葉が浮かんだ
    きっとこれが、格闘家じゃない彼の素顔なのだろうと・・・そう思えた
















    「逃げも隠れもしないんだろう?」















    ギシ。




    ソファーの縁に、彼の片手が乗る




    さっきよりも












    彼の顔、が
















    「!!!!」




    「?おい、どうかs「何でもない!!するんだろ!?勝負するんだろ!!!?」




    「あ、ああ・・・??」












    君にはどうして私がいきなり慌てたのかきっと、分からないだろう・・・








    ホンノ些細なコト。







    初めて見た表情、
    今までで一番近い距離。



    だけどそれよりも・・・








    君が私を"勝負師"として見てくれていたコトを、ほんの少しだけ嬉しいと感じてしまったのに気付いたんだよ











    本当にホンノ、些細な事だけど。
    私には驚くべきことだ(君に対して、嬉しい。なんて)












    『奇妙なこともあったもんだ』















    後にコレが、私をトンでもない目に遭わせる等
    この時は全く思っていないわけであって。







    その後の彼に「お前はいつから私が好きだったんだ?」と聞かれて、思い当たる節を探ってた
    そんな時に思い出したのがこの話だ(教えてやらないが、な)











    些細な事だけど、恐らくここがハジマリ。





    私に酔って(レン←ギマ)
    うまく君も自分も、
    騙せてしまえれば楽なのに

















    逃げるのも引き下がるのも嫌だけど、
    逃げられなくなるのはもっと嫌だった
    卑怯な位で丁度いい
    元々正々堂々なんて柄ではないんだから(四天王としては正々堂々とだが)
    一番手っ取り早いのは酒だ。
    最高の言い訳になるし、後でどんな言い訳でも立つ

    なに・・ちょっと機嫌のいいフリをして。
    訝しげなお前を上手く丸め込んで。
    「上等の酒なんだが・・一人で飲む気分では無いんだ」とか、
    「残念だが女性陣はもう眠りについてしまって」とか。
    ついには「どうせ君の事だから久しいこと娯楽なんてしてないだろう?」って言ってしまえば
    レンブが私に返す言葉なんて、舌打ちか若しくは言葉を詰まらせた類しかないって知ってる






    知ってるから、やってる。










    「たまたまライモンのカフェでハチクとヤーコンの親分に会って、持ってけ。って、しつこく言われてね」


    「・・また無断で此処(リーグ)から出かけて行ったのか?」


    「レンブ。そう恐い顔するなよ」




    結局レンブは私と酒を飲むことを流れるままに了承し、今に至る
    彼の四天王として与えられた場は、
    飲み交わすのに空気がそぐわないと判断した私は、彼の私室で飲む事を提案した
    行く機会は殆ど無いがそれでもほんの数回・・彼の部屋を目にした事があった
    鍛錬とは一切切り離した空間で、恐ろしい程生活感にかけているのが印象的だった
    それは今も変わらない
    この余分を削ぎ落としきった部屋を見れば、以外にもこの男は几帳面なんだと思える


    真正面でグラス片手に私を訝しげに見る様子から察するに、
    やはり無断で出かけた事がお気に召さなかったようだ






    「お前は四天王としての自覚が足り無いとしか思えないな・・」


    「してるさ。でも、息抜きも必要だろう?」


    「これで何度目だ。大体な・・・」





    まずいな。
    彼の説教を聞くためにこんな機会を作ったワケじゃないのに。
    レンブにとって、私の行動や発言は他の人間と話す時の様子から比較すれば
    明らかに気に食わないと言うコトを自分でも良く理解していた




    もっとも、それを逆手に取って
    君の意識を私に向けさせていたなんて君は知りもしないんだろうけど・・・




    どんな感情にしても君が私で一杯いっぱいになっている様が愉快で、
    でも寂しく感じる。なんて、とても馬鹿げている話だが
    私はレンブの扱いを少しずつ把握し始めていた
    そして彼が一度こういった小言を始めると、長くなるという事も・・





    さぁ・・どう切り抜けようか








    「――・・レンブ、」


    「なんだ。話はまだ終ってない」


    「その・・本当に悪かったと、思っている。これでも反省している」





    自分にしてはこれ以上に無く、反省の色合いを強めて
    僅かに目線が高い彼の目を見て謝罪の言葉を言ってみる(勿論本心から悪いとは思っていない)


    しばらく彼は何も言わずに黙って、
    ただ私と目を合わせていたんだが・・ふいに溜息をついて、先に彼から目を背けた






    「――・・お前がそんなに落ち込むとは思ってなかった」






    すまん。と、付け加えられた言葉
    どうやらレンブは自分が言い過ぎてしまったと責を感じているらしい


    どこまでも生真面目で、騙しやすい男だな。と
    自分の悪い部分が嫌に嗤う
    知られてしまったら軽蔑する上に近づけさせてもらえなくなるだろうな。と、
    不安で堪らない癖に抱き合わせるようなスリルに酔っている自分が居た






    今ならば、私が望むように動いてもいい時だと判断を下す






    彼が目を反らした隙に、真正面の席から
    空いている彼の真横の空間を埋めて近づいた






    「――クク・・君から謝罪だなんてなんだかヘンな感じがするな」


    「ああ、そうだな。お前に謝ったのはコレが初めてだ」


    「なんだか気分が浮き立って仕方ないよ」





    近づいたらあとは、
    『酔ったように』振舞うだけ。

    目の色に媚をつけて、レンブの首に手を回して・・・



    彼は抵抗すると睨んでいたのに、それはただの杞憂だった
    特に嫌がるでもなく微動だにせず、私が離れるのを彼は大人しく見計らっていた



    軋むソファーの音で、互いの唇は離れていった






    「――・・・怒らないの?」


    「酔っ払いに説教しても忘れているに決まってる。明日、ちゃんと意識のあるお前に言ってやる」


    「恐いなぁ。明日君に会いたくないよ」


    「もうさっさと寝ていろ。酔っ払い」







    やっぱり酒は便利だなぁ。なんて、ぼんやりと思う
    君を簡単に騙せてしまう
    酔っ払い相手にもそんな仏頂面なトコロを見ると、まだ彼が酔っていない事が良く分かった
    でもひょっとしたら彼も酔っているのかもしれない・・
    大体君が私に謝るなんて酔っ払っているとしか思えないから。(顔に出ないタイプなんだろうか・・)


    酔っていないはずの私にとても早い睡魔が襲ってくるのを実感して、
    自分が思っていたよりも多く酒を飲んでいたコトを把握した





    なんだ・・・口実じゃなく本当に私は酔っていたのか


















    『思ったより唇が柔らかったな・・』


    隣で寄りかかるように寝入ってしまったギーマを見てレンブはふとそんな感想を思ってしまった
    酒を飲んだとはいえ、ギーマがこんなにも早く酔ってしまうのは予想外だった


    その感想を浮かべてしまったコトに、彼が苦悩する事になるのは3秒後。





    幻獣は夢に溺れる △
    誰だっていい
    この身体に触れて、キモチヨクしてくれるのなら
    男だって女だって同じ事





    頭の中すら悦楽でドロドロにして欲しい








    遊ぶ時は基本的にそんな基準だった
    自分の身体と性別の概念をくだらない物としか認識していなくて、
    俗世から切り離してくれるほど頭を沸騰させて、互いの身体を貪る事しか考えられなくなるような
    そういう情事が好きでたまらなかった
    しかし四天王になってからはそれが出来なくなった
    何も自分の身体に関して無関心な私にも、プライドが全く無い訳では無いんだ
    守るべき立場、世間体。
    ソレぐらいの常識はある
    たまに昔の事を知る人間が時折、酷くげ卑下た嗤いを浮かべて近づく時もあったが
    その時は言うのだ
    甘ったるく、甘美に。





    『舌噛んで死んでしまえ』と。





    私の可愛い愛猫が、次の瞬間には手酷く痛めつけてしまうが
    全てはその後『なかった』と口約されて永遠に消滅するからいいんだ。
    気にすることは無い
    四天王・ギーマとしてあるべき姿の時があるように、
    誰も知らない私自身が居る時もあるのだ


    例えその姿がえげつなく、冷酷な姿であっても。











    「・・・参ったな」





    日も落ち、日付が変わるか変わるまいかという時刻――・・。
    ベッドの上に一人横になって身体を丸くし、誰も居ないのに隠れるように呟く
    明らかに自分の色欲が沸々と湧いているのは明らかだった
    ここ最近、誰にも触れてないというのを痛感すると
    どうにも人肌恋しくなるのは当然かもしれない

    女の子に触れたいと思う
    あの柔らかな肌にキスをして、身体の甘さを味わいたいとも思う


    でも、



    『それじゃあ満足できない・・』



    経験上、女の子の得る快楽と同等のものを知っている
    あの快楽を今は欲していた
    自分に抱かれる側の彼女たちが欲することで頭がいっぱいになるあの感覚が。
    私は誰かを欲したい。
    そう、強く思ってしまっている
    こんなに強く願うことはいつ以来だろうか・・そんな事が頭を過ぎる


    服が肌に擦れる事にすら、感覚は研ぎ澄まされて感じ取ってしまう
    誰かに触れたいという欲求は溢れていた・・
    頬に熱が篭るのが分かる



    『とりあえず街に下りよう・・』



    思えば身体をゆっくりと起こし、街へと出る事を思い描く
    同志である女性陣とは気まずくなるのだけは避けたかった
    だから彼女たちにこんな欲求を押し付けようとは思ったことが無い
    それにここに今居るのは彼女たち以外には―――・・・



    『・・・ああ、』



    同志ならもう一人居る
    カタブツで、
    こんな私を見たらきっと蔑んだ言葉をぶつける様な男が。




    『彼は・・快楽に溺れたりするのだろうか――・・・』




    どんな顔で欲情を消しに行動するのだろうか?
    どんな言葉を相手に吐き出すのか・・・
    どんな風に相手を―――・・



    私にはそんなレンブの姿を想像することが出来なかった
    余裕など残り少ないというのに、そんな事ばかりを考えてしまった



    ***

    深夜に自室の戸を叩く音が聞こえた







    来客者は珍しい人間だった
    具合でも良くないのか・・俯いて表情は確認できない
    しかし間違いなくその来客者は四天王の同志のギーマであった


    私とあいつは話すことが四天王の中では最も少ない
    互いの存在と必要最低限の会話で成り立っているような、そんな同志だった
    個々にある深い部分まで知りえるほどの親密な関係をそれぞれが望んでなかったのも事実だ
    だから関わることも少なかった
    それに、私はギーマに関しては不穏な噂を耳にしたことがある・・


    『奴は街で誰彼構わず引っ掛けて一夜を遊んでいる』


    話は定かなものでは無かったし、私自身はその話を鵜呑みにしているわけでもない
    だがギーマの行動を見ていれば疑う余地が十分すぎる程あるのも分かっていた
    それでも余計な詮索をしなかったのは、私には関係の無い話だと思っていたからだ
    プライベートにまで首を突っ込むのは無粋なことだと思うし、
    もしもその件が本当だったとして・・我々に害になるようであればそこで初めて迷惑だと言えよう

    何より、師匠がギーマの『自由』を許していた
    だから私は何も触れなかった



    今日までは。







    「どうした?こんな時間に何かあったのか・・??」

    「話したい、ことがあるんだ・・」



    声の調子は震えているようだった
    ギーマに一体何があったというのだろうか・・?
    兎に角部屋へ向かいいれて、その話を聞こうと案内する
    ギーマが私を横切る瞬間
    僅かな香りも一緒に通過していくのが分かった
    あからさまな香水ではない、恐らく最近凝っていると耳にしたアロマキャンドルというものだと思う(シキミから貰ったと言っていた気がする)

    部屋に招き入れるとギーマはベッドの縁に座り、
    まるで己の身体が崩れるのを防ぐように抱えていた
    私はそんなギーマの前に立って腕を組み、様子を窺う



    「で、一体なんだ?」

    「君は・・あんまりに街に出ないけど、どう解消しているんだ?」

    「?何の話だ」

    「欲求不満についてだよ。レンブ、」



    頭を殴られたような衝撃を受けた
    疑いの種がよもや今芽吹こうというハメになるなど思いもしなかった
    灰色の線を白か黒か、恐らくはっきりさせる事は今以外に無いのだろうが
    正直、灰色のまま・・分からなくても良かった
    その方がお互いの為になったはずだ
    目の前のギーマは未だに俯いたまま、顔を上げない・・

    自然と小さな溜息が口を吐いて出てゆく
    同時に、頭を押さえた



    「・・はぁ。それをお前が知った所でどうするんだ」

    「――・・ちょっとした、興味だから。深く考えないでくれよ」



    そう呟くと、ギーマは私の太もも辺りのズボンの端を弱く掴み
    伏せられていた顔を上げた
    瞬間、


    もう一度頭を殴られた感覚に陥ったが・・前者の衝撃よりも明らかにコチラの方が上だ


    適当にあしらった返事を吐き出すつもりが、捉えた表情に出掛かった声が消えてしまう
    見上げてくる目が少しばかり潤んでいるように見えた
    でも明らかに目で何か訴えているのは確実だった
    それも切実に。

    だけど、



    『どこか弱弱しいな・・・』



    青い目は一層涙を潜ませているようにすら思えて。
    更にその瞳の奥を覗いてしまう
    目を離すことが出来ない





    「レンブ、」




    呼ばれた名前に意識を戻し、質問された事を思い出す
    思わず顔を反らした
    これほど近くでギーマの顔を凝視したことなど今まであっただろうか・・?
    男に使うような言葉ではないが、〝綺麗〟という単語が浮かんだのは事実だった
    不覚というか、トンでもないなと頭でその考えを振り切る

    咳払いを一つして、この場を誤魔化した




    「――あー・・ふざけるのも大概にしとけ。大体、」

    「ふざけてないさ。真剣、なんだよ・・君みたいな忍耐が私には無いから」





    今もこうして凄く辛いんだ。と、
    聞こえた言葉の意味をよく考えた



    ・・・・『今』って、言わなかったか??


    ***

    ああ、やっぱり街に行くべきだった






    寧ろ今までだって只でさえ重苦しかった空気をお互いに持っていたのに、
    更にそこに毒ガスを撒き散らしているような行為を、今、まさにしているんじゃないか?
    潤み始めた視界の向こうで戸惑っているレンブの表情を見つけて思う
    第一彼も四天王だ
    他の二人に対して気まずいと思うなら彼に同じものを向けても気まずい他無いと言うのに、私は何をしているのだろう
    彼が動揺している姿なんて見た事が無と言うことは、やっぱりこの状況はよっぽどの事なんだろうな・・
    それはそうか。
    目の前で欲求不満で、発情しているような男が居れば引くのが普通か・・・

    彼には申し訳ないと思うしかない


    レンブのズボンの端を持つ手に少しばかり力が入ってしまう




    「・・ギーマ、」

    「・・・っ」

    「つまり、それは」



    こんなにも彼でも戸惑うことがあるのか。と、
    自然と笑みが口元に浮かぶ
    彼はこんなにも表情があったのかと安心した


    同時に、他の表情を知りたいと幻覚的な気持ちすら出てきてしまうくらいで。





    「軽蔑するかい?こんなにも快楽を求める私を」




    苦し紛れに笑って、
    自分の胸に手を当てて彼を見つめる
    熱を孕んだ瞳は欲求を全て彼だけに注いでいた
    もう余裕など毛ほども無く、盛りのついた獣(けもの)と同類だ


    『彼はどんな風に相手を抱くのだろうか――・・』


    そう思ったのが間違いだった
    想像出来ないと、自分に言い聞かせただけで
    本当はあの筋力で抱きしめられたら辛いんだろうな、とか
    バトルしている時のように鋭い目で相手を見つめるんだろうか、とか
    考えてしまった
    だから今、ここにいるという事実


    性欲すら己の強靭な精神で捻じ伏せそうな男が
    本当に必死になって相手を求めることなんてあるのだろうか・・
    そう考えると背中がゾクリと色を持って粟立つ


    身勝手な欲情は好奇と共に確実に彼に向けられているのだと自覚する





    「――・・」

    「悪かったよ・・君に、こんな話をするべきじゃなかったと・・思ってる」





    このまま街に下りる。と、
    口は自分の期待(ココロ)を裏切って平静に戻ろうとする
    誰でもいいと思っている癖に。
    愉悦で脳みそを溶かして、狂いたいだけの癖に。
    でも、間違いなく今は目の前のレンブが欲しいと倒錯していた
    他に何も要らないと錯覚している
    トンダウソツキ。


    嘘を付けばまだ回避できるような地点だと、正常に理解できる部分が思っている
    いずれこの正しき理性すら色欲で霞んでしまうなら今使う事が
    彼との関係をこれ以上重苦しくしない方法だろう



    そうしてベッドからふらつく足に力を入れて、ココから離れようとした
    腰を浮かしたはずなのに、


    それ以上肩から上がる事が出来なかった





    「?あ、れ・・・?」

    「ギーマ、」




    肩を見れば彼の屈強な腕が両肩を押さえつけていて、




    「解釈が間違っていたとしても・・謝らないぞ。先にお前が話したことだ」




    謝らないという割には、少し迫力の欠ける生真面目な顔
    眉間の皺の困惑具合から・・今も悩んで口にしている事が分かる
    馬鹿な男だ。と、思う
    それでも、嬉しさも同時に巻き起こる
    今まで君がこんなにも私の言葉や行動で悩んだことなんて無いはずだから。
    嬉しいと一緒に楽しいという言葉もついてくる



    ああ、まるで恋をしているようだ(こんな下品な恋なんてあるのだろうか)




    「―――・・違ってないから、さ。レンブ、」




    そのままスルリと両腕は彼の首へと回される為に向かう
    震える吐息がレンブに伝わってしまうのすらもう気にはならなかった




    彼が例え後悔する羽目になったとしても、私はこの状況から逃げる選択なんて選びたくなかった



    アントライアングル1~8(レンギマ+カトレア)
    『彼は私に興味なんて無いらしい』

    つい先日、こんな言葉がギーマの口から出ましたの






    それはとても平凡な雑談の中にポン。と、投げ込まれ
    冷たくも脆い不穏を含んでいたのをアタクシは直ぐに感じ取りました
    彼はその後笑って誤魔化していましたが、『実はとても気にしているんだ』とアタクシには見えたのです

    元々、レンブとギーマはソレほど仲が良いとは思ってはいませんでした・・

    同じ四天王で、同性同士の彼らはなんというか・・険悪とまでは行きませんが、
    互いに相反する部分を多く含んでいるのは目に見えていて。
    レンブは言葉は少なく、どちらかと言えば喋るのが苦手で・・でもその代わりに包み隠すことが一遍も無いような人
    対してギーマは喋るのが得意で、本音を隠すのがとても上手であり・・嘘すら本当だと笑って言ってしまうような人
    二人は同じ括りに居ても、ここまで違う
    人はそれぞれ違うとは言えど、こうも真逆というもの珍しくなくて?



    『私は・・彼を少しでも理解したいと思ったんだが・・・どうも、彼は私に興味なんて無いらしい』


    『どうしてそう言いきれますの?』




    彼自慢の黒い革のソファに座りながら、縁に腰を置いて天を仰ぐその様子を
    アタクシはしっかりと捉えて見つめた




    『態度を見れば分かるさ。話せばすぐ説教しかけてくるしね・・』


    『――・・そう』



    興味が無いなら説教なんてしないでしょう?と、
    言いたかったのだけど・・今のギーマにそう言ってもきっと伝わらないとアタクシは判断し、その言葉を飲み込む


    ねぇ、ギーマ
    説教をするのは心配してるからだ。って、アタクシは教えられてきたわ
    興味が無いのなら口数少ない彼が、貴方に説教なんてするはずないでしょう?


    ギーマはとってもレンブの事が気になるのね


    ***

    「レンブ」


    「ねぇ、レンブ」


    「レンブ。ちょっとよろしいかしら?」







    ここ数日、頻繁にカトレアに声を掛けられる

    頼られることを悪いとは思わないが、どうしてこうも頻繁に呼つけられるようになったのか
    その理由が私には皆目見当がつかない
    勿論気まぐれに付き合わされるのはどうかと思い、
    本人に尋ねてみたところ『気のせいよ』と、無表情の一言で済まされてしまった
    ・・何かあしらわれているような気がしなくも無い(一体どうしたというんだ・・?)


    元々、女性の気持ちを察するのは私には向いていないことだから尚更やも知れん
    こういったことはギーマの方が得意だ


    奴に言わせれば「君はデリカシーが無い」とかで。
    ギーマは勝負師と語るだけあって、人の気持ちを汲み取ることに長けていると私は思う
    例外を言うならば、私とは波長という物が合わないせいか・・会話で口論になりかけることが多い

    ギーマの私生活はギーマ自身のものであって、そこに私がとやかく言う隙など無いとは知っている
    それでも、四天王の同志として言わなければいけぬ時もあるだろう・・

    つい先日、会話をよくはぐらかそうとする癖を指摘した時はどうも癇に障ったのか・・
    顔が若干赤くなるほど怒っていたな
    『うるさい!』と、言って向けられた背を直ぐに引き止めて謝るべきだったなと今は思う
    あれからギーマが私と接触してくる事が無い現状が、それを教えている




    「れ・・・レン、ブ。レンブ?聞いてますの??」



    聞こえた声に現実に引き戻される
    目の前にはカトレアが居て、私を見上げていた




    「!・・すまない」


    「ですから、棚にある荷物がアタクシではどうしても取れないのでお願いしたいのですが・・」


    「分かった」




    そうして私がカトレアの頼みを了承した直後だった





    「レンブは此処にいるかい?」





    久々に聞く声に振り返れば、部屋の入り口にはギーマが居た


    ***



    カトレアが何を考えているのか、私には全く分からない











    あれからというのも、レンブが私と鉢合わせる場面は殆ど無くなって・・彼と口論をしたのはあれっきりとなった
    その代わりに・・カトレアがレンブと一緒に居るのをよく見かけるようになった
    カトレアから話を聞こうとすると不在だったり、既に就寝していたり昼寝に入ったりと間が最悪で。
    確かに彼女に愚痴を零したのは私で、その事で何か彼女に心配させてしまったのかも知れない
    何を彼女が考え、レンブを頻繁に呼ぶようになったのか・・今日こそはそれを聞いて、
    『あの時の話は真に受けないでくれ』と言わなければと思っていた


    やっと彼女の姿を見つけた時には、既にレンブと話をしているのが遠目から確認できた


    直ぐに声を掛けるべきだったのに、やたら胸の中がもやもやとした気分に陥った
    今思えば彼女とレンブが接触しているのが増えれば、レンブからの説教を受ける数も減っていいじゃないか
    放っておけばいいのに。と、そんな風に考える自分が足を引きとめる




    だけど、二人がカトレアの部屋に入っていくのが分かると足は迷わず二人の元へ向かってしまう







    「どうかしたのか?」





    久々に会った君は特にどうというワケでもなく、私を捉える
    カトレアも私が現れた事に驚いては居ないようだった
    ・・さて、なんて言えばいいだろう?





    「――・・アデクが君を呼んでいたよ?何か話しがあるとか??」


    「師匠が??」


    「ああ。珍しいね・・君がカトレアと一緒に居るなんて」





    不自然な会話ではないはずだ。と、自分に確認を取る
    彼と対峙していて、どうしてこうも不安に苛まれる必要がある?
    自分自身の感情が分からないなんて、そんな事今までは無かった

    でも今、この時の自分の気持ちが良く分からないから
    君と話しているのがこんなにも不安なんだと・・それだけははっきりしている





    「棚にある荷物を取ってくれと言ってきたんだ」


    「そう。なら、私が取ろう・・君はアデクのところに早く行った方がいい。カトレアも構わないだろう?」




    これで彼女にやっとどういうつもりか聞けると
    そう安心したのも束の間、




    「嫌」

    「?え、」

    「いやよ」




    彼女は表情を崩さずにこの提案を拒否し、レンブとの距離を詰めるとその小さな両腕で
    彼の片手を目に見えるほどしっかりと抱き寄せる





    「アタクシ、レンブに取ってもらいたいの。ギーマ」





    まるで見透かすような瞳と無表情が恐い位で、
    なのに彼女から目を離す事が出来なかった

    ***
    一体どういう事なのか、誰か説明してくれ













    師匠が私に話があるというギーマと、荷物を取って欲しいというカトレア
    ギーマの言うとおり別に私でなくとも、それはギーマにも出来ることだ
    言っている内容は間違いではないだろう


    問題はカトレアだ
    どうしてギーマではダメだというんだ??


    カトレアが最後に言葉を発してから奇妙な沈黙が訪れている
    何だと言うんだ。と、言葉を発しようとした矢先に



    ギーマが突然踵を返して立ち去って行く





    「!?おい――・・」


    「レンブ、」



    自然と身体がその後姿を追うが、
    呼ばれた名前に目線は自然とカトレアへと降りる
    すると、私の腕を握り締めていたカトレアがするりとその手を離した
    彼女は少しばかり困った顔をしながら口元に笑みを浮かべていた・・




    「ごめんなさい、レンブ。アタクシ、ちょっと意地悪しすぎてしまったようです・・」


    「?何の話だ??」


    「いえ、お分かりにならないんでしたらいいの。そのまま行って下さい。荷物の事は気にしないで下さいまし」




    カトレアはそれ以上何も言わなかった
    私は事情は分からないがそれよりも何故勝手にギーマが姿を消したのか

    追わなければダメだ。と、考えるよりも早く体が動いた事を信じた

    後で彼女には話を聞こう
    今は様子が心なしかおかしく見えたギーマを追って、話を聞こう。と・・
    丁度いい、謝ろうと思っていた手間もなくなるだろう


    そんな事を思って部屋を後にした










    「アタクシは意地悪するのには慣れてないの。加減が難しいものなのね・・」


    部屋の奥からランクルスが姿を見せると、カトレアはそう呟いてランクルスのお腹に額を摺り寄せた


    ***


    「・・・・・はぁ」









    何だこの溜息は
    そしてどうしても分かること
    確実に私はさっきのカトレアの行動に傷ついている


    それも、



    『カトレアに対してじゃなく、彼にだ』



    女の扱いに不慣れな彼
    ベタベタされるのは大嫌いな癖に、カトレアに頼まれればなんだってする『あいつ』
    止めはカトレアのあの言葉だ
    「嫌」の上に「レンブに取って貰いたいの」というその言葉
    どうする事も出来ない状況から私は逃げ出したんだ・・
    相手は自分より年下の少女だ
    年上である以上、見っとも無い言葉を言いたくはなかった


    見っとも無い言葉
    嫉妬心むき出しの、汚い言葉だ。




    『嘘を付かずに彼女に話があると、レンブに下がってもらえば良かったんだろうか・・・?』




    あの彼女の目は人の心を知っている目だと思った
    以前、シキミから聞いた事がある
    エスパー系のポケモンに囲まれていると時折彼らと似た能力を得る人間が居るらしい
    恐らくカトレアもその類に違いない




    「はーぁ・・・」


    「きゅぅーん・・・・」




    気付くと寝そべっていたベッドの傍にはレパルダスが私を気に掛ける様に見つめていた
    その様子に少しだけ心が楽になる
    私は横を向いてベッドに顔を乗せているレパルダスの頭を撫でてやった




    「彼は何考えてんだろうね・・嬉しかったりするのかな?」


    「きゅうーん??」


    「私だったら悪い気しないものなァ・・・」



    レパルダスの頭から今度は顎を撫でて、一連の流れを終える
    もう一度仰向けに寝そべって目を片腕で塞ぎこんだ
    溜息を自然と出てくる
    気配でレパルダスが傍から離れていくのを感じ取ったが、代わりに
    別な気配が近づいてくるのが分かる




    『今度はどの子だ・・・?』





    少しだけ腕をずらして、確認してみる
    室内の明かりが眩しくて目を細めてしまう


    次にその明かりが隠されたかと思うと、彼(レンブ)が其処には居た

    ***

    酷く驚いているギーマの目が印象的だった











    「誰が悪い気はしないという話だ・・・?」


    「・・・・」



    表情を覗き込むようにしているとギーマの目は再び、腕の下へと隠されて
    口元でしかその様子を確認できない
    今のギーマの口元と言えば、何とも言えずに言葉を噛み砕いているような印象を受けた

    先ほど話していた内容はたまたま聞こえてきただけで、盗み聞こうと思っていたわけじゃない
    あの後、ギーマの姿が近くに見えないことから自室に行ったのだろうと判断した私は
    その場所を目指して歩いた


    そうして着いた場所で聞こえた声




    『あの言葉はどういう意味だ・・?』




    恐らく『彼』というのは私だという自信はあった
    が・・嬉しいとはどういう事なのか?
    さっぱり思いつく事が出来ない・・(やはり思慮という点が私には足りないらしい)
    私は、ベッドの縁へと腰を掛け
    ギーマが顔を見せるのを待つことにした


    横目で様子を確認すれば、ギーマは向きを変えてコチラに背を向けていた





    「――・・いいのかい?」




    ふと、出てきた声に
    横目から振り返る形でギーマの背を視界に納める
    ギーマは振り返るつもりなど無いらしい





    「・・何がだ?」


    「私は、アデクが君に話がある。って行ったはずだけど??」


    「!あ・・・」


    「忘れてたのか??」


    「・・お前を追う事しか考えてなかった」





    自分にがっかりする
    不覚だ。と、少し俯いて後で師匠に遅れた事を詫びねばと考える
    正直に忘れた理由を言うと、ギーマは身体を起こし
    だけど私に背を向ける姿は変わらず。
    先ほどの私と同じように、横目でコチラの様子を見ていた





    「気にしなくていいよ」


    「?どういう意味だ??」


    「アデクの事は嘘だから」


    「・・・は?」


    「話があるって言うのは嘘。最初からそんなのなかったんだ」





    本当に、どういう事だ??

    疑問ばかりが今日はやたら出てきては増える一方だ
    私が戸惑っている間にギーマは完全にコチラを向いて、猫のような体勢で私を見やる

    その青い目に自分がよく映っているのが確認できる
    刹那、皮肉げな笑みをギーマが浮かべた





    「私を気に食わない奴って思っているのに、君は酷い奴だね」


    「・・・・ギ、」


    「こっちばかり振り回されて、」


    「・・おい、」


    「カトレアとあのまま一緒に居れば良かったのに、」


    「話を聞け。ギーマ」




    肩を付かんで引き上げると顔を一瞬にして背けられる
    またあの喧嘩別れした状況と同じ朱が顔から耳まで染めているのが、この位置でも分かった
    話が見えないが、確かなことはある







    「私はお前を気に食わない奴だなど、思ってない」






    それだけは真実で事実だ
    言い切ると、ギーマの肩は小さくピクリと震えた


    ***


    嫌だなァ
    そんなに強く掴まないでくれよ
    折れるかもしれないじゃないか・・










    「説教ばかり言うじゃないか・・」


    「私が言わなければ、誰もお前に注意なんてしないだろう・・」



    気にならないなら、何も言わないだろう。と、
    言われる言葉の雰囲気が優しいもので尚更顔を合わせられない
    教えたくない胸中の一部を覗かせる言葉が漏れ出してしまって。
    悔しいけど、あと一押ししてしまったら泣くかも知れない(だから顔は合わせない)
    ベッドが軋む音が耳に異様に大きく聞こえて、この状況で耳が音を拾うことに敏感になっているのを知る



    「それと・・この前から言おうと思って居たんだが、悪かった」


    「・・?」


    「前に口論した時言い過ぎてしまったと思った。すまん」





    この前・・・・?
    ああ・・最後に口喧嘩した時か
    確か私の会話をはぐらかす点を言ってきて・・・
    そのまま私は「うるさい」って言って、会話を断ち切ったんだ

    気にしていたのか・・・
    いつも平然としている癖に。
    こうして忘れないで、今日になるまで




    「――・・レンブ、」




    反らしていた顔をゆっくりと戻し、視線を上げる
    真っ直ぐとコチラを見ている目にかち合った
    やっと顔を合わせた私を見たことによって、気難しい顔が更に気難しそうに、
    でもこちらの様子をとても気にしているようで。


    悪い気はしない





    「なんだ・・?」


    「いつだって私に一番興味無い様にしてるのに、今日は優し過ぎて怖いよ」


    「・・興味が無いんじゃなくて、私は元来こういう態度の人間なんだ。察してくれ」




    「今知ったよ」




    捕まれていた肩が開放されて、レンブが眉間に手をやった時
    迷わずその首にするりと自分の手を回して額に一つキスを送ってやった

    瞬間、レンブの顔が呆気に取られているのが楽しくて
    自然と笑ってしまう自分が居る







    「君は本当に分かりにくくて、嫌な男だよ・・・」






    それでも、嬉しいと感じる私は
    きっと今感じている気持ちを顔に隠せては居ないだろう


    (ああ、独り善がりの苦しさでは無かったんだ)


    ***

    おまけ



    『初めて見たが・・・』


    花が咲くようだ。とは、まさにこの事だと
    レンブは今目の前で笑うギーマの表情を見て思う
    普段は企み笑いか、嘲笑いが大半のギーマがこんな表情でも笑うのかと
    少しばかり感動していた(その上何故か恥ずかしいとも思う)



    そんなギーマの表情に
    一体今までの行動やら発言はどういう意味だったんだ。と、問うことも忘れてしまったのは触れないでおきましょう。



    食するということ X
    獣は単純である








    まるで生娘の如く私を扱う彼をどうにかぶち壊し、少しばかりサディストな面を引き出せないだろうかと
    いつしか考え始めていた
    丁寧に扱われるのは悪くない
    格闘馬鹿な男だから力加減も知らずにきっと乱暴に扱われると思い込んでいたから。
    レンブがいかに思慮し、行動しているという事を思い知ってしまったのも同時だ
    調子に乗るな。と、凶暴なのは目だけでベッドに押し付けられ固定された手の重さは優しかった
    無理なことを言わないで欲しいな
    上せて自惚れるのは当然じゃないか


    と、言ってもだ
    彼に「私に酷い事してみろ」と言ってもそれは滑稽と言うか、私のプライドがどうにも許さないわけだ。
    言わずとも思いのままに行動して貰いたいと思うのはレンブに限ったことじゃない
    勝負に対しても同じ思いはある
    優位に居たいと思うのは誰しもが思うことだが、私はその欲求に色をつけて常に思っている



    欲求に逆らうことはなく、流れに沿って狡賢く在るだけ。







    「あ、は・・っ」



    丁寧すぎる扱いは簡単に私を融解させて、ギリギリまで追い詰めていく
    しつこいのではなくゆったりと焦らすように動くのだ
    彼の日々の修行で皮の厚くなったザラついた手のひらが、身体の一定部分を通過するまでに
    どれほど背筋から快楽で震えなければならないのか
    その上目で犯してくるのは感心できない
    人の表情を穴でもあけてしまう勢いで強く見つめてくるところに、いつだったか「スケベ」と言ってやった(無自覚でやってるんだから尚性質が悪い)


    だから彼はいつの間にかこうして向き合う座位を選択してくる
    私の腰のラインを大きな掌がやっとひと撫でし終える頃には、視界は涙で曇っている
    耳の上部が発熱して熱く感じる
    息がし辛い



    「ふっ!ぅ、ア・・も、」


    「・・なんだ?」


    「は、あ・・・あ、レンブっ」



    グッと腰を押さえつけられたかと思えば、彼が深く私を穿つ
    体内に自分以外の熱を受け入れているのをまざまざと感じて、堪らず震え上がる
    規格外の彼の物を受け入れるのに、馬鹿になる位解された箇所は悦んで飲み込んでしまう
    逃げようと腰を浮かせども、押さえつけられていることからそれは叶わず
    自分から進んで動く形となり、彼の腹筋に自らを擦り付けるような形になった




    「ひ!ァ、あ・・ン、はっっ」


    「っく、」


    「ア、やだっ。レンブっっ」




    嘘。
    嫌じゃないよ
    もっと焦らされてもいい
    お前が優しすぎるから私は、状況を辛いように錯覚させて嘘を言う
    もう少し酷い事をするお前に会うにはどうしたらいいのかと考えて


    その答えを私は出した





    「やだっ!ふ、ァ・・」


    「う、」



    まだ許せる範囲だろうね・・



    「あ、前もっ・・ナカも当た、って・・ダメなんだってっっ」


    「っおい、」




    今日はやたら喋るからそろそろだろうな・・







    「ア!やっっ、ヨすぎて・・頭っ、飛んじゃうからぁっっ」


    「も、少し黙ってろ・・・っ」


    「ンん・・っっ」




    わざとらしいとは思わなかったのだろうか?なんて、思いながら
    大人しくレンブが後頭部押さえつけてしてくるキスに応じる
    ココまでは予想の範疇だ
    息を奪うことだけを目的とした色気の無いキス
    でも彼らしくてそれはそれで好きだ
    やっと離れたかと思う頃には、やはり頭は冷静でも身体は追いつけないわけで。
    酸素を求める事に必死になる


    と、息することだけに意識を持っていった間にだ





    ―ガリっっ。―






    「!?あ・・・っっ!」


    「饒舌なのは普段だけで十分だ」






    痛みを感じたかと思い見下ろせば、彼が私の手首に噛み付いていて
    加減はしたんだろうが残念な程に私の皮膚は脆かった
    それは彼も思っただろう
    研ぎ澄まされた目線の痛さがどうしようも無い程嬉しくて。



    『そうだ。もっと、』



    見せろよ。と、
    彼の凶暴さに触れたい自分が弱さを目に含ませて彼を誘い出す
    痛さと熱っぽさを含むその目線が、弱さを喰らいに来てくれればそれでいい





    「っ、う、ぁ・・レンブッ」


    「今日は喋りすぎだ・・」




    そう言って彼は首元へ顔を近づけて
    行為は再び再開される


    ***

    ギーマは噛まれるのが好きらしい










    「は、ぁ・・っ」



    目の前で、熱に濡れた息をギーマが吐き出す

    普段はこれでもかと言葉を並べてくるのに、只この時間(じょうじ)だけは決まって大人しかった
    正直、口でギーマには勝てるとはとても思えない自分が居たのは事実で。
    普段からも多少妙な色気・・というべきなのか、そういった雰囲気は出ていたが
    それと『今のギーマ』は全く比較なんて出来ないものだ
    喋る言葉を無くして、ただ快楽の中にいるギーマは同性だろうがなんだろうが覆してしまうほど
    淫靡という言葉がしっくりと来た



    ―ガリっ―



    「!っア・・!!」




    ビクリ、と
    線の細い身体が一段と跳ね上がる
    原因は私がギーマの苦手な鎖骨下の皮膚に歯を立てたことだろう
    更に腰を押さえている手とは別に空いていた片手で、胸の先端を押し潰す様にしながら弾けば
    また逃げ出そうと腰をゆるゆると浮かせ始める
    その間にずるずるとギーマの体内で自分が扱かれていくのに思わず眉が寄る




    「レンブっ、あ・・」


    「悪い」


    「?な、に・・!!?あ゛っ、ひ!!!」




    ズンと腰をまた押さえつければ一気にギーマの身体が落ちて戻る
    そうして落とされた後に胸の先端を前の歯でそれなりに強く噛めば、驚く位身体は跳ね上がった
    私とギーマの間に挟まれたギーマ自身の先端からは、先ほどよりも白色を強めた粘液が纏われその量を増した
    お互いに吐く息の音だけが部屋を埋め、唇が触れるか触れないかの微妙な距離は
    より一層空気を染めていった




    「動く、からな」


    「ンあ、ふ・・っ!う、ァ・・・あっ!!」




    動く間に私の頭を押さえつけようと動くギーマの腕が宙を舞う
    快感を見出して赤く染まった頬、涙を溜めてた瞳はこれ以上無く私を狂わせる
    今まで保っていた糸がブツリと切れたように、ギーマの扱いが変わってしまうのが自分でも分かった
    ギーマの膝裏を付かんで後ろに倒してベッドに倒して、そのまま何度も深くギーマの苦手な箇所を攻め立てる
    声が大きくなるのが分かっていたので口で塞いで、その音を最小限に止める




    「んん!!んーーーっっ、んぅ!ン・・・っっ」


    「っく、」


    「ンんぅ・・・っっ!!!」




    結局そのまま、終えるまでギーマの喘ぎは私の口内へとかき消された・・











    「君、噛むのが好きなんだね」


    部屋に雰囲気の名残すら無くなった後、
    ベッドの上で隣に寝転がるギーマの口から出た言葉に鳩が豆鉄砲食らったような顔をしてしまった
    私は上半身だけ起こして布団をかけている形だった為、自然とギーマの姿を横目で確認した



    「お前がやたら喋るから強硬手段しただけだ」


    「お陰でいーっぱあい噛み跡ついちゃったなァ」



    いつも通り人をからかう笑みを口元に浮かべ、目を閉じて愉しそうに言う姿は
    どうにも腑に落ちなかった
    さっきまでの大人しさは本当にどこに消えたんだ
    憎らしさついでに、ふっと浮かんだ言葉が口から吐いて出た




    「・・お前が、」


    「ん??」


    「反応が良かったから・・・催促してるように見えたが」


    「都合の良い目だな・・でも、私は今機嫌がいいから許してやるさ」




    感謝しろ。と、いう顔はそれは上機嫌というにはぴったりのもので。



    実物残像(レン⇔ギマ)
    『        。』


    ああ、またか。
    何度そう思った朝だったか・・・







    最近寝つきが悪い
    正確に言うと、寝ると夢を見てしまい
    その夢を見るのが嫌で眠りたくないというのが本当の話だ
    夢を見るのは眠りが浅いからよ。と、カトレアがそんな話をシキミとしていたのを聞いたな・・
    何気ないその言葉に自分がどれだけ深く溜息をついたか知らない
    言ってる傍から溜息が出て頭を抱える
    本当にダメだ。


    夢だと言い聞かせたのも何度目か。
    岩に押しつぶされるだとか、師匠から無茶な頼みをされるだとか
    そんな夢だったらまだいい。
    何より、連日その夢を見ることの不可思議さもある
    これといって思い当たる節が無い・・が、
    立て続けに見たことを意識していないと言ったらそれは嘘になるだろう
    精神統一の試練だと思って、乗り切るほかは無いな





    脳裏に、瞼の裏に


    ふと



    『  って、   。』



    言うに愉快げな三日月のような口元と、
    角度から自然とストールに隠れていた白い首元が映って。

    それらの残像が過ぎる
    頭が痛い。






    「・・・そんな事を言うような奴じゃないだろう」


    「なんの話しだい?」




    低く呟いた言葉は予想外に拾われた
    目を驚いて開くと、ギーマが私の顔を覗きこんでいた
    それだけじゃない

    距離が近すぎて思わず後ずさりしてしまった

    私の慌てた様はどうやらギーマの機嫌を良くしてしまったらしく、
    いつも以上に腹立たしい雰囲気と笑みを私に差し出してクスクスと笑っていた
    自分の情けない醜態をどうこう思うよりも、本能的にこの空間の居心地の悪さに立ち去ってしまいたくなっていた




    「そんなに驚くことか?君にしては随分、情けない姿だな」

    「なんだっていいだろ」

    「素っ気無い男だなァ。折角、君の体調の心配をしに来てやったのに・・」




    わざとらしく拗ねるような素振りをして。
    誰にも言っても居なかったのにギーマには私の調子がよくないのが丸分かりだったということか
    よりにもよってか。
    頭痛が更に悪化したような気がした
    まるで頭の中に植物の根が張っていくような感覚だ


    そもそもお前のせいだ。と、言ってしまいたい(責任を擦り付けている自覚はある)


    そんな事を思い浮かべていると、
    いつの間にか自然と頭を押さえていた手に



    白い手がするりと伸びた






    「なんだ?頭痛かい??」


    (『  って、言って欲しいよ。』)







    これは夢じゃなくて現実であって。
    あれは私の頭の中での出来事であって、ギーマ本人が望んでいるものではない
    それでも重なる残像(ばめん)
    自分と相対する肌の色が眩しく映る


    私は触れているギーマの手を下ろすように、掴んだ




    「・・平気だ」

    「ふーん・・・触られるのが嫌いかい?」

    「ああ、今はやめろ」

    「じゃあ触りたい」

    「それ以上余計な事するとお前が泣く羽目になるぞ」




    不穏な言葉を吐き出せば、ギーマの目が驚きに染まる
    驚きは一瞬で、あとは訝しさと納得がいかないというような色で
    表情が不機嫌に歪む

    ずきずきずきずきずきずき。

    頭の中で根もどんどん進行しているようで状況は最悪としか言えん




    「どういう意味だいソレ」

    「兎に角・・やめろっていう事だ」

    「訂正して欲しいね。私は君に泣かされるようなヤワなタイプでは無いよ」

    「分かった。だからもういいだろ」

    「だったら私の目を見て言え。レンブ」




    本当に、最悪だ。
    渋々目を開けて、ゆっくりと視線をギーマへと向ける
    当然相手は真正面に居るのは分かりきってた
    服から首へ、顎へと目線が上がる途中でやはりあの残像が過ぎる
    自分の精神を鍛えなおそうと心に誓ったのはまさにこの時だった


    目を合わせると、ギーマが何とも言えない表情で私を見ていた



    「・・なんだ?」

    「それは私が聞きたいよ。君、照れてるんだか恥ずかしいんだかはっきりしてくれ」

    「(お前も人の事は言えないだろうが)色々と事情があるんだ」

    「なんだよそれ」


    しばらくその問いに沈黙して、回答を回避していたのは言うまでも無く。
    ギーマの方が先に折れて「もういい。どうして私まで恥ずかしくならなきゃいけないんだ!」と、言って
    その場を去ってくれたのが唯一の救いだった(恥ずかしかったのか)
    心なしかギーマの顔は怒りだったのか言葉通りの恥ずかしさからなのか、朱を頬に含んでいて。



    『好きって、言って欲しいよ。』



    夢の中でお前がそんな言葉を、愉しげに言っていた。なんて言ったら、
    きっと散々な言われようになるのは目に見えているから黙らせてくれ
    あと出来ればもう夢には出てこないでくれ
    私は目の前のお前だけで手は塞がってるし、大変なんだ(今以上に精神鍛錬を積む程にな)










    「(夜中に悪戯してるのがバレたかな・・・)」


    そもそもの夢の原因が、ギーマ本人がその台詞を言い
    寝ている自分にすり込みしているとはレンブが思いもしないことだった










    錦シギノ Link Message Mute
    2019/11/04 11:35:00

    レンギマログ

    サイトに載せてたレンギマログ。
    BW発売当時に書いてるのでアニメの設定などは含まれて無いです。
    少ないですけど性描写系のも混ざってるので記号表記見た上で観覧お願いします。
    表紙はこちら(https://www.pixiv.net/member_illust.php?id=15066631)からお借り致しました。有難うございます。
    記号表記の意味はこちら↓
    R15=△ R18=X 暴力系=@


    #レンギマ

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