いくらフィクションでも、非現実的にも程が有る「あの〜、先生、流石に、この展開は無いですよ」
WEB会議での打ち合わせの最中に、編集者にそう言われた。
「ええっと……そうですかね?」
「いや、そりゃギャグっぽい作品でならOKかも……いや……ギャグでも駄目か……」
「でも……この展開にしないとオチを変える事になるんで」
「他の手を考えてもらえますか……。大体、読者が呆れますよ。『贈収賄容疑をかけられてる議員が法務大臣になって検察への指揮権を発動して自分に対する捜査を中止させる』なんて。現実に起きる訳ないでしょ」
「ま……まぁ、そうですよね……」
ふと、PC上のもう1つのウィンドウに目をやった。
WEBニュースが、新しく出来たデジタル庁の初代長官が決った事を報じていた。
俺の実家が有る県から選出された議員なので、この政治家の事は多少は知っている。
そして、この議員についてのある事を、何故か、俺が見た限りでは、新聞・TV・雑誌・WEBニュースのどれでも報じていない。
この議員のプライベートに関する事ではあるし……最早、政治家とマスコミがズブズブの関係でも誰も何も思わなくだっただけかも知れないが……。
だとしても、俺の故郷のK県で成立した、あの馬鹿げた条例……いわゆる「ゲーム規制条例」を推していた地元の新聞・TVのオーナー一族のヤツが、何で、初代デジタル庁長官に就任したんだ?