悪夢の謹賀新年　国民の皆さん。新年おめでとうございます。
　今年の新年は、ゾンビ禍の感染拡大により、残念ながら一皆さんに直接お話をすることができなくなりました。そこで、今回は、この国で最も安全なフニャフニャラ軍事基地の臨時大統領府よりビデオでの新年の御挨拶をしようと思います。
　振り返りますと、昨年夏に、ゾンビ禍が終息しない中の豪雨により、ルルイエ州で、多くの尊い命が失われたことは痛ましいことでした。ですが、残念ながら、私は国民全体の為の大統領ではなく、私を支持してくれる方々の為の大統領です。私には、２年前の下院選挙で野党を選んだルルイエ州の人々を積極的に助ける義務など無い事は明らかです。
　この数年、私たちは、ゾンビ禍という、今の時代を生きる私たちのほとんどが経験したことのない規模での未知の災禍による様々な困難と試練に直面してきました。世界各国で、そして我が国でも多くの方が亡くなり、大切な方を失われた御家族の皆さんのお悲しみもいかばかりかと思います。
　そのような中で、医師・看護師・レスキュー隊員・研究者を始めとした人命救助に携わる皆さんが、大勢の人々の命を救うために、日夜献身的に力を尽くしてこられていることに深い敬意と感謝の意を表します。感謝の意を込めて只今より祝砲を鳴らします。皆様、画面の前で、御起立と国歌斉唱と私に対する万歳三唱をお願いします。
　とは言いましても、社会不安に付け込んだ反政府デモ鎮圧に予算・人員を割かれている状態ですので、皆様の命を救う為に、これ以上のリソースを投入する事は不可能です。
　皆様、各自、自己責任で身を護って下さい。
　私たち人類は、これまで幾度も恐ろしい疫病や大きな自然災害に見舞われてきました。しかし、その度に、団結力と忍耐をもって、それらの試練を乗り越えてきたものと思います。今、この難局にあって、私を無能呼ばわりし、社会不安を撒き散らす輩は社会の敵であります。皆様が互いを思いやり励まし合い、手を取り合って、社会の敵どもを確実に始末していただける事を切に望みます。指名手配中の野党の元幹部達を生死を問わず捕えていただいた方には、抗ゾンビ化薬の配給量を恒久的に３倍にする事を御約束いたします。
　就任以来、私は皆さんと広く接することを願ってきました。しかし、この状況では、当面の間、そんな事さえ叶わぬ願いですが……いつの日か、直接、皆様の手を取って皆様を励ます日が来る事を諦めるつもりは有りません。
　つきましては、私の任期をゾンビ禍終息まで延長する事を決定……えっ……何……基地内でゾンビが発生した？
　いや……待て、この基地の職員には、抗ゾンビ化薬を一般国民の５倍配給してた筈……えっ？ 基地司令官が横流ししてた、ってどう云う事だよ？
　おい、待ってくれ、うわあああああっっっ‼