クーデター成功……でも発表はいつになるんだ? クーデターを起した国軍は、あっと言う間に政府機能を掌握し、そして、かねてよりの手筈通り、旧政府の支持者が連絡を取り合えないように、首都圏のインターネット回線を物理的に破壊した。
そして、政権掌握を国内外に発表しようとした時……。
「おい……何で、記者会見に誰も居ないんだ?」
「畏れながら総司令官閣下……マスコミ各社と連絡が取れませんっ‼」
「メールは?」
「使えませんっ‼」
「何でだ……って……あっ……」
「はい、インターネットを経由した連絡方法は一切使えなくなりましたっ‼」
「携帯電話は?」
「はい。携帯電話会社に確認した所、基地局から先は我々が破壊したインターネット回線で音声のやりとりをする方式との事でしたっ‼」
「えっと……つまり……」
「はい、インターネット回線を物理的に破壊した結果、携帯電話は使えなくなりましたっ‼」
「おい……じゃあ、固定電話は?」
「はい、国内の固定電話は全てIP電話になっておりますっ‼」
「えっと……IP電話って確か……」
「はい、固定電話も、インターネット回線を物理的に破壊した結果、使えなくなりましたっ‼」
「じゃあ……どうすんだよ……?」
「はい、現在、マスコミ各社に軍用無線機の配布を予定しておりますが……」
「どれ位かかるんだ?」
「不明でありますっ‼」
「何でだ?」
「対象となるマスコミ各社のホームページを見る事が出来ません。対象となるマスコミ各社の選定と、住所の確認だけでも、かなりの困難が予想されますっ‼」
……後に、この事件は「21世紀で最も杜撰なクーデター」として歴史に残る事となった。