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    桜の朽木に虫の這うこと第1話 ウツロとアクタ第2話 その男、似嵐鏡月第3話 ウツロ、その決意第4話 師の告白、そして――第5話 絶叫第6話 深淵をのぞく者たち第7話 来襲第8話 カラスの群れとの戦い第9話 邂逅第10話 魔王桜第1話 ウツロとアクタ「人間って、何だろう?」

     ウツロがそうつぶやいたとき、アクタは「またはじまったか」と内心ないしんそわそわした。
     弟分おとうとぶんの『悪癖あくへき』が発動はつどうしたからだ。
     おだやかな春の昼下ひるさがり、山の奥深おくふかくの、ちっぽけな『かくざと』の中で。

     杉林すぎばやしかこまれた小さなネギばたけ
     二人の少年がそこで、言葉をはっするのもわすれるくらい、せっせとネギをっこいている。
     ひとりは名をウツロ、もうひとりはアクタといった。
     年齢ねんれいはともに十六さいだが、彼らは自分のとしなどかぞえたこともないし、そもそも知らない。
     生年月日せいねんがっぴがわからないのだ。

     西日にしびがしだいに強くなってきて、二人が身にまと紺色こんいろ作務衣さむえは、すっかりあせだくになってきている。

    「何をもって、人間といえるんだろうか?」

     ウツロの悪癖あくへき――それは彼が『思索しさく』と自称じしょうするものだ。

     この少年は哲学書てつがくしょ愛読あいどくし、その思想しそうについて考えをめぐらせるのを趣味しゅみとしている。
     もっとも彼にいわせれば、それは趣味ではなく人間になるため・・・・・・・、らしいのだが。

    「何が人間を、人間たらしめるんだろうか?」

     ウツロとアクタは孤児こじだった。

     二人があかぼうのとき、それぞれべつな場所にてられていたのを、このかくざとあるじが発見し、ひろげ、ここまで育てた――と、彼らは聞かされている。

     親から捨てられたという過酷かこくな現実を二人は背負せおっている。
     特にウツロは、その現実にえきれず、「自分に責任があるのではないか?」と、みずからをめつづけている。

     おれは親に捨てられた。
     こんなことが人間にできるはずがない。
     そうだ、俺は人間じゃないんだ・・・・・・――
     みにくい、おぞましい……そう、『毒虫どくむし』のような存在なんだ――と。

     それゆえ、古今東西ここんとうざい哲学者てつがくしゃ思想家しそうか知恵ちえどころとし、つねに自分という存在についていつづけているのだ。
     それは考えているというよりも、すきあらばおそいかかってくる自己否定じこひてい衝動しょうどうと戦うためなのだった。

    「人間が自身を克服こくふくできる存在だと仮定かていするのなら」

    「ウツロ」

    「その行為こうい人間的にんげんてき生命活動せいめいかつどうといえるのであって」

    「ウツロっ」

    「それをたゆまずつづけることではじめて、しんの人間といえるんじゃないだろうか――」

    「ウツロっ!」

     てしない思索しさく連鎖れんさおちいっているウツロへ向け、アクタは手にした一本いっぽんのネギを、頑丈がんじょうかたの力とうでのスナップをきかせて、手裏剣しゅりけんのようにげつけた。
     大気たいきくほどの速さとするどさで飛んできたそれを、ウツロは片手かたてを少し動かして、たやすくつかった。
     たかがネギとはいえ、直撃ちょくげきしていれば頭蓋骨ずがいこつひび・・くらいは入っていただろう。
     だがウツロもアクタも、いたってすずしい顔をしている。

     杉の並木なみきは変わらず、そよかぜにさざめいている。
     こんな彼らのほほえましい『日常にちじょう』を、春の陽気ようきもにこにこと笑っているようだった。

    「アクタ、いまいいところなんだ。邪魔じゃまをしないでおくれよ」

     ほおっつらをかすかにふくらませたウツロに、アクタは生来せいらい仏頂面ぶっちょうづらを向けて応酬おうしゅうする。

    「『催眠術さいみんじゅつ』はそのへんにしておけ。こんなところで寝落ねおちしたら、ネギのやしになっちまうだろ」

    「うまい表現ひょうげんだね」

    「ほめてねえだろ?」

    「うん」

     アクタはその容貌ようぼうはんしてやわらかい意思表示いしひょうじをしてみせたが、ウツロにかるくあしらわれた。

     ウツロの思索癖しさくへきはいまにはじまったことではないとはいえ、アクタにとっては読経どきょうをひたすら聞かされているようなものである。
     悪気わるぎなど毛頭もうとうないことは重々承知じゅうじゅうしょうちだったが、アクタにとってはこれが大きな心配のたねなのだった。

    「お前がこの世でいちばん好きな単語を発表はっぴょうしてやろうか? 『人間』だ、そうだろ?」

     低く野太のぶとい、しんのとおったアクタの言葉に、ウツロはおどろいた様子だ。
     一八五センチという長身ちょうしんのアクタに対し、十センチほど背の低い彼は、かがんだ体勢たいせいからゆっくりと顔を上げ、目線めせんを合わせた。

    「アクタ……」

    「なんだ?」

    「……そこまで……俺のことを、わかってくれていたなんて……」

    「やめろ、勘違かんちがいするだろ」

    「……ちがうの?」

    ちがわねえけど、ちがう」

    「何それ? 矛盾むじゅんしてるよ……だれ思想しそうかな?」

    「お前は……」

     アクタの態度たいどにウツロは困惑気味こんわくぎみだ。

     ウツロの心境しんきょうをアクタはじゅうぶんすぎるほど把握はあくしている。
     だから余計よけいなことを考えすぎる危険性きけんせいをかねてから示唆しさしてきた。
     だがとうのウツロは、その配慮はいりょに気づきつつ、それでも思索しさくをやめられないのだ。
     それほどのトラウマを彼はかかえているのである。

     ウツロは視線しせんを落としてまた何か考えこんでいる。

    「……人間とは何だろう、アクタ……俺はずっと、それを考えているんだ……何をもって人間といえるのか……何が人間を人間たらしめるのか……」

    むずかしすぎるんだよ、お前の『人間論にんげんろん』は」

    「……そうかな……もし……俺がこのいかけに解答を見出みいだしたとき……俺は、人間になれるような気がするんだ……」


     こんな不条理ふじょうりがあるだろうか?
     彼は自分が人間ですらない・・・・・と思いこんでいるのだ。

     アクタも同じ境遇きょうぐうなのでかしてこそいないが、「俺の存在は間違まちがっている」「俺は間違まちがって生まれてきたんだ」とさえ考えてしまうのだ。

     理不尽りふじんにもほどがある。
     いったい彼に何のつみがあるのか?
     あるいは幸せに生きることだって、できたはずなのに。

     自己否定じこひていがウツロをころす。
     精神せいしん巣食すく悪魔あくまが彼を破滅はめつみちびこうとする。
     それがどれほどの苦痛くつうであろうか?

     ウツロの顔が苦悶くもんゆがんでくる。
     アクタは見ていられなかった。

     どうしてこんなにくるしまなければならないのか?
     お前は何もわるくなんかないのに……

     彼は「しかたねえな」と、ひとつの決意をかためた。

     ウツロは顔をせて落ちこんでいる。
     フッ――と気配けはいを感じて――

       むぎゅー

     顔を上げた彼のほほを、アクタは真横まよこった。
     ゴムのようにびたその顔面がんめんを、アクタの鉄面皮てつめんぴがのぞいている。

    にゃんだよ・・・・・、アクタ」

     アクタがひょいと手をはなすと、ウツロのほっぺたは復元力ふくげんりょくにしたがって、ポヨンともともどる。

    「俺で遊ばないでよ」

     いぶかるウツロにアクタは相変あいかわらずの能面顔のうめんがおだ。
     彼は一呼吸ひとこきゅうしてゆっくりと、きながら語り出す。

    「なあウツロ、俺らは生きてるだろ? だから人間なんだ。それでいいじゃねえか。あんまむずかしいこと考えんな」

     ひとつ間違まちがえればぎゃくにウツロをきずつけてしまうかもしれない。
     しかし危険きけん状況じょうきょうでもある。
     アクタは考えに考え、最大級さいだいきゅうけにおよんだ。

     ウツロはくちもとを一文字いちもんじむすんでむずかしい顔をしている。
     アクタはハラハラするあまりあせが出そうになった。

    「生きてるだけでいい、か。うーむ……」

    納得なっとくできねえか?」

    「……人間は、むずかしい……」

     ウツロはれいによって考えこんではいるものの、どこか頭の中が晴れていくのを感じた。
     それをくみ取ったアクタは、やっとむねろすことができた。

    「いらんことを考えすぎるのはお前のわるくせだぞ。俺みたく頭をパーにしろ」

    「それ、言っててつらくないか?」

    「どうせ俺は、パッパラパーすけくんだよ」

    「なんだ、それ」

     ウツロの顔がゆるんだのを確認して、アクタはようやく笑顔えがおを見せた。
     このはなんとかやりすごすことができたが、一事いちじ万事ばんじである。

     今後こんごも気がけない――だが、俺がやらずにだれがこいつをささえるのか?
     そう自分に言いきかせた。

     兄貴分あにきぶんらくじゃねぇぜ。

     アクタは体の力がけるのを、このにくめない弟分おとうとぶんさとられないよう、笑いつづけた――

    (『第2話 その男、似嵐鏡月にがらし きょうげつ』へ続く)
    第2話 その男、似嵐鏡月 東京都と神奈川県の辺境へんきょうに位置する山脈地帯さんみゃくちたい
     とびきり標高ひょうこうのある一角いっかくをすっぽりとけずって、このかくざとはつくられていた。

     ネギばたけはその中の小さな日本家屋にほんかおく併設へいせつされたもので、彼らの食料はほぼ、ここの農作物のうさくぶつでまかなわれている。

     家のほうは屋敷やしきというより、大きめのいおりといった感じだ。

     長方形の母屋おもや前座敷まえざしき奥座敷おくざしきに分かれていて、そこから直角ちょっかくに折れるわた廊下ろうかの向こうに『はなれ』、そしてさらに直角ちょっかく頑丈がんじょうへいが建てられている。
     上から見ると『コの字』になっているわけだ。

     その中には簡素かんそではあるが庭園ていえん――植えこみの松や花々はなばな石燈籠いしどうろう錦鯉にしきごいの泳ぐ池などが設置されている。

     ここ空からの目視もくしでは死角しかくになるよう設計せっけいされていて、地中ちちゅうにはソナーなどの音波おんぱ、GPSなどの電磁波でんじは誤認識ごにんしきさせるシステムが組みこまれていた。
     はたからはただの山にしか見えないのである。

     しだいにかたむいてくる太陽の角度から、二人はそろそろ夕刻ゆうこくであることを意識した。

    「ウツロ、日が暮れるぞ」

    「うん」

    「腹あ、減ったな」

    「うん、おれもだ。でも、もう少しで終わるよ」

     アクタは手を止めて、天をあおぎながらひたいをぬぐっているが、ウツロは会話をしながらも、せっせとネギを引っこ抜いている。

     里へと近づいてくる気配けはいを、彼らは少し前から感じ取っていた。
     そしてそれが、自分たちの育ての親・似嵐鏡月にがらし きょうげつであることも。

     似嵐鏡月にがらし きょうげつ傭兵ようへい上がりの殺し屋で、暗殺の請負うけおい生計せいけいを立てている。

     ウツロとアクタをこれまでやしなってきたのは、自分の暗殺稼業あんさつかぎょう後継者こうけいしゃえるためであり、実際に二人は、その方法を徹底的てっていてき指導しどうされてきた。

     さまざまな武器・暗器あんきの使用方法から古今東西ここんとうざい体術たいじゅつては諜報ちょうほう極意ごくいから実戦じっせんにおける戦略せんりゃくかたまで。
     人間を殺傷さっしょうするために必要な技術の多くを教育されたのである。

    「ウツロ、お師匠様ししょうさまが来る、急ぐぞ」

    「いま、『ひる背中せなか』のあたりだ。このあゆみなら、あと三十分はかかる」

    夕餉ゆうげ支度したくをしなきゃならんだろ?」

    「今日は『さしいれ』があるみたいだよ。ひとりぶんの携行食けいこうしょくにしては強すぎる」

    「お前、においまでわかるのか?」

    「こっちはいま、風下かざしもだからね」

    「いや、そういうことじゃなくてだな……」

     『ひる背中せなか』とは、かくざとからだいぶ山をくだった渓谷沿けいこくぞいの難所なんしょし、りあがったかた土壌どじょうがすっかり湿しめってこけむしていることから、彼らだけにつうじる暗号あんごうとしてもちいられている言葉である。

     そんな場所の状況をたちどころに言い当てるけもののような嗅覚きゅうかくに、アクタはおどろいて呆気あっけに取られている。
     その態度にウツロ当人とうにんは不思議そうな眼差まなざしを送った。

     自分の気づかないあいだに成長を続けているこのにくめない弟分おとうとぶんの存在に、アクタはポカンとひら気味ぎみだった口をすっとめ、ひかえめに破顔はがんした。

    「どうかした?」

    「なんでもねえ。ほれ、仕事仕事」

    「……変なの」

     ウツロとアクタがそれぞれ最後の一束ひとたばをギュッと結び、大きくびをして一息ひといきついたところへ、その男は現れた。

     杉の大木たいぼくが作る密な並木なみきの、人ひとりがやっとくぐれる程度の間隙かんげき
     木漏こもも弱まってきて、すっかりぼやけているその林の奥から、獣道けものみちを通り抜けて姿を見せる、ゆがんだ蜃気楼しんきろう
     それは黄昏たそがれやみ背負せおってなお暗い、黒炎こくえんのような。
     彼こそウツロとアクタの育ての親である殺し屋・似嵐鏡月にがらし きょうげつその人である。

     群青色ぐんじょういろのストールから、ほぼ白髪しらがだが、中年ちゅうねんとしては端正たんせいな顔がのぞいている。
     藍色あいいろ羽織はおり着流きながしの下には、筋肉細胞を爆縮ばくしゅくしたような、屈強極くっきょうきわまる体躯たいくかくしてある。
     ただでさえ豪奢ごうしゃに見えるが、これでも着痩きやせしているのだ。
     腰にはマルエージング鋼製の愛刀『黒彼岸くろひがん』を差している。
     るというよりは『くだく』ことに主眼しゅがんを置く大業物おおわざものだ。

     軍靴ぐんかの仕様に改造した黒色こくしょくのロングブーツで大地を重く踏みしめながら、彼は二人の前まであゆってきた。
     その右手には、風呂敷包ふろしきづつみをげている。
     ウツロの予見よけんどおり、その中には三人分の夕食がおさめられていた。

    「お帰りなさいませ、お師匠様ししょうさま

     ウツロとアクタはすぐさま片膝かたひざをついて、その男の前にかしずいた。

    「せいが出るじゃないか、二人とも」

     ウネの横いっぱいに結束されたネギの列を一瞥いちべつして、水晶すいしょう帯留おびどめをいじりながら、似嵐鏡月にがらし きょうげつは満足げな表情をかべた。
     同時に彼はその状況から、小脇こわきかかえた食事の存在をさとられていたことを察知さっちした。

    「ウツロ、わしのさしいれをてたな?」

    「ご無礼ぶれいをお許しください、お師匠様ししょうさま

     ウツロはハッとした。
     彼は心のどこかに、自分の成長をほめてもらいたいという願望があった。
     だからアクタにも、晩の支度したくはしないよううながしたのだ。
     アクタもそれに感づいていたから、あえて反対はしなかった。
     しかしウツロは、この親代わりの殺し屋を前にして、突如とつじょ自責じせきの念にられた。
     こざかしい承認欲求しょうにんよっきゅうをさらし、自分をはぐくんでくれたとうとい存在を、不快な気分にさせてしまったのではないかと。

     お師匠様ししょうさまがそんなことをするはずがないと、彼は重々じゅうじゅう理解している。
     しかしどこかで、自分を否定するのではないかという恐怖が芽生めばえ、それは決壊寸前のダムの水のように、緩徐かんじょとして、しかし十二分じゅうにぶんの重量感を持ってあふれ出てきた。
     無礼ぶれいを働いたと考えているのか、それとも自分の保身のことしか考えていないのか、それすらもわからなくなってきた。

     頭が混乱する。
     思考の堂々どうどうめぐり。
     ウツロはただひたすら平伏へいふくして、似嵐鏡月にがらし きょうげつもくして許しをうた。

     しかしそこは、いやしくも育ての親。
     似嵐鏡月にがらし きょうげつ本人は、ウツロの複雑な胸中きょうちゅうをすぐにさっし、くちもとをゆるめてみせた。

    「よいよい、わしはほめているのだ。お前のその鋭敏えいびん嗅覚きゅうかく――いや、嗅覚きゅうかくだけではない、五感のすべてが突出とっしゅつしてすぐれている。しかも日に日に、そのするどさを増しているな? それがどれほど、わしにとって有益ゆうえきであるか。ウツロ、お前の存在は本当に心強こころづよいぞ」

     ウツロはグッとこぶしにぎった。
     俺はなんて最低なんだ――心の底からそう思った。

     大恩だいおんあるお師匠様ししょうさまわずらわせた挙句あげく、あらぬ疑いまで持ってしまった。
     俺はつくづく最低だ。
     恥ずかしい、この世に存在しているという事実が。

     可能であるならば、いますぐ消えてしまいたい。
     俺はこの世に、存在してはならないんだ。

     彼はいよいよ思考の泥沼どろぬまへ――そのにぶく重い深みへと、はまりこんでいく。
     落ちる先は自己否定じこひていという名の深淵しんえん
     たどり着くことのない奈落ならくへと――

    「頭を上げてくれ、ウツロ。アクタもだ」

     ウツロは反射的に顔を上げた。
     似嵐鏡月にがらし きょうげつはひざまずいて、ウツロに目線めせんを合わせている。
     彼はいかにもやさしい顔で、ほほえんでいた。

    「あ……」

     ウツロのくちから嗚咽おえつにも似た声がれる。
     似嵐鏡月にがらし きょうげつはそっと、ウツロの頭に手を当てた。

    「ウツロ、お前は心根こころねのよい子だ。それゆえ、そのように自分をめてしまうのだね。じることなど何もないのだ。それがお前の個性なのだから」

     を見つめるその眼差まさざしがにごる。

    「う……お師匠様ししょうさま……」

     アクタも気丈きじょうよそおってはいるが、そのまなじりはにじんでいる。

    「ウツロ、アクタ。何があろうと、お前たちはわしにとってかけがえのない存在だ。たとえ天がけ、地がれることがあっても、お前たちを否定することなどあるはずがない。それだけはどうか、わかってほしいのだ」

     似嵐鏡月にがらし きょうげつは身をせて、ウツロとアクタを両腕りょううでかかえこんだ。
     二人はしばし、伝わってくるそのぬくもりを享受きょうじゅした。

    「よし、もう大丈夫だな。ウツロ、お前は強い子だ。アクタ、どうかこれからもウツロのよき支柱しちゅうとなってくれ。お前がいてこそなのだ、アクタ。車輪しゃりんと同じく、どちらが欠けても成り立たない。お前たちは二人でひとつだ」

    「……もったいない、お言葉です。お師匠様ししょうさま……」

     アクタはかくしているつもりだが、体が小刻こきざみにふるえている。
     兄貴分あにきぶんとして気を強く持とうとつねづねふるまってはいるが、彼もウツロと同じ境遇きょうぐうには違いない。
     思いのたけをぶつけたくなるときとてあるだろう。
     それをさっしてくれるの存在は、何ものにも代えがたい。

     ウツロもアクタも、心は決意に変わっていた。
     アクタはウツロを、ウツロはアクタを、絶対に守り抜く。
     そしてお師匠様ししょうさまに――この偉大なる救い主に、絶対の忠誠ちゅうせいちかうと。

    「うむ、よきかな。さあ、立ってくれ二人とも。今夜はうまい飯を手に入れてきたのだ。めないうちにいただこう」

    「はい、お師匠様ししょうさま

    「ウツロのやつ、さっきから腹ぁ減ったって、グーグーいわしてたんですよ、お師匠様ししょうさま

    「なっ、それはお前だろ、アクタ!」

    「お師匠様ししょうさま、早くご馳走ちそう持ってこないかなーって言ってたくせに」

    「アクタっ、虚偽きょぎ弁論べんろんをするな! お師匠様ししょうさまっ、反駁はんばくの機会を俺に!」

    「ははは、本当に仲がよいなあ、お前たちは」

    「よくないです!」

     ふくれつらしてのにぎやかなやり取りに、似嵐鏡月にがらし きょうげつ破顔はがんが止まらないのであった――

    (『第3話 ウツロ、その決意』へ続く)
    第3話 ウツロ、その決意「二人とも、汗をかいたろう。ネギを小屋へしまったら、かけひの水で体をやしてくるといい。わしは先に、中で夕餉ゆうげの準備をしておこう」

     筧とは山間部などで生活用水を得るため、水源から水を引きこむ人工的なしかけだ。
     かくざとでの暮らしに先立ち、もっと山奥の源流のあたりから、とびきり大きな竹を半分にさばいたものを何本も連結して、ここまで水を誘導している。
     水は似嵐鏡月にがらし きょうげつが里を作るとき、そのへんに転がっていた巨石を、頑丈がんじょうな金属の『のみ』でくだいて、受け皿としたものに流れてくる仕組みだ。

     飛び石をじゃりじゃりと鳴らしながら、彼は屋敷の中へと入っていった。
     二人はそれをちゃんと確認してから、屋敷の裏手にある小屋へ、せっせとネギを運び始めた。

     塩蔵しおぐら味噌蔵みそぐらの手前にある簡素なものだが、通気性は抜群ばつぐんだった。

     収穫済みのネギは湿気を嫌う。
     いたみやすくなるし、虫がつくからだ。

     小屋の奥から敷きつめるように、結束したネギを立てていく。
     うまく立つように、下の部分をトントンと床に叩くのがコツだ。
     束はなるべく密着させて。
     そうすれば物理的にたくさんの収納が可能となるし、ネギが倒れないのである。

     すべてのネギをしまって一呼吸ひとこきゅうし、二人は畑と小屋の間にある筧へと向かった。

    「ひゃーっ、さっぱりするぜ」

     アクタは作務衣さむえの上半分を脱いで、手桶ておけにたっぷりぶちこんだ水を頭からかぶりながら奇声をあげた。
     ウツロも筧の前にしゃがんで、両手で水をすくいながら顔を洗っている。

    「ここでの暮らしはやめられんわな。なあ、ウツロ――」

     筧にたたえられた水に映る自分の顔を見つめながら、ウツロはまた何か物思いにふけっている。
     まさかまたと、アクタは濡れた半身をぬぐいながら、ウツロの様子をいぶかった。

    「また何か考えてるだろ? お師匠様がさっき――」

    「アクタ」

     心配したアクタの声を、ウツロは決然とした勢いではねのけた。
     彼はやにわに立ち上がり、顔をしとどに濡らす水滴をも意にかいさず、りんとした眼差まなざしでアクタを見つめた。
     その表情には熱く燃える決意が宿されている。


    「アクタ、俺は――お師匠様のためなら、たとえ魔道にちたっていい」

    「ウツロ……」

    「お師匠様は俺のすべてだ。俺のことを――俺という存在を、問答無用で肯定こうていしてくれる。それが俺にはうれしい。世界から全否定された俺を、何の義務もないはずなのに認めてくれる。俺は――お師匠様のためなら、こんな命でよければ、投げ打ったっていい」

     さっきまで泣きべそをかいていた少年はこのように力強く、その意志を告白した。
     それをくみ取れないほど、アクタは間抜けではない。

    「バーカ」

    「アクタ?」

    「俺を忘れんなよ?」

     ウツロへの挑発はその覚悟を見極めてのこと。
     ならばと、アクタも語り出す。

    「お師匠様が言ってただろ? 俺たちは二人でひとつ。お前がそうするってんなら、俺はつきあうぜ? 魔道だろうが、地獄の果てだろうがな」

    「アクタ……」

     あのウツロが――自分から切り離すことなどできるはずがないこの弟分おとうとぶんが、これほどの精神的成長を見せてくれたのだ。
     アクタもすでに、迷いはなかった。

    「俺たちは境遇が一緒だ。俺たちがいまこうしているのは――ほかでもない、お師匠様あってのことだ。つまり、お前の考えてることはイコール、俺の考えてることってわけだ」

    「アクタ、すまない」

    「謝んな、お前の悪い癖だぞ。ウツロ、お前はひとりじゃねえ。お前は、俺が絶対に守る」

    「アク、う……」

    「バカな弟だぜ、お前は」

    「お前こそっ、頭の悪い兄さんだよ!」

    「悪かったな、パッパラパーすけくんで。ほーら、ウツロくん! パッパラパー助お兄ちゃんだよ!」

    「よせ、バカ! バカが移るだろ!」

    「よーし、ウツロくんにバカを移しちゃうぞー。それーっ!」

    「くるなバカっ! パッパラパーのお兄ちゃんめっ!」

     組み合って仲良くケンカをしながら、二人は和気あいあいと、家の中へ入っていった。

       *

     彼らが敷居しきいまたいで土間どまへ入ると、上がりの座敷では似嵐鏡月が、囲炉裏いろりの火を起こして待っていた。

    「楽しそうじゃないか」

     彼は見透かすように顔をほころばせている。
     ウツロとアクタは少し気恥きはずかしくなって、視線を落とし気味ぎみに中へ入った。

    「早くおいで」

    「はい、お師匠様」

     二人は汚れた長靴と足袋たびを脱ぎ、手拭てぬぐいで足をきれいにしてからそそくさと座敷へ上がり、囲炉裏をはさんで似嵐鏡月と差し向かいに座った。

     手前には二段の重箱。
     黒地くろじに金のった細工さいくほどこしてある。
     弁当とはセットとおぼしきはしは、光沢のある箸置きの上にちょこんと乗っかっている。
     師匠の心づくしを、二人はつくづくうれしく思った。

     似嵐鏡月は鉄器のやかんを五徳に乗せて湯をかしている。

    「熱い茶が飲みたくてな」

     ほどよく赤く光ってきている炭を見て、ウツロとアクタは不思議な感覚にとらわれた。

     茶を飲むぶんの湯を沸かすにしては、量が多いのではないか?

    「どうした? 二人とも」

    「え?」

    「いえ、何でもないです」

     ウツロもアクタも鍛錬たんれんによって感覚がするどくなっているから、単なる思い過ごしだろうと考えた。

    「さあ、早いところ、いただこうじゃないか」

     似嵐鏡月は二人を気づかって、自分から先に重箱に手をつけた。

    「いただきます」

     ふたを開けると、まだ温かい中身の熱気に乗って、いかにもうまそうな料理のにおいが鼻まで届いた。
     嗅覚きゅうかくだけでウツロとアクタは幸福になった。

    「すごい」

    「ひえー、うまそ」

    「アクタ、はしたないぞ。お師匠様の前で」

    「うるせえ、お前だって、ウツロ。いまにもよだれ垂らしそうな顔だろ」

    「なにっ」

    「これこれ二人とも、ケンカなら飯のあとにしなさい。ほら、遠慮しないでおあがり」

    「は、お師匠様」

    「よしよし、わしもいただくとするかな」

     ちらしは五目ごもく
     錦糸卵きんしたまご、レンコン、ニンジン、シイタケ、きぬさや、いりゴマ、カンピョウ、トビコにイクラ。
     五目といいつつ、五目以上入っているのがうれしいところ。
     おかずの箱には、季節の野菜に、肉に、魚に、煮しめに、漬物まで。

    「銀座にある老舗しにせのちらし寿司だ。特上だぞ」

     似嵐鏡月はれたばかりの湯気を出す番茶を、二人にふるまった。

    「汁がないのが惜しいところだな」

     三人は笑いあいながら、しばし食事と会話を楽しんだ。

    「銀座、ってどんなところなんでしょう?」

    「そうだな、人間がたくさんいるところだな。それにウツロの好きな本を売っている店もたくさんあるぞ」

    「うお、本の店ですか。行ってみたいです、銀座。でも、人間がたくさんは、なんだかこわいな」

    「ウツロ、なにビビってんだ? 楽しそうじゃねえか」

    「ビビッてなんかない。アクタこそ方向音痴だから、銀座で迷うんじゃないのか?」

    「うるへー、山でも迷ったことなんてねえのに、街なんて簡単だろ」

    「人間をあなどるな、アクタ。やつらはキツネよりも狡猾こうかつ知恵ちえで、クマよりも強い機械を作って、そうしてできた街は、夜になったってホタルよりも明るいんだぞ」

    「知ったふうなこと抜かすな、ウツロ。街なんて行ったこともねえだろ」

    「うー」

    「ははは、街か。いつかお前たちを、連れていってやりたいな」

    「お師匠様のお仕事を俺らが手伝えるようになれば、すぐに行けますよ」

    「うん、そうだね。早く師匠のお仕事の手伝いをしたいです」

     炭の赤黒あかぐろ亀裂きれつがパチンとねた。

     似嵐狂月はぴたりと箸を止め、硬直している。
     その眼差まなざしは遠く、何かを考えこんでいるようだ。

     ウツロとアクタはキョトンとして、彼を見つめた。

    「アクタ、ウツロ。聴いてほしいことがある」

     似嵐鏡月はにわかに口を開いて、何やら話を切り出す。

    「……いったい何でしょうか、お師匠様?」

     ウツロを気づかったアクタが率先そっせんしてたずねた。

     それを受けて似嵐鏡月は、酷く重そうな口調くちょうで語り出した――

    (『第4話 師の告白、そして――』へ続く)
    第4話 師の告白、そして――「実はな……わしは近々ちかぢか、いまの稼業かぎょうから身を引こうと思っている」

     何を言っているんだ?

     ウツロとアクタの口は、麻酔をかけられたように弛緩しかんした。
     世界が崩壊してなお、何が起こったのか理解できないでいるような間抜けづらだ。

    「……なん、と」

     アクタがやっとしぼり出したセリフがそれだった。
     似嵐鏡月にがらし きょうげつ間髪かんぱつ入れずに続けた。

    「わしはいままで、殺人の請負うけおい生業なりわいとしてきたわけだが……このへんでもう、引退しようと思うのだ」

     二人の世界が崩れ出す。
     口から魂が抜け出てもおかしくないような顔だ。

     誰でも知っているに誰にも答えられない命題。
     そんなものを提示されたような無情感が彼らを襲う。

    「なぜ、ですか……ご教示ください、お師匠様……」

     意識が遠のいていくような感覚の中、アクタは亡霊のような口調でたずねた。

    「もう疲れたのだ。身を立てるためとはいえ、人様の命をみだりに奪うことにな。わしがひとりあやめるだけで、その者に関わる者、関わった者の人生のすべてを破壊することになる。決して終わることのない憎しみの連鎖が生まれ、それはわしだけではなく、ひいてはアクタ、ウツロ、お前たちにまで及ぶことになってしまう。それが、わしにはそれが耐えきれんのだ」

     似嵐鏡月はを置きながら話を続ける。

    「アクタ、ウツロ。身寄りのないお前たちを引き取り、育ての親となったのは確かにこのわしだ。わしはお前たちに跡目あとめを継がすつもりで、持てる技や知識のすべてを叩きこんできた。しかし、お前たちがすくすくと成長するにつれ、ずっと思ってきたことがある。罪悪感というべきものか。なぜわしは、お前たちに普通の生活を与えてやれなかったのかと。わしは不器用な殺し屋だ。できることといえば、人を殺すためのすべを伝授することくらいだ。もしわしが平凡でも、普通の父であれば、あるいはお前たちを学校へ行かせ、充実した青春を送らせ、世にいう温かい家庭なるものを、ともに分かち合えたかもしれんのだ。それをわしは……わしはただ、お前たちの人生を奪ってしまったのではないかと……」

     似嵐鏡月はときおり声をつまらせながら、このように語った。

    「……お師匠様」

     アクタはどう返せばいいのか、わからずにいた。

    「だからわしは考えた。いまからでも遅くないと。廃業し、けじめをつけた上で、お前たちを自由の身にしてやりたい。こんな隠れ里から出して、もっと広い世界を見せてやりたい。当たり前の、普通の日常をお前たちに取り戻して――」

    「お師匠様あっ!」

     ウツロの勢いあまった大声に制され、似嵐鏡月とアクタはびっくりして口をつぐんだ。

    「俺たちにとって……親があるとすればお師匠様、あなたこそがそうなのです……」

     ひざの上でこぶしを握り、全身を震わせながら、ふりしぼった言葉がそれだった。

    「俺は……肉親によって捨てられました。この世に必要ない、いらない存在なのです」

    「ウツロ……」

     似嵐鏡月は悲痛な面持おももちになったが、ウツロの話を最後まで聞こうとした。

    「ですが、お師匠様。あなた様は……こんな俺を、不要の存在の俺を……拾い上げてくれた……手を差しのべてくださった、衣食住を与えてくださった、学問を教えてくださった、生きていくためのあらゆるすべを、伝授してくださった。そんなあなた様が……親でなくて、なんでしょう? 血のつながりなんか関係ない。お師匠様、あなた様こそ、いや、あなた様が俺の親なのです」

    「……ウツロ、お前を不幸したのは、このわしであるのに……」

    「不幸だなんてとんでもないことでございます! 俺は最高に幸福です! お師匠様が、そしてアクタが一緒にいてくれる。俺にはこの里の暮らしが幸せでならないのです。これ以上なにを望みましょう? ですからお師匠様、そのような弱気にならないでください!」

    「なんという、ウツロ……だがお前たちを、わしと同じ闇の中へは、魔道へなど落としたくはないのだ……」

    「魔道、喜んで落ちます。俺は世界が憎い。俺を捨てた世界が、俺を全否定したこの世界とやらが。お師匠様のためなら、こんな世界なんか粉々に破壊してやる。愛される者を愛する者の目の前で八つ裂きにしてやる。世界中の人間が俺を憎めばいい。それが俺の、世界への復讐なのです。その本懐のためなら――魔道、喜んで落ちます」

     彼の矜持きょうじは確かに兄貴分へと届いた。

    「お師匠様、俺もウツロとまったく同じ気持ちです」

    「アクタ……」

    「俺はウツロを本当の弟のように思って、いや、ウツロは俺の弟です。俺は兄として、ウツロを傷つける存在を絶対に許さない。ウツロにこんな仕打ちをした世界が、消えてなくなるまで戦います。世界の頂点でへらへら笑っているやつを、俺たちの存在に気づこうとさえしないような奴のつらをぐしゃぐしゃにぶん殴って、内臓を引きずり出し、四肢を切り落として、ウツロの足もとにいつくばらせてやる。そして、許しを請うその舌を、引きちぎってやるんだ」

    「……アクタ、なんでそこまで」

     アクタの同調に、口火くちびを切ったウツロですら驚いた。

    「何度も言わすな。俺たちは二人でひとつ。お前の敵は俺の敵だ。お師匠様、ひらにお願いいたします。稼業の引退など、どうかご撤回ください。ウツロも俺も、ご覧のとおり覚悟は決まっています」

     似嵐鏡月は両眼りょうがんを深く閉じて考えこんだが、次の瞬間カッと見開みひらき、話し出した。

    「いや、撤回はせん。これだけはゆずれんのだ。アクタ、ウツロ、どうかわかってくれ」

    「なぜでございますか、お師匠様!」

    「平に、平にその理由をお聞かせください!」

     ウツロとアクタはどうしても納得がいかない。
     稼業から身を引くという決意を、なぜ師はかたくなに固持するのか――
     それがいっこうにわからなかった。

    「ならば話そう……話さなければ、お前たちの気持ちを踏みにじることになる……」

     似嵐鏡月はさらに重く、その口を開いた――

    (『第5話 絶叫ぜっきょう』へ続く)
    第5話 絶叫「よいか、アクタ、ウツロ。わしはおびただしい数の人間をあやめてきた。わしによって殺められた者たちには、当たり前だが家族がいる。恋人が、友人が、どんなに小さくとも関わりを持つ者がいる。その者たちの悲痛な叫びを聞くことに、わしは耐えられなくなってきたのだ。愛する者を奪われた人間たちの、嗚咽おえつを聞くことに」

    「おそれながらお師匠様、それは先ほどもお聞きしました。しかしそれが何でしょう? 生きるために他を犠牲ぎせいにするのは、世のつねでございます」

     ウツロはこのように申し立てをした。
     アクタも言葉には出さずとも同意している。

    「もう十年ほど昔のことになるが――わしはある政治家の暗殺を依頼された。わしはすぐにその男の身辺しんぺんを調査した。名を万城目優作まきめ ゆうさく。当時、政権与党の中堅政治家だったが、幹事長に目をかけられ、強い発言力を持っていた。彼の妻は最初の子――日和ひよりという名の少女を生んだあと、不慮ふりょの事故で鬼籍きせきに入っていた。万城目は男手おとこでひとつで娘を育てる『戦うパパ』として、世間での評判も良好だった。しかしこの男、支持基盤である大手おおてゼネコンと結託けったくし、その企業の受注を有利にする見返りに、多額の賄賂わいろを受け取っていたのだ。依頼主は素性すじょうを明かさなかったが、おそらくそやつに遺恨いこんを持つ何者かだろう」

    「なんと、そのような悪行あくぎょうを……しかしお師匠様、そんな男など始末されて当然ではないでしょうか?」

    「最後まで聞いてくれ、ウツロ。わしは身辺調査の過程で、万城目優作が国際的なテロ組織から何度も脅迫きょうはくされていることを知り、これを利用することにした。万城目が主催するパーティーの会場を、そのテロ組織の犯行に見せかけて襲う計画を立てたのだ。ビルのほとんどを爆破するという大胆な作戦だったが、正体を知られないためにはいちばん合理的だった」

    「その話が、いったいどうつながるのでしょう?」

     話の筋が見えない。
     アクタはぶしつけを承知で、おそるおそる質問をした。

    「わしは万城目の娘――日和のことが気にかかっていた。ちょうどお前たちと同じ年ごろだったからだ。わしはなんとか、彼女だけでも逃がしたいと考えていた。父親を殺せば万城目日和は二親ふたおやを失ってしまうわけだが、それでも命だけは助けたいと思った。幸いにもイベントの当日、父方ちちかたの実家に預けられるという情報を得たわしは、作戦を決行した。しかし――」

     ウツロとアクタはごくりと生唾なまつばをのんだ。

    「万城目日和はその会場にいたのだ。父が忘れたスピーチの原稿を届けるという理由で。こっそり行ってパパを驚かそうという、子どもの発想で」

     まさかと、二人の顔に冷や汗が浮き出る。

    「わしはこの黒彼岸くろひがんで万城目優作の頭を砕いた。作戦の完遂かんすいを見届けて、その場をあとにしようとした矢先……あの声が、少女の絶叫ぜっきょうが……」

       人殺しいっ!
       お父さんをっ、返してえええっ!

    「わしは名状しがたい恐怖にられた。いままでわしのしてきたことは、すべて間違いだったのではないかと。そしてわしは、混乱したわしは……手ににぎっていた黒彼岸を、その少女に向かって、振り下ろした――」

     ウツロとアクタは絶句した。

    「そのとき以来、わしの頭の中には、あの少女のことがつきまとって、離れなくなってしまった。あの声が、わしに憎悪ぞうおしみなく向ける、あの顔が……」

     まるで覚醒かくせいしながら悪夢でも見ているかのような心境を、似嵐鏡月にがらし きょうげつはまざまざと吐露とろした。
     ウツロもアクタも身じろぎすらできずにいる。

    「あの少女がお前たちと重なる。お前たちが成長するごとに、わしの頭の中のあの少女も大きくなってくるのだ。そしていつか、わしにうらみを晴らしに来るのではないかという、幻影げんえいが……」

     このように彼は、精神の中に巣食う呪詛じゅそについて告白した。
     普段の威厳いげんある師からは想像もできない姿に、二人は息をのむのも精いっぱいだった。

    「だからもう、わしは耐えられなくなった……この稼業を続けることに……アクタよ、ウツロよ、どうかわかってくれんだろうか? このとおりだ――!」

     似嵐鏡月はやにわに深々ふかぶか頭を下げ、板のに両手をついた。

    「おやめください、お師匠様!」

    「頭をお上げください、お師匠様!」

     ウツロとアクタはあわてふためいて、師を土下座へ追いこんでしまったことを激しく後悔した。

    「アクタ、ウツロ……おろかなわしを許してくれ……」

       *

     その後、三人は会話もとぼしく食事を済ませた。

     ウツロとアクタは師のすすめで風呂に入ることになった。
     鋳物いもの風呂釜ふろがまは似嵐鏡月がかして、すっかり湯気ゆげの立ちこめる熱湯ねっとうになっていた。
     二人は順番に湯につかったが、先ほどのことが頭から離れない。

     まきは外で似嵐鏡月がくべている。
     不器用ながらも親を演じようとする態度に、彼らは人知れず落涙らくるいした。
     その涙は文字どおり、結露けつろの中へと消えていったのである。

     風呂から上がったあと、ウツロとアクタは薪をくべると申し出たが、似嵐鏡月に「残り湯で入るから、お前たちは休みなさい」と、逆に気づかわれた。
     彼らは奥座敷おくざしきの二十じょうある寝室に入り、たたみの上に布団を敷いて横になった。
     言葉は、ない。

     アクタは頭の下に両腕を組んで、天井をボーっと見つめている。
     いっぽうウツロは、書棚しょだなから一冊の本をおもむろに取り出した――

    (『第6話 深淵しんえんをのぞく者たち』へ続く)
    第6話 深淵をのぞく者たち 彼は迷ったとき、いつもこの一冊を選択する。
     ボロボロになったハードカバーの哲学書。
     トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』。

     表紙には王冠おうかんをかぶった金髪きんぱつの少女がえがかれている。
     右手には闘争の象徴しょうちょうであるけんを、左手には統治とうちの象徴である錫杖しゃくじょうをそれぞれたずさえている。

     人間は自然な状態では闘争――すなわち悪へと向かうが、法という概念がいねんを導入することにより、善へと向けることができる。
     そんなホッブズの思想を端的たんてきに表していた。

     少女が身にまとうドレスは、あえぎ苦しむ人間たちの集合体として表現されている。
     概念による統治にはおびただしい犠牲ぎせいともなうという、ホッブズが危惧きぐした状態の描写だった。

     どこかの出版社が、若者に哲学をしたしんでもらうというコンセプトで企画し、『リヴァイアサン』の初版に使われた挿絵さしえを、人気のイラストレーターにアレンジさせたものだ。
     原文の翻訳には新進気鋭の哲学者を採用したものの、予算の都合でわずかな部数しか発行されず、売れ行き自体もかんばしくはなかった。

     しかしウツロにとっては特別な存在だった。
     本といえばはじめにくる一冊なのである。

     当たり前であれば小学校高学年くらいの年ごろのとき、本が読みたいという彼にわれ、似嵐鏡月にがらし きょうげつが買い与えたものだからだ。
     お師匠様が本を買ってきてくれた。
     物静かなウツロががらにもなく興奮して喜んだ。

     彼は夢中になって読みふけった。
     言葉は字引じびきを借りて調べられたが、そもそもこれは哲学書である。
     思想を読み解くのはおさないウツロには難しかった。
     しかし読まずにはいられなかった。

     世界のすべてがこの本の中につまっている。
     近代から現代に至る社会システムの基礎は、このホッブズという男の頭の中で完成していた。
     死と双子の、孤独な思索家しさくかの脳内で――

     ウツロは前半の『人間論』を愛してやまない。
     ホッブズは人間を信じなかった。
     人間による統治では平和はおとずれない。
     だから概念を定義し、導入した。

     人間ならざる概念に統治させれば、世界は平和になると考えた。
     貨幣かへいを、法律を、社会を、国家を――あるいは世界そのものを。
     まるで仏を作ってたましいれるように。

     魂というより亡霊ぼうれい
     ホッブズは死してなお、亡霊となって世界を支配しているのではないか?
     世界――

     ページをめくるごとに世界がそそいでくる。
     同じ箇所かしょでも読むたびに違う景色けしきに見える。
     遊園地というのはこういう感覚なのだろうか?

     そう、ウツロは読書に『遊園地』を見出みいだしていた。
     かくざとから一歩も外へ出たことのない孤独な少年の心を、読書という『遊園地』がなぐさめてくれたのだ。

     外の世界とはどのようなものか?
     このあわれな創造主の手になる世界とは。
     もしかなうのなら、いつか――

     ところでこの本は、似嵐鏡月が古書店で買い求めたものだった。
     本文の前後には白紙のページがそれぞれあって、そこには鉛筆でなぐきがしてあった。

     前に三行、うしろにも三行の、都合つごう六行。
     しかしその六行が、たったの六行が、ウツロの心を鷲掴わしづかみにして放さなかった。

       人間とは何であるか?
       何をもって人間というのか?
       何が人間を人間たらしめるのか?

     これが前の三行。
     備忘びぼうの筆者は人間という存在について問いかけているようだ。
     これがすなわち、ウツロがつね日ごろから問いかけている命題である。

       俺は解答を得た
       あとは実行あるのみ
       俺は、人間になるのだ

     こちらが後ろの三行である。
     備忘者は何かを発見したようだ。
     ウツロにはこれが気になって仕方がなかった。

     この筆者はいったい何者だ?
     いったい何を悟ったというのだ?
     そして何を起こそうというのか?

     人間という存在についての問い。
     少なくともこの筆者は何かの解答を得たということである。

     何なのだ?
     いったい人間とは、何だというのだ?
     この筆者は何者なのか?

     存命なのか故人なのか。
     生きているなら、会いたい。
     いったい人間とは何であると結論づけたのか、問いただしたい。
     このおそるべき問いかけは、ウツロの現実とガッチリとみ合っていた。

     肉親から捨てられたという出自。
     その事実から発生する強烈なトラウマ。

     俺は親から捨てられた。
     こんなことが人間にできるはずがない。
     そうだ、俺は人間じゃないんだ。

     何かおぞましい、そう、毒虫どくむしのような存在なんだ。
     俺はこの世に必要ない。
     いらない存在なんだ。

     しかしみにくい毒虫だって、美しい蝶になりたい。
     俺は、人間になりたい。
     この問いかけに解答を見出したとき、あるいは俺は……人間になれるのではないか?

    「ウツロ」

     いつもの思索にふけっているウツロに、アクタは声をかけてみた。
     この弟分がだまっているときは、つい心配になる。

    「眠れないのか?」

    「アクタこそ」

     ウツロは本をひらきながらも、意識はアクタのほうへ向けた。

    「これから、どうなるんだろうな」

     アクタがウツロに弱気をさらすのは珍しい。
     それほどの衝撃を受けたということだ。

    「自由、か……俺はかせくさりのほうが楽だけどな」
    「なにそれ? 何かの比喩ひゆかな?」
    「お前の真似してみたんだよ」
    「……変なの」

     あえてとぼけたが、ウツロとてアクタの心中しんちゅうさっしてあまりある。
     つながれていようとも、俺はこの里の暮らしがいい。
     願わくば、ずっと――

    「自由、って何だろう……何をもって自由というのか――」

       ぺしん

    「いっ」

     アクタは体をひるがしてウツロの頭を打った。

    「なんだよ、アクタ」

    「いらんこと考えるなっつーの」

    「悪いかよ、俺は人間的生命活動の発露はつろとして――」

       ぺし、ぺしっ

    「いたっ、アクタ!」

    「バーカ」

    「うー」

     今回ばかりはアクタの意趣返いしゅがえしもぎこちない。
     彼らのやり取りには、どこか小芝居こしばいのようなむなしさがあった。

    「ほら、寝るぞ」

    「……うん」

     おたがいに背を向けて横になる。
     涙を隠すため。

     これからどうなるのだろう?
     まるで見当もつかない。
     でも確かのは、お師匠様が、アクタが一緒にいてくれる。
     それなら何もこわくない。

     こわくなんてあるもんか。
     そうだ、大丈夫だ。
     大丈夫、大丈夫……

     ウツロは言い聞かせるように、「大丈夫」と念じた。
     羊を数えるようにしているうちに、彼は眠りへと落ちていった。

       *

    「ウツロ、ウツロっ」

     アクタの声?
     夢だろうか?

    「ウツロ、起きてくれ、早くっ」

    「アク、タ?」
    「ウツロ、何かがここにくる。それも、すごい速さだ」
    「まさか――」

     アクタはたたみに耳を押しつけ、振動を拾い取っている。

    「『忍び足』だ。人間、それも訓練を受けたやつらだな」

    ぞくか?」

    「わからねえ……早く、お師匠様のところへ!」

    「うん、急ごう!」

     すでにウツロの眠気は吹き飛んでいた。
     危機の察知を鋭敏えいびんにするための訓練として、似嵐鏡月から仕込まれたものだった。

     ウツロとアクタはすぐさま布団から起き上がると、われ先にと部屋の外へ出た――

    (『第7話 来襲らいしゅう』へ続く)
    第7話 来襲「お師匠様っ!」

     似嵐鏡月にがらし きょうげつ縁側えんがわにどっしりと座って、黒彼岸くろひがんを片手に握りしめながら苦い表情をしている。

    「いったい何事でしょう?」

    ぞくだな、明らかに。とすれば答えはひとつ、わしらを殺しにきたのよ」

     このような状況での気づかいはむしろ厄災やくさいのもとだ。
     似嵐鏡月ははっきり「殺しにきた」と二人に伝えた。

    「ま、わしにうらみを持つ何者かが放った刺客しかく――といったところだろうな、やれやれ」

    「そんな……」

    「いつかはこんなことがと思っていた。アクタ、ウツロ、すまぬ」

    「こんなときに、お師匠様!」

    「話はことが済んでからだ。お前たち、わしについてきなさい」

     似嵐鏡月はすぐさま、普段自室にしている『はなれ』に、ウツロとアクタを導いた。
     二人とも彼の部屋へ入るのは、日課になっている掃除のときくらいだ。

     似嵐鏡月は室内の一番奥にある長持ながもちの前まで、彼らを案内した。
     重量感のある木製のそれを開けると、黒光りするアタッシェケースが二つ、収められている。

    「これは……」

    「お師匠様……」

    「お前たちがわしの仕事を継ぐときにと思い、ひそかに用意していたのだ」

    「なんと……」

    「これがアクタ、ウツロのはこれだ」

     似嵐鏡月は順番にそのロックを解除した。

    「まずは戦闘時に着る衣装だ。二人とも、身につけて見せてくれ」

    「はい、お師匠様!」

     ウツロとアクタは師の手を借りながら、その『戦闘服』を身にまとった。

     強化繊維の下地は薄く軽量だが、急所の集まる正中線上はナノレベルで高密度に作られている。
     やはり繊維強化が施された胸当てと肩当ては、心臓や肩甲骨をじゅうぶんに守れる上、防御力はもちろん、機敏に動ける仕様だ。
     手袋てぶくろ足袋たびを模したものは、フットワークが軽くなるように設計されている。

     いずれも衝撃を最大限、分散させられる効果を持っていた。
     すなわち、防御のときは受けた衝撃を最小に抑え、攻撃のときは与えた力を最大にできる。
     現代科学のすいによる、闘争に特化した技術の結晶である。
     目的にかなうこと申し分ない。

     前腕ぜんわん下腿かたいのみ素肌が露出している。
     あえて弱い部分を作ることで、そこへの攻撃を相手に誘導し、活路を見出すためだ。
     人間の心理をうまく利用した戦術と言えよう。

     黒くつやのあるそれらを装備した二人は、すっかり戦士ので立ちとなった。
     その姿は実にりんとしている。

    「うん、よく似合っているぞ。さて、武器だ。まずはアクタ」

    「はっ、お師匠様!」

    「この手甲しゅこうを使ってくれ」

    「これは……」

     見た目はカブトガニのような、V字に細かく装甲が重ねられた合金製の手甲。

    「アクタ、お前は体術に優れている。これを両腕に装着し、戦うがよい」

    「もったいない、ありがたき幸せにございます!」

    「そしてウツロ、お前はこれだ」

    「なんと……」

    「剣術にけたお前には、この刀を授けよう。黒彼岸を模して作ったものだが、ちゃんとお前の体躯たいくにあわせてある」

     師の愛刀をひとまわり小さくしたような黒刀こくとうが手渡される。

    「お師匠様、うれしゅうございます! つつしんでうけたわります!」

    「よし、首尾しゅびは大丈夫だな。ゆくぞ、アクタ、ウツロ」

    「はっ!」

     装備を整え、三人は急ぎ足で玄関へと向かった。

    「さて、どのへんまで来おったかの」

    「『ひるの背中』をやすやすと越えてきやがる……お師匠様っ!」

    「ああ、相当な手練てだれとみえるな。ウツロ、何人かわかるか?」

    「すごい数です。二十……いや、全部で三十人……!」

    「十倍か、敵もやりおるわ」

    「なあに、ひとり十人だ。俺らにかかればひとひねりですって」

    「うむ、アクタ。その意気だ」

    「お師匠様、どうかこたびの作戦をお授けください!」

    「ウツロ、よく申した。よいか、これからわしの言うことをよく聴きなさい」

    「はっ! なんなりとお申しつけください!」

    「アクタ、ウツロ、わしが時を稼ぐゆえ、戦いながらバラバラに分かれ、逃げるのだ」

    「なっ、お師匠様! 逃げるなどと! われらが力を合わせれば、相手が何人だろうと、負けることなどありえません!」

    「ウツロの言うとおりです、お師匠様! それに逃げるということは、この里を捨てるということ! 里が敵の手に落ちてしまう可能性だって、じゅうぶんにあります!」

    「二人とも、冷静になれ!」

     逃げるという指示がに落ちず反論した二人に、似嵐鏡月はかつを入れた。

    「よいか、アクタ、ウツロ。この隠れ里の存在が知られた以上、たとえこの場はやりすごせたとして、敵は何度でもここを襲いにやってくるだろう。わしとしても不本意であるし、なによりお前たちの故郷であるこの里を落とすのは口惜くちおしいが、やむをえないのだ。アクタ、ウツロ、どうかわかってくれ」

     二人はくちびるみしめ、こぶしを強く握った。
     しかし師の言い分は至極しごくもっともである。
     彼らに同意しないという選択肢はあり得なかった。

    「……おおせにしたがいます、お師匠様」

    「すまぬ。そうと決まれば二人とも、覚悟を決めてかかるのだ」

    「はい! お師匠様!」

    (『第8話 カラスの群れとの戦い』へ続く)
    第8話 カラスの群れとの戦い ほどなくして、くだんのぞくたちは現れた。

     杉並木の隙間すきまから、虫がい出るようにぞろぞろとその姿を見せる。

     全員が一様に黒装束くろしょうぞく
     顔にはカラスを模したような、『とんがり』のついた仮面をかぶっている。

     ウツロの予見どおり、その数、実に三十名。
     玄関の前に陣取る三人の前を、弧を描くようにたちどころに取り囲んだ。

    「こんな夜更けになんのご用かな?」

    「問答無用、似嵐鏡月にがらし きょうげつ。お前にうらみを持つ者は、お前が思うよりも多いということだ」

    「ふん、見ればえらく大人数おおにんずうだが、引っ越しでもはじめる気かね?」

    「ああ、そのとおりさ。ただし運ばれる荷はお前たちだ、あの世へな」

     弧の中心の首魁しゅかいとおぼしき男は、似嵐鏡月の皮肉ひにくを皮肉で返した。
     だが当然、皮肉で終わらせるという雰囲気ではない。

    「さかしらぶりおって。黒彼岸くろひがんさびにしてくれる」

    「果たしてそう、うまくいくかな? 者ども、かかれえいっ!」

     合図とともにカラスの群れは、一気に三人へびかかった。

    「ぐげっ!?」

     似嵐鏡月の黒彼岸が、前方の中空ちゅうくうを大きく切り裂いた。
     五~六人がそのまま後ろに吹っ飛んで、杉の大木たいぼくに叩きつけられる。

    「なっ……」

    「ひるむなっ! かかれ、かかれえいっ!」

    「ぎゃっ!?」

    「ぐえっ!?」

     黒彼岸は次々と、襲い来るカラスの群れを叩き落す。
     彼らはまるでハエがされるように、たちまちのうちにのされて・・・・しまった。

    「おやおや、もう半分くらいになってしまったかのう。誰をあの世へ送るだって?」

    「くそっ、調子に乗りおって! ガキだ、皆の者! うしろのガキ二人を人質に取れ!」

    「させるかっ!」

     似嵐鏡月はまた、黒彼岸を大きく払った。

    「ぬっ!?」

     吹っ飛んだそのさらに上方じょうほうから別動隊が出現し、彼のうしろまでついに降り立った。

    「くっ、しくじったわ! アクタ、ウツロ! 逃げろっ!」

    「ごえっ!?」

     カラスのひとりの首から上が、ねじれるようにはじけた。
     アクタが身につけた手甲しゅこうで、裏拳うらけん炸裂さくれつさせたのだ。

    「人質に取るだって? 取られるのはてめえらの命のほうだ!」

    「ガキがあっ!」

     カラスたちは空から円陣を組んでアクタに襲いかかる、が――

    「げおっ!?」

     鉄壁にかまえた彼は、正中線せいちゅうせんを軸に体を回転させ、その群れをぎ払った。

    「なんだこいつ、強いぞっ! もう一人を狙え! いかにも弱そうだ!」

    「失礼だな」

    「ひっ!?」

     ウツロはカラスよりも高く跳躍していた。
     落下しながら舞うように、カラスの群れを矢継早やつぎばやに叩きのめしていく。

     ―― ヒヨドリ

     その姿はまさに踊っているかのようだ。

     彼の身軽さと俊敏しゅんびんさ、そして一体化でもしたように刀を操る、無駄など一切存在しない動き。

     それらすべての要素が有機的に絡み合うことによって初めて可能となる、ウツロの個性を最大級に生かした絶技ぜつぎだった。

     こんな彼を、いったい何者にぎょすることができるというのか――

    「誰が弱いだって?」

     音もなく着地してすぐさま体勢を整えたウツロは、自分が倒した敵たちに問いかけた。

     念のためではない・・・・
     答えなど帰ってくるはずがないということを、彼は知っているからだ。

     自分がまかり間違っても仕損じるはずがない――初めての実戦にして、ウツロは絶対の確信を持っていた。
     それは決しておごりなどではなく、突きつめられた経験が彼にそう教えるのだった。

     時間にしてほんの二十分ほど。
     屋敷の前の庭には、大地に接吻せっぷんするカラスの山ができあがっていた。

    「ふん、他愛たあいもない。アクタ、ウツロ、見事だったぞ。初陣ういじんではあったが、学んだことをいかんなく発揮はっきしてくれ、うれしいかぎりだ」

    「めっそうもないことです、お師匠様!」

    「アクタの言うとおりです。お師匠様からのご教授があったればこそで――」

     嗅覚きゅうかく不穏ふおんなにおいを感じ取り、ウツロは息を殺した。

    「どうした、ウツロ?」

     突然だまった彼をいぶかるアクタが、その顔をのぞきこむようにたずねた。

    「お師匠様っ、遠くからまた気配が!」

    「何だって!?」

     まさかと、アクタは混乱気味ぎみに叫んだ。

    「ちいっ、援軍えんぐんか!」

    「どのくらいの数かわかるか、ウツロ?」

     不安げなアクタの質問を受け、ウツロは嗅覚神経をフル稼働させている。

    「においが強すぎて鼻が曲がる……ゆうに五十人は軽く超えています!」

    「そんな……」

     アクタは戦慄せんりつのあまり、冷汗ひやあせを浮かべた。
     いまの戦闘は圧勝とはいえ、三人には確実に疲労が蓄積されていたからだ。

    「……どうやらここまでのようだな。アクタ、ウツロ、かくなる上は当初の予定どおり、三方さんぽうに散って逃げのびるのだ。わしが時を稼ぐ、早く行け!」

     意を決した似嵐鏡月は、力強くそう言い放った。

    「そんなっ、お師匠様も一緒に!」

    「このままでは共倒ともだおれになってしまう。ウツロよ、なんとかこらえてくれ」

    「いやです、お師匠様! 俺はあなた様とともにいとうございます!」

    「ウツロっ! 落ち着け!」

     あわてたアクタは動揺どうようするウツロを押さえつけた。
     その様子を見た似嵐鏡月は覚悟を決めた。

    「……仕方がない、アクタ!」

    「うっ……」

     ウツロの首筋くびすじにぶい感覚が走る。
     アクタが当て身を見舞ったのだ。
     崩れ落ちるウツロの体を、アクタはすくい取るように支えた。

    「アクタ、ウツロを頼む!」

    御意ぎょい! お師匠様も必ず!」

    「なぁに、すぐにまた会えるさ!」

     気絶したウツロをかついで、アクタは山のさらに奥へとけた。
     止まらないその涙を、必死に隠しながら――

    (『第9話 邂逅かいこう』へ続く)
    第9話 邂逅「ここまで来れば、とりあえず大丈夫だ」

    「アクタ、なんで……」

     目を覚ましたウツロは、肩を貸すアクタとともに、暗い林の中を歩いていた。
     小一時間こいちじかんほど山中さんちゅうけめぐり、木の枝に傷つけられ、こけむした岩に足を取られ、二人はもうボロボロになっていた。

    「アクタ、少し休んでくれ。もう傷だらけじゃないか」

    「なあに、こんなもん、ちょっとかゆいくらいさ。俺よりウツロ、お前が心配だ」

    「……なんで、俺のことばっかり」

    「何回言わすんだ。お前は俺が守るんだっつーの」

    「アクタ……」

    「ま、ひと休みか。少しだけな」

     ちょうどいい大きさの岩壁いわかべがあったので、アクタはそこにウツロを降ろし、自分も隣へ座った。

    「ふう」

     アクタはうなだれながらひと息ついた。
     その顔はなぜか穏やかだ。

    「へへっ」

    「アクタ?」

    「いや、わりい。昔のことを思い出しちまってな」

     ウツロは不思議に思ってアクタを見つめた。

    「覚えてっか? ガキのころ、お前『かわや』ですっ転んで、頭からはまったことあったよな?」

    「あれは、アクタ! お前が前の日に掃除をさぼったのが悪かったんだろ!」

    「お前、クソまみれになってただろ? 落とすのたいへんだったし、しばらくくさかった」

    「おまっ、こんなときに俺の人生の汚点おてんを!」

    汚物おぶつだけに汚点ってか?」

    「バカ、アクタっ! 全然うまくないぞ!」

     アクタはゲラゲラ笑っている。
     ウツロは顔を赤くしながらも、なんだかおかしくなって、一緒に笑いあった。

    「……もう、戻れないのかな? あの楽しい日々に……」

    「さあな。ま、これからまた作りゃいいだろ? 三人で、な?」

    「……うん、そうだよね。それがたとえ、別な場所でも」

    「そうさウツロ、また一緒にネギ育てようぜ。知ってっか? このへんはネギの産地で有名なんだとよ」

    「ネギか……思索しさくにネギ掘りはうってつけだしね」

    「またネギこさえて、そしたら思うぞんぶん思索したらいいぜ?」

    「うん、そうだね。俺はやっぱり、考えてるのがしょうにあってるよ」

    「哲学者だかにでもなったらどうだ? もうかるんじゃねえの?」

    「お金か。概念がいねんは人間の敵だからね。俺は人間のほうがいいよ」

    「おっ、出たな思索!」

    「悪いかよ。俺は人間的生命活動の発露はつろとして――」

    「はいはい、わかったから。ほんと難しいよな、お前の『人間論』は」

    「アクタの頭が悪すぎるんだよ」

    「何だとー? お前もパッパラパー助くんにしてやろうか!?」

    「やだよ、そんなの」

    「うるせー。そらっ、パッパラパー助くんになれー!」

    「バカっ、来るな! アク――」

     気配けはいを感じて、ウツロとアクタは息を殺した。

    「この辺まで歩いた跡があるぞ」

    「残りの二人は必ず近くにいる。探せ!」

     彼らとしたことが、疲れとしゃべることに気を取られ、敵の接近に気づくのが遅れてしまった。

    「ウツロ、ここは俺がなんとかする。先に行け!」

    「そんな……ダメだ、アクタ!」

     アクタの真剣な表情に、ウツロは言い知れない不安を感じた。
     これがもしや、今生こんじょうの別れになってしまうのではないかと。

    「このままじゃお師匠様の言うとおり共倒れだ。なあに、すぐ追いつくから心配すんな」

    「いやだ! 一緒に行こう、アクタ!」

       ぱしんっ

     アクタはウツロに、気つけのビンタを食らわせた。
     ウツロはほほを押さえながら、悲しい顔でアクタを見た。

    「ウツロ、こらえてくれ。大事なのは生きのびることだ。俺はもちろん、お師匠様が万が一にもやられるわけねえだろ? だからウツロ! 俺を信じてここは行ってくれ!」

    「う、アクタ……」

    「泣くんじゃねえよバーカ。パッパラパー助お兄ちゃんは無敵なんだぜ?」

     複数の声が近づいてくる。

    「いたぞ、あそこだ!」

    「ちっ、見つかったか。ウツロ、行けっ!」

    「……絶対、会えるよね……アクタ?」

    「あったりめえだろ。俺たちは二人でひとつ、な?」

    「……うん」

    「よし、行けっ!」

     ウツロの背中を押すと、アクタははばむように敵のほうへと突っこんでいく。

    「かかってこい! パッパラパー助お兄ちゃんが相手だっ!」

    「殺せ、殺せえいっ!」

     ウツロは振り返らなかった。
     振り返ればアクタ、そして師の気持ちを踏みにじってしまうから。
     ひとり戦っている兄貴分を背に、ウツロはただひたすら、駆け抜けた――

    (『第10話 魔王桜まおうざくら』へ続く)
    第10話 魔王桜「ううっ……」

     ほうほうのていのウツロは、気がつけば深い闇の中にいた。

     森、深く暗い森。
     ここはどこなんだ?
     深夜とはいえ、夜とはこんなに暗いものだったのか?
     月も星さえも見えない。
     真っ暗だ。

     恐怖、そして寒さ。
     彼は震えながら、暗黒の中をさまようように歩いていた。

    「あ」

     明かりだ。
     ゆらゆらと燃えている。
     近いような遠いような。
     すぐにつかめそうでいて、永遠に掴めないような。
     こんなところに人が?
     何か妙だ。

     しかし違和感はあるものの、ウツロにとってはまさに希望の光だ。
     彼は不信に思いながらも、その明かりのほうへと近づいていった。

     明かりはしだいに大きくなってくるが、人の気配などまったく感じられない。
     得体えたいの知れない恐怖に、ウツロは自身の心臓の鼓動が聞こえてくるのを認識した。

    「う」

     明かりの近くに、別な明かりが突然、浮かびあがった。
     さらにひとつ、もうひとつ――次々と。
     それはあたかも、空間上へランダムに並べられた蝋燭ろうそくに、適当な順番で火をともすような。

    「まさか、これは……」

     鬼火おにび
     その単語がまっさきに脳裏のうりをよぎった。

     いけない。
     何かわからないが、とても危険な気がする。

     ウツロはしりぞこうとこころみるが、なぜか足が動かない。
     依然いぜんとして鬼火の数は増えていく。

    「な……」

     桜の木。

     空間を満たした鬼火を前置きとするように、とてつもなく巨大な桜の木が出現した。

     おかしい、ここはどこなんだ?
     こんな木の存在など知らなかった。
     しかしこの桜は……なんと、美しい……

     まず、幹の太さ。
     黒ずんだそれは、岩盤がんばんのようにごつごつとかたそうで、いまにもふくらみきってぜそうだ。
     どこかしわくちゃの老人の顔のようにも見え、不気味なことこの上ない。

     根は鬼の爪のように地面に食いこんで――いや食らいついているかのよう。

     枝はといえば、天を串刺くしざしにするかのような勢い。

     そして瞠目どうもくすべきは、その大輪たいりんに咲く花である。
     雪よりも白い花びらが、ひらひらと静かに舞い飛んでいる。
     みにくい『胴体』との対照は、まるで天国と地獄が同時にここに存在していると表現したくなる。

     ウツロは金縛かなしばりにあったように硬直こうちょくした。
     しかし不思議なことに、心から恐怖は消え去っていた。

     それほどの生命力。
     まるでこの桜が宇宙の中心であるかのような、その存在感に圧倒される。

    「お師匠様がいつかおっしゃっていた……この世とあの世のさかいに咲くという幻の桜……その名を、『魔王桜まおうざくら』……」

     体が前方ぜんぽうへ動き出す。
     自分の意思なのか、眼前がんぜんの桜の意思なのか、それすらもわからない。
     あやかしの引力に吸い寄せられるように、ウツロはその桜のほうへと足を進めた。

    「この桜が、そうなのか?」

     桜の巨木きょぼくは周囲を青白く照らし出している。

     見れば見るほど美しい。
     何という力強い存在感。
     この桜の前では、どんな存在もかすんでしまうような――

    「これが魔王桜だとしたら……俺は、死んだということなのか?」

     突如、体の力が抜けて、ウツロはその場にへたりこんだ。

    「それにしても……きれいだな」

     ウツロはすっかりその桜に心を奪われて、うっとりした気分になってきた。
     彼はしゃがみこんで、魔王桜の美しさに見とれた。

    「疲れた……」

     ふいに物悲ものがなしくなって、彼はうなだれた。
     こんなに美しい桜でさえも、俺の心をやしてはくれないのか?

    「お師匠様、アクタ……無事だろうか? 早く会いたい……ひとりぼっちは、さびしいよ……」

     茫然自失ぼうぜんじしつのウツロは、しばらくのあいだくだんの桜と、静かなにらめっこ・・・・・をしていた。

     ここにいると時間への意識がなくなってきて、ふわふわとただよっているような、夢の中で遊んでいるような感覚におちいる。

     こんなに気持ちが楽になるのは、はじめてかもしれない。

    「なんだか、いい気持ちだ」

     コクリとうなだれたところで、かすかに目をひらいたウツロは、眼前がんぜんに人間の腕ほどのちた一枝ひとえだが転がっていることに気がついた。

    「枝、枯れている……」

     それは桜の枝のようだが、ほとんど風化ふうかしてカラカラにかわいている。

     この桜から分離したものだろうか?
     そう思ったとき――

    「あ――」

     虫、一匹いっぴき地虫じむし

     小指の先ほどもないような、それは矮小わいしょうな地虫が、枯枝かれえだのくぼんだ穴からひょっこり顔を出して、何やら小刻こきざみに、痙攣けいれんでもするように、ぴくぴくと動いている。

     ウツロにはその地虫が苦しみあえいでいるように見えた。

     存在していることに、この世に生を受けたことそのものについて、なにか劫罰ごうばつでも受けているかのような。

    「桜の朽木くちきに虫のうこと、か。はは、俺のことみたいだ」

     ウツロはなんだかおかしさを覚えるいっぽう、その地虫にどこか親近感を覚えた。

     虫が朽木を這うように、自分もこの世の一番下で、這いつくばっている。

     その感情はすぐに、強い共感へと変わった。

    「この虫は、俺じゃないのか……?」

     鏡でも見ているかのような気分だった。

     もはや彼には、その地虫が他の存在とはとうてい思えなくなってしまっていた。

     こんなちっぽけな虫けらに、心が引き裂かれそうになるほど共感してしまう自分がいる。

    「……俺は、間違って人間になった……戻りたい、あるべき姿へ……」

     ウツロのほほをしずくが裂いた。
     その落涙らくるいはやがて滝のように。

    「俺は、虫だ……醜い、おぞましい毒虫……」

     なんで俺は人間なんだ?
     毒虫のほうがずっといい。

    「……お前に、なりたい……」

     そっと手を伸ばす。

     こいつに触れればあるいは、悲願成就ひがんじょうじゅとなるのではないか?

     彼は地虫が這うよりもゆっくりと、愛する者に対してするように、その距離をちぢめていく。

     もうすぐだ。
     指先が触れる。

    「……なるんだ」

     うれしい。
     こんなに幸せでいいんだろうか?

    「俺は、お前になるんだ」

     涙はいつしか歓喜のそれへ。
     ほら、もうひとりじゃないよ。

    「俺は、毒虫になるんだ」

     あとほんの少し、毛ほどの長さで指が届くというところで、ウツロの全身に異様な怖気おぞけが走った。
     末端神経の全部に針をとおされたような激しい悪寒おかん

     気配けはい、目の前だ。
     彼が顔を上げると、くだんの魔王桜が、風もないのにざわざわとさざめいている。

     揺らぐようなその動きは、催眠術でもかけているようで、彼にはまるで桜の木が、意思を持ってこちらへやってくるような気がした。

     いや、本当に動いている。
     桜の一枝ひとえだがゆっくりと、触手のようにウツロのほうへ向かってくるではないか。

     するど先端せんたんに咲くおびただしい花は、まるで目玉のように彼をねらいすましていて、明らかに何かをしようとしている。

     わかってはいるのだが、ウツロの腰はすっかり抜けて、恐怖のあまりあとずさりすらできない。
     次第に距離をつめてくるあやかしの桜に、彼はおののいた。

    「くるな、くるなっ」

     そして――

    「うあ――」

     魔王桜の枝は、ウツロのひたいにぐさりと突き刺さった。

    「……が……あが……」

     枝がどんどん頭の中に食いこんできて、まるで何かを注入されるような感覚が走った。

    「あ……」

     そして彼の意識は、奈落へと落ちていった――

    (『第11話 ユリとバラ』へ続く)
    朽木桜斎 Link Message Mute
    Aug 2, 2021 10:12:55 AM

    桜の朽木に虫の這うこと

    「人間って、何だろう?」

    十六歳の少年ウツロは、山奥の隠れ里でそんなことばかり考えていた。
    彼は親に捨てられ、同じ境遇・年齢の少年アクタとともに、殺し屋・似嵐鏡月(にがらし きょうげつ)の手で育てられ、厳しくも楽しい日々を送っていた。

    しかしある夜、謎の凶賊たちが里を襲い、似嵐鏡月とアクタは身を呈してウツロを逃がす。
    だが彼は、この世とあの世の境に咲くという異界の支配者・魔王桜(まおうざくら)に出会ってしまう。
    ウツロは魔王桜から「アルトラ」と呼ばれる異能力を植えつけられてしまう。

    目を覚ましたウツロは、とある洋館風アパートの一室で、四人の少年少女と出会う。
    心やさしい真田龍子(さなだ りょうこ)、気の強い星川雅(ほしかわ みやび)、気性の荒い南柾樹(みなみ まさき)、そして龍子の実弟で考え癖のある真田虎太郎(さなだ こたろう)――

    彼らはみな「アルトラ使い」であり、ウツロは「アルトラ使い」を管理・監督する組織によって保護されていたのだ。

    ウツロは彼らとの交流を通して、ときに救われ、ときに傷つき、自分の進むべき道を見出そうとする――

    <作者から>

    この小説には表現上、必要最低限の残酷描写・暴力描写・性描写・グロテスク描写などが含まれています。細心の注意は払いますが、当該描写に拒否感を示される方は、閲覧に際し、じゅうぶんにご留意ください。

    「カクヨム「NOVEL DAYS」「ノベルアップ+」「エブリスタ」などにも投稿しています。

    #オリジナル #創作 #オリキャラ #オリジナルキャラクター #小説 #ダークファンタジー #哲学 #友情 #恋愛 #文芸 #ライト文芸 #ファンタジー #現代 #異能 #ドラマ

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