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    朽木九区の由来そもそも朽木市とは?おらが朽木の足もとに ~ 朽木市に伝承する童唄蛮頭寺(ばんとうじ)の由来六車輪(ろくしゃりん)の由来斑曲輪(ぶちくるわ)の由来そもそも朽木市とは? みなさん、お疲れさまです。
     お世話になっております、わたしは朽木桜斎くちき おうさいと申す者でございます。

     朽木市くちきしとはそもそも、投稿中の拙作「桜の朽木に虫の這うこと」の舞台となる、架空の街の名前でございます。
     名称はそのまま、筆名から取りました。

     朽木市は上記小説の中で、「京の都を模して整備された」と紹介しています。
     「碁盤の目」状のその街は、以下の九つのブロックから構成されています。

     左下から時計回りに

    蛮頭寺ばんとうじ区(南西の方)
    六車輪ろくしゃりん区(西の方)
    斑曲輪ぶちくるわ区(北西の方)
    御石神みしゃくじ区(北の方)
    美香星みかぼし区(北東の方)
    黒水くろうず区(東の方)
    百色ひゃくしき区(南東の方)
    坊松ぼうのまつ区(南の方)
    朔良さくら区(中心)

    となります。

     スピンオフといえばそうですが、小説とは別にお楽しみいただけるよう、配慮いたします。

     それでは順番に、語ってまいりましょう。
    おらが朽木の足もとに ~ 朽木市に伝承する童唄※作者から

     本編ほんぺんにおけるネタバレを多分たぶんふくみますので、じゅうぶんにご留意りゅういください。

    YouTubeとニコニコ動画に、曲をつけたものを公開しておりますので、リンクを添付しておきます。

    おらが朽木の足もとに(YouTube)

    おらが朽木の足もとに(ニコニコ動画)

       *

    おらが朽木くちきあしもとに ~ 朽木市くちきし伝承でんしょうする童唄わらべうた




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    はじめの地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは万宝寺ばんぽうじ

    八面和尚はちめんおしょうのいぬること
    すぐさまきた奥原おくはら

    あの大槐おおえんじらせねば
    槐翁御爺かいおうおんじに知らせねば




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    つぎ地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは奥原おくはら

    槐翁御爺かいおうおんじいたこと
    すぐさまきた打鞍うちくら

    あの鬼童おにわろらせねば
    鬼熊童子おにくまどうじらせねば




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    つぎ地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは打鞍うちくら

    鬼熊童子おにくまどうじいたこと
    すぐさまひがし石神いしがみ

    あの化燈籠ばけどうろうらせねば
    厨子王丸ずしおうまるらせねば




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    つぎ地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは石神いしがみ

    厨子王丸ずしおうまるいたこと
    すぐさまひがし三日干みかぼし

    あの山蛭やまびるらせねば
    大鎚御前おおづちごぜんらせねば




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    つぎ地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは三日干みかぼし

    大鎚御前おおづちごぜんいたこと
    すぐさまみなみ清水きよみず

    あの大蟹おおがにらせねば
    嘉十郎かじゅうろうらせねば




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    つぎ地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは清水きよみず

    嘉十郎かじゅうろういたこと
    すぐさまみなみ一色いっしき

    あの蛞蝓なめくじらせねば
    邪魅太夫じゃみだゆうらせねば




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    つぎ地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは一色いっしき

    邪魅太夫じゃみだゆういたこと
    すぐさま西にし二本松にほんまつ

    あの山椒魚さんしょううおらせねば
    外法坊げほうぼうらせねば




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    つぎ地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは二本松にほんまつ

    外法坊げほうぼういたこと
    すぐさまきた佐倉殿さくらどの

    あの赤躑躅あかつつじらせねば
    閻魔躑躅えんまつつじらせねば




    おらが朽木くちきあしもとに
    地虫じむし九匹きゅうひきいよって

    最後さいご地虫じむしうことにゃ
    おらがっこは佐倉殿さくらどの

    閻魔躑躅えんまつつじいたこと
    ああ 知らせねば 知らせねば

    御方様おんかたさまらせねば
    魔王桜まおうざくら方様かたさま
    蛮頭寺(ばんとうじ)の由来 今は昔のことでございます。

     武蔵国むさしのくに西方さいほうに、山で囲まれた広い盆地があって、その一角いっかくに、小さな農村がございました。
     この村の高台たかだいには、万宝寺ばんぽうじという古いお寺が建っていて、山の中腹ちゅうふくから、いつも村人たちの様子を見守っておりました。

     初夏のある夜更よふけのことでございます。
     和尚おしょうさんがいつものように、燭台しょくだいあかりをともして、おきょうとなえておりました。
     すると、誰かお堂の戸をたたく者があります。

    「こんな夜中に、いま時分じぶん

     和尚さんが障子しょうじを開けると、そこには年の頃三十さんじゅうばかりの、剃髪ていはつして黒いころもをまとった若い入道にゅうどうが、そのうるわしい顔にやさしい眼差まなざしで立っているではありませんか。
     おどろいた和尚さんは、すぐにその若い入道を中にまねき入れ、お茶などふまって、ことのあらましを彼にたずねました。

     なんでもその入道は、どうしても知りたいことがあって、ずいぶん長いこと、旅を続けているというのです。

    「いったい何を、おたずねでしょうか?」

     和尚さんがいぶかってそう聞くと、若い入道は次のように口走くちばしったのでございます。

    「……地をう姿は地虫じむしであり、天を目指すは鳥のごとく、ほえる様子はけもののよう、とはこれいかに……」

     和尚さんは気味が悪くなって、口をつむいでしまいました。
     すると蝋燭ろうそくほのおが、風もないのにフッと、消え失せたのでございます――

       *

     明くる朝、村の名主なぬしどのが井戸の水をくんでいると、若い衆の何人かが、転げるようにそちらへやってきます。

    「こんな朝早くから、何事じゃな」

     名主どのがたずねると、今朝けさがた万宝寺へ参ったところ、なんと和尚さんのむくろがお堂に転がっていて、その首から上は、すっぱり切り落とされているというではありませんか。

    「これはただ事ではない」

     すぐさま名主どのは、村の衆を集め、万宝寺へと走りました。

     すると確かに、開かれた障子の中をのぞけば、そこには首のない和尚さんの痛ましい屍骸しがいと、おびただしい血が飛び散っていたのでございます。

    「これはきっと、魔物の仕業しわざに違いない」

     一同はお寺の中も周りもくまなく探しましたが、和尚さんの首から上は、ついに見つかりませんでした。
     村人たちはこの恐ろしい仕打ちに恐怖し、いつまでもおののいたのです。

       *

     名主どのはすぐに、京の都から名のある高僧こうそうに足を運んでもらい、その恐ろしい魔物を取り除こうとしました。

    「ご安心ください。必ずやその化物を、退治してご覧にいれましょう」

     その夜、高僧が万宝寺のお堂で読経どきょうをしていると、あの若い入道が確かにまた現れ、くだんの問答もんどうをしかけてきたのです。

    「……地を這う姿は地虫であり、天を目指すは鳥のごとく、ほえる様子は獣のよう、とはこれいかに……」

     高僧はすっかり、答えに詰まってしまいました。

    「それは……」

     果たして蝋燭の火はふっと、消え失せたのでございます――

       *

     それから何人もの、覚えのある僧侶そうりょたちが、万宝寺を訪れましたが、みな一様に、首のない骸と変わり果てたのです。
     このようにして、このお寺に寄りつく者はすっかりいなくなり、万宝寺は荒れ果てる一方でした。

       *

     それから半年ばかりもった頃でございます。
     ひとりの修行僧しゅぎょうそうが、旅の途中でつえを休めたいと、名主どのの家にやってきました。
     名主どのはその僧にぜんなどをふるまいながら、この村を襲った出来事について、彼に語りました。

    「それは、なんと……よし、わたしが、退治してさしあげよう」

     名主どのは必死に止めましたが、その修行僧は意にかいさず、夜の万宝寺へと向かったのでございます。

       *

     修行僧がお堂で経を読んでいると、あの若い入道がどこからともなくやってきて、くだんの問答をしかけてきました。

    「……地を這う姿は地虫であり、天を目指すは鳥のごとく、ほえる様子は獣のよう、とはこれいかに……」

     修行僧はにっこり笑って、こう答えました。

    「這い続ければこそりゅうにもなり、飛び続ければこそ鳳凰ほうおうにもなり、ほえ続ければこそ麒麟きりんにもなる。これでどうかな?」

     すると入道は、うめき声を上げて、苦しみだしました。
     見目麗みめうるわしい顔が泥のようにくずれたかと思うと、岩のかたまりほどもある大きな鬼の首へと、変じたではありませんか。

     鬼の首は、そのけた口を開いて、修行僧におそいかかってきました。
     彼はその一撃いちげきなんなくよけると、腕を大きく開いて鬼の首の両耳を後ろから引っつかみ、お堂のゆかに叩きつけて、たちどころにその息の根を止めてしまいました。

       *

     翌朝、万宝寺へ到着した名主どのはじめ村の衆が驚いたのも無理はありません。
     お堂の床に食いこんだ化物の大首の上で、あの修行僧がいびきを上げながら、寝入ねいっているではありませんか。

     起き上がった彼からことのあらましを聞いた名主どのたちは、ぜひにと、その修行僧に万宝寺の新しい住職に就いてもらうよう、申し出ました。
     彼は快く引き受け、鬼の首を手厚く供養して、荒れ果てた寺を建て直し、かくしてこの村には、平和が戻ったのです。

     あの恐ろしい化物はなぜ、人間に問答をしかけようなどと思ったのでしょうか。
     それだけは誰にも、わかりませんでした。

     ただ、この万宝寺が建っていた村一帯は、いつしか蛮頭寺ばんとうじという地名で呼ばれるようになった、ということでございます。

    (『蛮頭寺ばんとうじの由来』終わり。次話『六車輪ろくしゃりんの由来』へ続く)

    ※山梨県に伝承する昔話『両足八足大足二足』を下敷きにしていますが、本作はフィクションであり、当該伝承とは一切関係がありません。
    六車輪(ろくしゃりん)の由来 今は昔のことでございます。

     武蔵国むさしのくに西方さいほう奥原おくはらという村があって、ここはちょうど甲斐国かいのくにとは山ひとつでへだてられておりました。

     初夏としてはすずしい昼下がりのこと。

     西国さいごくで起こったいくさのどさくさにまぎれて、お宝をしこたま奪い取った源蔵げんぞうという盗賊一味の頭目とうもくが、金銀財宝をたっぷり積み込んだ荷車にぐるまと、二十あまりの手下を引き連れて、奥原村へいたるこの山を、すこぶるご機嫌きげんな様子で闊歩かっぽしておりました。

     この荷車は源蔵が奪った宝をいくらでも積めるようにと特別に作らせたもので、なにせとても大きくしてしまったものですから、車輪しゃりん一組ひとくみの二つでは足りず、なんと三組さんくみの六つという、とても奇妙な見てくれをしておりました。

     六車輪ろくしゃりんの荷車には、金銀だけではなく、戦で死んだ兵のむくろから引っがした甲冑かっちゅうだの、家屋敷いえやしきに突き刺さった弓矢だの、ほか、刀だのやりだの、その辺の兵糧ひょうろうだの……とにかく強欲ごうよくな源蔵は、金目かねめのものならあますところなく強奪ごうだつして、この車の中に放り込んだのでございます。

     これがひどく重いものですから、車は二頭にとう大牛おおうしに引かせ、それでも足りないと、手下たちが囲むようにくっついて、やっとのことで前へと進ませているのです。

     源蔵はといえば、お宝の中からみやび細工さいくおうぎを取り出して、その下劣げれつ熊面くまづらあおぎながら、先導を取って、ひとりだけ身軽みがるに歩いていました。

    「おい、彦佐ひこざ

     源蔵が名を呼ぶと、後ろのほうから、背丈せたけの高い、凛々りりしい顔立ちの若者が、ふところの守りぶくろを揺らしながら、急ぎ足でってきました。

    「おかしら、ご用でしょうか?」

     その青年は、れた旅装束たびしょうぞくから手拭てぬぐいを取り出し、ひたいの汗をぬぐいながら、源蔵に足並みをそろえました。

     彼は彦佐衛門ひこざえもんと申しまして、赤子の時分に『間引まびき』のため、山に捨てられていたところを、一味の頭数あたまかずを増やすため、源蔵が拾い上げて、ここまで育てたのです。

     首からげた守り袋は、捨てられていた赤子の彦佐の、やはり首から提げられていたもので、彼はこれを形見かたみとして、いつも大切に持ち歩いていたのです。

    「奥原まではあと、どれくらいだ?」

     源蔵は、アザミの葉のようなギザギザの口ひげをもぞもぞといじりながら、丈夫じょうぶな歯をカチカチいわせて、彦佐にたずねました。

    「この歩みなら、日が暮れるまでには着けるかと思います」

     彦佐はとても頭が良く、知恵ちえが働き、機転もくものですから、源蔵は彼を一味の参謀さんぼうえて、たいそう頼りにしていたのです。

    「ふむ、わしは腹が減った。早いところ奥原に宿を取って、うまいご馳走ちそうにありつきたい。みなに言って、足を急がせよ」

    「そのような、お頭。この荷での山歩きで、皆はすっかり参っております。せめて少し休ませてからでは……」

    「うるさいぞ、彦佐。お前を拾ってやったおんを忘れたのか? 言うとおりにせんと、許さんぞ?」

    「そのように申されましても……」

     いやしい源蔵はいつもこのような調子なので、彦佐はその仲裁ちゅうさいに、ほとほと苦労させられていたのでした。

     そのとき――

    「おや、あれは……?」

    「あーん?」

     向こうからひとりの老人が、こちらへやってくるのに気づいた彦佐に、源蔵は首をひねって、その大きな目をひんきました。

     その老人は、しわくちゃの面長おもながに、長い白ひげをたくわえ、ぼろぼろのころもをだらしなく着込んでいました。

     ごつごつしたこぶのようなかしつえをつきながら、藤蔓ふじづるを乱暴に編んだ草鞋わらじをぴしゃぴしゃ鳴らし、うような姿勢で、源蔵のところまで近づいてきます。

     能面のように動かないその顔に、となりひかえていた彦佐はゾッとしました。

    「これこれ、お前さん。ちょっとすまんが、わしの話を聞いてくれんかの?」

     老人は酷くしゃがれた声で、源蔵にそう問いかけました。

    「なんじゃ、貴様は? 汚いジジイだな」

     源蔵は怪訝けげん眼差まなざしで見下ろしながら、そう聞き返しました。

    「わしはこの山に住む、槐翁かいおうという者じゃが、奥原の南は万宝寺ばんぽうじの、八面和尚はちめんおしょうという知り合いが亡くなって、このことを奥原の北は打鞍うちくらの、鬼熊童子おにくまどうじという別の知り合いへ、伝えに行くところなんじゃ」

    「だからなんだ、ジジイ」

     奇妙なことを言うものだと、彦佐は気味が悪くなりました。

     しかし源蔵は、そんなことなど、どうでもいいという風に、答えたのです。

    「旅に出る前に、腹ごしらえでもと思ったのじゃが、お前さん、何か食うものをくださらんかの?」

    「はあ? 何を言ってやがる。貴様のような死にぞこないに、くれてやる飯など、一粒たりともないわ。とっとと失せろ、老いぼれが」

    「そんなことを言わんと、ほんの少しでいいんじゃよ」

    「しつこいぞ、ジジイ。わしを怒らすのなら、たたきのめしてしまうぞ」

     腹を満たしたいらしい老人を、源蔵は邪険じゃけんあつかいました。

     しかし、性根しょうねの良い彦佐は、この老人がかわいそうになってきたのです。

    「まあ、お頭。このご老体は、お困りの様子です。にぎめしのひとつくらい、よいのでは……」

    だまっておれ、彦佐。やいジジイ。何か金目かねめのものは持っておるか? 食い物をよこせと言うからには、金をはらってもらうぞ?」

    「金か。わしはそんなもの、持ってなどおらんぞい」

    「けっ、しけてやがる。なら、とっとと失せろ。わしは金にならんものになど、興味はないわ」

     すると老人は、にわかにへらへらと、薄気味うすきみの悪い笑顔を浮かべ、こう言いました。

    「ほう、なら、こういうのはどうじゃ?」

    「なんだ、いったい?」

     老人は山道の北側にある、草のしげった、杉並木すぎなみきの間をのそりと指差しましました。

    「ほれ、そこに小さな獣道けものみちがあるじゃろ? そこをしばらく進むと、だだっぴろい原に出る。そこに古いエンジの大木たいぼくがあるんじゃが、なんでもその昔、何とかという大盗賊が、大名だいみょうのお屋敷から盗み出したとかいう宝物を、その木の辺りにめたそうな。お前さんに、それをやろう。その代わりとして、わしに飯を――どうじゃ?」

     源蔵は口をすぼめて、しばらく考え込んでいました。

    「それはまことの話なのだろうな?」

    「さあ、わしは話に聞いただけじゃでのう」

    「ふん、信じられんな。だが、確かめる値打ちはある。ジジイ、そこへ案内しろ。その宝物とやらが、本当に見つかれば、貴様に好きなだけ、飯を食わしてやろう」

    「おお、それは確かかいの?」

    「くどいぞ。俺は金にかかわることだけは、心得こころえている。ちかいは決してたがわん。さあ、案内しろ」

    「わかった。さあさあ、こちらへ」

     老人はゆっくりと先に立って、その小道こみちに源蔵を誘ったのです。

    「お頭、この荷はどうしますか? ここへ置いたままでは、誰かに見つかって、盗まれてしまうのでは?」

    「なーに。こんな山道、そうそう人は通らんさ。それより、彦佐よ……」

    「はい、なんでございますか?」

    「宝があるのを確かめたら、あのジジイはすぐに打ち殺せ」

    「なんと……しかしそれでは、話が……」

    「あんな老いぼれに、ほどこしなどもったいない。それに、宝のことをよそに言いふらされては困る」

    「ですが……」

    「わしの言いつけが聞けんのか?」

    「め、滅相めっそうもございません! わかりました、そのようにいたします……」

     欲深よくぶかい源蔵は、にたにたと笑いながら、手下たちを連れ、ほくほくと老人のあとに続きました。

     仕方なく彦佐もしたがって、一番後ろからついていきました。

     しかし彼は、なにやら胸騒むなさわぎがしていたのです。

     それは、ひょこひょこと先頭を歩く老人の後姿うしろすがたが、なんだか笑っているように見えたからなのでした――

       *

     しばらくと言われながら、けっこうな長い時間、源蔵たちは歩かされました。

     深く暗い杉林が突然ひらけて、そこには確かに広い原っぱがあり、その中心には、小山こやまほどもある巨大なエンジの古木こぼくが、釣鐘つりがねのような実をらして、どっしりと生えているではありませんか。

    「なんという、面妖めんような木だ……」

     彦佐は思わず、後ずさりをしましたが、源蔵はといえば、ずいずいとそのエンジの木のほうへ近づいていきます。

    「ジジイ、本当にここで相違そういないのだな?」

    「ああ、そうじゃとも。さあ皆の衆、どうぞゆるりと宝を探されよ」

     老人は不気味ぶきみに笑って、エンジの木の横によけました。

    「おい、お前ら。この辺りをくまなく探せ!」

     こうして源蔵一味のお宝探しが始まったのです。

     手下たちはくわだのすきだのを手に、本当にあるのかすらわからない宝物とやらを、必死に掘り起こそうとしました。

     源蔵はといえば、手下たちにすべてを任せ、自分はエンジの木の、太く張った根のところにゆうゆうと腰かけ、煙管きせる煙草たばこをふかしています。

     彦佐もしぶしぶ、大恩だいおんあるお頭のためならと、汗を垂れ流しながら、木の周りをつつきました。

    「あっ!」

    「どうした、彦佐?」

    「お頭、何かに当たりました!」

    「おお! きっとそこに違いない! 皆、彦佐のところを掘り起こせ!」

     しばらく皆がそこを掘り返していると、なんと、出るわ、出るわ。

     源蔵ですら、これまでに見たことのないほどの、金色こんじきに光り輝く金銀財宝の山が、次から次へと、顔を出すではありませんか。

     源蔵は老人のことなどすっかり忘れて、その美しい宝の山に、スケベづらが止まりませんでした。

     しかし彦佐は、ふと気がつきました。

     あの老人の姿が、どこにも見当たらないのです。

     木陰こかげで休んででもいるのかと、エンジの木をほうを見やると――

    「ひっ!」

    「どうした、彦――」

     エンジの巨木の、その大きな『みき』が、さきほどの老人の顔になって、こちらに向かって、にたにたと笑っているではありませんか。

    「わしが食いたい飯とはな、お前さんがたのことじゃよ」

     老人の顔になったエンジの木は、そのけた口をくっぱり開けて、そう言い放ちました。

     源蔵や彦佐、そして手下たちは、恐怖のあまりすっかり腰が抜けて、その場へ尻餅しりもちをついてしまいました。

    「いやいや、もう腹が減っての。なにせ、あの盗賊をいただいてから、かれこれ百年は何も食っておらんでのう」

    「な、なにっ! それでは、まさか――」

     源蔵は震える声で、そう叫びました。

    「大名のお屋敷から盗んだというのは、確かじゃよ。そやつがわしに食われる間際まぎわに、そう言っておったからの。まあ、話に聞いただけ・・・・・・・じゃがのう、ひひ」

     エンジの大きな実が、ぱかりと口を開いて、源蔵をたちどころに、食らってしまいました。

     残った手下たちは、足をもつれさせながらも、われ先にと、このあやかしからのがれようとします。

     しかし、エンジの枝がそちらへ伸びて、彼らは次々と、笑う怪木かいぼくの口の中へと、収まっていくのです。

    「あとはお前さんだけじゃの、ひひ」

     最後に一人残された彦佐へ向け、その大枝おおえだが迫ってきます。

     体をからめ取られ、「もう駄目だ」、そう思ったとき――

    「ぐ、ぬう……」

     エンジの妖怪が、急に苦しそうなうめごえをあげたのです。

    「……貴様、けったいな守りを持っておるな。心苦こころぐるしいが、これでは駄目じゃの。食えんものに用はない、どこかへ行ってしまえ」

     あやかしの枝はそのまま、彦佐の体をはるか彼方かなたへと、放り投げてしまいました。

       *

     彦佐が目を覚ますと、辺りはすっかり暗くなっていました。

    「いったいあれは、なんだったのか……恐ろしいことがあるものだ……」

     彼は最初にいた、六車輪の荷車を置いてあった場所で眠っていたようです。

     その手は確かに、あの形見の守り袋をしっかりと、握りしめていたのでございます。

      *

     その後、急いで奥原へと下った彦佐は、ことのあらましを村の衆へ話して聞かせました。

     村人の話によると、槐翁かいおうとは山奥のエンジの木が、樹齢じゅれい幾百年いくひゃくねんかさねて、あやかしへと変化へんげしたものだということです。


     山に迷い込んだ者をかどわかして食らう、おそろしい妖怪とのことでした。

     明くる日、彦佐は村の衆に頼んで、くだんの六車輪の荷車を運んでもらい、助けてくれたお礼にと、金銀財宝のすべてを彼らに分け与え、自分は盗賊の身分から足を洗い、その地に根を下ろしたのです。

     そしていつしか、この奥原という土地は、『六車輪ろくしゃりん』の名で呼ばれるようになり、彦佐の末裔まつえいはのちに、『六車むくるま』というせいを名乗ったということでございます。

    (『六車輪ろくしゃりんの由来』終わり。次話『斑曲輪ぶちくるわの由来』へ続く)
    斑曲輪(ぶちくるわ)の由来 今は昔のことでございます。

     武蔵国むさしのくに西方さいほうに、打鞍うちくらという村がありました。

     この村の北には大きな峰々みねみねが肩をそびやかしており、その一角いっかくに、人首山しとかべやまと呼ばれるところがあったのです。

     この山には、鬼熊童子おにくまどうじという妖怪が住むといわれ、幼い子どもばかりをさらっては、食い殺してしまうと、伝えられていました。

     ですから打鞍の親たちは、決してわが子をひとりきりでは外に出そうとしなかったのです。

     子どもたちが遊ぶときなどは、必ず大人が近くに立って、鬼熊童子に連れ去られないようにと、見守ることにしていたのでした。

       *

     人首山のふもとには、この村で一番の庄屋しょうやさんの屋敷やしきが建っていました。

     この屋敷ときたら、後ろの人首山を隠してしまわんばかりの大きさで、しかもその周りを囲む真っ白な漆喰しっくいりたくったへいときたら、まるでお城を守る『曲輪くるわ』と呼ばれる城壁じょうへきのように見えたので、村のしゅうはここを『曲輪屋敷くるわやしき』などと呼んでいたのです。

     庄屋さんにはおえんという、としころ十六ばかりの、それは美しい一人娘ひとりむすめがございました。

     お縁は色が白く、つやのある長い髪をして、ユリの花を思わせる端麗たんれいな顔立ちをしていたものですから、『縁姫えんひめ様』だとか、『曲輪のおじょうさん』などと呼ばれ、器量きりょうもたいへん良いものですから、村人たちにとてもかれていたのです。

       *

     初夏のすずしい夕暮ゆうぐれのことでございます。

     お縁は父親である庄屋さんからおつかいを頼まれ、南の奥原村おくはらむらへ行った帰りに、内鞍村の入り口の、一面いちめんに田んぼが広がる畦道あぜみちを、足早あしばやに歩いていました。

    「急がないと、夜になってしまう」

     そんなことを、お縁は考えていたのです。

     鬼熊童子の言い伝えのことも、もちろんありますが、何よりも彼女は、早く帰らないと家の者たちが心配するだろうという、純粋な気持ちからそう思っていたのでした。

     集落が遠くに見える、かどにさしかかったときです。

     右手にえる一本松いっぽんまつの下に、一人の男の子がなにやらうずくまって、人首山のほうをながめています。

    (こんな時分じぶんに、子どもがひとりきりで、いったいどうしたのだろう?)

     お縁は不思議に思いながらも、その子のところにあゆって、声をかけました。

    「坊や、こんな時分に、ひとりぼっちでどうしたんだい? こんなところにいたら、人首山の鬼熊童子に、さらわれてしまいますよ?」

     すると今度は、その子が反対に、お縁の顔を不思議そうに見つめたのです。
     彼はくりっとした目をぱちぱちさせながら、こう言いました。

    「おねえさんこそ、こんなところをひとりぼっちで歩いてたら、さらわれちゃうんじゃないの? その、鬼熊童子に」

     年端としはもいかないのに、ずいぶん大人びたことを言うものだと、お縁はいぶかりました。

     ふと、下のほうへ目をやると、男の子の左足から、赤いしずくれています。

    「……それは、血じゃないかい? たいへん、怪我けがをしているのね」

    「ああ、これ? 遊んでいたら、ちょっとね」

    「ちょっとではありませんよ。どれ、見せてごらんなさい」

    「ええ? いいよ、平気だから」

    「平気なものですか。ほら、わたしに任せて」

    「うーん……」

     お縁はふところに入れていたきれいな布で、男の子の血をき取り、足を軽くしばって止血しけつをしてあげました。

    「ほら、これで大丈夫よ。さあ、こんなところへいないで、わたしが送ってあげるから、家に帰りましょう」

    「ありがとう、おねえさん。でも、いいんだ。さっき南は奥原の、槐翁かいおうから聞いてきたことを、これから東は石神いしがみの、厨子王丸ずしおうまるに伝えにいかなきゃならないからね」

    「……え?」

     どうっ――と、一陣いちじん突風とっぷうきました。

    「きゃあっ!」

     お縁は思わず、着物のすそで顔を隠しました。

    「あれ――」

     風がおさまって、ゆっくり手をどけると、あの男の子の姿は、どこにも見当たりません。

    ―― うふふ、おねえさん。このお礼は、必ずしてあげるからね? ――

     どこからか、その声は聞こえました。

     お縁が空を見上げると、東の石神村のほうへ、風のうずが飛んでいくのが見えたのです。

    「まさか、あの子が……鬼熊童子……」

     お縁は背筋が寒くなって、逃げるように家へと走ったのです。

       *

     ところでこの村には、お縁の家よりはずっと落ちますが、大きな米問屋こめどんやが店をかまえていて、そこの若旦那わかだんなときたら、のらくら者で、ずるがしこくて、おまけに好色こうしょくで、村の者たちからは、陰口かげぐちたたかれてばかりいたのです。

     この日もろくに、家業かぎょうの手伝いもせず、座敷にねそべって、扇子せんすをぶらぶらさせながら、何か面白いことはないかなどと、思案しさくしていたのです。

    「……ああ、お縁さん……美しいですよねえ……ぜひ、わたしの嫁御よめごに……そうすれば、お庄屋さんの家だって、わたしのもの……」

     こんな風に、下衆げすきわまりないことを、あれこれと考えていたのです。

    「若旦那さま、よろしいでしょうか?」

     女中頭じょちゅうがしらのおかねが、とことことした歩みで、若旦那のほうへやってきました。

    「なんだい、お兼さん?」

    盗賊とうぞく一味いちみが、近隣きんりん村々むらむらあらしまわっているらしいので、じゅうぶんに気をつけなさいと、大旦那おおだんなさまが申しておりました」

    「ほう、盗賊ですか……なんとも、ぶっそうですねえ……わかりました。そう、親父どのに、伝えてくださいな」

    「へえ」

     お兼はきびすを返して、またとことこと、もどっていきました。

    「……盗賊、盗賊か……なるほど、これだ……」

     若旦那はパシンと、扇子で手を打ちました。

    「これ、五郎兵衛ごろべえはおるかい?」

    「若旦那、なんぞご用ですかい?」

     座敷からのごえに、熊のような大男が、ぬっと現れました。

     この男は、米蔵こめぐらを取りしきっている五郎兵衛という者で、若旦那とは意気が合い、何かにつけて、わるだくみをりあっているのでした。

    「これ、ちょっとこっちへ」

    「――?」

    「ちょっと、耳をお貸し」

    「はあ……」

     若旦那は何やら、五郎兵衛に耳打ちをしました。

    「……なるほど、わかしやした。すぐに準備いたしやす」

     五郎兵衛は何ともいやらしい顔をして、その場を去っていきました。

     おそろしいことに、この若旦那は、ちまたを騒がせている盗賊一味の名を借りて、庄屋さんの屋敷を襲撃しゅうげきし、あろうことか、お縁をかどわかしてしまおうと、もくろんだのです。

     五郎兵衛には、今夜さっそく、ことおよびたいからと、その用意をうながしたのです。

    「うふふ、お縁さん。もうすぐ、わたしのものですよ?」

     こうして若旦那の計画は、着々ちゃくちゃくと進んでいったのです。

       *

    「お縁の姫様以外は、全員、始末しまつしていい。何もかも、うわさの盗賊一味のせい・・に、なるんだからな」

     その日の夜更よふけ、くだんの曲輪屋敷の前には、若旦那、そして五郎兵衛を筆頭ひっとうととする米問屋の手下たちが、三十名ばかり、うじゃうじゃと集まっていました。

    「みなさん、ちゃっちゃとやってくださいな。人気ひとけのない場所とはいえ、誰かに見られでもしたら、あとあとやっかいですからね」

     若旦那は、早くお縁を自分の手にと、手下たちに作戦の決行を、かしました。

    「よし、行くぞ――ん?」

     五郎兵衛は奇妙に思いました。

     いままでまったく、気がつきませんでしたが、屋敷の大きな門の前に、着物姿の小柄こがらな男の子が、まるで陣取じんどるように立って、へらへらと笑っているのです。

    「なんだ、ボウズ? そこをどかねえか。さもないとお前なんぞ――」

     五郎兵衛は少年を捕まえようと手を伸ばしましたが、その手はフッと奥のほうへれ、逆にその子のほうから、頭をがっつりつかまれたのです。

     ごぎゃっ――

    「ひっ――」

     この世のものとは思えないおぞましい音で、五郎兵衛の頭はくだけました。

     若旦那は思わず、のどのまるような悲鳴を上げたのです。

    「うふふ、おじちゃんたち、おいらと遊ぼうよ……」

     男の子の目は、赤く爛々らんらんと光って、口からは『牙』がのぞいています。

    「おっ、鬼熊童子だあああああっ!」

    「にっ、逃げろおおおおおっ!」

     手下たちはすっかり混乱して、逃げを打とうとしました。

    「みなさん、相手はたかだ、ガキひとりです! 鬼だか何だか知りませんが、まとまって向かえば、やっつけられますよ!」

     若旦那は必死で、手下たちを鼓舞こぶしました。

    「くそっ、ひるむな! かかれ、かかれえっ!」

     手下たちはほとんど破れかぶれで、鬼熊童子に向かっていきました。

    「ぐぎ――」

    「あが――」

    「ぎゃ――」

     ある者は首をひねられ、ある者は投げとばされ、またある者からは背中から小さな『こぶし』が、ひょこっと顔を出しました。

     それは本当に、子どもがお手玉てだまか何かで、遊んでいるように見えたのです。

     三十名もいた手下たちは、こうしてあっという間に、むくろの山に変わってしまいました。

    「くすくす、バカなおじちゃんたち……人首山の鬼熊童子に、勝てるとでも思ったの?」

     鬼熊童子は血まみれになった口もとを、ペロリとめました。

    「ひっ、ひいいいいいっ!」

     ひとりだけ残された若旦那は、落ちていた『やり』を拾って、鬼熊童子のほうに投げました。

    「ほい」

     鬼熊童子はそれをやすやすと受けとめたのです。

    「返すよ」

     『槍』は若旦那の口の中にさって、頭の後ろへ抜けていきました。

    「はーあ、つまんないの。でも、おねえさん、『約束』は果たしたからね? くく、くくくっ……」

     どうっ――

     一陣の風が吹いて、鬼熊童子は人首山へと帰っていきました。

      *

     明くる朝、ひとりの女中じょちゅう絶叫ぜっきょうで、家人かじんたちは、叩き起こされました。

     米問屋の若旦那をはじめとする、男衆おとこしゅう遺骸いがい――

     そして、真っ白な曲輪に点々とついた、おびただしい血――

     それはまるで、『ぶち』のような模様にも見えました。

    「ああ、なんとおそろしい……これはきっと、人首山の、鬼熊童子のしわざに、違いない……」

     村人たちはこの屋敷を、『斑曲輪屋敷ぶちくるわやしき』と呼びなおして、いつまでもおそれ、おののいたのです。

     お縁はといえば、「鬼熊童子に見初みそめられた娘」と、ありもしないことを噂され、やがて家を去り、残された庄屋さんの屋敷も、すっかり没落ぼつらくしてしまったのです。

     そしていつしか、この打鞍の土地は、『斑曲輪ぶちくるわ』という名前に変わったのでした。

     いまでも、お縁の血を引く者には、鬼熊童子がそばについて、しっかりと守っているそうです――

    (『斑曲輪ぶちくるわの由来』終わり。次話『御石神みしゃくじの由来』へ続く)
    朽木桜斎 Link Message Mute
    2021/08/07 0:37:54

    朽木九区の由来

    拙作「桜の朽木に虫の這うこと」に登場する架空の街・東京都朽木市(くちきし)。
    九つのブロックにわかれるそれぞれの「区」の由来です。

    「カクヨム」「NOVEL DAYS」「ノベルアップ+」「エブリスタ」「ライトーン」などにも投稿中しています。

    #創作 #オリジナル #オリキャラ #オリジナルキャラクター #ホラー #怪談 #昔話 #伝奇 #妖怪 #あやかし

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    2021/08/08 23:51:43
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