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作品 - ミステリー

 : 41件
  • (婚活ミステリー) #あいの結婚相談所,
    #藍野所長 ,
    #シスターエリザベス ,

    ***pixiv再掲,
    急須酌子
  • 2おじさん祭りむさい😔違う違う💦「オジサマ渋いステキ」と言われたので、調子に乗ってこっちにも投下しようと思ったんです🤣確かにむさいけどね😂
    Xでオリキャラ紹介企画が5/7迄開催されてて、主催者さんが参加賞も用意してくださってる素敵企画です。折角なので、いつもの妄想空自とは違うシリーズのキャラ一部で参戦してます。テンプレもお借りしてラクガキ漫画で描いてたのをデジタルで色付けたり、新たに描き下ろしました🌟
    自分が中学生の時(古代?)に出来た主人公のシリーズで、没もありますが漫画と小説で展開しててキャラ数だけはいます😅キャラ描き分け年齢描き分けとか難しくて、ささの画力とパーツ数ではなかなか絵面にするのは大変🤗
    昔は小説も書いてたので、オリキャラは結構います。
    ホラーと恋愛(BL、百合含む)以外ならいろいろ書きました。SF、学園もの、ファンタジー、ミステリー、時代小説etc
    キャプションを長々書くのでお気付きでしょうが🤣ショート~長編を書いてました。昔の感覚で😅一編四百字詰換算で500枚(約20万字)くらいまで。大体は中編100枚(約4万字)~文庫一冊分300枚(約12万字)で書いてますね🤔
    もう目が辛いので小説は書かないかな。資料見る読むと書くのと読返して推敲とを延々繰り返す為、本当に辛い。書かなくなって小説も読まなくなったなぁ。宮部みゆき氏とか好きです💕鬼平犯科帳なら一日三冊読みしたり、京極夏彦氏もがっつり読む読書家だったのにな👁️👁️📖
    お絵描き頑張ります🫡
    #キャラ紹介 #オリキャラ #オリジナル #デジタル
    ささ・S
  • How do women win a man's heart?
    女性はどうやって男性の心を掴むのでしょうか?
    男性は不思議な動物で、女性に時には恋人のように、時には妻のようにしてほしいと考えているため、彼をあなたに深く夢中にさせるには、妻であり恋人でもある女性にならなければなりません。
    1.神秘的な魅力を醸し出し、決して底が見えないようです。
    <a href="https://www.beyourlover.co.jp/">オナニーグッズ </a>のミステリーはそれ自体が魅力です。神秘的な顔に、女性の謎はさらなるベールで覆われています。男性に見抜かれ、ひと目ですべてがわかるような女性は、普通の紙のようなもので、魅力指数がないほどドライで、男性が近づきたい不思議な魅力もありません。そして探索します。ミステリアスな女性は常に男性の心の焦点です。
    2.適切なタイミングで適切にイライラする
    「<a href="https://www.beyourlover.co.jp/female-toys/">女性アダルト</a>は水でできている」と言われるように、強い女性もおてんば娘も、誰しも優しい一面を持っています。あなたを利用するために。どうですか? しかし、結婚後、女性は夫に従順であるべきではありません。彼女は時々癇癪を起こすべきです。そうしないと、夫はあなたのことを品性がないと考えるでしょう。だから、夫が何か間違ったことをしたとき、あなたも時々癇癪を起こすことがあります。もちろん、あなたはそうしなければなりません」あ、むやみにトラブルを起こして男性に嫌われないよう注意しましょう。
    3.おしゃれで刺激的な生活を追求し、上質な女性になる
    多くの女性は年齢を重ねるにつれて、それまで<a href="https://www.beyourlover.co.jp/suction-goods/">バイブ</a>でのファッションや興奮の追求を徐々に放棄し、平凡で臆病になり、ファッションや興奮に対する理解さえも時代遅れになってしまいます。 これでは男性はすぐに飽きてしまいます。また、イマジネーションを活かしたセクシャルな展開やプレイも男性の心を刺激します。
    まとめ
    女性としては、結婚生活をより安定させるために、常に自分の言動に注意を払い、男性があなたへの興味を失わないよう生活をより適切に変える必要があります。
    loverken
  • 2華麗なるヴァンパイアマスカレード✨2023✨🎭️🎃神国にあるハロウィンの森、『ハロウィンフォレスト』の奧地に佇む古城、ハロウィンキャッスルの中で、主の吸血鬼紳士により開かれる舞踏会、『ヴァンパイアマスカレード』が今年も開催されました…❗️✨
    色んな方々が参加してる中、月光蝶、雫、インソムニア、ナゴリサエの4人(+なめこ達❗️)も招待券を買い、しっかりドレスアップしておめかししいざ参加です❗️❗️
    ハロウィンの装飾と、若干古びていつつも豪華絢爛なシャンデリアやカーテン、さまざまな小物が並べられており、雰囲気はバッチリです…🎃

    雫『凄いお城…ちょっと怖いなあ…💧』

    月光蝶『素敵ね~✨ワクワクしてきちゃう❗️❗️』

    多くの人々を招き終わり、いざハロウィンの夜の華麗な舞踏会、『ヴァンパイアマスカレード🎭️』が開幕しました❗️✨素顔を仮面で隠し、各々踊る皆様……しかし❗️❗️途端に照明が落ち、会場が騒ぎ始める❗️❗️その後にまた明るくなりましたが、会場の真ん中になんと血痕が広がっており、舞踏会に参加していたメンバーの数人が失踪していました❗️❗️😱

    ナゴリサエ『みて❗️この血……どうやら何か起こったみたいだね…💧』

    インソムニア『ちょっと待って下サイ…なんか不穏な空気になってきたんデスが……💧』

    何やら主催者による、ヴァンパイアマスカレードを盛り上げる為のイベントが始まったようです……😊
    参加者は古城に閉じ込められ、推理小説ならではの体験をさせてもらえる事になりました❗️

    なめこ『んふんふ~✨(ミステリーな展開に巻き込まれちゃった~♪)』

    さあ…舞踏会の参加者達は無事にこの古城から帰れるのでしょうか……🦇。城内や墓場、地下室など色んなところを巡り、仮面に隠れた素顔の様に犯人は何が思惑なのかもわからない……
    妖しくも華麗で、恐ろしくも美しい……皆様を巻き込んだハロウィンミステリーナイトの開幕です…❗️❗️🎃🦇
    スリルと美しさの混じりあった可憐なハロウィンの世界…たっぷりと浸かりくださいませ……🦇🏰

    (補足ですが、この事件は主催者側が用意しているイベントなので、実際に殺人等は起きていません。参加者が本格ミステリー体験をできるって話なだけなので、実危害は受けませんよ✨☺️)

    ※二枚目は加工前の原画です♪

    キャラクター…月光蝶、雫、インソムニア、ナゴリサエ、なめこの旅メンバー

    #オリジナル #創作 #オリキャラ #女の子 #神国の住人 #イラスト #うちの子 #なめこ #ハロウィン
    #舞踏会 #マスカレード #ドレス
    コウイサクン
  • 12ミステリー小説風表紙絵コンテスト結果はまだわからんです。
    https://genseki.me/compes/VRdDvdEWGbY?tab=bosyu&page=1

    形態: ##メイキング  ##GIFアニメ  ##まとめ・シリーズ等 
    キャラ: ##その他キャラ
    どベ3(My art Do not Repost)
  • 逆ミステリー被害者医師あずささんと犯人ナースりっちゃんが見たい!

    #アイドルマスターミリオンライブ!
    #三浦あずさ  #秋月律子
    めんしえ
  • ミステリー記念日に描いたイラスト10月7日は「ミステリー記念日」
    今日は、愛犬(ミニチュアダックスフンド)探偵イラスト
    「犯人はお前だワン」可愛い🐶✨
    https://seiga.nicovideo.jp/comic/47174
    暇つぶしに
    へんてこ大江戸絵巻 良かったら見てね🌟

    #オリジナル #創作 #オリキャラ #いぬ #犬 #イラスト #絵 #お絵かき #わんこ #動物イラスト #ミステリー記念日 #探偵
    すあま&おぐら小町
  • 9ミステリーツアー《トークお相手》
    フェローチェくん(PL:しらたきさん twitter:@osirataki)

    《トーク会場》
    期間限定トーク会場「肝試し -リアンドーレ城-【城内】」


    ##トークログ ##リビック
    sakigake_glmr
  • 祝!実写化応援実写版夢幻紳士の海上監督にフォロー頂けたので
    (勝手に)応援イラストを描かせて頂きました。

    大正ロマンや昭和レトロ感、怪異譚やミステリアスホラーな雰囲気が好きな方は是非ご覧になってみてください。

    #夢幻紳士
    #夢幻魔実也
    #人形地獄
    #ファンアート
    #ミステリー
    #創作
    #実写化
    #映画
    gusukma
  • オリジナル小説「深海の天秤」一章 ファーストインパクトの挿絵⑪「言ったでしょッ。私、用があるのッ!変な言い掛かりに付き合ってられないわッ!」

    振り向き様に金切り声をあげる七奈美。だが阿妻は、無表情のまま…。


         「このままでいいんですか?」


    …と告げた。
     ずっとガン見してきた阿妻だったが、今は更に七奈美の心の奥を透かして見ているような目をしている。
     七奈美の動きと息が……止まった。

    「山口さんは複数により、顔の形が変形するまで殴られてました。そして最後は、鎌のような形状の鋭利な刃物により刺殺されたことが分かってます」

     それを聞いた七奈美の頭の中では、『あの時』の自分に向けて「逃げろッ!」と言った山口さんの顔が思い出され、ギュッと下唇を噛んだ。

    「手口からして、私たちも貴女が犯人だとは思ってません。でも、貴女が真実を告げないことで犯人が見つからなかったら、山口さんの『お母さん』はこれからずっと悲しむことになるでしょうね」

    「…ッッ!」

     大きく見開く七奈美の目。

    「先ほど落谷刑事も言っていましたが、今回の引ったくりも貴女自体を狙ったものかもしれない。身の安全は保証します。どうか協力してください」

     阿妻は椅子から立ち上がると、七奈美に向かって深々と頭を下げた。
     まさかの七光りお坊っちゃまの行動に、思わずギョッとする落谷。
     七奈美はというと…。

    「…………本当にッ? …話したら、私だけじゃなく、私の『家族』も守ってくれるッ?!」

    …と言いながら、あんなにキツい顔つきが、一気に泣き出す寸前の子供のようにグシャリと崩れた。
     阿妻は丁寧に「はい」と頷く。
     ダムが決壊するようにワッと泣き出す七奈美。落谷は立ち上がると、七奈美を支えるようにして元の椅子に座らせた。

    「約束するよ。そのための警察だからね」

     そう、優しく微笑みながら言う落谷。
     たぶん今まで溜めに溜め込んでいたのだろう、七奈美の目から涙が止まらたくなった。

     ーー…十数分後。
     
     ひとしきり泣いて心が落ち着いた七奈美。その顔は、初めの第一印象よりもかなり幼く見える。
     そしてハンカチですする鼻を押さえながら、ポツリポツリと話始めた…。


     七奈美は落谷が言ったとおり、キャバクラに働いていた。それもあまり品の良いとはいえない店だった。
     「制服は仕事か?」という落谷の質問があったが、始めは確かに仕事だった。
     より多くの客の指名を受けるため、店外のアフターや休みの日でも客とデートという形で接客をした。
     その時には、大体今着ているような男受けする服を着ていくのだが、なかには服装などの細かい指定をしてくる客もいる。
     そう。20代にもなって高校の制服を着たのは、始めはそんな経緯からだ。
     ここまで聞いて、「どうしてそこまでするの?」と落谷が問う。

    「お金が欲しいからに決まってるじゃないッ」

     七奈美は吐き捨てるように言った。
     制服は、自分が本当に高校のときに使っていたモノを着た。一緒に持っていたバッグも、当時の使っていたままの学校指定のモノだ。
     落谷は民家の防犯カメラに映っていたバッグのチャームホルダーを思い出し、七奈美に気づかれないところで「やっぱりっ♪」という顔をする…。
     七奈美も、いくら客の要望とはいえ「20代にもなって、こんな格好するなんて…」と憂鬱で仕方なかった。
     だがそのデートの帰り、電車に一人で乗っているとき気づいた。
     …周りが誰も自分を見ていないことに。
     元々童顔で、それが今の仕事にはマイナスだと思っていた七奈美。だから、メークや服装で何とか色気を出そうと頑張った。
     でも…。
     電車の窓。外の夜の暗さが窓を鏡のようにして、制服の七奈美を映し出す。
     そこには、ほとんど化粧をしないことで高校生の時とあまり変わらない自分がいた。
     心が踊った。
     映っている自分の口元が、どんどん上がっていった。
     当時、リアル高校生だった七奈美には、青春と呼べる思い出は無かった。
     小学生のとき、クズみたいな父親が借金だけ残して死んだ。母親は本業とバイトのWワークで、その借金をなんとか返済していた。
     七奈美も、年頃になってから大好きな母親を助けるため、常にバイトに明け暮れた。それと同時に、より良い給料を貰える会社に就職するため、学業も頑張った。
     部活なんてやる余裕なんて無かった。それどころか、友人とまともに遊んだ記憶も無い。
     でもその努力が報われ、高卒でも最良な就職先に内定することができた。父親が残した借金も、あと少しで完済の目処がついた頃……母親に異変が起きる…。
     仕事も家事も手つかず、ボーとする時間が増えていった。色々なことを忘れることが多くなった。
     病院で診察を受けたところ………若年性アルツハイマーだと診断される。
     多分、七奈美が就職を決まったことで、母の長年に渡った緊張の糸がプツッと切れたのだろう。
     どんどん酷くなっていく一方の母親を残して、決まっていた就職先で働くのが難しくなった。けれど、まだ借金も返していかなければならない。
     悩みに悩んだあげく七奈美が出した決断は、夜の仕事だった。
     幸い七奈美は幼い顔立ちだが、容姿は悪くない。キャバクラに勤め始めて、すぐにそこそこ客がついた。
     店と母親の世話で、自分を見失うぐらい目まぐるしい日々が三年続く。
     そんなときに現れた、電車の窓に映る高校生と見まごうばかりの自分…。
     この時には、借金のほうはなんとか返し終えていた。母親のことがあるが、金銭面だけでいえば少しは余裕ができていた。
     そこから七奈美は、客とのデート以外でも制服姿で出歩くようになる。
     友達とワイワイとはいかないが、この格好で街をブラブラ歩くだけで、あの時の青春を取り戻せるようで楽しかった。
     なにより、本当の自分でいられた。
     キャバクラという仕事上、服装も化粧も色気のある大人の女を演じてきたが、本当の七奈美は可愛い服やファンシーな小物が大好きなのだ。
     それらを、制服姿でウインドショッピングするだけで幸せだった。
     …が。
     そんな小さな幸福も、あるときを境にまた苦痛へと一変する。



    #オリジナル #創作 #オリキャラ #刑事 #小説 #挿絵 #相棒 #バディ #ミステリー #推理 #事件
    神嘗 歪
  • オリジナル小説「深海の天秤」一章 ファーストインパクトの挿絵⑩「…何の話よッ」

     逃道を絶たれて威嚇する猫のように、落谷を睨みつける七奈美。落谷は反対に反応を楽しんでいるように笑う。
     そして持っているスマホを操作すると、画面を七奈美のほうに向けた。

    「コレって君でしょっ?七奈美ちゃん」

     画面には、小野塚が駅から入手した例の防犯カメラ映像が表示されている。

    「知らないわよッ!っていうか、顔が出てないじゃないッ。どうして私だって言えるのッ?」

     捜査会議でも言っていたが、小さな白い紙袋を持った被害者の山口さんはカメラに向かって正面を向いているが、受け取ろうとしている制服の女性は後ろ向きだ。

    「始めから思ってたんだよねーぇ。七奈美ちゃんの後ろ姿、この制服の子にスゴく似てるなーぁって」

    これが落谷が部屋に入った直後に上げた、「思うところ」のもう一つだ。

    「まさかそれだけでッ?!」

    キッと睨みを深くする七奈美。

    「まさかーぁっ。でも、「そうだ」って教えてくれたのは君だよ」

    「意味、分かんないッ!」

    「正確に言えば、君が今身に付けている腕時計が、だけどねっ♪」

    「ッ?!」

     グッと詰まった顔で七奈美は、先ほど落谷に持ち上げられた手にしていた腕時計を、反対の手で隠すように覆う。

    「服やバッグなど高額なモノばかりなのに、それだけがハンドメイドのレザークラフトだ。いくら手作りとはいえ、金額にすれば名の知れたブランドに劣る。それに髪型から足先まで完璧なコーディネートされているのに、腕時計だけが不釣り合いだ」

     確かにその腕時計は作りは精巧たが、見た目がかなりアナクロでファンシーだ。
     鈍い金色とクリーム色で構成されたゴシック調の丸い文字盤。ベルトには花や蝶を立体的に型どって装飾されている。
     原宿とかにいるゴスロリの子とかがしてそうな感じの時計だ。

    「それでも何故するか?」と言って、落谷はピッと人差し指を立てた。

    「やっぱり『好きな人』から貰ったモノは、肌身離さず身に付けてたいよねーーーぇっ。ねっ、七奈美ちゃんっ♪」

    「………」

     落谷は女子高生みたいにウインクして、可愛くキメ顔をする。七奈美は、無反応で押し黙ったままだ。
     落谷は構わず続ける。

    「そして、その腕時計は『ココ』に入っていたっ」

     そう言って落谷がトントンと指差したのは、防犯カメラに写った山口さんの手元。あの白く小さな手提げ袋だ。
     そこいらの既製品でありそうな袋だが、よく見ればその手提げ、持ち手の根元四ヶ所に白色のハートが付いている。

    「この袋が、駅近にある商業施設内の「フラワーガーデン」っていうお店のモノだって判るのには苦労したよ。見覚えがあったっていっても、SNSで前にちょこっと見たことある程度の、うろ覚えだったからねっ」

     そう。落谷が今日の捜査会議そっちのけでスマホで検索していたのは、このことだった。
     落谷はよく、自分の管轄内地域に関係してそうなSNS情報を貪り見る。それもジャンル関係無くだ。
     昔の刑事は、自分の靴を磨り減らして聞き込みをしたり、情報屋とかを子飼いして事件に必要な情報を入手していたが、今はそんなのより一般ピープルが何気に載せるSNSのほうが使い方次第では有益だったりするからだ。
     たしかこの袋が載っていたSNSには、写真と一緒に「レザークラフトっていうと男の人が持ち物のイメージだけど、ここは花とか動物とかを型どった可愛い商品がメインで、女子受け必死☆ラッピングもこのお店独自のハートの付いたモノなので、プレゼントにも最適です!!」といったコメントが付いていたと記憶している。

    「で、この病院に来る前に寄り道して、そのお店に行ってみた。店員さんが覚えてたよ、この男の人のこと」

    そう言うと落谷は、今度は被害者の山口さんのことをトントンと指差す。

    「事件が起こる、その日の夕方。服装からして仕事帰り。一人で買いに来て、ラッピングまで頼んだそうだよ。それも気恥ずかしそうに、嬉しそうに頼んだものだから、店員のお姉さんが良く覚えていた。「ああ、好きな女性に渡すんだなーぁ」…って」

     うつむき聞いていた七奈美の口元が、なにかに堪えるように微かに震え出す。

    「それとそこの店は、商品みんな一点モノだから、一つ一つ写真に撮っといてあるんだって。その男の人が買ったのがコレ」

    落谷はスマホの画面を指でスライドさせる。次に出てきた画像は、今、七奈美が着けている腕時計とまったく同じモノだった。
     落谷は顔を上げると、七奈美に向かってもう一度聞く。

    「映像の制服の女性。君だよね」

     いきなり、七奈美は返事もせずにバッと立ち上がった。そしてバッグを持つと、早足で部屋の出口に向かって歩き出す。
     落谷は溜め息を一つついただけで、慌てて止める様子も無い。代わりに…。

    「待ってくださいッ」

    今まで落谷の話を無言で聞いては阿妻が、七奈美に向かって低く強く静止の言葉を投げた。




    #オリジナル #創作 #オリキャラ  #深海の天秤  #小説  #挿絵  #刑事  #ミステリー  #推理  #相棒  #バディ
    神嘗 歪
  • 深海の天秤〈第一章 ファースト・インパクト⑨〉その女性は、入ってきた二人に背を向けている状態で座っていた。
     女性の前にはテーブルを挟んで、白衣姿の医者と年配の看護婦が一人づついる。
     女性は落谷たちが入って来たことに気づいているようだが、振り向く様子は無い。代わりに医者が阿妻の顔を見るなり軽く頷く。
    たぶんその意図は、健康上問題無いという意味だろう。
     阿妻は隣の落谷に、子声で「引ったくりに襲われたさいに頭を打ったようなので、念のため細かく検査を受けてもらいました」と説明する。そしてすぐに、医者と看護婦に向かって「すみません。彼女と話がしたいので、少し席を外していただきますか?」と言った。
     医者たちはそれに素直に従い、阿妻たちが入ってきたドアから廊下へと出ていく。
     これは医者たちに事前にそういう状態を作ってもらうことを伝えてあったのだろう、女性と阿妻たちが残った部屋は診察室出はなく、病院内でも医療に関係しない少し狭い応接間といった感じの部屋だった。

    (…なかなかの手際の良さで)

     新人刑事とは思えない阿妻の配慮に少しばかりの気持ち悪さを感じながら、落谷は医者たちが出ていったドアから視線を本題の女性に戻す。
     そこには、アップにしている茶髪の髪からスッと伸びるうなじ。座っていても判る小柄な背丈。OLにしては少し派手目の装飾が施されたスモーキーピンクのワンピと、その上に羽織っているべージュのレザージャケット…といった後ろ姿があった。
     女性の前のテーブルには、病院から出されたと思われる紙コップのお茶と、お財布と少数精鋭の化粧道具しか入らさそううな小さめのバッグが無造作に置いてある。
     顔が見てないのではっきりしたことは言えないが、容姿からして若そうな女性だ。

    「ッ……」

     落谷はム~と口をへの字に曲げ、首筋のハートのアザを人差し指でポリポリ掻いた。
     この時点で落谷の頭の中に『二つ』。なにやら思うところがあった。
     その一つ目は…。
     先ほどあげたとおり女性が身に付けているものは、どれも高額なモノばかりだ。
     髪型もヒールの先の先まで相当気を使っている。というか、過剰過ぎるぐらいだ。
     かなり金回りの良い生活をしているのだろう。
     …が。
     だからといって引ったくりが狙う物件としては些か疑問がある。
     世の中は今、キャッシュレスに移行している。
     特にこの手の若くお金持ちの女性となれば、何を支払いするにもカードかスマホからの決済が主流で、手持ちの現金などほとんど無いに等しい。
     まだ、商店街を買い物しているお年寄りのほうが現金を持っているだろう。
     カードから現金を引き出す技術がある、犯罪システムがしっかり構築された「なりすまし」ならまたしも、引ったくりのほとんどが足がつけづらい現金主義の場当たり的なモノが多い。
     それも犯行は平日の、通勤で人の動きがまだまだ頻繁な時間…。

    (…とは言っても、何事にも例外はあるけどね)

     落谷は一旦浮かんだ疑問を保留にし、阿妻とともに医者が座っていた女性の相向かいの席に回り込む。そこでやっと女性の全貌を拝むことができた。
     すると落谷は、ここでまた表情を変化させる。
     その顔は驚きとも納得ともつかない、なんとも言い難い顔だ。原因は、女性の顔と手首にあるようだった。
     そしてそのまま、視線を流すようにチラリと阿妻を横目で見る。
     見られている当の本人は、視線に気づいているのか?いないのか?ピッと伸びた姿勢で席に座り、女性を直視していた。
     だが、先に現状の進行の口火を切ったのは女性のほうだった。

    「あのッ、もう帰っていいですかッ?!」

     派手めな紅を塗った口から、尖った口調が発せられた。が、すぐに阿妻が、冷静に「ダメです」と一刀両断する。

    「何でですかいッ?お医者さんには「何にも異常は無い」と言われましたッ。このあと用があるんで、早く向かいたいんですけどッ!」

     まくしたてるような早口。口紅のみならず化粧全体が濃いので、更にキツい印象に感じる。
     阿妻は掛けている眼鏡の中央を人差し指と中指でクイッと上げると、女性をジッと見直した。

    「今の状況を解ってますか?貴女は引ったくりに遭ったんですよ?」

     その眼力に女性は一瞬たじろぐ。が、すぐに応戦に出る。

    「そんなの解ってますよッ。でも、何も取られなかったしッ。本人がいいって言ってるんだから、いいじゃないですかッ」

    「それでも貴女は犯罪に合い、怪我をしました」

     阿妻の視線が、女性の顔から右手に移動する。そこには、阿妻の頬に付いているガーゼと同じ大きさのモノが付いていた。
     引ったくりに突き飛ばされた頭を打ったといっていたから、その時に手を擦りむいたのかもしれない。

    「私が通りかからなければ、もっと酷いことになっていたかもしれないんですよ。どうか犯人検挙に、ご協力ください」

    「酷いこと」っと阿妻が口にしたとたん、女性の体がビクッと反応した。
     強気だった顔は曇り、正面を向いていた視線がテーブルに置いてあったバッグに流れる。

    「…助けてくれたことは感謝してます。だけど、私にだって都合があるんです」

     声も小さく弱々しくなる。引ったくりに会った恐怖は、十二分に感じているようだ。
     まあ、普通の反応だろう。反対に今までがおかしかったのだ。

    (…となれば、その恐怖よりも上回る『何か』が、その『用』にはあるってことだな)

     今まで口を挟まず二人の様子を伺っていた落谷だったが、ここでやっと口を開いた。



    #オリジナル #創作 #オリキャラ #刑事 #小説 #挿絵 相棒 #バディ #ミステリー #推理 #事件
    神嘗 歪
  • オリジナル小説「深海の天秤」一章 ファーストインパクトの挿絵⑧誘導するように前を歩いていた阿妻に、落谷は横に並ぶ。
     病院内は人が多いはずなのに、遠くで打ち寄せる細波程度の音量しか周囲の雑音は入ってこない。代わりに、薬剤や除菌アルコールなどの混じった独特の匂いが鼻につく。
     落谷たちは長く白い廊下を歩きながら、受付の前から始まった会話を続ける。

    「まあ、資料見て知ってると思うけど一応自己紹介ねっ♪俺、落谷 皐(おちや さつき)、ピチピチの35歳。丁度、ヒナちゃんとは10歳差だねっ」

    「ご丁寧にありがとうございます。でも、35はピチピチとは言わないんじゃないですか?」

     阿妻は眼鏡越しに、横目で落谷を見ながら歩く。どうやら阿妻は、話す相手をガン見する癖があるらしい。

    「気持ちが若々しければ言うでしょ」

     おどけたように首をすくめる落谷。

    「「若々しい」と言っている時点でアウトでは?」

    「ヒナちゃんてば、初対面でもハッキリ言うね~~ぇ」

    「その点に関しては、あまり周りから注意されたことがありませんでしたから」

    (……いや、たぶん遠回しにイヤミ混じりに言われてるとおもんだけど。)
    「ん~~っ、『官房長の息子』だから言われない?」

    「でしょうね。」

    (やっぱり。気づいてないのか、流しているのか…)

     淡々と喋る阿妻。
     先ほどもそうだが、自分が『七光り』だということに、まったく優越感も劣等感も感じていないようだ。
     ただただ『七光り』という利点を、ハサミやペンのように「そこにあるから使う」「必要だから使う」といった感じだ。
     だが、感じてないということに関しては落谷も負けてない。
     落谷の視線が、阿妻の頭の天辺にいった。

    「俺、身長188cmだけど、ヒナちゃん低いよねーぇ。175ってところ?」

     普通なら、背の低い男性はこのての話は嫌がるのでタブーとされているが、落谷はあえてする。
     阿妻の反応は…?

    「いいえ、171cmです。」

    …と、何の感情の含みもなく、更に低い実身長をサラと答えた。

    「へーぇ、そうなだー。そうすると、その着ているカーディガンもオーバーサイズに見えるけどM?ってか、何でシャツの上にカーディガン?」

    「朝、考えごとしていたら、部屋着で羽織っていたカーディガンのままで家を出てしまいました。あとこれは、元々オーバーサイズで売られていたものです」

    「アハッ…天然かッ!」

     吹き出して笑う落谷が、裏手で阿妻の肩にでツッコむ。阿妻は、また淡々と「それも、よく言われます」と返した。

    「でもそうだよね。ヒナちゃんて、ヒョロく見えるけど、さっき触った感じ結構筋肉質でガッチリしてるよね。何か運動でもやってんの?」

    「運動というほどではありませんが、刑事ですからそれなりに体は鍛えてます」

    「何か武術系もやってるんじゃない?」

    「はい。少々」

    「少々?それにしては引ったくりたちから受けた怪我も、しっかりガードしたうえでの急所を外したモノだよね?それなりに経験が無いとできないよ」

     覗き込むように聞く落谷。だが「そうですか」と返した阿妻の目は、まったく揺れない。

    「落谷さんの話し方は、まるで取り調べみたいですね」

    「そう?」

    「いや、合コンかな。そんなにグイグイ行くのが、お持ち帰りのコツなんですか?」

     そう言った阿妻の視線が、ここでやっと少し斜め下にずれた。

    「んっ?」

     小首を傾げる落谷。どうやらその視線は、落谷の首筋に止まっているようだ。

    「ああっ、コレっ?言っておくけど、キスマークじゃないから。昔からあるアザだから」

     落谷はそう言って、自分の首筋を触る。
     その首筋には、蚊に刺されて腫れた程度の大きさの赤紫のモノが見える。場所は落谷がクセでよく掻く場所だ。
     確かに見ようによってはキスマークに見える。というか、落谷のチャランポランな性格がそう見せているともいえる。
     それもそのアザ、見ればハートのような形をしていた。

    「つーぅか、なに合コンに行きまくっている定になってんの、俺?資料で既婚者じゃないって知っているだろうけど、それでもただ彼女とラブラブ~~ゥ♪ってだけかもしれないじゃんっ。良くないな~~、そういう片寄った見方」

    「そうですか?さっきの受付の女性の対応もそうですが、落谷さん、あえて特定の人間関係を作るのを避けている振る舞いをしているように見えたので」

    「……へえーっ、ヒナちゃんてはよく見てる~。それこそ、俺が取り調べでもされているようだっ♪」

     ニコッと笑う落谷。

    「…………。」

     足を止め、ジッと見返す阿妻。その手が真横のドアを指す。

    「着きました。ここに引ったくりにあった女性がいます」

    「んでもって、今回の殺人事件に関連してる…ってぇ子?」

    「はい」

     返事をすると、阿妻は引戸をゆっくりと開けた。



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    神嘗 歪
  • リモート★ハロウィン創作中の小説「深海の天秤」の登場人物で、ハロウィンのイラストを描いてみました☆


    #深海の天秤  #ハロウィン  #リモート  #モンスター  #オリキャラ  #オリジナル  #小説  #オオカミ男  #吸血鬼  #魔女  #ミイラ男  #カボチャ  #刑事  #ミステリー  #薔薇  #イラスト
    神嘗 歪
  • 小説「深海の天秤」一章 ファーストインパクトの挿絵⑦「っ♪」

     そして今、落谷は澤木課長の命令どおり、新人刑事・阿妻と引ったくりの被害者が手当てを受けている病院に来ている。
     乗ってきた車を駐車場に停めると、鼻歌まじりで人差し指にかかった車のキーをグルグル回しながら入口から受付に向かう。
     建物内は、ここら辺では一番大きな総合病院の午前中とあって、来ている患者が多い。そして平日だけあって、待合所に座っている人々は年寄り率が高い。

    「どうも-っ♪ここに、引ったくりで怪我した二人が来ているって聞いたんだけど、どこに行けば会えるかなっ?」

     内容に反して、落谷の軽いノリに不信がる受付の女性。落谷はそんな反応に慣れているのか、すぐにジャケットの内ポケットから警察手帳を出して、自分の顔と手帳内の写真の顔を照らし合わせて見せた。
     ニコッと笑う落谷。手帳を見せても、それでも受付の女性の信用度は78%と微妙な上昇で停滞してしまう。
     すると急に訝しがっていた受付の女性の表情が、「あっ」という口の開きとともに一変する。
     「んっ?」と思った落谷は、女性の視線を辿るように振り向いた。


    「落谷刑事ですよね?初めまして、阿妻 陽向(あづま ひなた)です」


     受付の女性に聞こえるように、やけに「刑事」のところを強調した言い方。そして、目の前で深々と下げた頭がゆっくり上がる。
     そこには眼鏡と猫のようなつり目が視野に飛び込んできた。

    (……澤木課長に聞いた話だと、確か25才だよな?)

     落谷は直立な姿勢の阿妻に歩み寄りながら、あからさまに品定めをするように頭の先から足の先にかけて視線を動かす。
     だが阿妻はそれに動じることなく、落谷の返事をジッと待っているようだった。
     その顔は落谷が疑問符を浮かべるほど童顔。十代だって言っても信じてしまいそうなほどだ。
     髪は色素の薄いブラウン。動きでフワフワ揺れるほどのカールがかっている。仕事上、染めることもパーマをかけることも基本御法度なので、たぶん地毛なんだろう。
     服装は、シャツとパンツが黒。形よく絞められたネクタイは麦藁色。ここまではキッチリしているのだが、何故か羽織っているのはオーバーサイズのクリーム色のカーディガン。これが更に幼さに拍車をかける。
     人のこと言えない落谷だが、服装だけいえば阿妻も刑事には見えない。
     けれど落谷と全く違うのは、その雰囲気。
     強く結ばれた口元に、ピッと伸びた姿勢。顔も減点が見つからないほど、洗練され整っている。
     一言でいえば、誰もが阿妻に持つ第一印象は「生真面目そう」だ。片や落谷は、何もかもが浮草のようにユルユル過ぎる。
     そんなユルユル落谷は「ん"~~…」と唸りながら、
    上下に動かしていた視線を阿妻の顔の正面で止めた。その整った顔の右頬には5cm × 5cmほどのガーゼが貼られている。
     カーディガンの袖から見える左手にも、白い包帯が微かに見える。
     服も汚れが目立ち、たぶん引ったくりともみ合ったときに全部負ったものなのだろう。
     ここでやっと落谷の口が開く。
     その第一声が…。


       「……陽向というより日陰じゃね?」


     これが小野塚だったら絶対にドデカい怒りマークが点灯し、澤木課長が「要らんことを…」と苦笑いする事例だ。
     が、阿妻はピクリとも表情を変えず…。

    「はい。よく言われます」

    …と言った。
     声色にも不快や初対面の緊張とかは感じられず、若人特有の感情の揺らぎが無い。
     落谷の戯言を肯定するのもなんだが、「陽向」の名前からくる暖かみを感じられない。どちらかというと、波の無い冷たい湖面…といったイメージだ。

    (これが『七光り』で『元悪ガキ』…ねぇ?)

     落谷は、阿妻の顔を覗き込む姿勢から状態を伸ばし、一歩引いた。

    「いきなり、ゴメンっ♪ゴメンっ♪君が『阿妻官房長の息子さん』?」

    「はい」

    (……反応無しかぁ)
    「いいなーぁ。お父さんが偉い人だと、色々と得することも多いでしょ?」

    「得かどうかは分かりませんが、父の親しい方々には良くしてもらってます」

    (…スゴいな~ぁ。自分で『七光り』のコネを、有効活用しちゃってますって言っちゃってるよ、この子っ)

     それでいて落谷の頭半分低いところから見上げる阿妻の目には、上位に立つ優越感といったものも一切無い。

    「俺も、ヒナちゃんのお父様の恩恵にあやかりたいものだよっ」

     両手を胸の前で開いて、軽口を続ける落谷。ここで初めて、阿妻の表情が微かにピクッと反応した。

    「………『ヒナちゃん』?」

     「おっ?」と思いながらも落谷は続ける。

    「うん。陽向だからヒナちゃんっ。それに刑事になりたてだって聞いたから、ヒヨコでヒナちゃんっ」

     今までジッと落谷を見ていた阿妻の目が、斜め下に流れる。

    「……………恩恵のほうは、落谷さんには不必要ではないですか?」

    「えっ?何でっ?」

     小首を傾げる落谷。

    「昇進とか興味無いでしょ?貴方を動かす原動力は、ただの『正義感』ですよね」

    「プ…っ!」

     新人らしからぬ阿妻の言葉に、思わず噴いてしまった落谷。刑事ではあるが、『正義感』なんて自分には程遠い言葉だろう。

    「ククク…ッ。ヒナちゃんてば表情筋死んでるのに、言うことは面白いねっ」

    そう言うと落谷は阿妻の横に回りこんで、馴れ馴れしく肩に腕を回して体を揺さぶる。

    「それもよく言われます。あと、負傷しているところが痛いです」

    「あっ、ゴメン」

     ハッと離れる落谷。阿妻は左腕をカーディガンの上から擦った。

    「少なくとも昇進目的で仕事をしているのなら、上の命令を無視して、警視庁が追っている犯罪組織【ブラッディ・ヴィーナス】のドラッグ製造工場を単身で潰したりしないでしょ?」

     ここでまた横に立つ落谷の顔をジッと見上げる阿妻。
     落谷は「ヴッ」と唸る。
     阿妻が言っているのは、約半年前。落谷たちの署管轄内で、大量殺人が起きたことから始まる。
     ここではそこまでの経緯の説明を省くが、最終的にその殺人には犯罪組織【ブラッディ・ヴィーナス】のドラッグ製造工場が関係していることが判った。
     落谷はそれを阿妻が言ったとおり、警視庁からの制止を振り切って一人で潰してしまったのだ。
     いくら落谷でも、この後の責任問題に発展するのは覚悟した。でも不思議なことに、澤木課長含めた多数の上司にコッテリお説教食らったぐらいで、後は大したお咎めは無かった。
     「まあ、日頃の行いが良かったんだろうっ♪」と、一課の部屋で呟いた落谷に、周りの人間は全員「それは絶対に無いッ!」と心のなかで叫んだものだ。

    「……ヒナちゃんてば、よく知ってるねー。」

     なんとも言えない顔で阿妻を見返す落谷。

    「はい。これから組むバディの人となりを知るのも仕事の一環と思い、事前に澤木課長から落谷さんの資料をいただきました」

     それを聞いた落谷は、勢いよく阿妻がいる側とは反対方向を向く。

    (やっぱ澤木さんッ。初めからヒナちゃんと組ませる気だったじゃないかよッ。それも要らんことまで教えてッ)

     ここにはいない澤木課長に向かって、口を尖らす落谷。でもすぐに顔を戻し「まっ、いいや」と投げた。

    「で、澤木課長に聞いたんだけど「引ったくりにあった被害者が、今回の殺人事件に関係している」って、進言したんだって?」

    「はい」

    「その心は?」

    「引ったくりの被害者に会っていただいてからお話します」

     そう言うと阿妻は受付の女性に「お世話になりました」とばかりに軽く一礼をし、方向を変えると落谷に「こちらに」と促して歩き始める。
     頭を下げられた受付の女性は阿妻の紳士的な対応に頬をうっすら桃色に染めた。が、次に落谷が「じゃねー♪」とチャラく片手を振ると、一気に冷めたようにゲンナリとした。
     どうやらこの受付の女性の好みは、誠実な男性のようだ。


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    神嘗 歪
  • 小説「深海の天秤」一章 ファーストインパクトの挿絵⑥弾かれたように顔を上げた小野塚。その大きく開いた口に、一口チョコがポンッと放り込まれた。放り込んだのは、もちろん落谷だ。

    「モグッ…!」

     上質なミルクチョコレートの甘さが口いっぱいに広がる。そして落谷は気づいているか分からないが、放り込まれたさいに、小野塚の唇に落谷の長い指がかすった…。

    「使った脳に糖分充電っ。駅に行くんだろ?いってらっしゃい」

     手を胸の前でヒラヒラさせる落谷。

       ガタッ!
    「…~~~~ッ!…はい」

     小野塚は顔を真っ赤にして、勢いよくイスから立ち上がる。すると、どっからともなく長岡が凄い形相で二人の元に駆け寄って来た。

    「小野塚さんッ!捜査に行くんですよねッ?俺も同行しますッ!!」

     目の前にいるのにもかかわらず、大声で発言する長岡。ポー…としていた小野塚は、ひとピシャ遅れでハッと我に返り、「そ、そうね。お願い」と言ってワタワタと用意を始める。
     小野塚が用意している横で、長岡が落谷をキッと睨んだ。その目は『ライバル視』している目だ。
     でも落谷のほうは軽く笑い返すのみ。その余裕な態度が、更に長岡をイラつかせる。

    「早く行きましょうッ!」

     そう言うと、長岡は小野塚を先導するように大股で部屋を出ていった。
     残った落谷はデスクに顔をうっ伏して、肩を震わせながら笑いを堪えている。
     部屋の上座では、デスクの前でその一部始終を見ていた澤木課長が、ヤレヤレといった表情を浮かべていた。


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    神嘗 歪
  • 小説「深海の天秤」一章 ファーストインパクトの挿絵⑤「落谷さんッ。今の今まで何していたんですかッ?!」

    「何って…今回の事件の捜査に決まってるじゃん」

     腹立つほどキョトンとした顔で返してくる落谷。今度は小野塚の左拳も震えだす。

    「捜査といいますが、一通り現場と被害者を見た後、すぐにいなくなったじゃないですかッ」

     そう、落谷が現場にいたのは十五分程度だ。
     それも小野塚含め六人ほどの一課の刑事が初動捜査にいたが、仲間たちの事件の見立てには加わらず、被害者の身体中にある無数の外傷を一点一点確認していた。
     本当に、被害者は酷い有り様だった…。
     ほとんどが酷い打撲痕。顔は赤紫に腫れあがり、打撲から裂傷したところから血が滲んでいる。たぶん泥だらけの服の下も骨が折れていたりと、酷いことになっているだろう。
     だが最終的な死因はその後の検視によると、まるで鎌のような鋭利な刃物で、右脇を引っかけるように太い動脈を切り裂いたことによる大量出血だった。
     「変わった刺傷だな。まあでも財布が無くなっているし、複数で揉み合った形跡もある。たぶん集団で物取りをして、被害者をリンチしたあげく刺し殺した…ってとこだろう」と、落谷の後ろに立っていたベテラン刑事の一人が言った。小野塚もそれに同意見だ。
     でも落谷は返事をしなかった。そして、そこからフラ~ァといなくなったと思ったら、その後一度だけ、現場付近の立ち入り規制を掛けている初老の地域警察官とくっちゃべっているところを見かけただけで、今の今まで落谷の姿を見ることはなかった…。

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    神嘗 歪
  • オリジナル小説「深海の天秤」一章 ファーストインパクトの挿絵④〈小説「深海の天秤」の文章〉

     テレビに映し出されたのは……夜、民家の玄関先のようだった。
     画面の中央には、家の前の道と玄関先との間ギリギリのスペースに停められた白のワンボックスがある。が、人など写っている様子はない。
     それも、駅の防犯カメラから比べるとその映像は荒く、始めてこの映像を目にする捜査官たちは「コレが、なんだっていうんだ?」と訝しげに目を凝らした。
     周りの思っていた通りの反応に、落谷は下げた手で頬杖を付きながら薄笑みを浮かべる。それを横目で睨んでいた小野塚は何か嫌な違和感を感じ、『一度は見た映像』だが着席しながらもう一度凝視した。
     少しすると映像の隅、ワンボックスの後ろの道を誰かが横切った。
     薄ぼんやりした外灯が照らしたのは、濃紺のブレザー。その前の駅の映像を見ていた皆、それがあの山口さんに向かって怒鳴った女子高校生だと連想した。それを確信させたのは、十数秒遅れて現れたスーツ姿の男性。
     こちらも見覚えのある服装から、たぶん駅から追ってきたであろう山口さんだろうと思う。
     でも確信しているのに、『たぶん』だ。
     何故かというと、肩から上が見切れている。会議室の中から誰となく「なんだよッ。顔、映ってないのかよッ」とボヤきが響いた。
     唯一駅と違うのは、女子高校生の肩から下げているカバンがカメラの正面を向いているので、それに猫のヌイグルミのチャームホルダーが着いていると確認できたことぐらいだ。

    「これは、公園から100メートルほど離れた民家に設置してあった防犯カメラの映像でーす。日にち的にも時間的にも、駅から歩いてきた女性とそれを追ってきた被害者と思ってもいいでしょう。以上でーす」

     急に話が終わり、捜査員ほぼ全員が「はッ?それだけッ?」という顔をした。
     確かに、公園には防犯カメラが設置していなかったので、そこまでの被害者の足取りを確定させる証拠にはなるだろう。だがそれなら、始めの駅の映像を見るだけで、これは口上で言うだけで十分だったのでは…と思ってしまう捜査員。
     署内検挙率No.1の落谷だから、どんな証拠を見せてくれるのだろうと期待していた分、怒りを覚えるほどそれはヌカ喜びに終った。落谷の映像はそのまま受け流され、別の捜査員が自分の捜査内容を発表し始める。

    「…チッ。勿体ぶってコレかよッ」

     そんななか、落谷の前の席で悪口がボソッと聴こえる。
     声からして、次の日に七光り新人刑事の噂話で恥をかくことになる刑事だろう。

    「だーかーらぁ、「オマケ」って言ったじゃ~~ん♪」

    「……「オマケ」って、それ、私に対してのイヤミですかッ?!」

     なぜか悪口を言われた落谷は鼻歌まじりで、駅の映像を見つけた功績を称えられているはずの小野塚が隣で機嫌を悪くしていた。
     心の中で「ただの「オマケ」とは思えないッ」と呟く小野塚。そう、落谷が意味なくこんなことをするとは思えない。

    (…だって、あの時だって…)

     小野塚は、さっきの民家の防犯カメラの映像を『初めて』見せられたときのことを思い出していた…。
     ……………
     ………
     …


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    神嘗 歪
  • オリジナル小説「深海の天秤」一章 ファーストインパクトの挿絵③「山口さんが通勤に使用していた駅の防犯カメラから、午後10時過ぎ、犯行時間と思われる一時間前に山口さんの姿を確認しました。そのとき山口さんは、女子高校生と思われる人物と何か言い争いをしていたようです。近くにいた駅員も、それを目撃していました。」

     事件発生から三日後。
     この事件で初めての、一課全員で情報共有する捜査会議で、凛とした立ち姿で小野塚が自分の捜査した内容を発言する。

    「コレがその時の防犯カメラの映像です。」

     小野塚は続けてそう言うと、澤木課長が座っている会議室上座の斜め横、設置してある大画面のテレビの横に立つ長岡に向かって目配せをした。
     長岡は小さく頷くと、持っていたリモコンを操作する。
     黒い画面からパッと切り替わり写し出されたのは、帰宅ラッシュから比べると人がまばらになってきた駅入口付近の映像。ちなみに、その映像には音声は入ってない。
     その場にいる捜査員たちの鋭い眼光が、皆映像内に山口さんの姿を探した。が、映像冒頭にはそれらしい姿は無い。
     その山口さんが現れたのは、映像が流れ始めて三十秒ほど経ってからだった。
     駅利用者の一定の出入りの流れの中、それを横切るように映像の右隅から左隅に駆け込んでくる鞄を持ったスーツ姿の男性が一人。その横顔が山口さんだと気づいた捜査員たちは視線で追う。
     すると山口さんは、駅入口隅に立っている濃紺のブレザーを着た女性の元に駆け寄った。
     どうやらその女性は、映像が始まる前からそこにいたらしい。多分コレが小野塚が言っていた女子高校生だろう。
     髪型は肩から二十センチほどのロングストレート。体型は細みの中背。肩には学校指定と思われるカバンを掛けている。けれど顔は、残念ながらカメラの方向とは真逆を向いていた。
     そして山口さんは女子高校生の正面に回り込み、話始めた。が、段々と二人の様子がおかしくなる。
     どうも女子高校生のほうが、山口さんのことを嫌がっているような態度を見せ始めたのだ。


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    神嘗 歪
  • 〈小説「深海の天秤」の文章〉

    「待ってくださいッ!」

     落谷と澤木課長が、同時に声のするほうに振り向く。するとそこには、さっき病院の件で質問を投げ掛けた小野塚が立っていた。
     二人を見つめる大きな瞳は、黒曜石のように漆黒を帯びている。
     後ろ手に一つ縛りした髪も艶やかに黒く、女性にしては長身の細みの体を覆うパンツスーツも黒い。
     化粧気はあまり無いが、それでも美人の部類に入る容姿をしていた。
     「どうした?」と声をかける澤木課長に、小野塚は一歩前に歩み寄った。

    「バディとして落谷刑事と阿妻刑事を組ませることに、私は反対ですッ!」

     その勢いに目をパチクリさせる二人。でも落谷のほうは、これは好都合とばかりにそれに乗っかった。

    「だろッ。あり得ないよな!」

     が、小野塚はそんな落谷に見向きもせず、更に一歩澤木課長に食い寄る。

    「あり得ませんッ!阿妻刑事が可哀想ですッ!」

    「……えっ?そっち?!」

     思わず小野塚を二度見する落谷。すると今度は小野塚が、尾っぽのような一つ縛りを振り回しながら落谷のほうに顔を向けた。それも貫くような鋭い目で。

    「確かに落谷刑事は優秀で、この署でNo1の検挙率を上げていますッ。ですが、そのやり方には疑念を感じざるをおえませんッ。捜査方法があまりに自分勝手過ぎるッ。まったくチームワークをとる気が無いッ。そんな人に前途有望な人材を任せてはおけませんッ」

     落谷はそれにキョトンとするも、すぐに腕組みをして考え深げな顔をしてみせた。

    「うんうん。三年経って美華ちゃんも言うようになったね。……あれっ?もしかして、美華ちゃんとバディ組んでいたときに出張先の離島に置いてけぼりしたこと、まだ怒てる?」

     落谷の無神経なその言動が、小野塚の怒りの火に更なる油を注ぎ込んだ。
     みるみる赤く高揚していく小野塚の顔。横では澤木課長が、微笑みながらも「また要らんことを…」と思っている。
     そう。小野塚も、新人のときに落谷とバディを組まされたことがあった。
     そのとき落谷は、犯人が逃げ込んだとされる離島で捜査に没頭し過ぎて、離島から犯人が離れたと判ったとたん小野塚の存在を忘れて船に飛び乗った。
     おかげで小野塚は、一週間に一回しか来ない送迎船を一人で待つはめになったのだ…。
     ただこれは小野塚だったからと言うわけではない。今まで落谷と組んだ刑事は、新人だろうとベテランだろうと似たような末路を辿っている。

    「いくら先輩だからと言ってッ、立場上同格なのですから下の名前で「ちゃん」呼ばわりは止めてくださいッ!」

    「えっ?なに急に???前々から呼んでいただろ?」

     小野塚の剣幕に落谷は怯みながら、頭の上に無数の疑問符を飛ばす。
     横でまた澤木課長が「そういうことじゃなくって…」と思いつつも声たは出さない。

    「もういいですッ!阿妻刑事とは私が組みますッ!」

     そう言い出した小野塚。だがその後ろから、また「待ったッ!」の声が上がった。

    「ちょッ、待ってくださいッ。そしたら小野塚さんと組んでる俺はどうなるですかッ?!」

    声を上げたのは、阿妻が来る前まではこの課の最年少だった、小野塚の現バディである長岡。
     一瞬、「忘れてた」というような顔をする小野塚だったが、意地になっているのか「長岡くんは落谷さんと組めばいいでしょッ」とメチャクチャなことを言い出した。

    「嫌ですよ、落谷さんとなんかッ。苦労するのが見え見えじゃないですかッ。」

    「じゃあ、まだ刑事のイロハも分からない阿妻刑事が苦労するのはいいのッ?!」

     ギャアギャアと言い合いを始めた二人。

    「………コイツら後輩のくせに、先輩である俺に対しての扱いがヒドくないですか~ぁ?」

     話の中心人物なのに蚊帳の外にされた落谷は、苦笑いで澤木課長に向けてボヤく。

    「はははっ。それは落谷、因果応報、自業自得ってやつだなぁ。小野塚は俺がこのあと納得させるから、お前は今のうちに病院に向かってくれ」

     澤木課長は微笑んだまま、アゴで出口のドアに向けてしゃくった。
     落谷は「はいはい」と軽い返事をすると、首筋を掻きながらドアに向かってゆっくりと歩き出した。

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    神嘗 歪
  • オリジナル小説「深海の天秤」一章・ファーストインパクトの挿絵①オリジナル小説「深海の天秤」の文章

    「あれ?今日じゃなかったか、あの例の『七光り』が俺らの一課に来るの?」

     デスクが並ぶ捜査一係の部屋。二十人近いスーツ姿の厳つい男たちが今日の捜査会議が終わり、慌ただしく捜査に出るための準備をしている。その中の一人が思い出したかのように声を上げた。

    「『七光り』…ああ、官房長の息子かぁ。何だーぁ、初日から重役出勤か-ぁ?!」

     声を上げた男の隣が、部屋の柱に掛けてある置時計を睨んで言った。不規則な刑事の仕事上、あってないような仕事開始時間だが、その時間を一時間以上過ぎている。
     それを皮切りに周囲の四人ほどが混じって、まだ見ぬ官房長の息子への不平不満が漏れ始めた。

    「つーうか、なんでキャリアのボンボンがこんな地方の警察署に来るんだ?パパのお膝元でヌクヌクと机の前に座っていればいいだろッ。どうせ目を瞑ってたって昇進するんだから」

    確かに同じ関東エリアではあるが、男たちの職場は東京の喧騒にはほど遠い。

    「反対に父親の目が届かないから、コッチに来たんじゃないのか?偉いパパの真下だと、手へ抜けねぇからなぁ」

     それを聞いていた内一人が…

    「なんかそれだけじゃないらしいぞ。……噂だが」

    語尾を小さくしながら、口角の片方を吊り上げて周囲に向かって手招きをする。どうやらここからは、もっとディープな話になるみたいだ。
     話に加わっていない周りの刑事たちも、聞き込みをする刑事の性か「馬鹿馬鹿しい」と思いながらも耳をそばだてている。
     その中には、刑事にしては一人だけ長Tにシャケットというラフな格好の落谷も自分のデスクでパソコンに視線を向けたままで聞いていた。

    「その『七光り』、実は養子らしんだ。だが養子ってぇのも表向きで、官房長が外に作った子で、本妻に子供ができなかったから引き取ったって。そんな生い立ちだからか、昔はかなりの悪ガキで、いくつも警察沙汰を起こして全部親父にモミ消してもらったらしい」

     聞いていた全員の表情が一気に歪む。

    「はぁっ?何でそんなヤツが刑事になってんだよッ!」

    「親父のコネを使えば人生も仕事も楽勝と思ってんだろ、そのバカ息子は」

    「親父の方も、そんな恥さらしを近くに置きたくなかったんじゃないか?だから一旦地方に飛ばした…とか」

     どんどん沸騰する噂話。聞いていた落谷は、パソコンから視線をズラすことなく小さな溜め息をつく。
     どこで仕入れたネタか知らないが、憶測ばかりで聞くに絶えない。真実を追いかけて事件を解決しなければいけないはずの刑事とは思えない内容だ。
     とは言え、そんな同僚の幼い思考をたしなめる…なーぁんてしちめんどくさいこと、これぽっちもする気は無い。
     そういうことは真っ当な人間がすればいい。そう、人徳のある捜査ー課の課長、澤木などが適任だろう。
     そう思っている落谷の目の前を、巌のような体つきに、大仏様のような顔を乗せた澤木課長が横切った。
     向かった先は案の定、汚水のような噂を垂れ流している部下のところだ。

    「お前たち、まだ捜査に行かないのか?」

    声がしたとたん、部下たちは驚いて座っていた椅子から跳ね上がる。
     気配を消して近づく。澤木課長の得意技だ。話に夢中になっていた奴らは、真後ろで声を掛けられるまで気づかなかった。
     その様子にたまらず失笑する周囲。

    「いえ…ッ。今、行こうと…」

     噂をしていた一人が、しどろもどろに言い訳をする。その様子はまるで、担任に怒られている生徒のようだ。
     だがそこは小ズルい大人。別の一人が話の矛先を変えようと澤木課長に質問を投げた。

    「あ…あのッ。今日来るはずだった新人はどうしたのですか?」

     新人の遅刻。いくら警察庁の御偉いさんの息子とはいえ、初日からの問題行動に澤木課長も頭を痛めているはずだ。
     澤木課長がそのことを嘆くにせよ、庇うにせよ、「課長も苦労が絶えませんね」と同調の一つでもみせれば問題をすり替えただけでなく、周囲に自分たちが喋っていた噂の信憑性が高まる。まだ見ぬ甘ったれ七光りの心象を最大限まで悪くすることで、自分たちを正当化することができる。
     そんな見え見えの小細工を落谷は半笑いを浮かべ「さて、どう返ってくるかな」と見物していた。
     けれど澤木課長からの返答は、その場にいた全員が思っていたものとはまったく別のものだった。


    「ああ。阿妻ならさっき連絡があって、今病院にいる」 


     まさかの展開に噂していた者たちは沈黙。代わりに近くにいた捜査一課唯一の女性、小野塚が犬の尾っぽのような一つ縛りの黒髪を揺らしながら聞く。

    「病院…というと、何かの病気ですか?それとも事故?」

     澤木課長は首を横に振るう。

    「いや、事件だ。」

    「ッ!?」

     「事件」という言葉に、室内にいた刑事たちが一斉にザワつく。そのなかで澤木課長は話を続けた。

    「阿妻は署に向かっている途中で、複数の男による引ったくりの現場に遭遇したそうだ。そこで阿妻は犯人を捕まえようともみ合いになり、身体の数ヶ所を負傷。被害者の女性も、そのとき犯人たちに突き飛ばされて横転。犯人たちはその場から逃走したそうだ。今、二人とも近くの病院で手当を受けている」

    「それで新人…阿妻の容態は?」

    「大丈夫、軽傷だ。歩行もできる。」

     ホッと胸を撫で下ろす小野塚。
     犯人を取り逃がしたことは残念だが、複数の犯人相手に立ち向かっていったことは新人の刑事として称賛に値する。そしてこのことで、例の噂は腐食されたどころか七光り阿妻の心象は180度一変した。

    「阿妻みたいな正義感溢れる有望な新人が、この課に入って来てくれたことは喜ばしいことだな」

     元々細い目を更に細めて笑う澤木課長。
     噂を流した男たちは、周囲からの白い目にいたたまれなくなって「そ、それじゃあ俺たち、捜査に向かいます…」と子声で発っしながら、すごすごと部屋を出ていった。
     それを見て他の刑事たちも我に返ったように準備を進め、次々と各捜査に向かうべく退室し始める。
     そんななか、まだ部屋にいた落谷の背筋に嫌な予感がゾワッと走った。
     見なきゃいいのに、嫌な予感がする方向に顔を向ける。……すると澤木課長が、先ほどより更に仏のような慈悲の笑みで此方を見ていた。

    (………ヤバい)

     落谷は「何も見ませんでした」といった澄ました顔をユックリと戻し、デスクから立ち上がると出口に向かって歩き出そうとする。

     そんな落谷の背後から…

    「落谷。ちょっといいか?」

     澤木課長の声が肩を叩く。

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    神嘗 歪
  • オリジナル小説「深海の天秤」のプロローグ挿絵オリジナル小説「深海の天秤」プロローグ文章

     「許さないッ!
          許さないッ!
           『お前』を絶対に許さないッ!!」

     
     そう叫んで、腹這いの状態で伸ばす手の先。赤く揺らめくボヤけた視界の中心に、黒い人影が立っている。
     人影は、腹の底から汚濁を吐き出したようなその叫びに一度だけ振り向いた。
     憎悪に染まった瞳で睨みながら人影に向かって必死に手を伸ばす。が、身体全体は極端な酸素欠如から力が入らず、起き上がることもできない。
     人影はきびき返すと、自分に向けられた手を背に歩き出した。
     
     
    「…待てッ!…ま…てッッ……」


     脳にも酸素欠如の影響が出始め、声が弱々しくなり意識が朦朧としていく。伸ばした手も力を失い、上げていた顔とともに地にパタリと伏した。
     そして遠ざかっていく人影が視野の隅でフェイドアウトしていきながら、ここでこの過去の記憶は一旦終演の幕を閉じた……。


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    神嘗 歪
  • オリジナル小説「深海の天秤」の表紙オリジナル小説「深海の天秤」のあらすじ
    署内で検挙率No1の一課の刑事・落谷。だが、なぜか誰ともバディーを組もうともせず単独を好んだ。そんな落谷が相棒にした相手は、現場経験も無い、色々と変な噂が絶えない七光のお坊ちゃん刑事だった。

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    神嘗 歪
  • ドラマ「私たちはどうかしている」を描いてみた♪ハマる予感しかしない!!
    原作を読まなくてはッ(*`Д´)ノ!!!

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    神嘗 歪
  • 禁断少女うぐぅ #月宮あゆ ちゃんミステリー

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    湯淺吉極(@絵のお仕事求職中)
  • ヴィクトリアン・ミステリー水彩、2006年頃制作。
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    よーぴーワークショップ
  • ミステリー

    #プリパラ #真中らぁら
    jwomxm
  • 4パロディ ジルベスター&トゥイーティーミステリーけい助
  • オリビアのミステリー #オリビアのミステリー

    てけとう
    ディル+α
  • ミステリー番組とネフライトミステリー番組が好物のネフライト。夢中になりすぎてしまい、グレイヴは大変です。 #オリキャラ #創作 #オリジナル  #4コマcate_dng
  • 10B通りの幽霊より ##創作
    #オリジナル #創作 #大正時代 #日常系 #ミステリー #幽霊 #小樽

    Twitterに載せていたらくがきのまとめです。
    大正時代を舞台にB通りで育った幼馴染とそこに住む幽霊の日常系ミステリー。
    □K@いまりょうかい
  • 7モダンミステリーライク ##診断 ##創作冥々
  • 祝!スクストアニメ開始&サービス開始1000日!1月7日0:30よりBS11やAbemaTV、TOKYO MXその他の局でもアニメがスタートするスクールガールストライカーズのヒロインの美山椿芽ちゃん!本家はスマホゲームです!

    かわいい女の子たち(本家ゲームでは現在36人)がオブリと呼ばれる怪物的なものを倒し、平和を守るストーリーです!私が今一番はまってるもので女の子たちがかわいいだけでなく、日常のほのぼのとしたストーリーや巧妙なミステリーなどのストーリーが面白く、そして女の子たちを自分好みに着替えさせるなどして仲良くなれるゲームです!本日1月3日にサービス開始1000日を迎えました!やり込むほどおもしろく、はまっていく最高のゲームなのでアニメ視聴はもちろん、ゲームもぜひやってみてください!スクストで検索! #スクールガールストライカーズ #スクスト
    ストンスト
  • 【艦これ劇場 552】ミステリーは突然にゆー田一少女の事件簿

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    赤坂皐月
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  • ミステリー・ガールけけちゃん