かわいいあのこ
最初は可愛いからだけだった。ちょっと相手してもらうだけと思ったんだ。
なのに、バレンタインにはチョコくれるし。誕生日には、好みばっちりな誕生日プレゼントをくれるし?
分かってたんだ。あの人が好きなんだって。
幼馴染と聞いた、厳つい顔した長身の男といかにも女子に人気っぽいイケメンがいつも傍で見守るようにいて。
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努力家の彼女は、ついにローズクイーンになってしまってますます人気は鰻登り。
幼馴染達は、更にガードを固め、悪い虫がつかないようにしているっぽい。
いかにして、彼女に近づくか、それが問題となったわけだけど。
ま、俺はその隙をつくだけだし?
「おねーさん。ぐーぜん。ねぇ、ついでに途中まで一緒に帰らない?」
その時、向けられる笑顔とか仕草とかに胸が苦しくなったりするけどそれを笑顔で隠して、一緒に帰る。
喫茶店に寄ろうとも思ったけど、少しの間だけでも二人きりでいたくて。
話題なら、たくさんある。雑誌や口コミや街をブラついてるときに見つける、最近流行ってるスイーツが激ヤバとか
あのブランドの新作がマジヤベー。とか、そういう他愛の無い話。
たまたま、幼馴染の一人が事故を起こし入院して、たまに見舞いに行くらしい。というよう話になった。
「もう、いっつも病室にいないし、探すの大変なの!!」
と言葉ではそう言いながら、彼のことを話す彼女がとても楽しそうだった。
と、同時に気づいてしまった、この気持ちに。
彼女が好きな人と幸せになればいいなんて、そんな大人にはなれなくて。
でも、彼女が見てるのは俺じゃなくて、あの人で。
そう、俺じゃないんだ。
「じゃ、あたし、こっちだから。」
彼女が俺を呼ぶ声がして、我に返ったときには、もう彼女の家に向かう分かれ道で。
家路に向かうその姿に家まで送るって言葉が喉につまって出てこなくて、曖昧な挨拶をして、分かれた。
明日は、彼女の高校生活最後のバレンタイン。彼女は彼にチョコをあげるんだろうなんて、思いながら、真冬の寒さに体を震わせながら、俺も家路についた。
彼女は、またくれるんだろうか、可愛くラッピングされたチョコを。