金魚
ーーああ、金魚は綺麗だ。
青白い顔の青年は呟く。夜半の、死んだ街で黒い泡を吐いた。
青年は着流しのまま、ゆっくりと勿体つけるように死んだ街を歩いた。
死んだ街は息を吹き返さない。街灯は欠けてネオンは焼き切れ、シャッターは下がったままだ。
秋の終わりを思わす乾いた風が、青年の頬を撫でた。
「『きんこんからりと鐘が鳴り、猫はにゃあと鳴いた』」
意味無く、遠い昔に目を通した雑誌の一部を呟いた。
揺らめく翠の影に、きらりとまあるく光る粒を見た。
「ほれみろ、卵がついてやがる」
青年は低く呟き、粒を摘んだ。く、と指先に力を込めれば、粒は光る煙を吐き出してきゃらきゃらと割れた。
着流しの袖が、過ぎる風の形を表すように舞う。
動作の跡をなぞるよう後を引く、粘度の高いそれをただ観ていた。