Endless roadあるところにひとりの男がおりました
男は頭からマントをかぶり、手にはつえを持っています
その男がどこからやって来たのかは分かりません
男はある目的を胸に、旅をしていました
男は旅をしています
あるとき、耳の長い少年が声をかけてきました
「ねえ、君はどうしてつえをついているの?」
男はこう答えました
「私は足が不自由だからだよ」
男は曲がった足をさすりながら言いました
=男は昔、ある国の王様でした=
男は旅をしています
あるとき、羽の生えたおじいさんが声をかけてきました
「おぬしはどうしてマントをかぶっているのじゃ?」
男はこう答えました
「それは、私の顔が醜いからだよ」
男はマントを深くかぶりながら言いました
男は旅をしています
あるとき、尾びれの生えた女が声をかけてきました
「あなたはなぜ旅をしているの?」
男はこう答えました
「ひとりぼっちはさみしいからだよ」
男は遙か彼方を見つめながら言いました
=男は昔、大きな罪をおかしました=
花ほころぶ丘をこえ、
砂塵の嵐をぬけました
海を渡り、広い草原にたどり着いたところで男は腰をおろします
野原にはゆるやかな風が吹いていて、地の息吹を感じました
夜になると星が集い空でまたたきます
そのとき、男の頬をひとすじの涙が伝いました
果てしなく広がる空と大地にふれ、男は失ってはじめて気づきました
その昔、王様であった男は大きな戦争を起こしました
なぜなら“世界で一番”の人間になりたかったからです
王様は自然を壊し、生き物をころしました
何の罪もない人々をたくさんころしました
そのうち、戦に勝ち続けた王様は嘘をつくようになりました
自分こそが神だとうそぶき全てを操ろうとしたのです
すると本当に神が現れました
現れて、王様の願いを叶えてくれました
男は旅をしています
自分の愚かさを悔やみながら旅をしています
ガケから落ちてまがった足はとうとう動かなくなりました
獅子に喰われた顔半分は、もう見る影もありません
男はマントの奥で声を震わせました
「だれか…私を助けてください」
でも誰も答えてはくれません
この世でただひとりになってしまった男は、自分以外の人間を探す旅をしていました