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flowering(カトジタ)
強さにも様々な種類がある。それは単なる力の強さや、極めた技の強さ、そして、心の強さだ。カトルは自分の強さはそのうち、心以外の強さであることをジータに会って理解した。
であるのなら、最後の一つを持つジータとその仲間たちに着いていき、最後の強さを知れば良い。そう思っていたのだが、話はそう簡単にはゆかなかった。
「ランスロット、ヴェイン、カトルに騎空艇の中、案内してあげてね!」
「今日はパーシヴァルたちと仕事か。気をつけて」
「ジータ、怪我すんなよ〜」
「もちろん!いってきます!」
手を振り走って行くジータは停泊した島へと降りていき、その周囲を彼女の仲間たちが囲むようにしながら、街の方へと向かって行く。その姿を見送りながら、カトルはじろりとランスロットとヴェインを見上げた。
「僕の予定にあなた方とのお喋りは含まれてないんですけど」
「おっ、カトルってばやっぱジータいないと不機嫌だなー!……もしかして、ジータのこと気になってるとか?甘酸っぱいな〜!」
「人の話聞けよおい!」
ヴェインはにやにやと笑ってカトルの肩を遠慮なくばんばんと叩き、カトルはそのヴェインに声を荒げるも全く気にした様子はない。かわりに、ランスロットがまあまあとカトルとヴェインの間を取り持つ。
「ヴェイン、あまりからかってやるな。カトルは来てから割とジータについて回って仕事をすることが多かっただろう。まだグランサイファー内のことも自室と食堂くらいしか覚えてないんじゃないか?」
「あとは風呂とか厠くらいだよな?甲板に出る最短ルートとか知らないとちょっと不便か」
「そうだな。あとは……」
ラフな格好の二人はカトルの頭上で会話をしており、それが余計にカトルを苛立たせた。すぐにこの二人——流石にヴェインは無理かも知れないがランスロットぐらいの身長なら追いついてやると心に誓いつつも、二人はカトルを置いてけぼりにしたまま会話を続けている。
「あの」
不意に、カトルは問いかけた。
「……お二人って、随分とジータさんに頼られてますよね」
その問いかけに二人は瞠目し、それから、声を揃える。
「そうかな?」
「そうかー?」
「……でなければ、あの人はまだ真意の読めない僕を押し付ける相手にあなたがたを選ばない」
信頼なんて築く前だ。だというのに彼女はカトルをこの場所に置き去りにしたのだ。
全員殺すと脅したことだってあったろうに。
「あまりジータは気にしていないと思う」
「いいか悪いかはともかくとして、来るもの拒まず精神だよな」
二人が笑いながらそんな会話をしているのを聞きながら、カトルはそうじゃないと声を上げる。
「信頼されていますねって話です」
「そりゃ、俺たちはパーさんの仲間だから」
「パーさん?」
「パーシヴァルのことだ。さっき、いただろう、全体的に赤くて……髪型が尖ってる」
「ビィくんにいつもトサカって言われてるよな」
「赤い鎧の?」
初めてグランサイファーに乗り込んだ時に確かにカトルをじっと値踏みをするように見据えた男がいた。それが、きっとパーシヴァルなのだろう。
「強いんですか?」
「まあ、ジータよりは弱い」
「ふうん」
——やっぱり、ジータが一番強いのか。
カトルはすぐにパーシヴァルから興味をなくしたが、ランスロットは言葉を続けた。
「だが、パーシヴァルはジータの背中を任される男だ」
その言葉にカトルは瞠目し、先ほど仕事へ向かったジータの笑顔を思い出す。
理解させられると同時に、胸が痛むような気がした。
「そう、ですか」
思わずぽろりと言葉を零せば、ランスロットは肩を竦め、強気なカトルのらしからぬ様子を励まそうと言葉を紡ぐ。
「これまでよりもこれからだろ」
「そういうことだ!頑張れよ、少年」
ぽんとランスロットの手がカトルの頭を撫で、カトルの背中をバンと音を立ててヴェインが叩いた。つんのめったカトルはくそ、と悪態をつく。
「やっぱり……得意じゃないな」
*****
「あれ?カトルだ!」
「ジータさん」
帰ってきたばかりのジータは甲板で欄干にもたれて外を眺めるカトルに声をかけた。後ろに立つパーシヴァルたちには先に戻るよう伝え、彼女はカトルの隣に立つ。
その頬に切り傷を見つけ、指で触れようとするとジータは自分の頬に触れた。
「いたっ……」
「気づかなかったんですか?」
「ほかに怪我もしてたから、忘れてたのかな」
「その怪我は?」
「もうユエルに治してもらったよ」
これも治してもらわなきゃと笑う彼女は、そういえばとカトルに問いかける。
「今日、楽しかった?」
「楽しい?」
「えっ、楽しくなかった?ランスロットとヴェインって面白いよね?」
「……まさか、それであの二人に?」
「うん!カトルが少しでも楽しくなるかと思って」
ダメだった?と上目遣い気味に見上げるジータに、カトルははあと息をついた。
「……ほんっとに、無防備すぎる」
ぽつりと呟いた言葉を誤魔化すようにカトルはかぶりを振る。
「なんでもないです。それより、ジータさん」
「うん?」
「おかえりなさい」
たぶん、花が咲くとはこういうことを言うのだろう。
「ただいま!」
#カトジタ
#パージタ
#ぐらぶる
強さにも様々な種類がある。それは単なる力の強さや、極めた技の強さ、そして、心の強さだ。カトルは自分の強さはそのうち、心以外の強さであることをジータに会って理解した。
であるのなら、最後の一つを持つジータとその仲間たちに着いていき、最後の強さを知れば良い。そう思っていたのだが、話はそう簡単にはゆかなかった。
「ランスロット、ヴェイン、カトルに騎空艇の中、案内してあげてね!」
「今日はパーシヴァルたちと仕事か。気をつけて」
「ジータ、怪我すんなよ〜」
「もちろん!いってきます!」
手を振り走って行くジータは停泊した島へと降りていき、その周囲を彼女の仲間たちが囲むようにしながら、街の方へと向かって行く。その姿を見送りながら、カトルはじろりとランスロットとヴェインを見上げた。
「僕の予定にあなた方とのお喋りは含まれてないんですけど」
「おっ、カトルってばやっぱジータいないと不機嫌だなー!……もしかして、ジータのこと気になってるとか?甘酸っぱいな〜!」
「人の話聞けよおい!」
ヴェインはにやにやと笑ってカトルの肩を遠慮なくばんばんと叩き、カトルはそのヴェインに声を荒げるも全く気にした様子はない。かわりに、ランスロットがまあまあとカトルとヴェインの間を取り持つ。
「ヴェイン、あまりからかってやるな。カトルは来てから割とジータについて回って仕事をすることが多かっただろう。まだグランサイファー内のことも自室と食堂くらいしか覚えてないんじゃないか?」
「あとは風呂とか厠くらいだよな?甲板に出る最短ルートとか知らないとちょっと不便か」
「そうだな。あとは……」
ラフな格好の二人はカトルの頭上で会話をしており、それが余計にカトルを苛立たせた。すぐにこの二人——流石にヴェインは無理かも知れないがランスロットぐらいの身長なら追いついてやると心に誓いつつも、二人はカトルを置いてけぼりにしたまま会話を続けている。
「あの」
不意に、カトルは問いかけた。
「……お二人って、随分とジータさんに頼られてますよね」
その問いかけに二人は瞠目し、それから、声を揃える。
「そうかな?」
「そうかー?」
「……でなければ、あの人はまだ真意の読めない僕を押し付ける相手にあなたがたを選ばない」
信頼なんて築く前だ。だというのに彼女はカトルをこの場所に置き去りにしたのだ。
全員殺すと脅したことだってあったろうに。
「あまりジータは気にしていないと思う」
「いいか悪いかはともかくとして、来るもの拒まず精神だよな」
二人が笑いながらそんな会話をしているのを聞きながら、カトルはそうじゃないと声を上げる。
「信頼されていますねって話です」
「そりゃ、俺たちはパーさんの仲間だから」
「パーさん?」
「パーシヴァルのことだ。さっき、いただろう、全体的に赤くて……髪型が尖ってる」
「ビィくんにいつもトサカって言われてるよな」
「赤い鎧の?」
初めてグランサイファーに乗り込んだ時に確かにカトルをじっと値踏みをするように見据えた男がいた。それが、きっとパーシヴァルなのだろう。
「強いんですか?」
「まあ、ジータよりは弱い」
「ふうん」
——やっぱり、ジータが一番強いのか。
カトルはすぐにパーシヴァルから興味をなくしたが、ランスロットは言葉を続けた。
「だが、パーシヴァルはジータの背中を任される男だ」
その言葉にカトルは瞠目し、先ほど仕事へ向かったジータの笑顔を思い出す。
理解させられると同時に、胸が痛むような気がした。
「そう、ですか」
思わずぽろりと言葉を零せば、ランスロットは肩を竦め、強気なカトルのらしからぬ様子を励まそうと言葉を紡ぐ。
「これまでよりもこれからだろ」
「そういうことだ!頑張れよ、少年」
ぽんとランスロットの手がカトルの頭を撫で、カトルの背中をバンと音を立ててヴェインが叩いた。つんのめったカトルはくそ、と悪態をつく。
「やっぱり……得意じゃないな」
*****
「あれ?カトルだ!」
「ジータさん」
帰ってきたばかりのジータは甲板で欄干にもたれて外を眺めるカトルに声をかけた。後ろに立つパーシヴァルたちには先に戻るよう伝え、彼女はカトルの隣に立つ。
その頬に切り傷を見つけ、指で触れようとするとジータは自分の頬に触れた。
「いたっ……」
「気づかなかったんですか?」
「ほかに怪我もしてたから、忘れてたのかな」
「その怪我は?」
「もうユエルに治してもらったよ」
これも治してもらわなきゃと笑う彼女は、そういえばとカトルに問いかける。
「今日、楽しかった?」
「楽しい?」
「えっ、楽しくなかった?ランスロットとヴェインって面白いよね?」
「……まさか、それであの二人に?」
「うん!カトルが少しでも楽しくなるかと思って」
ダメだった?と上目遣い気味に見上げるジータに、カトルははあと息をついた。
「……ほんっとに、無防備すぎる」
ぽつりと呟いた言葉を誤魔化すようにカトルはかぶりを振る。
「なんでもないです。それより、ジータさん」
「うん?」
「おかえりなさい」
たぶん、花が咲くとはこういうことを言うのだろう。
「ただいま!」
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