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- Drive Date「まさかあなたの車に乗るなんて」
ハイウェイを駆け抜ける赤の車体の中で、右に座る彼は楽しそうだった。
「知ってます?僕赤い色はNGなんです。なのにこの車ときたら真っ赤!」
「かっこいいだろう」
「どう話をとらえたらそうなるんですか!」
止まらぬ口をキスで塞いでやろうかと思ったが、運転中の身にはできないし、自分も彼の声を聴くのが好きだった。乗り心地がどうとかの批評はどうも"乗れて嬉しい"にしか聞こえない。
「そもそも、今からどこに行くっていうんです?あなたが無理矢理僕を連れ出したようなものですよ。バーなんてごめんですからね」
じゃあホテルならいいのか、と口に出しかけて飲み込んだ。到着したところで彼の話は終わらないだろうし、今更恥ずかしがる子どもでもない。
「君はどこに行きたい」
「別にどこにでも……、ってほら赤です。速度落として」
「あぁ」
キィ、と他に車の見えない交差点で一台青信号を待つ。今なら彼の口を塞げると思ったが、やめておくことにした。ただ横顔を夜景と一緒に眺めるだけで、何万ドルの宝石よりも価値がある。
「なんです?もうすぐ青になりますよ」
「綺麗だと思ってな」
「あぁ、この一帯の夜景は観光用に人がいなくてもビルに光が灯っていますからね」
まぁいい。焦ることはない、と車体を走らせた。彼は電気代の無駄遣いについて語ってくれている。公費がどうとか、予備電源がどうとか、たこ足配線の話も出てきた。BGM代わりにその声を聞きながら適当に相槌を打てば、彼も喜んで返してくれていた。いいドライブデートだ。
「今あなたの家に向かっているんですよね」
「気付いたか」
「さっきの交差点を直進した時点で察しがつきましたよ。右折しないとただの住宅街しかありませんからね。貴方最近その辺りに住んでいると漏らしたでしょう」
「そうだったかな」
「なんですか家で酒盛りでもするんです?」
「君の好きなようにしたらいい」
では好きにさせていただきます、と彼は窓の方に顔を向けてしまった。拗ねたか?と思ったが、今の会話でどう拗ねるのか理解できなかった。別の場所に行きたかったのだろうか。
「酒を飲むならつまみぐらい作ります。あなたの家の冷蔵庫なんてロクなものが入ってなさそうですけど」
「あぁ、それなら昨日適当な食材を入れておいた」
「そうですか、ならいいです。24時間営業のコンビニに寄らなくて済みますし」
「案外君は素直に家に来てくれるのだな」
家近くの路地に差し掛かっていた。速度を落として薄暗い住宅地を抜ける。ウィンカーの音だけが車内に響いていた。なんだ、黙ってしまったか。
「着いたぞ、降谷くん」
最近気に入って住んでいるセーフハウスの駐車場に愛車を停めても、彼はあれだけ飛び出していた言葉を出さなくなっていた。まるで話し方もわからないとばかりに、口を少し開いて黙っている。
「降谷くん」
運転席から降りて彼が座る助手席のドアを開けた。いつもの彼なら勝手に降りると怒りそうな場面でもあるのに、自分を見ては下を向きを繰り返しているばかりだ。
「まるで初エッチをしに来たティーンだな」
「っ馬鹿!」
おっと、飲み込む台詞を口に出してしまっていた。自分の失言に反射的に返したらしい彼は俺を睨みながらみるみる赤く染まっていく。驚いたことに本当にティーンのようだ。
「いや、すまん。今のは俺の失言だ」
「違う、そうじゃなくて」
「馬鹿にした訳ではない。ただ君が愛らしくてな」
「またそういう……っ!」
彼は何かを言いかけたが諦めたようで、ふぅと息を吐きシートベルトを外した。そしておずおずと車から降りてくる。
「すみません、すぐに降りなくて。ただ、ちょっと」
「ん?」
「ちょっと、浮かれすぎていたみたいで」
一瞬心臓が止まった気がした。早く行きますよ、部屋はどこです?と前を歩く彼を後ろから抱きしめたくてたまらない。
ああそうか、ティーンは俺もだったな。
#赤安 #秀零「まさかあなたの車に乗るなんて」
ハイウェイを駆け抜ける赤の車体の中で、右に座る彼は楽しそうだった。
「知ってます?僕赤い色はNGなんです。なのにこの車ときたら真っ赤!」
「かっこいいだろう」
「どう話をとらえたらそうなるんですか!」
止まらぬ口をキスで塞いでやろうかと思ったが、運転中の身にはできないし、自分も彼の声を聴くのが好きだった。乗り心地がどうとかの批評はどうも"乗れて嬉しい"にしか聞こえない。
「そもそも、今からどこに行くっていうんです?あなたが無理矢理僕を連れ出したようなものですよ。バーなんてごめんですからね」
じゃあホテルならいいのか、と口に出しかけて飲み込んだ。到着したところで彼の話は終わらないだろうし、今更恥ずかしがる子どもでもない。
「君はどこに行きたい」
「別にどこにでも……、ってほら赤です。速度落として」
「あぁ」
キィ、と他に車の見えない交差点で一台青信号を待つ。今なら彼の口を塞げると思ったが、やめておくことにした。ただ横顔を夜景と一緒に眺めるだけで、何万ドルの宝石よりも価値がある。
「なんです?もうすぐ青になりますよ」
「綺麗だと思ってな」
「あぁ、この一帯の夜景は観光用に人がいなくてもビルに光が灯っていますからね」
まぁいい。焦ることはない、と車体を走らせた。彼は電気代の無駄遣いについて語ってくれている。公費がどうとか、予備電源がどうとか、たこ足配線の話も出てきた。BGM代わりにその声を聞きながら適当に相槌を打てば、彼も喜んで返してくれていた。いいドライブデートだ。
「今あなたの家に向かっているんですよね」
「気付いたか」
「さっきの交差点を直進した時点で察しがつきましたよ。右折しないとただの住宅街しかありませんからね。貴方最近その辺りに住んでいると漏らしたでしょう」
「そうだったかな」
「なんですか家で酒盛りでもするんです?」
「君の好きなようにしたらいい」
では好きにさせていただきます、と彼は窓の方に顔を向けてしまった。拗ねたか?と思ったが、今の会話でどう拗ねるのか理解できなかった。別の場所に行きたかったのだろうか。
「酒を飲むならつまみぐらい作ります。あなたの家の冷蔵庫なんてロクなものが入ってなさそうですけど」
「あぁ、それなら昨日適当な食材を入れておいた」
「そうですか、ならいいです。24時間営業のコンビニに寄らなくて済みますし」
「案外君は素直に家に来てくれるのだな」
家近くの路地に差し掛かっていた。速度を落として薄暗い住宅地を抜ける。ウィンカーの音だけが車内に響いていた。なんだ、黙ってしまったか。
「着いたぞ、降谷くん」
最近気に入って住んでいるセーフハウスの駐車場に愛車を停めても、彼はあれだけ飛び出していた言葉を出さなくなっていた。まるで話し方もわからないとばかりに、口を少し開いて黙っている。
「降谷くん」
運転席から降りて彼が座る助手席のドアを開けた。いつもの彼なら勝手に降りると怒りそうな場面でもあるのに、自分を見ては下を向きを繰り返しているばかりだ。
「まるで初エッチをしに来たティーンだな」
「っ馬鹿!」
おっと、飲み込む台詞を口に出してしまっていた。自分の失言に反射的に返したらしい彼は俺を睨みながらみるみる赤く染まっていく。驚いたことに本当にティーンのようだ。
「いや、すまん。今のは俺の失言だ」
「違う、そうじゃなくて」
「馬鹿にした訳ではない。ただ君が愛らしくてな」
「またそういう……っ!」
彼は何かを言いかけたが諦めたようで、ふぅと息を吐きシートベルトを外した。そしておずおずと車から降りてくる。
「すみません、すぐに降りなくて。ただ、ちょっと」
「ん?」
「ちょっと、浮かれすぎていたみたいで」
一瞬心臓が止まった気がした。早く行きますよ、部屋はどこです?と前を歩く彼を後ろから抱きしめたくてたまらない。
ああそうか、ティーンは俺もだったな。
#赤安 #秀零いまり