パーティーから追放した能無しにとんでもない方法で復讐されました かつて、S級冒険者と言われた、俺達のパーティーも、もう、俺と姐さんだけしか残っていなかった。
「姐さん……もうすぐ……国境……」
「あたしの事はいいよ……あんただけでも逃げな……」
「でも……」
「この傷じゃ、どっちみち助からない……」
その時、俺達目掛けて、無数の矢と攻撃魔法が飛んで来た。
話は2年前に遡る。
「この馬鹿ッ‼ とっとと出てけぇ〜っ‼」
今さっき、パーティーの新しいリーダーになった姐さんが流石にブチ切れた。
姐さんが、新しいリーダーになったのは……前のリーダーが、死んじまったからだ。
「あの……今すぐですか?」
先代リーダーの突然死の原因である阿呆が、間抜け面で、そう答えた。
少し前に、スポンサーから押し付けられた、どっかの貴族の……三男坊か四男坊だ。
剣術の腕は悪くない……。ルール有りで人間同士の一対一の決闘なら、そこそこだろう。自分の身を守るだけなら十分な腕前だ。
ただし、何が起こるか判らない、多対多や一対多の状況や……ましてや人間以外を相手にしなきゃいけない状況では、これっぽっちも使えねぇが。
学もそこそこ以上だ。
貴族社会の中でしか役に立たない知識だが。
今回の俺達の任務は、ある危険な神器の回収だった。
「病と治癒」の両方の権能を持つ古代神「アマビエン」の神官が作ったと言われる代物。
人間……亜人も含むと云う意味で……に風邪を引かせる神器。それだけだと大した事は無い。魔法的な方法でも、超一流の医師でも「風邪」だと判断するだろう。
だが、この「風邪」、如何なる薬も治癒魔法も効かず、ほんの1〜2日で、罹ったヤツは死んでしまう。
そう、この神器の危険性とは……暗殺用だと云う事だ。
それを、この御貴族様の三男坊だか四男坊だかが、うっかり発動させてしまったらしい。
「そうだっ‼ あたしらの目に入んない所で、勝手に野垂れ死ねっ‼」
「……そ……そんな……」
「殺されねぇだけ、有り難いと思え、ボケェ‼」
だが、事は、それで終らなかった。
数ヶ月後、その「暗殺用の神器」が、組合の保管所から行方不明になったのだ。
保管所で魔法を使った者が居る形跡は無し。
侵入者の形跡も無し。
考えられるのは……組合の関係者か……スポンサーが正規の手続で持ち出した、と云う事ぐらい。
だが……何故だ……?
しかし、謎は間もなく解けた。
この国の王族の分家である通称「キイ家」……王族本家が万が一絶えた際の予備の家系の1つ……の当主と……そして、複数の王族が相次いで死んでしまった。
1年足らずの内に、とうとう、国王も、王太子も、その弟も……。
原因は「風邪」。
嫌な予感がした……。
俺だけじゃない。パーティーのメンバー全てがそう考えた。
新しい国王になったのは「キイ家」の先代当主の末弟だった。
新国王の戴冠式を見に王都に行った俺達は……新国王の顔を遠くから見た瞬間……。
「うそ……だろ……」
「……何の冗談だ……?」
「夢なら……覚めてくれ……」
そう……新しい国王は、俺達がパーティーから追放した、あの阿呆だったのだ。
「この国も……もう終りだな……」
だが、先に終ったのは俺達だった。
その日の内に、俺達は、凶悪犯の濡れ衣を着せられ、指名手配されたのだ。
まるで予め用意されていたかの如く……いや、本当に予め用意してたんだろうが、翌朝には、一生遊んで暮せそうな報奨金の額と「生死を問わず」と書かれた俺達の手配書が、王都は愚か、この国の主要な町に貼り出された。
国中が敵に回った。
兵士。
民衆。
賞金稼ぎ。
かつての同業者までも……。
そして……俺は……死の間際に、ようやく理解した。
悪とは何なのかを……。
悪とは……自分の望みを叶える力を得てしまった……底抜け阿呆の事だ。