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GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

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    暴走狂人に蹂躙される機装天使!逆転のチャンスは一度きり! 絢爛な雰囲気が全面に表れている大都市・メイガス。街頭の溢れんばかりの人工光が人々の生活を照らし、潜む悪意すら隠してしまっていた。そんな化学・薬学が発展した大都市には新人類とも言える者たちが存在していた。

     科学部品を身体の一部に埋め込む又は置換し機能の拡張を狙った改人、バイプラント。

     生体の組織を増強する薬剤を摂取して何倍もの強化が施された強人、オーバード。

     そのどちらも条約で認められた革新技術であり人類の生活の便利さを支えていた。だが設定された上限を無視し超人の力に酔いしれ、私利私欲のために人々に危害を加える犯罪者も日々増加していった。

     状況の悪化に伴い、警察機関は兵装の重備を図るものの対応はある一線を超えた後に意味をなさなくなっていった。

     これらの問題を解決するためにある組織からもたらされた戦力が犯罪者の制圧をしていくと同時に数は減少していった。

     あるものは年端もいかない少女達が事態を収束させたのだとまことしやかに語る。

     噂を実際に目にする人々が増える度に正義を代行する彼女等の存在は認知され始めた。公然の秘密として、詳しい情報は無いものの超科学犯罪が起きる現場ではその姿が確認されていたのだった。

     日が完全に落ち、蛍光色の光に包まれた中心街に破壊の音と悲鳴が上がり混迷していた。

     高く堅牢なビルがひしゃげ、破片は飛散し逃げ惑う市民に降り注ぐ。災禍の主は目の前に立ちはだかる建物に拳を叩きつける行為を繰り返している。

     その体格は人離れしており、腕は成人男性のそれを4、5本束ねたほどありそこに繋がる拳もまた巨大だ。

     ドーピングの副作用なのか、毛髪をはじめとする毛はなく肌色の肉だるまと形容するにふさわしい外見だった。

     ひたすら剛拳で叩き続けられた打撃面は凹むというより削り取られたというのが正確な表現と言えた。

    「グゴォォォォ!オレハヅヨイィィ!ヅヨインダァァァ!」

     化け物、オーバードと化した大男は薬物により理性のタガが外れ心内を吐露しながら物言わぬ標的をめったうちにし続ける。次第に建物全体がオーバードに傾きだすと巨躯を押し潰さんと倒れてくる。

    「ヴゥゥ…!ヴァァァァッ!!」

     高質量の階層部分を視認し、気合いを込めた渾身の一撃で外壁を殴りつける。拳を中心に蜘蛛が巣を張ったかのように亀裂が走り、行き場を失ったエネルギーに乗って破片が辺りに四散する。

    「キャアァァ!!」

     逃げ遅れたと思われる十歳ほどの少女が腰を抜かして座り込んでいたところに特に大型の破片が影を落とした。少しでも最期の瞬間を遅らせるために身体が体勢を低くし頭に手を置き意味のない防御体勢を取っている。

     もうダメだ。

     だが最期の瞬間はいつまでも訪れない。

    「…えっ…?」

     恐る恐る目を開けた少女の前には同じくらいの年齢に見える少女が立っていた。比較的小柄で華奢と言える体格線は手首から先に繋がる大型の機械手が崩している。胴体はボディスーツが細い腹部を浮かび上がらせ、腰から太ももの半分を隠すハーフパンツを着用し快活さを見る者に印象付けていた。この少女が体重の何十倍かはあろう破片を両手で支え宙に浮かしていたのだった。

    「…おーい、大丈夫かぁ?」

    「は、はいぃぃ…大丈夫…です…。あの、あなたもしかして…」

    「あぁ、アンタの思ってる通りだよ。んっん…、ミカ、要救助者は無事だ。さっさと回収してくれ、支えてるのもさすがに重いからよ」

     少女は指で耳に装着していた機器に触れ誰かに通信を始めるとすぐに右方から声が近づいてくる。

    「はーい、りょーかいですっナミちゃん!」

     数秒も経たずに声の主は姿を見せるとその少女もまた赤い髪の少女と大差ない体格をしていた。長いマフラーを首元でたなびかせ、外見はナミと同じく肩を出したボディスーツ、上腕にアーマーが装着されており、下半身はスパッツを穿いて可動域を高めつつ太ももの健康的な肉付きが強調されていた。

    「えっ!?いつのまに…」

    「あっ、怖がらせてごめんね!…よいしょっと、それじゃ今から安全な所まで連れてってあげるから!」

    「ちょっ…ま、まってええぇぇぇぇ…!」

     ミカと呼ばれた少女はそう言うと屈託のない笑顔を浮かべるとすぐに救援者を持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこの体勢にし再び猛スピードで走り去っていく。その最中には救助されたものとは思えない悲鳴が加速度的に遠ざかっていく。


    「…はぁ、重かった…ぜっ!」

     その声を耳に入れやっと懸案が解決したと手に持った瓦礫をそのままオーバードに投げ込む。それは空中で砕け散りその奥には無傷の怪男が腕を突き出した姿が見えた。

    「…ったく、大したタマじゃねーか…」

     その光景に思わず敵ながら驚嘆してしまう。

    〈ナミちゃん、周りに市民の反応はないわ…これより状況開始よ〉

     耳の通信機器から別の声が聞こえる。落ち着き払ったトーンはこの先の戦況を見定めているかのようだった。

    「よっしゃぁ!やっと暴れられるぜ!…なぁミカは今どこだ?」

    「ミカちゃんは無事にさっきの子を送り届けたわ、じきにこちらに戻ってくるはずよ」

     その通信からまもなくまた声が急速に近づく。

    「おまたせーっ!さっきの子、ちゃんと避難所まで連れてったよ!」

    「遅ぇぞミカ、もう姉貴から報告を受けてる」

    「あ、そうなのっ!?」

     思わず必死になっていた自分に赤面するミカ。確かにそうなるはずだと知っていたが救助が成功し浮き足立っていたのだ。

    「…ヴルルゥゥ…オ前ラマサカ…!」

    「そのとおり!マルチプルフォース参上だよっ!」

     怪物の問いにミカは意気揚々と応える。その横でナミは呆れながらため息を吐く。

    「はぁ、なんでオマエが名乗ってんだ…。まあいいや、コイツの相手はアタシにやらせな!」

     両手の拳骨に突起を出現させ、次にふくらはぎのアーマーが開きブースターを点火させる。

    「先手必勝ッ!土手っ腹に熱い拳を叩き込んでやるぜッ、でやぁぁ!」

    「ヴゥ!?グハァァァ!!」

     勢いのついた鉄拳が宣言通り胴体を叩き大男を後方に吹き飛ばす。

    壊したビルの向こうに建っていた建物の壁に砂煙を上げながら突っ込んでいく。

    「効いたみたいだなっ!これで終わりだぁ!」

     間髪入れずブースターの推進力を乗せた拳を突き出しトドメに疾る。

     ドォガァァン!

     体表に到達した感触が手甲内の拳骨に伝わった瞬間に厚い鉄板とぶつかったと思える音が響く。

    「へへっ…!…おい…マジかよ…!?」

     想像と違う光景を目の当たりにし、クリッとした目が見開かれる。決戦の拳は胸板で止められていたのだ。

    「成ル程、良イパンチダガ…無敵ノ身体ヲ得タオレノ敵デハナイッ!」

    「がっ!?く、くぅ…はなし…やがれぇ…!」

     即座に右の手首を掴まれたまま腕を捻られ苦悶の声を出す。

    「ナミちゃん!?このぉ、ナミちゃんを離せぇー!」

    「お、おいバカ来るなッ!」

     敵の手に拘束された姉を助けるべく自身の誇る超スピードで突っ走りながらアーマーに備え付けられた小型レールガンを発射する。

    「オ前ハ後で遊ンデヤル、眠ッテイロ!!」

    「そうはいかないよっ!ドロロンッ、空気人形ちゃんの術っ!」

     折り畳まれたミカの形をしたバルーンが射出されると内部の爆発で膨らむ。とっさに身体を翻し身代わりになる算段だった、しかし。

    「うっ!?きゃあぁぁ!」

     空いていた右腕が振るわれ起きた猛烈な風が小柄なミカを吹き飛ばす。

     身体は瓦礫に後方の瓦礫に衝突しその衝撃に上から小さい破片が降り姿を消してしまう。

    「ミカッ!くぅ…なんてバカ力だ…!」

     自分を助けるために来た妹分が危機に晒される場面を見ながらも怪力に腕を振り解けずに歯噛みしか出来ない。

    「オマエ、ソンナ細イ腕デドウヤッテ力ヲ出シテイル?中ヲ見セテミロ…!」

    「な、いぎぎぎぁぁ!?うでぇ…を…引っ張るなぁ…!」

     右腕で腰を挟みこみ固定し掴んでいたミカの腕を肩から外そうと引っ張り始める。肌を構成しているのは特製アラミド繊維にシリコンを被せた素材で、引っ張られる力には強いが問題は骨格を形作るフレームだった。

     衝撃から来る骨折の懸念はほぼないものの、関節自体は人体を参考に作られた構造からその脆弱さをも再現していた。

     ギチギチ…ギギギィ…ブチ、ブチブチ…!

    「アァァッ、うあぁぁぁっ!」

     凛々しくも幼さが感じられる声から苦痛の色が見える。金属繊維を束ねた筋肉はその一本一本が想定していない方向に伸ばされ切れていく。


    「…マズイわね…」

     状況を掌握するべくまだ健在だったビルの屋上で観察していた女性、リエラが呟く。チーム内の役割分担は管理されており特に前線と後方支援を混在させない事こそが解決の可能性を高めていた。

     今までこのフォーメーションは基本戦術として運用し成果を上げていた。それはナミの何物をも粉砕する馬力と戦闘の妨げとなる市民を避難させるミカの機動力、そして変化する状況を分析し最適解を導き出すリエラの処理能力の高さが掛け合わされたためだ。

     現在の状況を整理してみる。ミカは瓦礫にのまれしばらく身動きが取れない。そしてナミは今まさに敵の強大な力の前に窮地に立たされている。すでに想定外の事態に直面している以上、例外な動きを取る必要があると理解していた。

    (現在分かっているのは、相手は未知のオーバードラッグを乱用している事だけ…この状況を覆すにはドラッグの効果を消す物質を打つしかない…)

     リエラの長い髪の先には微細な針が備えてある。それを対象に突き刺し吸収した各物質を分析し化学物質等の被害を受けた人々へカウンターワクチンを与える機能を持っていた。

    (まさか、私が前面に立つなんて…。でも、今まであの子達にだけ大変な思いをさせていたのをただ見るだけしか出来なかった…)

     ベルトに手をかけ銀色の鞭を引き抜く。

    (待っていなさい…妹達…!)

     青の流れ星が地上に向かい落ちていった。



    「がぁぁっ!テメェ…いい加減に…ぐぁぁぁ!!」

     反抗の希望を繋いでいた支えも限界を迎えようとしていた。

     ギギギッ…ギリギリッ…バキィッ!

    「イッ!ギャアァァウッ!う、うぁぁぁっ!!」

     脳に伝わる激痛が少女に獣じみた悲鳴を強要する。破局を迎えた肩関節は嫌な音を上げ袂を分ち、合成皮膚のみがそれらを留めているだけになっていた。

    「ナンダァ?スグニ壊レヤガッタ…」

    「く…うぅ…グスッ…テメェ…ゼッテェころす…!」

     灼い。

     断裂を燃料にして燃えさかる激痛という炎は少女の意識を焼いていた。

     人間と変わりない痛覚が脳へ危機を知らせている。それでも勝ち気な性分は折れずにオーバードへの敵意をより鋭く尖らせていた。

    (痛ぇ…!アタシが潰されたら次はミカもやられちまう…!クソッ…どうしたらいいんだよ…!)

     頭の中に過ぎる最悪の未来に体温が下がるのを感じる。おそらくミカが闘ったとしても決定的なダメージは与えられないままジリ貧となり、最期は筆舌に尽くし難い惨い末路を辿るだろう事は容易に想像できた。

    (アタシはどうなってもいい…!だけど二人は逃さねぇと…)

     その想いを叶える方法はあった。だがあとはそれがこの敵に通じるかが問題だ。

    (…ダメだ、考える時間は無ぇ…守る力を持ってるのに使わずに後悔するのだけは…!)

     脳裏に浮かぶのは幼い頃の最後の記憶。運転手席横から別の車がめり込み、助手席側は衝撃から建物の壁に押しつぶされていた。二台の車は爆発し炎上する。そんな惨状で自分はたまたま不幸にも生き残ってしまった。道路に投げ出され全身を強く打ち骨折はしていただろう。それでも例え這ってでも両親の下へ向かうべきだと思っていた。そのはずなのに身体はみじろぎすら出来なかった。

     諦めたのだ。

     突如として襲った悲劇は少女から両親を奪っただけでなくその心の生きる熱も取り去っていた。

     激しさを増す炎を見ていたわけではなくただ目に写していた。この日、ナミは生きる道を捨てたのだ。

    「…良いぜ…!」

     (そうだ、アタシはあの日死んでんだ…!だったら…)

    「テメェの最期に良いモン見せてやるよぉ!!」

     意を決したその時だった。

    「待ちなさい」

    「…姉貴…!?なんで…」

     重力を感じさせない着地で目の前に現れた人物に驚きを漏らしてしまう。空色の長髪に切長の瞳を備えた顔は絵に描いたように美しい。全身は銀のラインが走る紫のボディスーツに包まれ、姉妹の中でもよりボリュームのある胸が少し窮屈そうにテカる生地を押し上げていた。腰には多様な機能を備えているベルトが巻かれ、高さのあるヒールが足元の優美さを高め、見る者のほとんどがその完成された美の塊にため息を吐くしか出来ない。

    「オマエモコノ雑魚ノ仲間カ?」

    「私の可愛い妹を離しなさい、醜い化け物」

    「オオ…!?舐メタ口利クノナラ、オ前モコイツト同ジヨウニゴワジデヤルゥゥ!」

    「ぐっ、うあァァァ!?」

     挑発に乗せられた大男はナミを力の限りを込め、リエラの後方へ投げ飛ばす。身体は建物に深く入り込み大の字に磔られた体勢になる。

    「ブフゥッ…!ぅぁ…」

     口から赤い水沫を吹き出して顔を下げてしまう。

    「ナミっ!」

    「何ヨソ見シテルゥアアァァッ!!」

     妹の安否を気づかい振り向く背後から破壊拳が迫る。

     細く締まった脇腹に着弾しなんなく捉え無残に破壊しているはずだった、しかし巨拳は空を切る。

    「あら、あなたこそどこを見ているの?」

    「ッ!オァァァ!!」

     獲物の声のする後ろへ丸太の太さの腕を振るいかけた瞬間、両腕が身体に縛り付けられていた。

    「バインディングウィップ…悪いけどこのまま静かにしててもらうわ」

    「グッ、グアァァァ!!」

     金属の鞭が大男の動きを封じると体内に高振動を送り込む。直接内部に衝撃を送られれば筋骨隆々の身体といえどダメージは避けられない。相手が力を緩めた状態だと確認するとようやく施術を始める。

    「大丈夫、今からあなたを助けてあげる…」

     髪の毛が個別に動き大男の表皮から入っていく。内部からさまざまな体液を採取し、その中から検出されたドラッグの成分を分析し解毒薬ともいうべき物質を生成し無力化する戦術を思い描いていた。

    「な、なに…?針が通らない…!」

     皮膚を抜け筋肉に差しかかる途中から針の侵入が止まる。体内に入っているとはいえあまりに浅い場所であり得られた情報も微々たるものだった。

    「グッ、グゥゥゥ…!ヴァァァ!!」 

    「くぅっ、キャアァァ!!」 

     それだけでなく力を込めたオーバードにバイディングウィップが耐えきれず弾け飛ぶ。その衝撃の凄まじさに冷静な彼女も思わず高い悲鳴を上げてしまう。

    「うぅ…こんなに進行してるだなんて…っ」

     動きを止めていられない以上また別の戦術を編み出さなければならなくなる。距離を取るべく突き刺した髪の毛を抜き去ろうとするが予想外の事態に見舞われる。

    「ッ!?抜けない…!くぅっ!」

     いくら力を加えようとも引き抜かれる事はない。筋肉に力を加え針を固定しているのだがすでに動揺に飲まれていたリエラにはそんな事は見当もつかない。

    「フンッ馬鹿ナ女だ…オ前の力ハソノ程度カ…?」
     
     さらに言葉により心は煽られていく。だがこの剛腕を自由に振るわれたならたちまち身体は叩き潰される。その予感に美女神の頬に汗が流れた。

     ヒュン、ガスッ!ドスッ!

    「がふぅ!?ぎゃうっ!!」

     狙いのない肘鉄が身動きの出来ないガラ空きの胴体に見舞われる。

    「ガハハハァ!オ前ミタイナ生意気ナ女ノ悲鳴ハイツ聞イテモタマラナイゾォ!」

    「ぶふっ…あ…悪趣味…ね…ごぶぅっ!!」

     もはや唯一の抵抗手段である皮肉も圧倒的な破壊力の前に捩じ伏せられる。少しの時間が経過する頃には肉が叩かれる音と濁った悲鳴が交互に繰り返されるだけとなっていた。

    「…は…ぁ…ぅ…」

     自らの策により逃げ道を失い暴力の沼に沈んだリエラは言葉を紡ぐ体力を失い薄い呼吸しか出来ない。

    「ヨウヤク静カニナッタカ。生意気ナ牝ガ…」

    「ぁ…、くぅ…ぁ…!」

     筋肉の緊張を抑えた大男の手がリエラの顔面を掴み前面に動かすと刺していた髪の毛は抜けていき、接続が完全に切れてしまう。

     掴まれたまま男の顔の正面まで上げられた後、豊満な胸に右ストレートが突き刺さる。

    「うっぐ…はぁ…んっ…」

     さらに正拳は胸部に深く入り込み芯を押し潰す。

    「ハァッ!?うぅん…!」

     その様子を見ていたオーバードが指摘する。

    「オマエ…ココヲ殴ラレテ感ジテイナイカァ?」

    「そっ…そんな、こと…っ」

    「ソウカ、ナラバコレナラドウダ…!」

    「うっ、ひぃぃっ!…ち、ちがう…これ…はっ…」

     左胸を強く握り反応を確かめる。その手つきに合わせ苦悶にも悦楽にも取れる熱っぽい吐息混じりの声を上げる。

    「ソレニシテハ、ソコハ喜ンデルヨウダガ?」

    「くぅんっ!そんなっ、つままな…ぃで…!」

     スーツを隔てても巨房の中心で直立しているのが分かるポッチを摘みさらに追求する。

    (ま…まずい…わ…!対策を考えなきゃいけないの…にっ…!そこを…胸をいじられると頭がふわふわ…して…!)

    「フン、指ダケデハ足リ無イダロウ…」

    「イィヒィッ!?い、いきなり…か…噛むなんてぇぇ!!」

     思いもしない強さで襲う快楽に対応できなかった身体は図らずも大男に沿う形にこわばる。

     ビックン!ビクビクッ!ぴく…ぴく…っ。

    「…は…ぁ…ぅん…」

    (ふるえが…ぁ…とまらないぃ…こんな…やつに…このことをしられたら…あぁ…)

     中で燻る熱は静かに全身に行き渡り始めていた。掴まれていた頭を外すために反抗の意思を示していた腕は力もなく重力に従い下されている。

     顔は大部分を手で覆われているがかすかに見える口は開き、唾液を卵形のアゴへ流れ落ちるまで溢れさせていた。

     嗜虐の悦びを得た怪物の目にリエラが握ったままにしていた物が映っていた。

     先のほとんどが破散したバイディングウィップをひったくり谷間に深々と挿し入れる。

    「随分ト楽シンデイルヨウダナ。モット味アワセテヤロウ…」

    「くぅんっ!?ふぎゃあぁぁぁっ!!む、胸がくずれぇぇぇ!?」

     柄を通し送られた振動は胸全体を襲い筋肉と脂肪を模したシリコンを引きちぎらんばかりに揉みしだいていく。

    「とめてぇぇ!!つぶれてぇぇ、ふぅぁぁぁっ!!」

     もはや弱りきった事を隠しすらしない姿は悪魔に身を捧げているとしか思えない。愛撫の度超え虐待に変わった振動責めにたまらず中止を懇願する。

    「はぁっ…ん!ハァ…ハァッ…。わ…わたしの…むね…ぇ…う…ん…」

     ついにスイッチが切られるが意識は失神の闇に堕ち、痙攣で身体を震わせながらうわ言しか出てこない。

    「無様ナ姿ダナ…。ダガ、俺ヲ怒ラセタ報イハコレダケデハ済マサレナイゾ…」

    「…んひぃぃぃっ!?ま…また…むねをつぶひゃれぇぇ!!んぁぁぁ!!」

     気つけと言わんばかりにまたしても胸を強く掴む。乳房全体の内部が超振動にズタズタにされたせいで少し押しただけでも脳に障る激痛を感じてしまう。

    「…ふ…ぅ…?…な、なにをする気…?イヤぁ!離して!」

     言葉のあとさらに高く上げ、顔をレイラの股間に近づける。

    「イッダァァァィィ!!そんなとこぉ噛まないでェェ!!」

     中で汁に濡れボディスーツから浮き上がった秘所に歯を立てられ痛みに堪らず叫んでしまう。

    「アグ…フフフ、オ前ヲコレカラ天国ニ送ッテヤル…」

     更に肉芽へ悪魔の歯が食い込み、救済の女神は痛みと快楽の板挟みに悶えるばかりだ。

    「ぎゃっひぃぃ!切れちゃうぅぅっ!わたひの大事なとこぉ壊さないへぇぇ!!」

     呂律すら怪しい口の回りは新たな性感を受けていると暗に知らせていた。

     ビ…ビビ…ッ…ビリビリッ!

     まさに絹を裂く音が聞こえた頃には秘所を隠してきた布地が破り去られ、夜の外気が性の門を愛おしげに撫でる。

    「い…いぃやぁぁ…!スーツを破くなんて…ひぃんっ!」

    「準備ハ整ッタナ…俺ノコイツヲブチ込ンデオワラセテヤル…!」

    「くぅあぁぁっ!!」

     地面に叩きつけるとズボンのベルトを力任せに千切り、下着を破るとおおよそ人のモノとは思えないサイズの肉棒がそそり立っていた。興奮のあまり先走り汁が染み出しこれから絶品の獲物を喰らおうとする野獣がよだれを垂らしているようにも見えた。すでに股間の肉塔は秘所へと狙いを定め打ち出される時を今か今かと待っている。

    「ま…まって…!そんなの入るわけない…!」

    「ヤッテミナケレバ分カルマイ。マサカ、サイボーグハアソコノ改造ハサレテイナイノカ?ハハハハァ!」

    「オッ、アァァァァ!!イダイィィ!」

     下卑た笑いを上げながら挿入されリエラは辺りに響く悲鳴を上げる。

    「フッ、フッ、フハハッ!ドウダ、慣レテ来タダロウ?」

    「ギャッ、ア、アァァ!ヒィィィ!裂け、るぅぅ!も、う、ヤメデェェ!」

     生身と合成皮膚がぶつかる音が混ざり合い辺りに消え入る。

    「フゥッ!中々締メ付ケル…!モウ一発目ガ…モウ…出ソウダッ!…ハァッハァッ!…ッッ!!…フゥゥゥ」

    「ナカァ、ナカに入れちゃ、らめぇぇ!!イヤァアァァ!!」

     白濁の洪水が生命を宿す部屋に注ぎ込まれたちまち溢れてしまう。あまりの量に逆流した欲液は下の口から漏れ出ていく。

    「…ハ…ハァ…ハァ…、わたし…ナカに出されたの…!?.なんで…こんなひどい事が…う、うぅ…」

     受け入れがたい事実からの恐怖と腹部の奥底から伝わる悦楽に身体を震わせる。

    「オラッ!マダ終ワリジャ無イゾ!」

    「カヒュッ!?ぐっ…ぐぇぇ…!」

     言葉の通りまだ終わりではない。次は後背位に向きを直し、さらに二本の束にした長髪を首にかけ引き込んだのだ。

     ギリ…ギリギリッ!

     細い首に青空の色をした美麗な髪が巻きつき機械女神の意識を天上へと導き始めていた。

    (く…るしい…!いし…きを…失った…ら…もう…かちめ…は…っ…ない…!)

    「おうぅぅ!!ごへぇぇ!!」

     振り解くために身体を揺らすが意味はなく、敵の手に落ちたという結果をさらに補強してしまう。

    「良シ、コレデ逝ッテシマエ!」

     また濡れそぼる秘所に深々と肉の杭が送り込まれる。

    「ハギュウゥゥ!!…ぉ…おぁ…ハァッ…ハァンッ!ハァッン!」

    「ドウダ?首ヲ絞メタ方ガオレノモノヲ強ク咥エルデハナイカァ!?」

     水音が強まった抽送はリエラの性感の高まりを表していた。強化された内臓だからこそこの殺人的な圧力に耐えれているがそれでも子宮は突き動かされその上に位置する腸にまで貫かれたと思えるほどだった。

    「オォッ!ホォォッ!も…もぉぉ!もおおぉっ!!」

    「ハハハハァ、ドウシタァ?快感ノアマリニ牛ノ鳴キマネカァ!?」

     絞首刑からくる窒息は理性伴う言葉すら奪い始めていた。

    (だめ…っ、思考が続かない…!こ…このままだと…本当に…っ!)

     すでに双眸の蒼い瞳は眼窩の裏に回り込んでいた。神秘的な雰囲気を漂わせていた女神戦士はもはや白目で口をだらしなく開けながら畜生の暴虐を受けるしか出来ない雌奴隷にしか見えなかった。

     ビグンッ、ビグビグンッ!

    「おぅ!?はぁぁぁん!ヒグゥゥゥッ!ごわれるゥゥッ!」

     顔を目一杯上げながら悲痛にも思える鳴き声、そして涙とよだれを撒き散らす。

     二度に渡り吐き出された膨大な量の精液は下腹部を膨らませながらも収まり切れない分をオーガズムの律動に合わせガニ股の間からひり出す。

    「オッ…オォ…ッ!ヒィ…ヒッ…ィヤァ…アグッ!」

    「イィ格好ニナッタナァグハハァ!」

     身体を蹴り返し、子種の詰まったお腹を踏みつけながら笑う。

    「ぐひぃっ!おさないでぇぇ!口から出ちゃ…ぎゃうぅ!」

    「安心シロ…キッチリ膣中ニ入レテンダ、ソンナ所カラ出テキヤシネェ、ヨォッ!」

    「ブッヒィィィ!?…ァ…ァフゥ…」

     内部圧の高まりに耐え切れず意識を失う。潰されたカエルに近い惨状は見る者に正義の終わりを思い知らせる。

    「サテ…アトハアソコデ寝テイルチビヲ壊ストスルカ…」

     示す相手は瓦礫に挟まり動けずにいるナミだ。吹き飛ばされて少ししたあと、目を覚ました彼女は信じられないものをその眼に写していた。



    「…あ…あぁ…姉貴…?!」

     気絶から覚めて最初に目に入ったのは暴力と快楽にまみれ自制を失い凛々しい気高さを奪われた姉の姿だった。

    「お…おい…やめろ…やめてくれっ…姉貴がこんな…こんなはすが…!」

     愛などない陵辱にも関わらず嬉々として腰を振るリエラの焦点の合わない目が自分の視線と重なる。それでも魔宴は続き、ついに快楽の頂点に達しオーバードの足元に痙攣しながら屈する所を見てしまう。

    「や…だ…いやだぁぁ…!いやイヤアァァ!!姉貴っ、姉貴ィィィ!」

     姉を想う半狂乱の叫びは届かず、意思を失った視野では愛する妹を捉える事は出来なかった。

    「サッキハギャンギャン泣イテイタカラナァ…脚ヲ外セバドンナ鳴キ声ヲ上ゲルカ、グハハッ…!」

    「く…くるな…!やめろっやめろぉぉ!」

     必死に無事の左手で小石を投げ抵抗するが当然無意味だ。ついに次女までもが悪鬼の生贄にされてしまう時を迎えていた。

    「ガッ!?ブッヘェェ!!…ナンダ…コノ痛ミィィ…!?」

     完全に場を制圧していたオーバードが突然苦しみ出し片膝を地面につく。

     強固な筋肉を動かすため体内を巡っていた血流が煮え立つマグマに置き換えられたのだと思えた。隅々まで行き届いていたものが今度は筋組織を剥がしていく。攻撃をものともしなかった体組織が分解されると体格は縮み始め二メートルに届くかギリギリというところにまでなっていた。

    「…ハァ…ンッ…!悪い…わね…、本来ならこんな事…ワタシの流儀に反するのだけれど…」

     後ろからかけられるはずのない声が聞こえ一瞬身を震わせる。

    「オマ…ェ…何ヲシタァァ…!」

     絶頂の余韻を抑えるために自らを腕で抱きながらよろよろと立ち上がる女神戦士。

    「アナタがワタシの中に注ぎ込んだ物…あの中からドラッグの成分を分析したの…。そこから…ドラッグに反応する毒を作って…この髪で膝裏から注入したのよ…」

     臨床薬物の分析は脳の機能をフルで動かす必要がありその間は守りが疎かになる。特に窒息責めを受けた身でさらに快楽をひたすら叩き込まれた状況ではまともな思考もままならない。そんな窮地にあっても仲間を想う強い心が精神をそして勝利を支える結果へと導いたのだった。

    「グ、ググゥ…フザケルナァ…!殺ス…ゴロォス!!」

     内部から破壊され体組織がしおれたといえども鍛えられた筋肉から振るわれる拳をまともに受ければただではすまない。まして死力を尽くしきり体力を残していないこの身では耐え切れないだろう。

    (…ワタシは…成すことを果たしたわ…後は…お願いね…)

     心中で妹達に想いを遺すとまっすぐに決死の一撃を待ち瞑目していた。

    「ア…?ド、ドコニ消エタ…!?」

     オーバードからすれば標的が消失したとしか思えない状況にあった。しかし、それは意識の外に追いやったままにしたある者の電光石火による仕業だった。

    「…お待たせ、おねぇちゃんっ!」

    「ナイスタイミングよ、ミカ…」

     黒のアーマーを装着した少女の腕の中に危機から脱した美女の姿があった。オーバードの露払いで吹き飛び一時は意識を失っていたミカがまさに間一髪のタイミングで救出を果たしたのだ。

    「ミカ…」

     全滅すらよぎった状況にナミは心が折れていた。だが、リエラがかすかな希望を一本の糸に紡ぎミカがそれに繋がれた勝機を引き入れて来た姿を見て消えかけていた心の炎が強くなるのを感じていた。

    (…なに肩を外されたくらいでイジけてんだアタシは…。姉貴だってミカだって諦めてないってのに…!)

     ガッ、バキッ、バキッ!ガゴンッ!

    「ぐっ!ぐぁぁっ!…ハァ…ハァッ!待ってろ…みんな…!」

     身体を引き起こし外れた右肩を壁に押し付け無理矢理はめ直す。負傷時を越す激痛に脂汗を垂らし苦悶するがすぐにキッ、と目指すべき場所を見つめる。

     ミカはオーバードから距離を取り瓦礫に頭を乗せてやり安静な体勢を取らせていた。

    「ちょっとここで休んでて。私、ナミちゃん連れてくるからっ」

    「…その必要はないみたいよ?」

    「えっ?…あぁ!」

     言葉の意味を一瞬掴みかねたが答えが眼前に現れた。

    「オイ、テメェ…さっきはよくもやってくれたなぁ!!」

    「アァ…?!グゥブゥッ!!…ゲホッ…マサカ…オ前、マダ…!」

     声に振り向くと同時に機械手が腹筋へ深々とめり込む。傷の浅い左手での打撃は今までの鉄拳とは比べものにならない重さが内臓まで押しつぶしていた。

    「散々好き勝手にやられて今回ばかりはさすがにダメかと思ったけどよ、姉貴と妹があそこまで頑張ってんだ!あのまま寝てなんかいたらオンナがすたるんだよ!」

     積もった激情が烈火の如く燃える少女戦士は光速で連撃をオーバードに炸裂させる。

    「グボッ、ボヘッ、ウボォォッ!!…オ、オェェェ…!ヤ、ヤメ…ヤメロ…シ…死ンデシマ…」

    「ナニ眠てぇ事言ってんだコラッ!そんなに寝てぇならそうしてやるよ!姉貴、良いんだよな?」

     形勢が逆転し、倒れることのないサンドバッグと成り果てたオーバードがぽつりぽつりと命乞いを始める。だがナミの身体の中は怒りが血潮を荒ぶらせ決着の準備に入っていた。

    「…えぇ…すでにドラッグの副作用で身体は耐えきれずに残された時間はない、それが私の最終的な見立てよ」

    「よし、ならせめて逝きそびれ無いように確実に葬ってやるよ!ブースターナックル、逆噴射ッ!」

     本来なら勢いを付けるためのバーニアの向きを逆さにして機手に噴炎を当てる。高温度となった赤熱拳を強く握りしめて体勢を低く取り構えに入る。

    「マ、マテ…オレガ…オレガ悪カッタ!ユ…許シテ…」

    「そんな戯言、地獄の閻魔様に言うんだな!まぁ本当に地獄があるならだけどよぉ!」

    「ヒ…ヒィィ!ヤメロ、近づくなぁっ!グァアァァ!熱ィィ!!」

     どうにか生き残るべく抵抗をしてみるも振った手が周りの高熱に触れたまらず悶絶してしまう。

    「うぉぉぉ!!熱砕拳っ!プロミネンスゥゥ、クラッシャー!!」

     熱された空気が上げる摩擦音は鳥のいななきにも聞こえた。

    「グギャァァ!!…サマァァ…タス…ケ…ヲ…」

     触れた箇所から紅い炎が巻き上がり瞬く間に身体を包み込み炭化してしまう。

    「…あばよ、たぁぁぁっ!!」

     噴射する炎は完全に燃焼させ跡形もなく消え去っていた。

    「状況…完了…ね…あっ…!」

    「おねぇちゃん!?…もう、無理しすぎだよ?」

    「ごめん…なさいね…ナミ、ミカ…」

     全てが終わった安堵に緊張が緩み気が遠くなる。この闘いの負い目を感じていたのを含めて想像以上に精神をすり減らしていたのだった。

    「なぁに、お陰で助かったよ。なぁ、ミカ?」

    「うんっ!だから…ね?一緒に帰ろ、おねぇちゃんっ!」

    「…えぇ、そうね」

     悲痛を受けた闘いの後でありながらも変わらない調子で語りかける妹達を見たリエラはむしろ救われていた。

    「それじゃ、車に乗せてくれるかしら?」

    「分かったっ!…よいっ…しょっ!」

     リエラが乗ってきた一見するとスポーツカーに見える特殊車両の後部座席に乗せてあげ寝かせるとミカは運転席に座り発車の準備を始める。

    「えぇと、アクセルがここで…ってうわわぁ!」

     勢いよくアクセルペダルを踏みつけてしまい車は勢いよくエンジン音を上げて急発進してしまい焦りすぐにブレーキを踏む。

    「…なぁ姉貴、運転アタシが代ろうか?」

    「…その方が良さそうね…」

    「えぇっ!?…あ…うん、お願いしますぅ…」

     ミカに運転を任せれば拾った命も無くしてしまいかねないという危惧を持ったナミが申し出るとミカは抗議するが、姉二人の哀れむ目線に耐え切れずにおずおずと引き下がるしか出来なかった。

    「じゃあ後ろで姉貴よろしくな」

    「うんっ!それは任せといてよっ!」

     後部座席でリエラに太ももを枕にさせながら返事をする。ついさっきまで意気消沈していたとは思えない切り替えの速さにナミは内心笑いながらアクセルペダルを踏み込む。

    『おねぇちゃん達ーばいばーい!』

     車の外から聞こえた少女の声援に手を振りニヘッと笑い返すミカをバックミラーで見ながらナミが呟く。

    「…ほんっとお前はそういうの楽に出来てうらやましいな」

    「えっ?何が?」

    「ふっ、なんでもねーよっ!いつも能天気でおめでてーなって思っただけだ!」

    「あ、それどーゆー意味!?…そういえば今日は左手で必殺技決めてたよね、右腕は大丈夫なの?」

     ふくれっ面で抗議しながらもさりげなく負傷の程度を気にする態度もまた彼女の真摯さを表していた。

    「あ?…あぁ…大した事ねぇって、今だって運転出来てんだ…か…ら…?」

     気づかなければもう少しの間は痛みをごまかせただろう。アドレナリンの分泌と集中力がオブラートとして痛みを緩和していたがついにその事に意識を向けてしまった。きっかけが悪意のない無垢な疑問から訪れたとなればもはやどうしようもない。顔面が一気に蒼白し口から火を吹く勢いで叫び声が飛び出す。

    「だぁぁぁっ!?イッテェェェ!」

    「ちょ、ちょっとちょっとナミちゃん!?ハンドル、ハンドル握ってぇぇ!!」

    「…ん…ふぅ…んぶっ!?ナミちゃ…ん…もっと丁寧に運転して…き…きもちわる…うぷっ!」

    「わぁぁ!おねぇちゃん、お願いだからそこで吐かないでぇぇ!ってナミちゃん、前っまえぇぇぇ!!」

    「ぐあぁぁぁっ!いっでぇぇ!」

     右腕の激痛に悶えているせいで車が大きく蛇行しながら進んでいく。車内は混沌を極め三者三様に各々が苦しみ叫びながら拠点への帰途に着いたのだった。



    「くぅ…んっ!」

     女性の苦悶する悩ましげ声が聞こえる。

    「はっあぁ…!もっ…と…やさし…くぅぅん!」

     切れ目の美女がいるのは足の高いベッドの上。ベッドというがマットレスはサラサラとしたしっかりとした物で上にかけるものはなく悶えるとつんっとそびえる双峰が連動し震えていた。

     彼女の脚の間には蛇腹になったホースが繋がれ中で音を立てて躍動する。

    〈でも、しっかりと洗い流さないと…どんな影響が出るかわからないし…〉

     スピーカーから流れる声は申し訳なさを込めた声色で話しかける。

    「ん…っ!…大丈夫…ふぅ…んっ、続けへぇ…」

     言葉の意図を理解しているリエラは気丈に振る舞おうするが気持ちから離れた口はだらしなく開き気味になり呂律も回っていない。

    〈ごめん、これが最後の吸引だから…〉

     ズヒュウゥゥ!

    「ひゆぅ!?ウアァァァッ!ヅヨイィィッとめてっトメ゛デ ェ゙ ェッ!ッ!!…ハァ…ッ…ハ…ァ…んっ…」

     ビグンッビグビグッ!

     強烈な水流でなぞられた産道と子宮門が痙攣する間に吸い込むという別方向の刺激が重なり受け身が取れず身体を跳ねさせる。

    「は…はひぃ…ひぃ…はぁ…んぁ…はぁ…」

     絶頂の余韻に白珠の肌が紅潮し吐き出す息もまた色っぽさを含んでいた。

     負傷のサイボーグヒロインが受けている処置は凌辱にも見えるような過酷なものだった。

     まずオーバードから入れ込められた精子を細いアームで掻き出し、あらかた済むと今度は放水器が内蔵されたホースが女陰を入っていく。

     内臓は任務に耐えられるよう強化改造されているが感覚だけは変わらなく作られており、人間の女性と同じ反応を示してしまう。

     処置室は二人の姉妹が待機しているミーティングルームから離れているだけでなく厚い壁に囲まれているためいくら叫ぼうとも聞こえずにすんでいた。

    〈お疲れ様、スーツはまだ修理が終わってないからそれを羽織って待ってて〉

    「…えぇ…」

     指示のままに作業台からゆっくりとおり壁にかけられていたいわゆる患者衣を身体にかけその場を後にする。

     扉を出ると控室があり一人用ソファが向かい合う形で配置され、その間に丸いテーブルがあった。

    「ふぅ…」

     治療での疲れを滲ませソファに沈ませやっとひと心地つき浅い息を吐く。

    「これ、どうぞ」

    「あ、ありがとう…」

     テーブルに落としていた視線の先にコーヒーが入った耐熱プラスチックのマグカップが現れ、リエラは差し出された事に感謝を述べる。

    「協力してくれたおかげで残留する精液はないわ。…まさかこんな事になるなんてね…」

     向かい側に座った白衣の女性がコーヒーをすすりながら作業の報告をする。

     少し長めの黒髪を後ろで束ね、前髪はところどころ眉毛にかかる程度に左右に分けて流していた。目は垂れ気味ではあるが目元はハッキリとしており目の前の美人と一緒に歩いても引けを取っていない。

     白衣とその下の黒いシャツを隔てた先に谷間が見え、首からかかっているカードキーを兼ねた入館証には御神 れいとある。

    「…えぇ…これも私の油断から起きた事…。そのせいで妹達に危ない状況に追い込んで…」

    「そうじゃなくて、あなたの事を言ってるのよ、リエラ」

     戦闘の際に受けた憂き目は心の中に色濃く残っていた。未知の力を持つ敵が相手だったとはいえ戦略の選び方が甘かったと自身を責めるリエラを心配するれい。

    「とはいえ今回はどうにか勝てて良かったわ。…それにしてもあんな使い方をするなんて造った私が思いにもよらなかった…」

    「あれは…無我夢中だったから…」

     今度はリエラがコーヒーをすすりつつ呟く。

    「オーバードラッグに汚染された精液はどんな影響を及ぼすかわからない、いくら今はまだ着床しないとしても、ね」

     口に出してからしまったと思いつつも鞘から抜いた刀をしまえずに言い切ってしまう。

    「ごめんなさい…貴女の身体をそうしてしまったのは私なのに…」

    「また謝ってる…感謝こそしても恨んでなんかないわ、もともと死んでもおかしくなかったんだもの…」

     まだ残っているコーヒーに自分の顔が写り、瞳の中に意識が吸い込まれていく。


    『お母さんただいまー』

     ギィ…ギシィ…。

     仕事が終わり家に帰った私を出迎えたのはそこにあるには場違いなてるてる坊主だった。しかも、その真下は雨に降られたみたいにポタポタと水滴が落ちてた。

    『お、お母…さん…?』

     なんであの時そう思ったのかは分からない。頭のおかしい不審者がそうしたのかもしれないのに。

     意味のない事は分かってたけど気がついたら吊るされた物の前に回り込んでいたわ。

     雨の正体が分かった。

     涙。

     もちろんそれだけじゃない、鼻からも耳からまでも生きてきた証を搾り切られ床に垂れていた。顔は怒りで崩され優しかった笑顔を浮かべていた頃は懐かしい過去になっていった。女で一つで育ててくれた苦労を知っていたからこそ私は同年代の子達よりも早く職に就き早く大人にならなければいけないという一心で頑張っていたつもりでいた。でも、それは母の心労に報いる事が出来なかったのだ。

    『うっ…うぅ…ごめ…んね…おかあさん…っ』

     台所に向かった私の首筋に冷たいモノが当たるとそれからの事は覚えていない。碌でもない記憶で留めていても仕方ない。

     次の記憶はここの処置室だった。動かせたのは目玉だけ。たくさんの管に繋がれていた身体はそもそも自分の身体じゃないと思えた。

    『目が覚めたのね、菅鳥 理恵、さん?』

     …誰なんだろう…。ぼんやりと疑問に思いつつまた意識は眠りについた。



    「…っ、私…また…」

     昔に馳せていた意識が引き戻されまた現在の空気を吸っていた。

    「思い出したのね…あなたにとってここは辛い場所だもの…」

    「気にしないで、勝手にセンチメンタルになっただけ」

     伏し目がちに紡ぐれいの言葉にまた謝罪の色が見え先んじて遮る。

    「っ、でも…!」

    「れい、私たちのブレーンがそんなんじゃダメよ?貴女は命を救い続けているんだから…胸を張って、ね?」

     ウィンクを交えた言葉はれいにそれ以上の言葉を出させなかった。目線を上げようやく柔らかな笑みを見せる。

    「ありがとう、理恵」



    「ねー、ナミちゃーん、おねぇちゃん達遅いねー」

    「…ん…?あぁ、そう、だな…」

     一方、先に手当が済み休んでいたナミの様子を伺う。指を組んでいる機手は戦闘用からより小型化されたタイプを使っていた。

    「どうしたの?考え事なんてめずらしーね」

     イスから投げ出した脚をふんふんと忙しなく動かしているミカへの返事はない。

    (姉貴がまさかあんな…)

     脳裏に焼き付き離れない敗北天使の映像。弱い人々を暴力から守るためにいる自分達が一時的にとはいえその猛威に良いようにされたという事実は灼熱の少女戦士の存在理由を見失わせるには充分すぎた。

    「…ねぇ、ナミちゃん…?」

     ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか純真の塊が前方へと場所を移した。

    「おねぇちゃん、もしかして…凄く苦しんでるのかな…?」

    「っ!ミカ…」

    (アタシとした事が…そうだよな、ミカだって一緒に戦ってんじゃねぇか…。かえって心配かけさせちまうなんてよ…)

    「あ、あのさミカ…姉貴は大丈夫だよ。そんな事くらい知ってんだろ」

    「でも…帰り相当しんどそうだったよ…?」

    「だから、大丈夫だっ…」

    「ナミちゃんの運転で」

    「…は?」

     もし顔を鏡で写せば目が点になっているに違いない。それほどに素っ頓狂な言葉を発した愛妹に力を込めて目を向けていた。

    「はぁぁぁ!?なんて事考えてんだお前は!!そんなわけ…あぁもう…っ!」

     思わず勢いで振り上げた拳を下に空振る。

     今になって思い出したのだ、ミカは性に関する知識に疎いと。

     戦いに敗けた後、性行為を強要された時に備えナミは最低限でも避妊などについて学んでいた。そのためリエラに起こった忌まわしい状況を深く理解していた。
     
     それに対してミカは姉達の手によりそういった知識を知らずにここまでに至っていた。

    「…はぁー、やっと能天気じゃないと感心して損した…罰としてなんか奢れよ」

    「ひょっとぉ、いはい、いはいってへぇ!」

     代わりに口の両側を掴み目一杯引っ張り溜飲を下げる。

    「いてて…もぅ…伸びちゃったらどうするのさぁ…。あっ思い出したっ!」

    「わっ、なんだよいきなり叫んで…」

    「さっきもわたしの事、能天気だって言ってたでしょ!しっかり覚えてるんだから!」

     頬を膨らませ精一杯怒っているのだと見せるが引っ張られた所が赤くなりその意味は半ば失われていた。

    「さっき…?…あぁ、帰って来る時の話な…」

     ようやく熱が引き、改めて椅子に体重を預け直す。

    「ナミちゃんはそう言うけど、わたしだってチームの事を考えてるんだよっ!」

    「分かったって、まったくそのとおりー」

    「もぉぉ!ナミちゃんのばかぁっ!」

    「まったく…私がいないと静かに待っていられないの?」

     些細な小競り合いの火蓋が切って落とされようとする瞬間、和平の扉が開かれる。

    「おねぇちゃんっ!!」

    「姉貴ッ!…その、具合はどうなんだ…?」

    「この通り、ばっちり本調子よ」

     修繕を終えたスーツを纏った姿はその言葉を裏付けていた。

    「はぁぁ…良かったぁ…。御神さん、ありがとう」

    「どういたしまして。これが私の出来る唯一の仕事だもの」

     立ち上がり深々と頭を下げるナミの姿を見て少し恥ずかしそうに頬を掻く。

    「ナミちゃんの方こそ腕は問題なさそう?」

    「おうっこの通り、ほら!」

     得意げに曲げ伸ばししてみせる。確かに合金筋肉は問題なく機能しているようだった。

    「でも今日は安静よ?」

    「分かってるよ、そうじゃなくても疲れてんだから…ふぁ…」

     流石に今日の戦闘の疲労ばかりは隠しきれないナミはあくびをこぼしてしまう。

    「休む前にみんなに聞いて欲しい事があるの。これはリエラが解析してくれた情報を基にあのオーバードのデータなんだけど…」

     れいの手元にレーザーキーボードが表示し、壁からモニターを出す。

     映し出された姿に三人の表情は強張る。破滅を見せつけた怪物の3D画像が回転する中、れいが続ける。

    「この個体がかつてない力を発揮していた理由はオーバードラッグの中に入っていたわ。その遺伝子情報から紐付いた人物のデータを検索したらこれが…」

    「お、おい…悪ふざけにしちゃ度がすぎるぜ…!?」

    「ナミちゃん…!」

    「でも…だけどよぉ…こんな事ありえねぇ…」

     一人の顔が映された途端、ナミは語気荒くくってかかるがそれをリエラがなだめる。

    「どうしたの…ナミちゃん…?」

    「ッ、…すまない…もう、平気だから…」

     その様子に少し戸惑っているミカが見えやっと冷静さを取り戻す。

    「もちろん私も何かの間違いだと思ってる、こんな事ありえないもの…。でも確証が取れるまでは改めて多角的な調査が必要ね」
     
     ナミの過剰とも取れる反応は痛いほど理解できたれいは努めて落ち着き払い報告を締める。

     危機的状況を乗り越えたチームにまた暗雲が立ち込め始めていると肌で感じ取っていた。



     初めてこの場を見た人間は、ここは機械の地獄だと言うだろう。

     大小様々な工業製品のパーツや人体用の部品が辺りに散らばり、組み立てに使われただろうオイルが床を汚していた。

     部屋を照らす光は限られその全容は掴めない。それでも室内には二つの人影がいる事だけは分かる。

    「あーあ、ついにやっちゃったねぇ。もう君たちは自分の頭に銃を突きつけちゃったんだよ?」

     ばぁん、と撃つふりをする女性は暗い赤の唇を口角の上がる角度と同じく歪ませる。

    「それに比べて、キミは本当にイイコだねぇ…ご褒美にもっともっと強くしてあげるからねぇ…」

     背後で無数のコードに繋がれた大男に向けて言葉を放つ。その姿はついさっきまで猛威を振るったオーバードに近く、部分的に機械が埋め込まれていた。

    「何が正しいかなんて分かりきってるのにあの子達はまだ無駄なあがきを続けてる…。だったら今度こそハッキリさせてあげるわ」

     舌なめずりしてぬらっと湿った唇が動く。

    「この私が正しかったとねぇ!ふふっ、ハハハハァ!」

     この先に起こるだろう展開が映像として頭の中で再生され三人の戦闘女神が凄惨たる末路を迎える様に昏い感情を抑えきれず地の底に悪魔の笑い声を響かせていた。
    ryonamaruz Link Message Mute
    2022/04/26 17:23:01

    暴走狂人に蹂躙される機装天使!逆転のチャンスは一度きり!

    オリジナルサイボーグヒロインシリーズになります。

    身体の大部分を機械に置き換えた少女達が治安を荒らす強化人類と闘っていきます。

    作品のテーマとしてヒロインのピンチやリョナ表現が含まれていますのでご了承下さい。

    それでは楽しんで頂ければ幸いです。

    ##小説 #ヒロピン #リョナ #敗北 #サイボーグヒロイン #ヒロインピンチ

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