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    魔女の番犬~お菓子の魔女には番犬がいる~(読切ロナドラ×ヘン魔女)●お料理の魔女には番犬がいる

     子供を喰う魔女が森に住みついた。
     そういう悪しき魔女退治依頼のはずだった。

     もとより魔女の実態は千差万別。薬師として日銭を稼ぐ者から魔法で呪いを担う者まで様々だ。
     だが、人に害をなす醜悪な魔女の退治ならば好都合。
    各地で魔女を血祭りにあげて名を馳せてきた俺ロナルドさまの『千体目』を飾るに相応しい。二つ返事で司祭から仕事を引き受け、喜び勇んで銃とレイピアを持って魔の森へ突撃した。
    「人食いの魔女ドラルクゥ!」
     まずは口上をあげるところから。
     セオリーに従って華々しい栄誉を飾ろうとした俺が見たものは……

    「やめて、やめてぇ、やめてよぉ」

     悪ガキどもにお菓子の家を喰い壊される、へっぴり腰の気弱な魔女だった。
    (魔女……否、男? 青年と言うには俺よりおっさん寄りな気が)
     しかし身につけている品は魔女装束だ。
     とんがり帽子に一枚布のAラインドレス。水玉模様は奇抜だが本人の趣味だろう。ご丁寧に古典的な杖まで持っている。四肢を彩る装飾品を見る限り、魔女たちが使う呪物だが……攻撃性より防御系のまじないばかりに偏っている。物理も魔攻も通じない。
    (鉄壁の防御。近寄っても問題は無ぇ……か?)
     安全を確認してから近寄る。
     まずは小さな暴君の捕獲からだ。

     ◆◇◆

    「とっとと帰ぇんな」
     無傷どころか丸々肥えた子供たちを追い払い、親元に帰した後、世紀のウィッチキラーと恐れられた俺は……魔女ドラルクの接待を受けていた。
    泣きながら感謝されている。怒っても泣いても頼んでも暴君あらため子供たちは帰ってくれなかったらしい。
    (俺、見るからに魔女狩りなんだけど)
     全く警戒されてない。
    「君のおかげだよ。たんと食べて」
    「おう」
     蒸した茶葉にベリーの香り。
    壁から切り出したバターケーキには違和感を覚えたが、驚くほど美味い。
     砂糖菓子をろくに食えない寒村のガキが群がるはずだ。
     王城のパティシエより良い腕前かもしれない。
    「あー。詳しく説明してくれるか」
    「う、うん」
     ドラルクはポットを置いて向かいの席に腰掛けた。
    「私の一族の祖は人間保全派でね、住みつく時に必ず近隣の役に立つのが決まりなんだ。セオリーは医者の真似事をしたり、風邪とかに効く常備薬の提供なんだけど、私って……お料理ぐらいしか得意じゃなくてね」
     照れている。
    (照れるところなのか、そこは)
     人間と共生しようとしている魔女の一族については、噂程度にきいたことがある。
    人間に友好的で、持てる力や叡智を民のために使うことから、稀に『聖女様』として有名になり、貢ぎ物の滞った教会から嫉妬や逆恨みをされて屡々いやがらせの噂を流布されたり、魔女裁判や火炙りになるケースもある。
    (無害なタイプは初めて出会ったなぁ。いやしかし)

     毒薬どころか薬草も、使いこなせない魔女ってなんだ。
     それは『魔女』って言うのか?
     一般人では?

     未知との遭遇に精神が飛び去っていく。
     おずおずと内気なドラルクの説明は続いた。
    「しきたりで役に立てないと居住許可がもらえないから、贅沢にお菓子の家で喜んでもらおうと思ったんだけど……完成前に見つかってしまって。子供の噂って広まるのが速くて、どんどん仲間の子を呼ばれて、食べられちゃって、ひとりじゃ補修も追いつかないし」
     ピス、と悲しげに鼻を鳴らす。
     教会の討伐依頼書を見たのは三日前。
     そこから事情聴取と行方不明者のリストを纏め、道具を揃えて正式に引き受けるまでに時間がかかった。その間も行方不明者が出ていたので、強力な魔女の出現かと身構えたが……話を総合するに、子供たちが『タダめし』ならぬ『タダ菓子』に釣られたとしか思えない。
    「じゃあ、俺が来るまで三日間ずっと喰われていたのか」
     大事な家を。
    「あぁ、やっぱり親御さんに心配かけてしまったね。最初の子から数えると七日かな」
    「なのかぁ!? え、菓子ってそんなに持つもんなのか」
     考えてみれば……森の中にあるのに、蜂もハエも寄ってこないのは不気味すぎる。まさか危ない薬品でも使っているのでは、という可能性が脳裏を過ぎり『うっかり喰っちまった』と焦ったものの、魔女ドラルクは表情を輝かせた。
    「お料理が腐らない魔法は使えるからね。とてもエコだよ」
    「えこ?」
    「節約。森の恵みや頂き物を無駄にせず、必要なぶんだけ分けてもらって、必要なときに使うんだ。仕組みを君たち人間に説明しても理解は難しいと思うのだけど、食品酸化を防ぐだけだから食べても無害。いつでも新鮮でおいしいんだよ! すごいでしょう!」
     ふふん、と誇らしげに胸を張る。
    「あぁうん、すげぇと思うぜ」
    「なんだね、そのやっつけ感」
    「俺、流浪の身で自炊しないから凄さが分からん」
    「あっなるほどね。それはごめん」
     こいつは『お料理に特化した魔女』らしい。
     人には得手不得手があり、薬や魔法が苦手な者もいるに違いないが、イレギュラーすぎる存在なのは間違いない。
    (コイツの討伐はナシだな)
     魔女は一族を束ねる当主の方針が絶対なので人間と共存を掲げている以上は『有事までは手を出さない』のが組合の基本的な方針だ。
     ぽやーっとしたドラルクには危機感がない。
     悪事を働くタイプに見えない。
     魔女狩り家業において、敵や逆恨みは少ないに限る。
    「さて。こんな辺鄙な場所でお菓子の家を造ってた理由は分かった。俺の依頼元は地方教会の連中だし、人食いの噂は尾ひれがついた事実無根だな。こっちで処理しとこう」
    (俺に泥をかぶせようとしたヒゲ司祭、しばく)
     わざわざ外来の退治人を使う意味を悟った。
     魔女ドラルクは表情を輝かせた。

    「ありがとう。退治人くん」

    (コイツ……俺が魔女専門の退治人だと分かってたんだな)
     俺の格好は魔女狩りのプロフェッショナル仕様。
    知っていて意識されなかったのは、その身に装着していた防御具への信頼だろうか。
    確かに毒薬も作れず、攻撃魔法も使えず、料理で身を立てるしかできないのであれば……
    この物騒なご時世、防御系の魔導具で自衛に走る心理はわからなくもない。面倒な残務を考えつつ立ち上がる。
    「有害な輩の駆除が俺の仕事なんでな。依頼が吹き飛んで、高額報酬もおじゃんになったし、一食の礼だ。じゃあ家の修理、頑張ってくれ」
    「待って」
    「あん?」
     ドラルクは飴菓子やクッキーを詰め込んだ布の巾着を俺に手渡してきた。
    「食事や泊まる宿に困ったなら、いつでもおいで。恩人だもの。次はシチューを食べていくといい。私オートミールと煮込み料理は得意なんだ。ごちそうするよ」
     
     ◆◇◆

    「っていうのが、俺とこいつの出会いでな」
     足下には、俺に肩を射貫かれた侵入者が呻いていた。
     駆け出しの退治人だろう。
     仕事が終わり、帰ってきて、疲れて眠っている間に……名をあげたいだけのバカが侵入してきて、このザマだ。
    かろうじてドラルクは無事だったが、貴重な睡眠時間を邪魔された俺は疲労も残っていて機嫌がすこぶる悪い。
     半身不随になるまでぶちのめしたい。
    「うぅ」
     侵入者の声じゃない。
     小脇に抱えた魔女を一瞥する。チッ、と舌打ち一つ。
    「いいか、新人くん」
     物騒な気持ちに蓋をした。
     家に押し入ってきた余所の退治人をぶちのめした場合に……ドラルクが怒るからだ。
    「こいつは料理しか取り柄のないクッソ雑魚の魔女で、俺の連れなんだわ。せめて組合に寄って、滞在地域のお勉強くらいはするんだな。新人くん。二度と仕事デキねぇ体になりたくなかったら、このロナルド様の前から三十秒以内に消えな。いーち。にーい。さーん」
     カウントダウンは警告と温情だ。
     名も知らぬ退治人は慌てて家から出て行った。
     はぁ、と溜息を吐いて、気絶しているドラルクを膝の上に抱え直す。

    「……おら、おきろ」

     ぺちぺちと頬を叩く。
     うめき声をあげてドラルクが目を覚ました。
    「退治人くん。お、お客さんは?」
     開口一番で暴漢の心配をするお人好しな性格に腹が立つ。
    「客じゃねぇだろうが。ちゃんと紳士的に脅して帰ってもらった。これでいいだろう」
    「よかったぁ。君ぶちぎれると手加減できないもん。心配したよぉ」
     ドラルクに咎められるまでは再起不能にする主義だった。
    「せめて蹴散らした俺のほうを心配しろ」
    「君は強いじゃない」
    「俺はロナルド様だぞ。強くて当然だ。俺の強さと心配は別問題だろうが。すねるぞ」
    「そういうとこだよ」

     教会は権威を保つために仮想の敵を作り出すことが多く、料理以外に能力のないドラルクはこれ幸いと餌食にされやすい。無害が知れ渡るまではと街に居ついてから、仲立ちはそう簡単ではないと悟り……
     最終的に俺が魔女の家に住む事態になった。
     魔女の家に住むようになってからは番犬紛いのことをしている。
     番犬仕事は、朝晩の食事と寝床の代金と思えば苦でも無かった。だが……
    「……ドラルク眠い」
     猫のように頭を預ける。
    「はいはい。抱き枕になればいいのかね」
     気づいたら。
    雑魚すぎる魔女とねんごろの関係になっていた。
     こいつ。メシが美味いし、清潔だし、女よりイイ匂いするし。なにより中身が可憐で可愛い。
    底抜けに優しいのだ。
    世間を知らない間抜けというよりも、悪意に晒されていないのだと知った。守ってやりたいと思った。魔女の、それも男相手に入れ込んでいることへの葛藤は数週間で消え失せてしまい、なにかと理由をつけて傍にいては、しだいに恋人のように振る舞うようになった。

     一線を越えたのは半月前。
     ドラルクは『つがい』だと言ってくれた。
     だから、こいつを害する輩は、すべからく俺の敵だ。

    「ん。後でおきたら掃除、手伝うから」
    「いいこいいこ。おやすみのキスしてあげるから眠るといいよ」
     頭を撫でるしぐさに安らぎを覚えながら寝室へと戻った。
    ●雑魚の魔女と退治人

     前回までのあらすじ。
     魔女退治人として有名になって調子に乗っていたら、嘘だらけの仕事を掴まされた。
    危うく無実の魔女を殺すところだったと教会にクレームをいれて迷惑料を請求したら退治人組合の威信をかけて教会側と裁判になった。
     借宿は教会所有ホテルだったので追い出された。普通のホテルに泊まろうとしたら外貨交換を断られた。教会の嫌がらせである。
     天下のロナルド様が魔女の森へリターン。

    「……よくやるね。私を悪者にしておけば良かったのに」

     宿を提供してくれた無害な魔女改め『お菓子の魔女ドラルク』は、顛末を聞いて苦笑いした。
    煙草の代わりにどうぞ、と山盛りのキャンディを差し出され、俺は苛立ちを紛らわせるためにバリバリと飴をかみ砕いている。
     ドラルクの言うとおり。
     普通の人間ならば魔女に罪を着せるだろう。
     魔女は人を惑わし、害をなす。
    というのが世間の定説だ。だが……
    「良くはねぇだろ。言いがかりで命を奪われることになるぞ」
     一度火のついた民衆は手に負えない。
     第一こちらは信用商売だ。ありもしない嘘や罪は吐けない。
    「君って良い子だね。律儀だなぁ」
     はい、と夜食のシチューを差し出される。
     両手を合わせて「頂くぜ」と頭を垂れた。
    匙ですくって料理をひとくち。
    自ら言うだけあって料理の味は美味い。思わず「マジでうめぇな。胃にしみる……」と声が漏れた。
     本当に料理しかできない魔女なだけある。
     飯は美味い。
     文句なしに美味い。
     俺の評価を知らないドラルクは、満足そうにニコニコしていた。あれやこれやと副菜を出してくる割に、ドラルクは陶器に注いだ豆のスープを飲んでいるだけだ。ふいに「それで足りるのか」と身を心配する声を出してしまったが、ドラルクは「小食でね」と返すだけ。
    「別に、大人数で押しかけられても困りはしないよ」
    「子供相手に困ってたじゃねーか」
     お菓子の家を喰われて。
    「そういう意味でなくてね」
    「じゃあ、どういう意味なんだよ」
    「どういうって……私は【真性魔女】なんだよ。仮に兵をよこされたとして、焼かれて死んでも、いずれ灰の中から復活する。君は退治人なのに古き魔女を知らないのかね?」
     きょとん、と赤い瞳を点にした。
     沈黙が広がっていく。
    「は? 真性の魔女? コウモリに変身できるタイプか?」
    「やっぱり分かってなかったのか。そうだよ、真性魔女。魔女から生まれた真の魔女という者さ。召喚悪魔との等価契約や、血液による人体の汚染からの仮性魔女化ではなくてね。私は不死であり、この世に生まれ落ちてから208年になるね」
     ふふん、と誇らしげに胸を張る。
    「208年???」
     俺は耳を疑う。
    「ははは、その驚きたまらんね。そうとも!
     私こそ真性魔女にして」
    「208年? うそだろ? 真性魔女のひとり立ちに208年かかってるのか? 208年もいきてて、薬草も魔術も使えないのか? まだ魔導書揃えてる仮性魔女のほうが有能だろ! 世の魔女狩りを舐めてんのか!?」
     呼吸を忘れるほど一気に問い詰める。
    ドラルクが死んだ。
     椅子の上に灰の山を形成する。
    「メンタルが弱い!!」
     そのまま三十分が経過した。ゾゾゾッと灰が動いてヒトガタを作り上げた時、なじられて死んだドラルクは両手で顔を覆って嘆いていた。
    演技ではなく本気で落ち込んでいる。
    「調子に乗ってごめんなさい……私は仮性魔女以下のイモ虫な弱々魔女です」
    「卑屈っ! そこまでは言ってねぇよ」
    「だってぇ」
     ピスピス鼻を鳴らす。
    「いや、とりあえず死んで灰になっても生き返る実演は見せてもらったからな。出自は信じるが……悪かったな、か弱いのに殺しちまって」
     言葉責めで死ぬ魔女なんて初めてだ。
     へたすると血を吸う蚊のほうがバイタリティがあるかもしれない。
     ドラルクが嘆きながら反論する。
    「うぅ。しかたないじゃないか。私だってもっと強大な魔力をもっていた時代もあったけれど……えっと隣国でボードゲームが豊作の時代があって」
    「ぼーどげーむ?」
    「使い魔と積みゲームの消化に勤しんでいたら数年が経っていて、使わない薬草は新種で溢れるし、一族が調合してきた秘密レシピとか忘れちゃったんだよ。もう調合の計算とか辛い」
    「ガチめの引きこもりじゃねーか!」
     魔女の時間感覚は人と違うのだろう。
     娯楽に熱中していたら、世界が変わっていた。
     世の中にはままある……かもしれない。
     ドラルクは見るからに焦った。
    「ひきこもってはいないぞ!」
    「ひきこもってない証拠を述べろ!」
    「旬の山菜集めは私の日課だ!」
    「お散歩ガチ勢」
    「登山は大変なんだぞ!」
    「野山は人に会わないだろうが」
    「ま、街へ砂糖や水飴、穀物や香辛料の買い物はしているぞ!」
    「ムキになるな! 飯とお菓子の材料ばっかりだろが、雑魚魔女が。せめて街の女を剥製にするとか、退治されてしかるべき悪事をしとけ」
    「なにそれ怖い」
     きゅ、と身を縮める。
     想像力の働かせかたと怯え方が一般人のソレと同じだ。
    (善良すぎる)
     俺は魔女らしさを語らんと記憶を漁る。
    「気に入った女を集めよう、とか言う煩悩寄りの発想はねぇの?」
    「退治人の発言としていいのかそれは。私たちは生殖衝動がある動物とは根本的に違うし」
     本気で困った顔をしている。
     見るからに異文化と遭遇した瞬間の顔だ。
    (へぇ、知らなかった。魔物と契約する色狂いばかりかと思ったら違うのか)
     ドラルクは唸りながら言葉を連ねる。
    「第一、 本物の剥製って大変なんだぞ」
    「作ったことあんのか」
    「素養としてね。講義と同じだよ。完成までは汚れるし臭いし、でかくて置き場にも困るし、そもそも私は興味が無い。何のために死骸なんて家に飾るんだね?」
     この怪訝な顔はマジだな、と悟った。
     俺はぽりぽりと頬を掻く。
    「自分で食べねぇお菓子の巨大建造物を作ってる奴が言っていい台詞じゃねぇぞ」
    「あれは趣味と実益と芸術だよ」
    「まあいい。真性魔女の実態が文献と違う……ってのは分かった。声のでけぇ輩が目立つのは世の常だ。お前の件が片付くまで、ここに居座るからな」
     ずびし、と監視を宣言する。
    「いいよ」
    「いいんかよ」
     魔女の監視を名目に、当面の住居を確保。
    という下心は意味を持たなかった。
    今まで999体の魔女を殺してきた魔女狩りのプロフェッショナルとして、なにかしら悪事の兆候が見られたら殺して制圧する自信があってこその図太さを発揮してみたが……
     ドラルクは即決で了承した。
    (どうやって生きてきたんだ、この魔女)
     ぽやーんとした笑みを浮かべて上機嫌になる。
    「私の特技は料理だけど、食べてくれる相手がいないと張り合いがないからね。とはいえ客間の準備もままならないし、今夜は私のベットを使ってくれ。洗い立てのシーツに、ふかふかの羽布団を出すよ」
    「待てよ。お前はどうすんの?」
    「コウモリに変身できると言っただろう。バスケットにバスタオルでも敷いて眠るよ」
     食べ終わったらゆっくりおやすみ、とドラルクは笑った。

    ●【小話】朝チュンは事故ですか?

     腕に違和感と痺れ。
     目を覚ますと、魔女ドラルクが俺の腕を枕にして寝ていた。
     どっ、と心臓が激しく脈打ち、覚醒した。
    身動きができない。硬直したままで思考を巡らせ始める。半裸で寝ていたら、男それも魔女が懐にいるのだから焦るのは当たり前だろう。
     昨晩魔女の寝室を借りた。眠るときは一人。
     深夜に眼を冷まし、喉の渇きを覚えて台所に降りて、それで……
     テーブルで見つけたのは、ぷぅぷぅ鼻息をたてて眠る小さな紫色の毛皮のコウモリだった。
    果物を盛るアケビの蔓でデキた編み籠の中に、洗いたてのタオルを敷き詰めて眠っていた。
    魔女の変身は初めて見た。物珍しさと好奇心が先立ち、水をのみながら様子を伺い、ぴくしゅん、とくしゃみを繰り返した光景を見た。
    (思い……出した……)
     寒そうな姿が可哀想になって連れ出したのだ。
     あの時、寝ぼけた俺の心の中ではコウモリとドラルクは結びついていなかった。完全に愛玩動物を見るような感覚だったのは間違いない。
     寒そうだ。
     可哀想に。一緒に寝てやろう。
     それ以上の他意は無かった。決して。
    (いや、確かに籠からコウモリを連れ出したのは俺だが、夜明けには元に戻るのか?)
     まさかヒトガタに戻るとは思ってなかった。
     今、おっさん魔女が腕の中にいる。
     すよすよと寝ている。
    (マジか)
     前髪を下ろした寝顔は、幾分か幼く見える。
    (まぁいいか)
     思っていたより魔女は幼いのかもしれない。
     という発想が脳裏を過ぎり『いやでも208歳だったな?』という理論的な思考が記憶の球を撃ち返してくる。
     200年以上も生きてきて得意なことは料理だけ。魔女として暮らすには不便だったろう。
    (こんな森の中でひとり立ちか)
     大切にされながら。
     静かに暮らしてきたに違いない。
     人間と共存を掲げる話には真実みがあった。
     事実、無害である。
     と思うと、今回の一件は捨て置けない。誤解を解いて、或いは教会の不誠実さを暴いてから、商店街で買い物をする程度の自由を雑魚魔女のドラルクに与えてやりたい、と考えていた。
    (一宿一飯の恩返し、か。悪くはないな)
     魔女狩りが、魔女を守る側に立つなんて考えたことも無かった。倒すことばかりに腐心していて、魔女の実態を知ろうとしなかった。
     全てが初めて。
    「いつか俺は……お前からなにか学ぶのかな」
     答えはない。
     問いかけは朝霧の中にとけて消えた。

    ●この心に名前をつけるなら

     一枚の羊皮紙をドラルクの前に差し出した。
    「なんだねこれ」
    「枢機卿の念書。こっちの未開封は国王の証文」
    「はあ?」
     素っ頓狂な声をあげる。
     ドラルクは鍋をまぜる手を止めた。
     枢機卿と言えば、地方教会のトップに君臨する権力者だ。
     司祭たちを束ね、各国に一人くらいしか存在しない最高顧問であり、枢機卿の上位は教会本部から出てこない教皇しか存在しない。
    つまり枢機卿とは国王に次ぐ権力者である。
    地方教会を牛耳る存在の直筆念書は、司教座を持つ連中に絶大な効果を発揮する。ひとくちに宗教といっても、昔から身分に縛られた階級社会だ。
     清貧。貞潔。服従。
     彼らの中で上位者の命令は絶対。
     仮に末端をやり込めてもゴキブリのように次が湧く。
     退治人組合で皆と考えた結果、裁判で上位身分を呼び出すことに決めたのだ。
     そして戦いの結果が出た。
    「お前が作ったお菓子の家は『教会の怠慢によって発生した街の飢餓と貧困をみかねたお前が、餓えた子供たちへ善意の施しをした』ことになってる。その感謝状と、街中を歩く許可だな。買い物も購入額が卸売り並だから、商店街の評判も鰻登りだぞ」
    「ファー?!」

     ドラルクは頓着しないが、事態は深刻だった。
     誰の目からも明らかな大義名分が無ければ劣勢裁判で戦えない。
    そこで行ったのは町内パトロールをかねた地方教会の醜聞集めだ。
     教会は民衆からの寄付で成立している。
     聖書を諳んじる説教の傍らで、なけなしの財を供出させるのだ。その影響は下層階級から上流社会にまで及ぶ。
    銭や貴金属、ワインや熟成肉。修道院内は貴族でも口にできない上納物で溢れることになる。長年溜め込んだ財は大きい。毎週の儀式に使うパンや葡萄酒が欠かせない割に、納入業者に対して屡々代金の不払いが起こる実態の把握は手始め。
    連中は神の威光を掲げて、足下を見ているのだ。
    未払いは犯罪である。
    貧しい者に手をさしのべるフリをして、国王と契約した宗教儀式や施しをかねた催しを怠れば、それらは教会側の責務怠慢にほかならない。
     人海戦術にともなう泥臭い下調べで積み重ねた証拠集めは、最終的に腐敗した教会を暴いた。末端の醜聞が隠せなくなれば、上の者がトラブルの責任をとる。
    修道院を統率できなくなった大司教の尻ぬぐいは、教会の枢機卿が顔を出すしかない。
    (たまたま上手くできたほうだな)
     魔女ドラルクへの被害は、過程で処理した『ついで』だ。

    「なんか毎日街でごそごそしてると思ったら! 天下の教会が『ごめんなさい』してるじゃないか!」
     直筆の署名に血判付き。
     これを破れば次はない。
     いかに宗教といえども国に寄生している組織だ。
     国王からの信用を失えば、国外へと追放されるだろう。
    「教会末端の腐れ外道っぷりに国王と行政も手を焼いていたみたいでな。感謝されたぜ」
    「ハッピーエンドを背負うな! 社会的にぶっ殺してるじゃないか!」
    「くされた組織は粛正されるべきだ」
    「ど正論!」
     俺はどっかりと普段の定位置に座る。
     帰宅途中で額を買ってきたので、証文はきっちり飾るつもりだ。
    「近々、街の司教たちは本国に戻されて再教育。教会には代理が来る。これで嘘の魔女狩り騒動は一件落着! といきたいが……あくどい商売も神の名のもとにやってきた連中だ。当面は報復がねぇか組合で見張る。大袖振って街を歩けるようになったとはいえ、警戒は怠るなよ」
     買い物に同行する趣旨などを伝えると、ドラルクは身を竦めた。
    「や、別に、私は君以外の人間にそう面会しないし、必要なときに買い物できれば、それでいいんだけど」
    「ぁあ?」
    「なんでもないです」
     はーっと深い溜息が聞こえる。
    「君って面倒見がいいのか、執念深いのか分からなくなるよ。どうせ魔女は鼻つまみ者なんだし、そこまでお相手をやり込めなくたって良いと思うんだけどねぇ」
    「俺の腹の虫がおさまらねぇ」
     こっちは魔女狩りの立場にかこつけて、殺人依頼を託された側だ。
     間違いが発生してからでは取り返しがつかない。
     雑魚魔女でなければ、欺されていた。
     無実の者を殺す。
     暗殺の依頼はお断りだ。
    「俺たちは社会的立場が弱いからな。組織的悪意に対して徹底して対処すべきなんだよ」
    「汚れ仕事を託される退治人家業も大変だね。まぁ私は、新しいレシピの味見をしてくれる友人が増えて嬉しいけどね。はい、キノコを使ったホットパイの新作だよ」
     あーん、と匙を差し出されて。
     流れるように食いつく。ふいにドラルクが固まる。
     王への直訴や組合の手続きには書類仕事がつきもので、俺は両手を離せないままデスクにかじりつく時もある。
    そうなると飯を食い忘れる。無精はやめろとドラルクが怒る。口ではあーだこーだと小言を連ねながら、口元まで飯を持ってきてくれるケースが増えた。
     そのまま定着した。
    「美味しい……かね」
    「うめぇ」
     ホッと息を吐きながら「そうかね、よかったよ」と胸をなで下ろす。俺が飯を褒めれば、ドラルクがレシピのコツをしゃべり出す。料理と娯楽のことになると饒舌だ。
    ここからはいつも通りの空気になるが……もうずっと前から、気づいていることがある。
     普通の友人は、食べさせあいなんてしない。
     食事や洗濯の世話もしない。
     同じベッドで一緒に眠ることはない。
     俺とドラルクの静かな生活は、距離感が歪んでいた。
     ふとした瞬間に戸惑いが露出する。
    俺もドラルクも、一瞬だけ理性が勝って身を強張らせ、今起きている事について考え出す。己の行動に理由を探す。そして『いつものことだし』という習慣性で違和感を押し切ってしまう。
     考えないように心がける。
     本意をだまして、折り合いをつけてきた。

    (でも、もう終わりだな)

     魔女と教会と組合の問題は解決した。
     それでも監視や報復の様子見という蛇足的理由をつけてココに残る。俺が残りたがっている。居心地が良いのだ。
    魔女を倒して名声を手にし、人の役に立って承認欲求を満たすことよりも、能なしの魔女を手放しがたい存在として認識している。
     いわば愛着。
    (……なんでだろうな)
     魔女を名乗るドラルクは、料理以外の能力が無い。
     だから魅了薬のせいでもなければ、魔術で虜になっている可能性もゼロだ。妖しい品物や他人の責任にしたくても、誤魔化しようがないほどに、事態はまっさらで明白だった。
     俺は討伐対象を愛してしまったのだ。

     ◆◇◆

     寝台に横たわったまま寝返りを打つ。
    「まだ起きてるか」
     月明かりが差し込む寝室で、懐から這いだしてきたのは紫色の小さなコウモリ……変身したドラルクだ。
    客室は用意してもらっているが、あまり使っていない。差し入れの際、夜更かしや煙草が体に悪いと叱られるのだ。
    そのうち就寝時間を握られるようになった。
    一緒に寝るのが当たり前になってからは、ドラルクは気を遣って蝙蝠の姿で懐に納まる。俺の呼びかけで布団から這いだしてくる動きが猫に似ていた。
     にゅ、と小さな体躯でのびをする。
    「なんだね」
    「いま話をしても平気か?」
    「寝落ちには至らないから少しなら」
    「じゃあ……ちょっと元に戻ってくれるか。ここで」
     ピス、と戸惑いがちに鼻を鳴らす。
     たっぷり時間を使って黙った後「狭くなるよ?」と問いかけてきた。
    「うん」
    「うん、って、君ね」
     呆れている。
     コウモリの姿でもドラルクは感情豊かだ。爪でぽりぽりと鼻を掻く。
    「いかに私が細身でも、長身のおっさんだぞ。ひとり用のベットなんだから体がはみ出るだろう。ヒトガタでないとできない話なのかね」
    「できない」
     俺は即答した。
     怪訝な顔をしたまま諦めたドラルクは、ポンッと軽い音を立ててヒトガタに戻った。布団がめくれて、俺の傍らに腰掛けるネグリジェ姿のドラルクは、どこからどうみても少し年嵩の成人男性だ。
    自他共に認めるおっさんそのもの。
    「話って?」
    「なぁ。お前さ、退治人の俺が怖くないのか」
    「これだけ一緒に暮らしてて今更??」
    「こたえろよ」
     俺には大事なことだった。
    「急に真剣な話を装うから何事かと思ったら。怖いもなにも、私は不死だと教えただろうに。火炙りにされても灰の中から生き返る。だから真性の魔女なんだ。攻撃的な人間相手なら警戒するけど……君は違うだろう?」
     人差し指で俺を指す。
    「君は『魔女』だと言うだけで殺す輩じゃない。人に有害かどうかを、自分の眼で見極めてから決めている。悪事や偽証、世の道理に反するような曲がったことが大嫌いだ。困った人は助けるのが当たり前だ、と照れもせずに宣う。清廉潔白な人間を恐れろと?」
    「俺が『怖い』かどうかを聞いてるんだが」
    「怖くはないよ。ちょっと突拍子もない部分はあるけど、頼もしい若者だ」
     評価を聞いて胸のつっかえが熔けていく。
    「そっか」
    「で、そんな事を確認するために深夜に問答を? もう寝て良い? うわっ」
     俺はドラルクの手首を掴んで引き寄せた。
    バランスを崩して腹の上に倒れ込むドラルクは、睡魔も相まって不機嫌極まりない。淡々と理論的なことを喋っているが、目元に隈がある。意識が半分寝ている。
    あまり長話はできないと判断して決意を固めた。
    「俺さ。お前のこと、気に入ってるみたいなんだ」
    「なぁに。料理も美味しいし?」
    「料理も菓子も別格だが……そういう話じゃない。寝ぼけてコウモリ姿のお前を連れ込んだのは事故だったが、今はこうやってヒトガタだろう。ただのガリヒョロおっさんの魔女だって頭で分かってるのに『抱きしめたい』って思うんだよ」
     俺がドラルクに抱く感情。
     それは『愛情』に違いない。
     恋じゃない。そんな淡いものじゃなかった。
     乞い願うものとちがう。相手の幸せや平穏を願って、際限なく安らぎを与えようとする行いは、青臭い恋心とは違う代物だ。欲でもない。同性だからなのかもしれないが、愛憎を抱くような執着を伴わない。
     いまの俺は見返りを求めない。
     美しいままで時を止めた献身性を、汚れた己の中に見た。
    「寒い? 湯たんぽつくる?」
     半分寝ぼけたドラルクは俺の意を汲み取らない。
    「いらねぇよ。俺もそうだが、お前もだいぶ常識がぶっ壊れてるな」
    「なんだね、人がせっかく心配したのに」
     ぷくー、と頬を膨らませる。
    「俺は寒いから抱き枕にしたいわけじゃねぇ。お前を大事にしたいし、愛したいって考えるんだ。先に言っとくけど女に困ってるわけじゃねぇからな。街をうろつくと嫌でも寄ってくるし、ここで寝起きする前は普通だった」
     捲し立てる。
     こいつに勘違いされたくない。
     決して『女の代わりにしている』とか、気の迷いだと思われたくは無かった。
     ドラルクは答えない。
     ぐっと身を乗り出して俺の瞳を覗き込んでくる。
    「女? 街で、女性に言い寄られてるの? 仕事の合間に?」
    「そりゃあ退治人は娼婦にとって良い金づるで……なぁ、お前もしかして嫉妬してる?」
     俺の気持ちが献身を伴う愛情である、のは明白として。
     なにかと世話を焼いてくるドラルクの言動に、好意の望みをかけた部分もなくはない。俺のことを憎からず思ってくれているのではないか、と頭の片隅で可能性を追った。
    嫌っているのなら一緒に眠ったりはしないだろう。
    食事だってそうだ。
     でも期待以上の反応を見た。
     嫉妬は無関心な相手に対して起こらない。
     ドラルクはもごもごと口籠もり、ぺしょんと耳を垂れた。
    「してる、と思う」
    「なんで」
    「だって。君かっこいいし。仕事もできるし。街のご飯を食べてくると疲れた油の匂いとかさせていて体に悪いなって思って、それなら三食ちゃんとしたご飯食べて健康でいて欲しいし、毎日衣類の洗濯したりお弁当つくったりしてたら、なんか、魔女特有の執着心が湧いちゃって、気のせいかとも思ったけど」
     魔女には独特の性質がある。
     これと決めた場所や品物に執着する。
     退治人はその性質を利用して討伐することも屡々だ。
    ドラルクは魔女特有の執着心を『俺に対して持った』と確かに言った。
    「……わ、私が磨き上げたイイ男なんだぞ、って胸張ってたら……知らない香水や化粧品の匂いさせてると、ムカムカして。お客人相手にこういう独占欲はよくないな、って思って」
    「で?」
    「お、おかしいって分かってるよ? だから努めて冷静を装ってきたのに。嫉妬なんて言われたら台無しじゃないか」
     ぴす、と鼻を鳴らす。
    「執着してんの。俺に?」
    「魔女特有の性質だよ。ほっといて」
     ぷい、と顔をそらすので再び腕をひいた。
    「迷惑だとは言ってないだろう。第一、俺が一大決心して言った台詞を聞き流したな。羞恥心で慌てて喚いてないで思い出せよ」
    「一大決心?」

    『お前を大事にしたいし、愛したいって考えるんだ』

    「あぃ……」
     うわごとのように呟いて。
     じわじわと頭に血がのぼり、耳まで真っ赤になっていく。
     初心な町娘のように慌てた顔を見ていると閉じ込めたくなる。
     手を握って。顔を寄せて。唇を奪ったら……
    「ドラルク」
     愛してもいいだろうか。
    「わー!! だめ! なし崩しはダメ!」
     正気に戻ったドラルクが身を離そうと暴れ始めた。
    「俺もお前も相思相愛だろうが!」
    「き、君の気の迷いとかだと私が立ち直れなくなるから! 今夜はダメです! コウモリの湯たんぽで勘弁して! 日を改めてください! 私の心構えができてないから! タイム!」
     むい、と両手で顔を押しのけられる。
     全力拒否。
    「…………分かった」
     引き下がった。
     俺は魔女狩りのプロフェッショナルだ。本当に執着が芽生えたのならば、焦る必要がないと知っている。
    「退治人くん」
     ホッと露骨に安心している姿に苛立ちを覚えた。
    「心構えができたら絶対に抱くからな。合意の上で」
    「ひぇっ……ワカリマシタ」
     ガクガク震えながら答えた。
    「おら、ねるぞ」
     めくれあがった掛け布団を引き寄せ、ぺふぺふと叩く。
     ドラルクが頭を抱えた。
    「この状況で同衾に誘う君の感覚がよくわかんないよ」
     ぽん、と音を立ててコウモリの姿に変じる。
     疲れた様子でにじり寄ってきた。
     ふと悪戯心が顔を出す。
    「な、キスしてくれ」
    「妙な性癖に目覚めないでよ」
     渋々顔の傍に寄ってきて、冷たい鼻っ面を唇に押しつけてくる。
    「おしまい」
     言って布団に潜る。
    (鼻つめてぇ。所作がかわいいんだよなぁ)
     ちょっとぐらい図々しい頼みは惚れられた強みだろう。
     ドラルクは俺に執着心を示した。
    魔女の執着は人の執着とは違う。
    本人は認めがたいのだろうけれど、恋や愛情よりも暗い欲望に近く、恐ろしいほどに根深い。
    一度買った恨みは七代先の祟りに現れるほどに。
    そう簡単に忘れたり捨てられないものであり、執着と嫉妬を認めた上での心配事が『俺の気の迷い』という段階で……魔女ドラルクはもはや俺のものだ。
     俺はコイツを愛してもいい。
     そういう『お墨付き』を貰ったことになる。
     ドラルクは俺を捨てられない。
     決して離れられない。
    生涯、俺を愛しく想うだろう。
     たとえ死に別れても。

    『魔女特有の性質だよ。ほっといて』

     なんて熱烈な告白だろうか。
     本人に自覚が無くても、そのうち気づく事になるはずだ。
     退治人の俺は知っている。
    理解している。
    魔女の中に芽吹いた感情の大きさ。魔女の執着が一途で、熱愛や憎悪に変わること。俺がそれを望む限り、半永久的に約束されたものであることも。
     そして。
    いまの俺はドラルクを望んでいる。
     ひたむきに注がれる真心を受け止めればいいのだ。
    「お前の匂いがする。安心するよ。イイ夢が見れそう」
    「それはちょっと殺し文句じゃないのかね」
    「殺し文句? 俺が口説くのはこれからだぞ」
     にんまり笑って眠りについた。


    【続く】

    ●魔女の番犬~お菓子の魔女には番犬がいる~(読切ロナドラ×ヘン魔女)

    【先行頒布:数量限定】https://pictspace.net/items/detail/340475
    【虎の穴:専売】https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031043971

    A5/52p/2段+3段(本文46000字+購読特典)
    ※サンプル16000字くらい
    ※ページ圧縮のため本編以外が3段組になっています。

     4p ………… 【読切版ヘン魔女】お料理の魔女には番犬がいる
     9p ………… 雑魚魔女と退治人

    11p ………… これは事故かな?/朝チュンは事故ですか?

    12p ………… この心に名前をつけるなら
    20p ………… 真心とはいかなるものか
    26p ………… 栄光でくすんだ過去
    28p ………… 星に囀る愛の詩(※初夜)

    39p ………… 後日談~抱いたのか、ヌン以外のヌンを~

    40p ………… 【本編ロナドラ】ツクモツクール予備室事件
    43p ………… 【本編ロナドラ】文豪の恋文に学ぶ

    50p ………… 【備考】※購読特典パスワード有



    ◆購読特典◆※2023年3月更新予定
    https://privatter.net/u/sleepdog_t

    ※購読特典の閲覧可能期間は発行から約一年です。このほかWEBコンテンツのサービス終了などの不測の事態により閲覧できなくなるケースがあります。ご了承ください。

    【試読くるっぷ】https://crepu.net/user/nemuinuan
    眠犬庵 Link Message Mute
    2023/01/27 16:46:10

    魔女の番犬~お菓子の魔女には番犬がいる~(読切ロナドラ×ヘン魔女)

    #ロナドラ
    #読切ロナドラ
    #吸死【腐】
    #アタリブックセンタ

    ●魔女の番犬~お菓子の魔女には番犬がいる~(読切ロナドラ×ヘン魔女)
    【あらすじ】
    魔女狩りのプロとして名をはせる退治人ロナルド様が送り込まれた先は、子供に負ける雑魚魔女の住処だった。依頼と実態が違いすぎる。体のいい人殺しを委託されたロナルドは激怒し、ドラルクのために教会側と全面戦争を決意した。事件解決まで家に住むことになったロナルドは、しだいに魔女ドラルクへひかれていく。

    【注意】
    この作品は94童話パロディ「ヘンゼルとグレーテル」の妄想作品です。作者情報(アカウントジャック)に準拠し、ロナルドは狩人出演です。ほぼドラルクが魔女なだけです。

    【先行:数量限】https://pictspace.net/items/detail/340475
    【虎の穴:専売】https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031043971

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    • 偽証の華(嘘ロド) #ロナドラ
      #嘘ロド
      #本編ロナドラ
      ●偽証の華(A5/48p→70p※増量/3万字→5万5000字)

      嘘軸世界のロナルドとドラルクが繰り広げる、愛憎と執着の短編集。一部成人向け。
      ロナルドもしくはドラルクの一方的な執着心や恋心、一体化後のふれあいがメイン。
      一体化後は、片方の視点で展開されます。

      【収録内容】嘘軸ロナドラ(長編)+本編ロナドラ2話+芸能パロ2話
      ●偽証の華(嘘軸)★…サンプル公開中/☆…くるっぷ追加公開(イベント後)
      ★ー【序】失われた日々の無言歌
      ★ー【1】真祖の目覚め
      ★ー【2】新しい隠れ家の中で
      ★ー【3】十年の大罪
      ★ー【4】もうひとつの心臓
      ★ー【5】鏡よ鏡
      ☆ー【6】ゆめのおわり
      ☆ー【7】ふたたび
      ●偽証の華(本編軸)
      ー【本編ロナドラ】バックステージ・ナイトメア
      ー【本編ロナドラ】バタフライ・エフェクト
      ●偽証の華(派生軸)
      ☆ー【芸能パロディ】クランクアップ
      ー【芸能パロディ】拝啓、親愛なる君へ

      ※嘘軸・本編軸・芸能パロは、全て内容に一定のかかわりがあります。
      読後のアハ体験(二読しないとわからない秘密)をお楽しみください。
      【書店:とらのあな】https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031069897/
      【嘘軸あらすじ】
      戦闘中、真祖の心臓へ攻撃がかすり、自意識すら保てなくなったドラルク。
      ハッと我に返ると、そこは事務所ではなく教会で、元に戻った体と穏やかな表情のロナルド、そして言葉を失ったメビヤツがいた。
      そこで孤児院を経営しながら、ドラルクが元に戻る方法を探していて成功したと教えられる。
      つかのまの平穏を享受して数日、メビヤツの様子がおかしい。違和感を捨てきれないドラルクが調べると、真祖の心臓なしで動くロナルドへの不信感が増していく。
      彼は死んだはずだ。
      やがてロナルドが禁忌に手を出し、その代償を別軸の自分たちに支払わせたことを知る。
      ロナルドはギルドを追放されていたのだ。
      愛情ゆえに狂った元最強のヴァンパイアハンターと、最後の真祖が示す路の物語。

      【くるっぷ】https://crepu.net/user/nemuinuan
      【ピクト】※先行予約完売(配送処理中)
      【ブース】https://nemuinuan.booth.pm/items/4594034※キャンセル待ち
      眠犬庵
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