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    偽証の華(嘘ロド)【嘘軸ロナドラ】偽証の華(70p:55000字)
    ●【序章】失われた日々の無言歌

     毎日となりにいて、些末なことで喧嘩し、バカな雑談をして屈託なく笑う。家族のような心許した相手が、ある日突然、前触れもなく姿を消す。
     そんな経験が、あなたにはあるだろうか。

     俺にはある。

     最初は単なる厄介な相手。
     あいつは他の高等吸血鬼と違っていた。
     合成血液どころか牛乳で飢えた胃を満たし、殺意を向けてくる退治人に悠然と手を差し出す。しまいには敵対退治人の健康すら気にして世話を始め、母親のような小言を言う。高慢で偉そうな割には貧弱で、強大な古き血統というアドバンテージを除けば、頭でっかちな、単なる真祖のいっぴきに過ぎない。
     真祖吸血鬼にも色々あるのか、と驚いたのも今は遠い昔。

     俺はあいつから……
     高等吸血鬼ドラルクから色んな夜の常識を学んだ。
     殺したいほど憎い気持ちも、もとを辿れば……別の標的に対する怒りや悲しみが変質して、手短な標的に向かったものに違いない。
     人類が吸血鬼に滅ぼされ続け、汚染された日常の軋みが、人としての正気を奪い去っていく。
     俺も所詮は猥雑で凡庸な人間に過ぎないのだろう。
     ヴァンパイアハントに明け暮れて、家庭の匂いが消え失せた俺に、ひとつずつ踏みとどまるよう言い聞かせてきた輩が……単なる利害の一致した『討伐対象者』でいられるわけがなかったのだ。
     同盟を組んだ相棒関係は少しずつ歪んでいった。
     そんなドラルクが、ある日『子』を連れてきた。

    「この子を君に与えよう。きっと役に立つ」
    「俺の塒は託児所じゃねぇんだぞ。どこから浚ってきた。殺すぞ」
     小柄な少女だった。簡素なワンピースに身を包み、伸びた髪を肩上で切りそろえ、大きなひとつ眼でぎろりと俺を見た。
    「心外だな。我が竜の一族における技術の粋を集めたヒューマノイド。メビヤツ型。きみ愛用の銃と同じく機械だよ。多少の自我はある。私がいなくなっても君を守るだろう」
    「ハッ、守られる趣味はねぇよ。ヴァンパイアハントの腕をなめんな」
    「お手並み拝見といこう」
    「ビッ」

     思えばアレは予兆だったのかもしれない。
     例えば、野良猫は余命を悟ると静かに姿を消す。
     人も同じだ。
    歴史に語られる剣豪・坂本龍馬は『神田の桜を見に行く』と言い残して脱藩した。晴れやかな日に、なんの前触れも無く、人生の一大事を決めてしまう。
     ドラルクもまた、なにも言わずに消えた。
     そのことを、俺は不服だと思っている。腹立たしいと感じる。怒りとは、無関心な相手に対して抱かない感情だ。
     全てが過ぎ去ってから気づくこともある。

    「この私と手を組む、ということだね」
    「俺がお前を、殺すまでの間だ」

     懐かしい夢を見た。
     あの頃はまだ……
     俺たちの関係が変わるなんて、考えていなかったのだ。

     ◆◇◆

    「ビッ」
     ドラルクが残した少女型ヒューマノイドは、人ではないだけあって頑丈で強力だ。立派にヴァンパイアハントのサポートをこなし、俺が秘密の塒(ねぐら)で眠る時は門番を務め、今はこうして煙草を吸う俺の健康を気遣う。
     小言の言い方はドラルクに似ている気がした。
     苦笑いにすら親しみが生まれてしまう。
    「1本だけな?」
     片目だけで『遺憾の意』を伝えてくる。
     表情豊かだ。主人の命令に忠実なのか、俺に親しみでも芽生えているのか。言葉で『お願い』を伝えると許してくれることが増えた。見張りのように、俺の足に寄り添って座る。
     ドラルクが居なくなった今、俺たちは世界に【にっぴき】だった。
     この子のおかげで、踏みとどまっていられる。

    『私がいなくなっても君を守るだろう』

    「……ホントにな」
     今はどこで何をしているのか。見当もつかない。
     戦闘でしくじった。致命傷だと悟って、己の不出来を呪い「こんなところで死ねない」と叫びながら意識を失ったところまでは覚えている。死を覚悟した瞬間、思い出の中にしかいない家族の幼い笑顔が脳裏を過ぎった。
     まだ過去に未練のある自分に呆れた。
     そして闇にのまれた。
     気がつくと、俺は塒に寝かされていて、応急処置がされていた。そばにいたのは少女型ヒューマノイドのメビヤツだけで、あれほど家事に手を出したドラルクの姿は無く、書き置き一つない。

     俺の隣から消えた。
     綺麗さっぱり、跡形もなく。

     幾重もの戦場を駆け抜けて、人との別れや死別に離れたつもりだった俺も、背中を預けた相手の失踪はこたえた。かといって探すあては無く、新横浜は毎夜吸血鬼の蹂躙を受けるので、気ままに土地を離れることもできない。
     俺には俺の。
     奴には奴の。
     導かれる戦場があるのだ。と。
     ざわつく心に言い聞かせて、動揺のるつぼに蓋をする。
    戦いでしくじり『信頼した相手に見限られた』と考えたくないだけなのだ。そうして行き場の無い不満を持てあまし、殆ど吸わなくなった安煙草の紫煙に姿を変えて、夜風の中に流していく。
    「あー、煙マッズ」
    「ビッ」
    「ここしばらく美味い飯ばっかり食ってたもんな」
     紙煙草の香ばしい匂いは、心の苦痛を忘れさせてくれる。
     けれど、いつまでも口の中に残るタールとニコチンが味覚を奪い去るのだと知ったのは、ドラルクと相棒関係を始めてからのことだ。
    煙草は飯を不味くする。心身を摩耗する代償は大きい。
    小言で健康管理をされるようになってから、俺はメシの味を思い出した。子供の時代に忘れたと思っていた食事の味は、単なる煙草による味覚障害の所為だと知った。
     博識なドラルクのつくる芳醇なオムライスが恋しい。

    「美味かったなぁ、あいつのメシ」

     ナイフの差し込みで弾ける黄金色のたまご。
     芳醇なバターの香りと生クリームの濃厚さ、コクの秘密はマヨネーズだと言いながら、その日の希望で刻んだハムやチーズが仕込まれていた。子供の舌だなと笑われながら「召し上がれ」と差し出される。焦げひとつ無いオムレツを、慣れ親しんだトマトソースのライスとすくって口に運んだときの幸福感は忘れられない。

     美味しかった。
     まぎれもなく幸せだった。

     ドラルク本人は食べられもしない料理なのに、小言を言いながら作ってくれる姿が懐かしかった。俺に家庭の味を思い出させてくれる奇特な奴は、ドラルクひとりだけだと知った。
    「もう食えないのは残念だな」
     ちくりと胸を刺す痛み。感傷だ。
     俺は料理をしないから、再現するのは不可能だろう。
     心の痛みを忘れるように、煙草の煙を肺腑の奥底まで吸っていく。
     煙草を吸う時間と回数が増えたのは、あいつの所為だ。
    ここまで依存するようになっていたなんて知らなかった。
    知りたくもなかった。
    失うことが分かっている存在に、個人的な願いをかけるなんてバカバカしい。
     痛みを忘れるための毒が欲しくなる。
     もう一本の煙草をひきぬいて。
     メビヤツが「ビッ」と俺の手を引いた時に、指と指の間から煙草が消えて、ふよふよと虚空に浮いていた。手袋を填めた、見慣れた青白い指先が虚空で煙草を摘まんでいる。
    「は?」

     手が浮いている。

     完全ではなく、親指とひとさし指と中指だけの、手と言うにはお粗末なソレは、煙草をレーザーポインターの如く器用に操り、俺になにか物言いたげな動きをした後、スッとポケットに戻して……闇の中に霧散した。
    「は?」
     目の前で起きた現象の理解を、脳が拒絶している。
     少し前から視界が悪いのは霧の所為だと思ってきたし、毎日のように口にする煙草の煙で認識がぼやけていた。
    が……この、俺を取り巻く煙は、煙草の紫煙にしては多すぎる。
     少し考え込んで、虚空に問うた。

    「ドラルク?」

     指が出現する。
     さらさらと塵が集まり、手を象ると指でなにかを伝えようとしている。
    「ちょ、ちょっと待ってくれ。手話は分からねぇ。あー、スマホ」
     端末を取り出す。
     電源を入れてメモ画面を呼び出すと、虚空に浮かぶ人差し指がポチポチと文字を打ち始めた。いままで消息不明だと思っていた相手の言葉はひとつ。

    【煙草は一本だけの約束だろう?】

    「おま、おまえ、もっと他に言うことあるだろ! どこに行ってたんだよ」

    【私はずっと君の傍にいたよ】

    「その姿どうしたんだよ。なんで指だけ」

    【君は一度死んだ。私が蘇生させた。その手で殺す相手がいるんだろう?】

    「は? そりゃ、アイツは俺の手で殺すって決めてるが」

    【だろう? 真祖の心臓。君に預けてやる。二度目は無い。脆い品だ。大事にしたまえ】

     真祖の心臓。
     高等吸血鬼と従属吸血鬼には決定的な違いがある。
     心臓だ。
     生物が変質した従属種と違って、真祖の心臓には様々な力があるとされている。ブラックマーケットでは信じられない高値がつけられた記録だって存在するが、ほとんどは偽物であることが多い。
     多くの富豪が追い求め、偽物を掴まされては巨額の金を失う。
     それほどに望まれる真祖の心臓は、不老不死や死者蘇生の力があるとされている。
     死人すら生き返らせる話は、所詮グール能力だと思われてきた。
     でも、そうじゃなかったら?
    「俺が死んだ?」
    「ビッ」
    「メビヤツ、お前の主人はどこにいる」
    「ビッ」

     少女型ヒューマノイドが俺の胸部を指さす。
     少し前ならば「俺を慕ってくれているのか?」と暢気に考えただろう。でも今の応答を文字通りに受け入れると、最後の真祖ドラルクは……ドラルクの心臓は俺の中にある。
     致命傷を負ってダメになった心臓の代わりに動いている。

    「ドラルク。お前、俺の蘇生に心臓を使ったのか」
     端末の画面へ文字が打ちこまれていく。

    【いけないかね?】
    「塵になっているのは、心臓がないからか」
    【可動範囲が狭いんだよ。心臓を核にするからねぇ。感謝してくれたまえ】
    「なんで」 
    【一蓮托生なんだろう? わたしたち。私を殺すのは仇敵を倒してからにしたまえ。なぁに。愛用の銃を使って心臓に一発で済む。腐れ縁同士、心中も悪くはないだろう】

     敵として出会い。相棒として過ごし。
     家族のように暮らし。恋人のように身を捧げて。
     最後は心中する。
     だなんて、こんな関係を世間ではなんて言うか。

    「オィオィ、退治人ロナルド様とイイ仲だと噂されるぞ」
    【存外、私は君を気に入っているんだよ】

    「気に入ってる、ねぇ」
    【生死を託す程度にはね】

     いつか。
     死が二人を分かつまで。

     けれど……
     死をも凌駕する執着に名前をつけるのならば。

     それを【愛】以外のなんと呼べば良い?



    ●【第一章】真祖の目覚め

     冷えた風が頬を撫でる。
     重い瞼をあげる。見たことの無い石造りの天井だ。
     真新しい布の手触りに違和感を覚えて、ゆっくりと手を上げるとしなやかな指があった。子供、いや、少し育った青年のような、皺の無い中性的な指先だ。
     身を起こすと視界がおかしい。
     低い。
     誰かの棺桶に寝かされていた。
     立ち上がってみると見覚えのない服を着ている。修道士が着る暗色ローブのような、ゆったりとした綿の服だ。匂いを嗅ぐと不思議とかび臭くは無い。
     太陽と石鹸の匂いがする。
    「なんだここは」
     喉から声が出たことに驚いた。
     声を発している。おかしい。
     そうだ。自分は肉体を持っていない。退治人ロナルドに心臓を譲渡した日から、塵は肉体の生成をしなくなった。心臓を核にして屍肉を動かすために、塵が滞留し、強風で流され、少しずつ摩耗した。
     己の喉なんて大昔に無くした。
     それなのに今は肉の体がある。
     本来の年齢よりもいささか年若いけれども、間違いなく己の意思で動く肉体だ。握り拳をつくってはひらいて、ぐっぱ、ぐっぱ、と繰り返し、間違いなく体を形成していることを確認しては疑問が尽きなくなる。
    「なぜだ? ロナルド君はどうした? ここは……」
     闇の中で周囲を見回す。
     自分が寝かされていた木棺は作り物で粗悪ではあるが、周囲は樽が積まれていた。葡萄酒の樽だ。上下二段。四方に六つ。もう何年も飲まれていないのだろう。酒蔵と呼ぶには狭すぎる。石造りの貯蔵庫……となると、ワイナリーの一角にも思える。
     耳を澄ませても物音は聞こえない。
     きょろきょろと周囲を見回して、階段を見つけた。螺旋のように上部へ続いている。ゆっくりと上がると、すぐに上へ到着した。
     台所だった。普通の台所では無い。
     飲食店の厨房に似た広さで、皿を並べるための広いテーブルがある。電子レンジは三台あるし、洗い場だって複数あった。食器棚はぎっしりと詰まっている。冷蔵庫や石造りの釜は業務用のサイズだ。さきほどのワインセラーは、本当に地下貯蔵庫だったらしい。
    「なんでワインセラーに私が?」
     何者かが置いた。それは間違いない。
     でも最後の記憶は退治人の心臓だったのだ。
     何者かが新しい体と新しい棺を用意したとしか考えられない。
    『思い出せ、思い出せ、最後の記憶は、確か……』
     襲われて。
     敵の攻撃が心臓を掠めた。
    『そうだ、それで意識が保てなくなって……』

    「どうした? 眠れないのか」

     振り返った。
     目が冴えるような赤い神父衣装。
     紅蓮を身に纏う、退治人ロナルドがライトを持っていた。
    「ろな、る、ど……くん?」
    「起きたのか、ドラ公! 歩けるのか、歩けるんだな」
     ばぁんと扉を乱暴にひらいて走り込み、私の前に立つ。
     やはり身長が違う。
     青年の体だからか、頭が二つほど違った。見上げると首が痛い。帽子を被っていないロナルド君の顔は窶れていて、ぼさぼさの髪に艶がなくて、無精髭も生えていた。
     でも知っている顔だ。
     見上げ続けないと視線が合わないことに戸惑う。。
    「ろっ、ぶっ」
     抱き込まれる。
     胸に顔を押しつけられる。
     なぜか嗅ぎなれた硝煙の匂いがしない。
    「よかった……元に戻って、本当によかった」
     抱きかかえたままで同じ言葉を繰り返す。
     抗えない強い力だ。
     聞きたい事は山ほどあれども、縋りつく相棒の尋常ではない取り乱し方に声を失った。
     なにもわからない。
     ここはどこなのか。
     どうして体があるのか。
     いったい何年何月何日で、いままでなにがあったのか。
     ひとりで知るすべはない。
     語れる者の鎮静化を待つしかなかった。


    ●【第二章】新しい隠れ家の中で

     あれを感動の再会と言ってもいいものかは疑問だ。
     ひとしきり騒いだ後、ロナルド君は私の手を引いて台所を出た。
     外は夜。
     月がキレイに見えるほど、雲ひとつない夜だ。
     だから尚更、不思議だった。
     真夜中は吸血鬼たちの領分で、協定を結んだ私たちは敵を探して新横浜の街を練り歩いた。しまいには定住する家を持たず、食うや食わずの日々を過ごし、退治に勤しむ日々を過ごし、ボロボロにすり切れていた。
     ところがどうだ。
     人の叫び声がしない。
     グールのうなり声が聞こえない。
     数十年ぶりに聞く静寂の夜だ。精神が研ぎ澄まされていく。響く足音で広い建物だと分かった。小さな病院のようでもあるし、中庭に大量の十字架が拵えてある。地中から腐肉の匂いがしないから、きっと形だけの墓に違いない。
    ビニールで包まれた古いぬいぐるみや、見慣れた菓子缶が置かれていた。飴やクッキーはいずれも昔の量産品。
    「ろくじゅう。多いな」
    「保護した子供たちだ。助けられなかった」
    「そうかね」
     視線を見透かしたように冷たい声をなげてくる。
     とても墓の量が多い。
    「遺体は全て焼いたからグール化の心配はない」
    「流石はヴァンパイアハンター」
    「もう真っ当なハンターじゃないがな」
    『……どういう意味だろう』
     そもそも、どのくらい眠っていたのか見当もつかない。
     時計すらないのだ。
     手を引かれるままに歩いて行く。
     高等吸血鬼は招かれなければ知らない建物に入れないから、こうして手を引かれることで扉の拒絶をパスできる。
    「ここは?」
    「キリスト教系の病院。小児科専門だったらしくて大型の設備はない。けど小さい礼拝堂があったり、窓枠に高濃度の銀を含んでいたり、対策はバッチリされてる。侵入の恐れはねぇよ。今のねぐらだ……おらよ」
     重々しい扉を開く。
     室内で本を読む見慣れた少女メビヤツがいた。
    「メビヤツ!」
    「ビッ!」
    「元気だったかね。ちゃんと護衛をしていたか、偉い子だ」
    「ドラルク。悪いが新鮮な牛乳は入手できなくてな。今はペットボトルで勘弁してくれ。秘蔵のイチゴミルク味だ。まぁ座れよ。長い話になる」
     憂いの眼差しには闇が宿る。
     ペットボトルの蓋をあけてもらい、イチゴミルク片手に椅子に座った。

     話の始まりは、私の心臓が危険にさらされた戦い。
     あの夜から十年が経過していた。
     間一髪、命中を免れて退治は成功したが、心臓に亀裂を負った私は意識を失い、ロナルド君は動きが鈍くなった。
     戦うには足手まといと判断し、ヴァンパイアハンターを事実上引退。医院の廃墟をねぐらとし、吸血鬼の餌食として狙われる子供たちを保護しながら、蘇生術を探していたという。
    「蘇生? 誰を?」
    「お前以外に誰がいるんだ、俺は心臓を借りてたんだぞ」
     ロナルド君はトントンと胸の位置を指で示すと「ハンターを引退した以上は心臓を返すべきだろう」と律儀な言葉を続けた。
     返却なんて想像もしていなかったので面食らった。
     きっと目的を達成するか、宿敵に敗れるか。
     最後は共に死ぬだろう、と心中の覚悟をしていた。
    「か、返して貰えるのは……ありがたいが、でも、えっ」
    『真祖の心臓だぞ?』
     死者の蘇生を可能にする吸血鬼の奥義。
     第一心臓のない彼は死体に戻ってしまう……はず。
    『あれ? では私の心臓は今』
     胸のあたりに手を置く。
     私の心臓はここにある。でも、それじゃあ……
    「ついでに人畜無害な吸血鬼にしようと奮闘したら、調合の副作用で若返らせちまった。悪ィ」
     片手を立てて謝罪に見えないジェスチャーをする。
    「なんかつるつるの指だと思ったら!」
    「俺はついにヨモツザカを越える天才科学者だ。恐るべき成果にグール研究家も裸足で逃げ出すぜ。今のお前は無害。むちむち肌の華奢な青年吸血鬼、いや吸乳鬼だ。メビヤツと一緒に小脇に抱えての移動も可能だな。ハイパー有能なロナルド様を崇めろ!」
    「崇めるかショタコン! 人攫いに間違われろ!」
    「残念だが、ここは鉄壁の監獄だぜ」
    「お家に帰してェ!」
     エェン、とノリで嘆く。
     バカみたいな自画自賛の与太話を交えつつ、日陰の身になったロナルド君がそれでも人々につくしていたことや、意識を失った私を復活させるために、ずっと研究の日々を重ねていたことは間違いない。
     吸血鬼を退治すべき退治人が、真祖吸血鬼を蘇生させようと試みていたことが仲間に知れ渡れば無事ではすまない。
    『いや、そうか』
     だから引退したのだろうか。
     深手を負って、満足に戦えず、長年の目的を果たせなくなり、せめてもと地元の人々に尽くしたのなら……
     私に恩義を感じていたとすれば、わからなくもない。
     イチゴミルクで喉を潤しつつ真面目な顔で問いかけた。
    「これからどうするんだね」
     君も。
     私も。
     帰る場所なんてない。
    「…………保護した子供は放り出せないだろう」
    『なるほど、ほかにも人間がいるのか』
     台所での声のかけ方は、誰かを労るものだった。
    大勢の子供が居場所を追われて、ロナルド君に助けを求めたのだとすれば、今の彼は『孤児院の院長先生』という立場だろう。
    吸血鬼退治以外に何もしてこなかったような人生であれば、別の道など思い浮かばないのかもしれない。
    「そうか。じゃあ手伝うよ」
    「えっ、本気か」
     私は椅子から立ち上がった。
     空になったペットボトルを手の中でくるくると回してみせる。
    「ああ。この体も万全ではないし、メビヤツは君を慕っている。私も平穏な暮らしに興味がある。幸い、少量の血液があれば水や牛乳で生きられる身の上だ。君が希に提供者になってくれれば動きに支障は無い。私の寛大さに畏怖したまえよ、元ハンターくん」
    「お、おう」
    「それじゃあ今後ともよろしく。そうだな、食卓を担当しようか。きみ凝ったモノは作れないだろう。食材の在庫を教えてくれ。なにかリクエストはあるかね」
     荒んだ表情が一気に輝く。
     その星屑のような顔は若者に見えた。
    「お、オムライス! あと味のしみこんだ唐揚げ」
    「子供の舌だな。いかにも好きそうなメニューだ、腕が鳴るよ」
     はは、と笑い声が零れた。



    ●【第三章】十年の大罪

     やがて朝が来た。私は陽に当たれない。
     朝陽の気配に怯えると、遮光カーテンで締め切った小部屋の中へと誘導された。メビヤツが傍についてくれて館内の移動と連絡役を担うことになった。
     日が落ちた頃に皆に紹介するという。
    「ビッ」
     メビヤツが膝掛けを差し出してくる。
    「ありがとう。よくぞ言いつけを守ってくれたね」
     いつか私がいなくなっても『この子ならばロナルド君を慕うだろう』と思った。意識を失った数年間、ずっと付き従ってくれたのだろう。と思うと従者に対する感謝も芽生える。使い魔を消耗品扱いする高等吸血鬼もいるけれど、私の一族は違った。
     少なくとも戦いが苛烈さを増すまでは。
     よい従者を持てたと思う。
    「……メビヤツ?」
     様子がおかしい。
     上位の高等吸血鬼に褒められたのに、メビヤツは薄暗い表情をしていた。もじもじと小刻みに動いて俯き、両手で服の裾を握りしめ、ぽろぽろと涙を落とし始める。
    『寂しい思いや不安な思いをさせたのか』と不憫な気持ちがわきあがり、同時に人のような情緒を開花させた少女型ヒューマノイドの成長を嬉しく思った。
    「大変だったね」
     抱きしめる。縋りついてきた。
    「ビッ」
     声を殺して、忠実な従者は泣き続けた。

     ◆◇◆

     日が沈むとロナルド君に呼ばれた。
     修道士装束に身を包んだヴァンパイアロードたる私に、子供たちは怯えおののいた。
     でも私が牛乳で生きられること、お料理が得意なこと、ロナルド君の相棒として長く一緒に居たことを聞かされると「先生のおともだち? メビみたいな?」という質問の後に受け入れ、数日でなついた。
     胃袋を掴むことに成功した。
     子供たちはロナルド君に言えない愚痴を私に訴えてくる。
    「せんせいのりょうり、たまにあじがしないの」
    「なんでもおナベに入れちゃうんだよ」
     ロナルド君は料理が下手らしい。
    「はははっ、口に入れば問題ない男だったからねぇ」
     家庭の匂いがしない男だ。
     茹でる、コンロで焼く、レンチン。
     しかなかった料理方法に、煮込む、揚げる、蒸す、などの料理方法が加わったとなればレパートリーは爆発的に増える。穏便派の高等吸血鬼は元々、人間を持てなすことで対価の生き血を獲得してきた。
     私も、歓待はもちろんシェフの経験がある。
     人から見れば料理が滅茶苦茶できる部類に入るのだろう。
    「今夜はプリンの味見をするかね?」
    「すゆ!」
     在庫の粉末鶏卵から作り出すプリン液は、卵の味は三流にしても、缶詰のチェリーを添えて見栄えを考えるだけでご馳走に変じる。隔絶された建物の中で生まれたデザートの概念は日常を彩った。笑顔は心を和ませる。
    「おいしい!」
    「よし。ロナルド君を呼んできてくれ」
    「うん!」
     子供が手鞠のように跳ねていく。
     ずっと昔に食べられなくなった品々が出される度、笑顔は増えた。ロナルド君の表情も、穏やかなモノに変わっていく。君そんな顔もできたのか、と純粋な驚きがあった。
     もしもこの世がヴァンパイアに滅ぼされかけていなければ、新横浜が夜も出歩ける平和な街であったならば、お人好しなロナルド君にも別の未来があったに違いない。
    「なつかしいな。プリン。何年ぶりだ」
    「おいしいね、せんせい」
     失われた平穏。
     ここは幸福に満ちた秘密の箱庭。
     ただひとつ、メビヤツの表情だけが陰鬱なまま変わらなかった。警護任務を解かれ、主人も帰ってきた。
     だというのに、物言いたげな目で私を見る。
     問いかけても返事をしない。
     私とロナルド君を交互に見ては悩みこんで俯いてしまう。
     なにかあると直感が囁いていたが……私は目の前の幸せに酔っていたくて、見ない振りをしていた。
     そうだ。
     見ない振りをしていたにすぎない。
     最初から全ておかしかった。
     なぜなら私がこうして自立して動くこと自体が起こりえないことだ。違和感は膨らんでいく。私は真祖の心臓を明け渡した。吸血鬼の肉体は塵となって霧散し、毎日の戦いで酷使された。夜空を飛ぶためのコウモリの大翼を失い、最後は声を発することも不可能になった。
     なによりも目を向けるべきことがある。

    『……彼は死んだはずだ』

     確かに死んだ。
     英雄を失うことは損失だ。
     だから黄泉の国から退治人ロナルドを連れ戻した。
     己の心臓を使って、人間には為し得ぬ闇の奇跡を起こしたのだ。
     いまの人間の科学力で、死者の蘇生は不可能である。
     かといってグールには見えない。
     どこからどうみても生きた人間で、手料理を美味しそうに頬張っている。つまり食材を胃袋が消化する。臓器が動いている。体温もある。脈がある。
     今も心臓は動いている。
     では『今の心臓』は一体、だれのものなのか。

    「メビヤツ」
     びくん、とヒューマノイドの少女は肩を揺らした。
     最近のメビヤツは明け方近くなると私の傍に居る。
     ロナルド君は子供たちに生活リズムを合わせていて、夜遅くに眠り朝早くに起きる、という生活をしていた。
     満足に眠れていない時間は、昼寝で補っている。
     メビヤツはロナルドの睡眠時間を確保するための夜間の警備だったが、見回り後は私の傍に戻ってくる。
     ずっと、なにかを訴えたいことに気づいていた。
     そして今日。
     書斎でギルド追放の通知を見つけた。
     私はメビヤツの前に屈む。
    「教えてくれ。彼は誰の心臓で生きているんだ」
    「ビッ」
     メビヤツが私の手を取った。指文字が綴られていく。

    『どらるくさま』

     眉間に縦皺ができる。
    「心優しい偽証は罪だよ、愛しい子」
    『べつのせかいの、どらるくさま。ほんで、つれてきた』
     メビヤツが服の下から持ち出したのは、真っ黒な革張りの書だ。
     禍々しい。
     手に取ることすら『ぞわり』と不快感を抱かせる不気味な古書は、日本語でも英語でもなかったが、背表紙に綴られた飾り文字に見覚えがあった。
    二百年も生きていて各国各地を渡り歩くと様々な知識を得ることがある。
     その中で度々耳にしてきた。
    「ネームレス・カルティスト。無名祭祀書か。確か異界の神の力を借りたり、異世界へ繋がる門を開く。精神を破壊する魔道書をロナルド君は解読したのか。噂ではドイツ語……いやそれよりも」

     べつのせかいのどらるくさま。

    「別の世界の私?」
     今もロナルド君が動いている。
     という事は、心臓に成り代わった者は状況を受け入れている。いかに真祖の心臓といえども、自ら手を貸さなければ正確には機能しない。
     禁忌の書物に手を出し、中身を解読して、正気を保った状態で呪文を唱え、心臓交換を為し得るなど……常人には不可能だ。やはり天才中の天才と言うべきだろう。並々ならぬ努力と意地で不可能を可能にする偉人に違いない。
     人の手で奇跡が為し得ないのならば。
     異界の神の手に縋る。
    『まだなにか、心にひっかかる』
     ギルドは一度、高等吸血鬼の心臓によるロナルドの蘇生に同意した。今更、異なる心臓を使ったからといって退治人を追放するのか?
     考えても答えが出ない。
    「ビッ」
     メビヤツが分厚い手帳を持ってきた。使い込まれて革の拍子が艶めいている。試しに開いてみた。
     ロナルド君の日記だ。


     ◎月×日
       覚醒時間が短くなっている。
       やはり心臓の横を掠めた影響か。
       メビヤツに聞いてみたが、なにも分からないらしい。
       どうにかしなければならない。
       新しい隠れ家を造ろう。

     ◎月×日
       ここは落ち着く。
       悲鳴のない世界は久しぶりだ。
       興味深い書物を読んだ。カルトの経典らしい。
       神にも縋りたいと、こういう本をよみたくなるのか。

     ◎月×日
       魔道書は本物だった。
       ドラルクの心臓を修理できるかもしれない。
       その為には一度取り出さないと状況が確認できない。
       だが、ただ抜き取れば俺が死ぬ。
       頼むからそんなに血を必要とするなよ、相棒。
     
    ◎月×日
       手術無しで臓器を取り替える呪文を見つけた。
       けど人間はダメだ。
       他の高等吸血鬼では俺が浸蝕される。
       人工心臓なんて都合のイイモンはない。
       どうしたらいいんだ。
     
    ◎月×日
       この世には平行世界という概念があるらしい。
       数ある可能性が分化した世界。
       願望が叶ったり、破滅したりする別世界の俺たちだ。
       吸血鬼や魔道は実在した。
       きっと世界の亀裂の向こうにある。
       どこかの俺たちから取り寄せられないだろうか。
       少し借りるだけだ。
       あいつは雑魚だから奪うのは簡単だろう。
       俺の境遇を哀れんでくれるような平和な世界がいい。
       そんな都合のいい世界があるのだろうか。
       あると思いたい。
       見つけてみせる。絶対に。

     ◎月×日
      もうひきかえせない。
     
     ◎月×日
      真祖の心臓が手に入った。

     ◎月×日
       口は悪いが、良い奴だと思う。
       新しい心臓も悪くない。
       同情してくれる。優しい奴でよかった。

     ◎月×日
       ドラルクの心臓を修理した。
       吸血鬼には血をぶっかけるべきだな。
     
    ◎月×日
       体がたりない。
       そりゃそうか。全部つかったもんな。
       ちゃんと返してやらないと。
       でも塵を探すのはムリだ。

     ◎月×日
       タンバリンを鳴らして探せと言われた。殺したい。
       どうやって調達するのか調べてみる。
       気が遠くなるな。

     ◎月×日
       他の真祖の体は使えない。再生しちまう。
       別の塵がいる。
       吸血鬼に適合する塵なんてあるのか。

     ◎月×日
       保護した子供が死んだ。
       ドラルクたちにかまいすぎた。
       ちゃんと埋葬をするつもりだが、グール化は困る。
       庭で焼くしかない。

     ◎月×日
       燃料が足りなくて庭の記念樹を使った。
       すまない。
     
    ◎月×日
       別で保管していた塵が動いている。
       そうか。最初からこうすればよかったのか。
     
    ◎月×日
       俺の中でなにかが壊れていく感じがする。
       でも、誰にも迷惑はかけてない。
       きっと許してくれる。
       ごめんな。

     ◎月×日
       また子供を焼いた。一晩中、火の調整をした。
       骨は明日うめてやろう。ぬいぐるみも一緒だ。
     
    ◎月×日
       この調子だと庭が満杯だな。
       今度は遺灰がたくさん残るといいんだが。

     ◎月×日
       量が揃ったかもしれない。人形に変化している。
       手を握ろうとしたが固着していなかった。
       時間がいる。焦ってはダメだ。
       きっと会える。
       俺の……大事なドラルクに。

     ◎月×日
       夜、棺を確認するのが楽しい。はやく元に戻れ。

     じっと。
     本を掴む手をみた。
     青白く、滑らかな、若い青年の指だ。
     失ってしまったはずの肉体は、ほかの高等吸血鬼からは補えない。高等吸血鬼の塵には全て意思が宿る。だから塵を分散して瓶詰にして川に流す退治方法があるのだ。
     逆に一度散じてしまうと、再生は不可能になる。
     あくまで本来は。
     退治人と一体化する前は成人男性の指をしていて、体重は50キログラム前後だ。今は精々40キロ前後だろう。意思の宿らない塵40キロが必要だったはずだ。遺灰40キロがあれば、この体を形成できるだろう。
     悲しいことに……
     高等吸血鬼はモノを数えることや暗算が得意だ。
     一説によれば、過去の第二次世界大戦の折、アウシュヴィッツ強制収容所の一角から5800キログラムの灰が採取された。犠牲者達を焼き尽くした残りカスだ。
    調査の結果、それらは8000人の人間が焼かれたものだったという

     思い出すのは中庭に広がる、子供の墓、墓、墓。
     目算で数えた墓標は60点。
    「一般的に子供を焼けば骨は1キロ前後だ。遺灰は700グラムが関の山か」
     焼いた遺体が60体あったのなら、42キログラムの灰が残る。
     再生可能だ。

    「こどもの……遺灰を……」

     確かに、最初は助けたのだろう。
     お人好しな性分だ。保護して、世話をして、食卓を囲み、守って慈しみ。それでも死んだ子供のために流した涙があったはずだ。
     吸血鬼のオモチャにされぬようにグール化を避けるために荼毘に付して焼いた。骨にしてから手厚く埋葬した。
     ヴァンパイアハンターとして妥当な処置だ。
     ボロボロの遺骨を埋葬し、それでも残った肉の灰は?
     再利用できると気づいてしまったら?

     この『新しい体』がどこから調達されたのか。

     最初抱いた疑問の答えは、いつも目の前に広がっていた。
     今のロナルドには退治人ギルドを追放された理由がある。
     偉大な英雄を追放した意味。
     ロナルド君を慕う子供の笑顔が脳裏を過ぎる。

     おぞましい答えを悟っても、体内から悲鳴や憎悪は聞こえてこない。人間の遺灰に意思など宿らない。
     
     メビヤツが抱えていた薄暗い秘密。
     その重圧で心が潰されていく。



    ●【第四章】もうひとつの心臓

     夕食の後、子供たちが寝静まったのを見計らう。
     ロナルド君を台所に招いた。ここ連日はデザートの仕込みを手伝ってもらっていたので二つ返事で快諾されたし、明日の献立を聞かれる。
    「悪いがデザートの相談じゃない。きたまえ」
     生憎とつまみ食いをさせるためではない。
    「どうした。怖い顔して」
     私は広い配膳台の上に【無名祭祀書】と【手帳】を積む。
     ロナルド君の表情が露骨に変じた。
    「なんてことをしたんだね」
     静かな声で糾弾する。

     退治人ギルドから追放されるはずだ。
     ロナルド君はこの世の禁書を読み解いた。
    今の彼は退治人ではなく魔術師だ。禁断の魔術を行使して、異界の神に縋った。平和な世界から無実の者の心臓を奪い去り、私利私欲のために使い続けている。更には怯え逃げ惑う子供たちを保護の名目で浚い続け、遺体を焼いて私の蘇生に使い続けた。
     少なく見積もって60人以上。
     死者への冒涜は見逃せない。
    『子殺しまではしていないと思いたいが……』
     疑念が消えない。
     手帳は謝罪の羅列や塵の重量記載ばかり。
     今の彼は英雄などではなかった。人の姿をした怪物だ。
     追放処分は温情とも言える。
    「何が悪い。こいつだって【ロナルド】を愛している」
     開き直った声は朗々と響いていく。
     赤い装束の下に隠れた心臓を示すように、胸の辺りに手を置いた。
    「俺もロナルドだ。だから俺の体が動くんだ。心臓が拒絶していたら、俺は屍のまま動かない。俺の行いを許してるんだよ、分かるだろう」
     手帳の日記にはこうある。

    『どこかの俺たちから取り寄せられないだろうか』
    『あいつは雑魚だから奪うのは簡単だろう』
    『俺の境遇を哀れんでくれるような、平和な世界がいい』

     許されているのではない。
     優しさに胡座をかき、弱みにつけ込んでいるだけだ。
     己の悪行から目を背けている。
    「君はそんなことを本気で」
    「本気だよ。兄貴を倒すためならば高等吸血鬼と同盟だって結ぶ。俺を支えたのはお前だ、ドラルク。お前を取り戻すのに必要なら禁術だって使ってやる。目的のためには手段を選ばない。そうやって薄刃の上を生きてきたんだよ!」
     お前のためだ、と本気で嘯く。

     言葉を失った。

    『狂ってる』
     いや。
    『狂ってしまったのか。その原因を私が作ったんだ』
     ロナルド君は、人間も吸血鬼も頼れなかった。
     だから魔道書に助けを求めた。
     禁術に手を伸ばした。
     あの黒い本は異界の神クトゥルフ神話に精通したカルト教団関係の産物で『叡智と引き替えに読み解いた者を発狂させる』という伝説がある。
    記録に残る研究者の多くは精神病院へ収監された。本には数々の奇跡と魔術が記載され、それが実行可能な奇跡だと悟った時に、追い詰められた者が……それらを試さない保証がない。
     退治人ロナルド。
     英雄と崇められた若き偉人。
     元々は鋼の精神力を持つヴァンパイアハンターだった。
     銃の腕は超一流で、肉体的にも優れ、欠けた部分は努力で補ってきた。
     無名祭祀書を読み解いた段階で、ロナルド君は……
     この子は壊れた天才になった。

     わたしが、こわした。

    「……寂しかった?」
    「あ?」
     拳を握りしめて己の正義を主張する。
     今のロナルド君に、なにを言っても届かないだろう。
     人の倫理や世間の常識から外れてしまった。
     魔道書に本来の心を食われている。
     まるで高等吸血鬼のように利己的な思想で、無力な相棒に縋ってしまった。蘇生を望むほどの異常な執着心が正常とは考えられない。昔のロナルド君とは違っていた。
    『そばにいるだけではダメだったのかね』
     胸中でしか問えない。
     可哀想な、夜明けの子よ。
    「私に会いたかったんだね。だから心臓を返してくれた」
     歩み寄って握り拳を拾い上げて、精悍な顔に手を伸ばす。
     最近は笑顔が増えてきたな……と思ったのは、私の願望かもしれない。
     憔悴している。
     健康に気を遣った食事をとらせてきた。
    とはいえど目元はヒドイ隈がある。骨格が分かるほど痩せているのは、数日間の食事で改善されるようなものではない。食うや食わずの日々を過ごし、子供たちを己の手で荼毘にふす。
     心労は計り知れない。
    「そうだよ。心臓を返さねぇと元に戻れねぇだろ」
    「体も? その為に集め直したのかね」
     己の手で。
     焼いた子供の遺灰を。
     少しずつ。少しずつ。
     粗末な棺桶の中に積み重ねて。
     正気を失っても。願いを叶えるために。何年も。
     ロナルド君の眉間から深い皺が消えた。拳から力が抜けて、私の細い体を抱え込む。ぬいぐるみを抱きしめる子供のような、頼りなさが漂っていた。恐ろしい行いを繰り返してきた男と分かっているのに、恐怖は感じない。
     身じろぎをするとロナルド君の視線とかち合う。
    「おれは……ダメなことは、知ってた。でもダメだった。ちゃんと弔ったし、いらなくなったものなら、いいだろうって思って、それで使った。やっぱり間違ってたのか、な」

     魔が差したのか。

    「そうだね」
     私は瞼を閉じた。
     黙り込んだロナルド君の背に手を回す。

     ダメなことをさせてしまった。
     気高い聖人の手を汚してしまった。

     私たちの逢瀬は、無垢な屍を積みあげた上にある。
     長い孤独は人を狂わせるのだ。

     ここは正しく、偽りだらけの死の監獄だった。


    ●【第五章】鏡よ鏡

     あどけない寝顔がある。
     全裸で眠るロナルド君の表情は、苦痛から解放されていた。
     銀色の前髪を掬い上げると、整った表情がある。
     世が世なら雑誌のモデルや芸能人として働いていたかもしれない。眉目秀麗の言葉が似合う。乙女たちが黄色い声をあげるであろう英雄が、つい先刻までむしゃぶりついていたのが……この痩せた体だとは未だに信じられない。
     ただ愛しあった。
     体中に残る鬱血痕を指先でなぞる。
    「まさか私を抱けるとは思わなかったな」
     見た目は若返ったとは言っても、中身まで変わったわけではない。
     少しばかり頑丈になった程度の男で高等吸血鬼だ。新しい塵で作られた肉体は、壊れやすい古い体と違って性交の痛みにすら耐えた。
     両足を開かれ、引き締まった体に押し潰されて、まるで破瓜の傷みに震える生娘のように、張り詰めたイチモツの圧迫感に喘ぎ乱れた。子供の遺灰で作られた青年の肉体は柔らかく、ムリな姿勢も受け入れてしまう。
     張り詰めた糸が千切れた後、ロナルド君は安寧を乞うた。

    『ドラルク。愛してる』
    『愛?』
    『愛してる。会いたかった。ずっと』

     甘い声だった。
     愛しい恋人のように扱われた。
     痩せた腹をぼこぼこに貫かれたのに、まんざらでもないのが癪に障る。
    「存外……気に入ってるどころじゃなかった」
     相棒以上に魅入られている。
     心臓になったばかりの頃の紫煙と会話を思い出して、羞恥心で頭が煮えた。
     きっと魔道書を読まなければ、狂うことがなければ、ひとりにしなければ……こんな複雑な関係にはならなかっただろう。
    依存ではなく腐れ縁の同盟関係で終わったはずだ。
     アレコレと考えたところで後の祭りにしかならない。
     布団を捲る。
     胸部に縫い目。
     そっと触れると、高等吸血鬼の鼓動と強大な気配がする。
     別の真祖吸血鬼だ。
     逞しい腕の抱擁から逃れ、床に落ちたローブを纏い、扉の向こうで門番をしていたメビヤツを呼びつける。ちょいちょいと体を弄って、体内に収納されていた麻酔薬を取り出した。分量によっては象一頭を昏倒させることすら可能な武器だが、調整できれば役に立つ。
     ハンカチに染みこませて心臓と首から吸収させた。
     これで痛みは感じないだろう。
    「少し眠っていてくれ」
     ロナルド君の呼吸が浅くなる。
     心臓の縫い目に細いカッターを突き立てた。
    スッと引き抜く。血は大して溢れない。普通の人間と違うからだろう。造られた隙間に短く切ったストローを差し入れて、メモ用紙を漏斗のように丸めて繋げて、サラサラと指の砂を落とし入れていく。
     やがてストローを軸にして塵が這い上がってきた。
     語りかけてみる。

    「喋る口は作れるかね?」

     しゅるしゅると植物が生えた。
    「やあ。応えてくれてありがとう。初めまして。私の相棒が失礼した。名前を聞いてもいいかね」
     塵で象られたパンジーの中に顔と口がある。強大だった頃の自分に似ていた。
     灰色の花が私を見上げた。
    真っ赤に燃える瞳がふたつ。

    「……ワルド・ヘンリー・シャドウズ」

     私の棺名だった。
     大昔の棺桶に刻んでいた異名だ。家族しか知らない。
    「ドラルクを名乗らないのは【私】に気を遣ってかね?」
    「分かっているのならば愚問では無いかね、ドラルク殿」
     やはりコレは【ドラルク】なのだ。
     別の世界から誘拐されてきた異なる時間軸の私。
     ロナルド君の心臓として今も動く真祖の高等吸血鬼本人だ。
    「では、ヘンリー。どうしてロナルド君に荷担した。君は略奪された側の筈だろう。その気になれば殺すことは容易いはずだ。心臓の状態でも拒絶はできるはず」
     いかに魔術を用いて肉体に閉じ込められているといっても、されるがままなワケがない。
     我が竜の一族は変幻自在だ。
     父も私も変身に長けている。少ない塵を依り代にしているからか、殆ど口しかない【ヘンリー】も親和性のある塵があれば、こうして姿を変えて口を得るのだ。
     その気になれば太い血管で血栓となり、体の動きを止めるばかりか、太い血流にのって脳幹を破壊できるはず。
     しかし彼からは……怒りや殺意を感じない。

    「ロナルド君は、キミを愛している」

     ボッと顔が紅潮した。
     考えてみれば情事の一部始終を聞かせていたのだから、誤魔化しようがない。
    「さ、さっきのは」
    「一般的に言う『愛情』とは違って、だいぶ歪んでいるとは思うがね」
     ハハッと微妙な笑い声を漏らしながら、ヘンリーは急に饒舌になった。
    「虫の息の子供たちを、埋葬がてら私欲に使ったんだからな。吸血鬼の執着心に近い。君たちは正にシェイクスピアの傑作ロミオとジュリエット。ギリシャ神話が謳うオルフェウスとエウリュディケ。泣かせるじゃないか」
     みよんみよん、と愉快そうに揺れる。
     出来の悪い絵本のようで、凶悪な表情の喋る花は絵面がヒドイ。
    「元の世界に帰りたい、とは考えないのかね」
     ぴた、と花の揺れが止まった。

    「帰りたい気持ちはあるよ」

     瞳を細めて、どこか遠くを想うように語り出す。
    「私にも私の五歳児がいてね。きっと腹を空かせているだろう。愛しい使い魔や弟子たちも胸を痛めているはずだ。主人の私が、私のいた世界から消えて、無事かどうかはわからんがね。お父様やお母様も心配しているに違いない。でも……帰り方がわからん」
     それはそうだろう。
     幾千万の可能性の世界から、異界の神の門を使って浚ってきたのだ。
     異国から連れてくるのとはワケが違う。
     自力で帰れるはずがない。
     おとなしく心臓の役割を果たす意味も分かる。帰り方を知っているのはロナルド君だけなのだ。従わざるを得ない。
     声をかけてみて正解だった。
     このままで良いはずがない。
     なんとかできるのは私だけだ。ヘンリーに語り掛ける。
    「私が手を貸そう。うちの問題だ、我々で始末をつける」
    「いいのかね?」
    「勿論だ」
    「私が離れたら彼は死体に戻るぞ」
    「心臓の穴は、私が埋める。元々そういう契約だ」
     目的を果たすまでは手を組む。打算と口約束で相棒になった。でも志半ばにして命潰えたロナルドを、死後という安寧から連れ戻したのは私個人のエゴだ。
     私が始めた地獄の道。
     赤の他人に背負わせて良いものではない。
    「自分の体を持って『ロナルド君に愛されていたい』とは考えないのか」
     ヘンリーは意外と鋭い。
     彼も私であるなら当然なのだろうか。
    「うっ……それは副産物というか、別に執着の形にはこだわらんよ。君のおかげで肉体交渉も叶った。感悦の時間は幸せばかりじゃない。罪悪感を運んでくる。私が心臓に戻れば、死が二人を分かつまで一緒だよ。その方がいい」
     行き着く果てが決まっているのなら心中を選ぶ。

     私は、屍のロナルド君に命を分け与えた。
     孤独になったロナルド君は私を甦らせた。
     似たもの同士。同じ穴の狢。共依存は愚かな私たちに似合いだ。それに……

    「今の体は亡き子供たちに返さねばならん。というか、同じ顔をした別の男を懐に置かれていては居心地が悪いよ。このロナルド君は、わたしのものだ」
    「情熱的なことだ。羨ましい」
    「ヘンリー。君に相棒はいないのかね。さっきの五歳児というのは」
    「私のロナルド君だよ。奇遇にもね」
     まるで鏡写しのような私たちは、お互いがありえた未来かもしれない。
     純粋な興味が湧いた。
    「どんな子かな。いくつ? 愛らしいのかね」
    「とても子供っぽくて子供の舌で、大人なのに原稿の締め切りも守れない自伝作家さ。バカで奥手で童貞なハムカツ男だけれど……毎日が面白くて手放せない夜明けの子だ。でも彼はおっぱいの大きなお姉さんが好みでね。片思いさ」
     ヴァンパイアハンターではないのかもしれない。
    『文筆業か。平和な世界とは羨ましい』
    「私のロナルド君も昔はそうだったよ。私に愛着心が出たのは、一度死んでからだ」
    「だろうね」
     ロナルド君の日記を思い出す限り、最初は心臓の修理だけが目的だった。なにせ稼働時間が短くなれば、その分、身の危険が高まっていく。
     決定的に狂ったのは魔道書を読み始めてから。
     私への愛情が本物かは疑わしい。
    「君は告白しないのかね」
    「なぜ? そばで見守っているだけで充分楽しいさ。性的嗜好がヘテロの若者の未来を摘み取るほど、傍若無人では無いよ。人の子の命は花のように短い。ま、誰も居なかったら看取ってやろうとは考えているがね」
    「執着心が強いな」
    「偽証は得意だ。言わぬが花さ」
     肩をすくめるように、塵の花は頭を傾けた。
     彼は、私たちに同情的だが……帰りを待つ者たちがいる。

    『やはり帰してやらねばならん』

     安寧を捨ててでも。
     あるべきものは、あるべき場所へ。

    「ヘンリー。もとの世界への帰り方をみつけたときは、私の心臓の棺を返してくれるかね」
     私の心臓は、もはや私のモノではない。
     ロナルド君の体内にあるべきで、我々は運命共同体だ。
    「いいとも。このロナルド君がふたつ返事で了承するとは考えづらいがね」
    「違いないね。なんとかするよ」
     まだなにも思いつかない。
     けれど、魔道書『無名祭祀書』は私たちの手元にある。
     ヘンリーは「健闘を祈るとしよう」と言い残して散った。
    差し入れた塵を放棄した。押し出された塵は私の指として元に戻り、心臓の真上にできた傷は速やかに塞がれた。
    「明日から大変だな、全く」

     歪な関係は……
     いずれ終わりにしなくてはならない。


    <現在公開のサンプルはここまでです>※月末イベント後追加公開有り

    ●偽証の華(嘘軸:55000字)★…サンプル公開中(18000字)
    ★ー【序】失われた日々の無言歌
    ★ー【1】真祖の目覚め
    ★ー【2】新しい隠れ家の中で
    ★ー【3】十年の大罪
    ★ー【4】もうひとつの心臓
    ★ー【5】鏡よ鏡
    ー【6】ゆめのおわり
    ー【7】ふたたび
    ●偽証の華(本編軸)
    ー【本編ロナドラ】バックステージ・ナイトメア
    ー【本編ロナドラ】バタフライ・エフェクト
    ●偽証の華(派生軸)
    ー【芸能パロディ】クランクアップ
    ー【芸能パロディ】拝啓、親愛なる君へ

    ※嘘軸・本編軸・芸能パロは、全て内容に一定のかかわりがあります。
    読後のアハ体験(二読しないとわからない秘密)をお楽しみください。
    眠犬庵 Link Message Mute
    2023/05/20 17:32:34

    偽証の華(嘘ロド)

    #ロナドラ
    #嘘ロド
    #本編ロナドラ
    ●偽証の華(A5/48p→70p※増量/3万字→5万5000字)

    嘘軸世界のロナルドとドラルクが繰り広げる、愛憎と執着の短編集。一部成人向け。
    ロナルドもしくはドラルクの一方的な執着心や恋心、一体化後のふれあいがメイン。
    一体化後は、片方の視点で展開されます。

    【収録内容】嘘軸ロナドラ(長編)+本編ロナドラ2話+芸能パロ2話
    ●偽証の華(嘘軸)★…サンプル公開中/☆…くるっぷ追加公開(イベント後)
    ★ー【序】失われた日々の無言歌
    ★ー【1】真祖の目覚め
    ★ー【2】新しい隠れ家の中で
    ★ー【3】十年の大罪
    ★ー【4】もうひとつの心臓
    ★ー【5】鏡よ鏡
    ☆ー【6】ゆめのおわり
    ☆ー【7】ふたたび
    ●偽証の華(本編軸)
    ー【本編ロナドラ】バックステージ・ナイトメア
    ー【本編ロナドラ】バタフライ・エフェクト
    ●偽証の華(派生軸)
    ☆ー【芸能パロディ】クランクアップ
    ー【芸能パロディ】拝啓、親愛なる君へ

    ※嘘軸・本編軸・芸能パロは、全て内容に一定のかかわりがあります。
    読後のアハ体験(二読しないとわからない秘密)をお楽しみください。
    【書店:とらのあな】https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031069897/
    【嘘軸あらすじ】
    戦闘中、真祖の心臓へ攻撃がかすり、自意識すら保てなくなったドラルク。
    ハッと我に返ると、そこは事務所ではなく教会で、元に戻った体と穏やかな表情のロナルド、そして言葉を失ったメビヤツがいた。
    そこで孤児院を経営しながら、ドラルクが元に戻る方法を探していて成功したと教えられる。
    つかのまの平穏を享受して数日、メビヤツの様子がおかしい。違和感を捨てきれないドラルクが調べると、真祖の心臓なしで動くロナルドへの不信感が増していく。
    彼は死んだはずだ。
    やがてロナルドが禁忌に手を出し、その代償を別軸の自分たちに支払わせたことを知る。
    ロナルドはギルドを追放されていたのだ。
    愛情ゆえに狂った元最強のヴァンパイアハンターと、最後の真祖が示す路の物語。

    【くるっぷ】https://crepu.net/user/nemuinuan
    【ピクト】※先行予約完売(配送処理中)
    【ブース】https://nemuinuan.booth.pm/items/4594034※キャンセル待ち

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    【吸死:腐】ロナドラ
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    • 魔女の番犬~お菓子の魔女には番犬がいる~(読切ロナドラ×ヘン魔女) #ロナドラ
      #読切ロナドラ
      #吸死【腐】
      #アタリブックセンタ

      ●魔女の番犬~お菓子の魔女には番犬がいる~(読切ロナドラ×ヘン魔女)
      【あらすじ】
      魔女狩りのプロとして名をはせる退治人ロナルド様が送り込まれた先は、子供に負ける雑魚魔女の住処だった。依頼と実態が違いすぎる。体のいい人殺しを委託されたロナルドは激怒し、ドラルクのために教会側と全面戦争を決意した。事件解決まで家に住むことになったロナルドは、しだいに魔女ドラルクへひかれていく。

      【注意】
      この作品は94童話パロディ「ヘンゼルとグレーテル」の妄想作品です。作者情報(アカウントジャック)に準拠し、ロナルドは狩人出演です。ほぼドラルクが魔女なだけです。

      【先行:数量限】https://pictspace.net/items/detail/340475
      【虎の穴:専売】https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031043971

      A5/52p/2段+3段(本文46000字+購読特典)
      ※サンプル16000字くらい
      ※ページ圧縮のため本編以外が3段組になっています。

       4p ………… 【読切版ヘン魔女】お料理の魔女には番犬がいる
       9p ………… 雑魚魔女と退治人

      11p ………… これは事故かな?/朝チュンは事故ですか?

      12p ………… この心に名前をつけるなら
      20p ………… 真心とはいかなるものか
      26p ………… 栄光でくすんだ過去
      28p ………… 星に囀る愛の詩(※初夜)

      39p ………… 後日談~抱いたのか、ヌン以外のヌンを~

      40p ………… 【本編ロナドラ】ツクモツクール予備室事件
      43p ………… 【本編ロナドラ】文豪の恋文に学ぶ

      50p ………… 【備考】※購読特典パスワード有



      ◆購読特典◆※2023年3月更新予定
      https://privatter.net/u/sleepdog_t

      ※購読特典の閲覧可能期間は発行から約一年です。このほかWEBコンテンツのサービス終了などの不測の事態により閲覧できなくなるケースがあります。ご了承ください。

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