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    酔いと甘えと

    「ううーん…んん…」
    「……おい。リーダー起きてるか?……はぁこりゃ駄目だな」
     やってしまった。最近忙しそうにしているのは知っていた。だから少しの息抜きにでもなればいいと食事に誘い、そこで酒を飲んだ。そこまではよかったのだ。
     リーダーは特別酒に弱いわけではない。しかし、男からしたら弱い部類に入っていて、男のペースに付き合ってリーダーの方が先に机と仲良しすること数回。毎回リーダーを潰してしまうことに申し訳なさを覚えて逆に男の方が、リーダーの飲酒量や酒の種類も合わせるようになった。
     そのため、リーダーが机と仲良しする回数は格段に減ったのだが、連日の慣れない書類仕事での疲労が思っていた以上にあったのか、普段ならまだ酔いもしない量の酒で寝入ってしまったらしい。
    「………仕方ねえなぁ………担いで連れて帰るか」
     起こさないように慎重に担ぎ上げると、男は皆が寝静まりひとけのなくなったセリエナの中をマイハウスへゆったりと歩みを進める。防具だってついているし、自分より体格がいいリーダーを担ぐのは重くないわけではない。でも、この重みも悪くないもんだなと小さく鼻唄を歌いながら冷えた空気を切って行く。






    ※※※※※※※



    「…どっこいせっ…と。……よく寝てるな」
     マイハウスの大きなベッドにリーダーをなんとか転がしたが、その振動でも起きないほど寝入ってしまっているらしい。気持ちよさそうなリーダーの寝顔に、ふう、と息をついて男は外せる範囲の防具を手際よく外していく。
    (風呂は明日でいいとして…防具はあらかた外したしな…あとは水を飲ませたいが…)
     ベッド脇のチェストには、いつもルームサービスが冷たい水の入った水差しを用意してくれている。自分より酒に弱くて(狩人としては人並みの強さではあるが)、しかも普段より疲れているとなれば、いつもより少量の酒でもこの様子では二日酔い待ったなしだろう。せめて少しでも水を飲ませてアルコールを抜いてやりたいが果たして起きてくれるのか。そして、目を覚ましてくれたとして水を飲んでくれるかどうか。
    (しゃーねえ…とりあえず起こしてみるか)
     水を移したグラスを片手に、軽くリーダーの肩を揺するがむずがるように身じろぎするだけで起きる気配はない。
    「おい、リーダー。少しでいいから起きてくれ。水だけでも飲め」
     今度はぺちぺちとほっぺたを叩いてみる。気持ちいいほど寝入っている彼の顔に、もうこのまま寝かせてやったらいいんじゃないのかという気になってくる。
     しかし、翌朝二日酔いで苦しむのは彼なのだ。元はと言えば自分が食事に誘ったのが酒を飲むきっかけだったから、二日酔いになられるとそれはそれでなんというか居心地も悪い。
    「リーダー!おい!一瞬でいいから起きてくれ!」
    「…………………………んん?」
    「おっ?おーい、リーダー。わかるか?俺の部屋だ」
    「………かえるむ………のど、かわいた」
    「へいへい。俺もちょうどリーダーに水飲んでほしかったところだよ。……起きれるか?」
    「……あ」
    「……ん?」
    「あ」
     小さく、あ、と口を開けて待つ彼。いやいや待て。"それ"をまさか俺に求めているのか?男は戸惑いを隠せない。恐らく彼は水を口移しで飲ませてほしいのだろう。予想外の要求に男はグラスを手にしたまま動きを止める。
     情事の経験に関しては彼よりも豊富だと思うが、まともな恋愛経験となるとそちらは恐らく彼のほうが経験が多いと思う。男だって全く知らないわけではないけれど、世間一般の恋人同士がやる定番の仕草なんてのは、向こうの方がよく知ってるだろう。
     そんな彼が要求してくるということは、一般的な恋人同士というのは何某かの液体を口移しで飲ませることはよくあるのだろうか。いやいや流石にそれはないと思いたい。
     しかも、かわいい女ならともかく自分は三十路をこえた男だ。顔はかわいくないし華奢とは程遠い体格をしている。そういうベタなことを求めてくるには、いろいろちょっと視覚的にキツいものがあるんじゃないだろうか。
     それでも、あのリーダーが寝ぼけているとはいえ、甘えてきているらしいという事実に頭がぐらりと揺れる。こうなると、好いた相手の要求にぐらい応えてやってもいいんじゃないのか何も減るものはないし、という気になってさえくる。
     それに、ここでうだうだと起きろ飲ませろの押し問答をするよりは、さっさとその要求に応えたほうがお互いのためにもいいだろう。男はため息をグッと飲み込んで要求を叶えてやることにした。
    「………これっきりだからな………そのままじっとしておいてくれよ」
     こくり、と頷く彼が妙にかわいい。男はグラスの水を口に含むと、言いつけに従順に大人しくしているリーダーの薄く開いた口にそっと自分の唇を重ねた。
     半分寝ている彼が噎せてしまわないように、少しずつ含んだ水を薄ら開かれた唇へと流し込んでいく。
    「…ん、んん…………んぅ?!」
     数回に分けてグラスの中身を飲ませて最後の一口を飲ませたところで事件は起こった。
     口に含んだ水を全てリーダーに含ませてゴクリと嚥下したのを確認して、さぁこれで終いだと頭をあげようとしたのをガッチリと抱き込まれてオマケに舌まで入ってきたのである。
    「んん〜〜〜〜!ん、んぅ…ちょ、リ、ダ。あ、んあ」
     抗議のつもりでバシバシ肩を叩いてもびくともしない上に、なんとか文句を言ってやろうとしてもするりと舌を絡め取られて言葉にもできない。自分で黙らせておきながら静かになった男に気を良くしたように、リーダーの舌は男の性感を煽るように口内を好き勝手に暴いていく。
    (こんの酔っ払いが…!う、くそ…)
     酔いのせいか、いつもより熱い舌が口内の弱いところを舐っていくたびにゾクゾクとした甘い痺れが背筋を通って腰にズンと溜まっていく。
     あぁもうこのまま身を委ねてしまおうか。とりあえず当初の水を飲ませるという目的は果たしたし、何より彼があんまりにも熱っぽいキスをするから、欲に火がついてしまってこのまま仲良く寝るだけだなんてとんでもない。彼の手が這ったところからいつもより高い体温がじわりと伝わって肌が粟立ち、いつも彼に愛される最奥がぎゅうと疼く。
     それでも一言文句だけ言ってやろうと、ガッチリと頭を抱えていた手の力が抜けた瞬間男は持ち前の瞬発力を持って拘束から抜け出すことに成功した。
    「っぷは!…おい、リーダー…!………リーダー?」
    「………………ぐぅ」
    「………おいおいおい…ここまで煽っておいて…寝落ちはねえだろ…」
     悲しいかなリーダーはやりたいことだけやって夢の世界へと旅立ってしまったらしい。男はガックリと肩を落とす。あそこまで欲を煽っておいて火を付けた本人が寝落ちとは。拍子抜けした瞬間に欲の火も鎮火してしまい、まるで一人遊びのあとの賢者タイムに似た虚しさに男は襲われる。
    「……はぁ。まあ仕方ねえなお疲れだったみたいだし」
     溜め息を吐きながら身体を冷やさないように、リーダーの身体に掛け布を掛けてやり、男もその隣にするりと滑り込む。
    「おやすみ。………良い夢を」
     そして、気持ち良さそうに寝息を立てるリーダーの唇にそっとキスを落として、男もまた夢の世界へと旅立った。




    なるせ Link Message Mute
    2022/09/03 20:43:56

    酔いと甘えと

    Twitterと支部に上げていたものです
    酔っ払いと介抱するWハン♂の話
    雰囲気すけべ




    #調リハン #腐向け

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