5本のバラを添えて注意・こちらはDom杏×sub冬弥の杏冬Dom/subユニバース作品です。Dom/subユニバースや杏冬が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
・序盤に冬弥がモブに襲われるシーンがあります。ご注意ください。
・彰人と冬弥がplayを行っている描写がありますが、あくまで2人は相棒であり、恋愛描写はありません。「sub dropの防止」のためにplayを行っています。
・2ページ目はDom/subユニバースに対する自己解釈を書き殴っています。読み飛ばしていただいても構いませんが、解釈違いに敏感な方は目を通しておくことをおすすめします。本編は3ページ目からです。
・作品内にはDom/subユニバースに関する解説はありません。前述の2ページ目も読み手がDom/subユニバースを知っていることが前提の内容です。知らないという方は事前に調べてください。
こちらのまとめが分かりやすくておすすめです→
HOW to dom/sub ユニバース
世界観(自己解釈)
現代は割と平和
Domもsubもneutralも同じくらいいる
Switchは希少
Dom : sub : neutral : Switch = 3 : 3 : 3 : 1くらい
ストリートのバチャには第2性が無いが、セカイによって違うのかもしれない……
昔はDomが優位と考えられておりsubは蔑まれていたが、今はそのような差別は無くなってきている。しかし、一部の人の間には未だに差別意識が残っている。今の日本の男女差別と同じ感じだが、それよりは軽度。
パートナーは恋人と同じような感じで(個人の価値観にもよるが)割と簡単に成立・解消できる。オメガバースの番のような一生モノではない。
個体差でできないDom/subもいるが、基本的にパートナーでなくても、playに値する双方の信頼関係があればplayは行える。Glareを浴びたときなど、subのためにcareがどうしても必要なときもあるので、パートナー以外とのplayは躾で禁止されていない限り浮気にはならず、問題とはならない場合が多い。
欲求不満による体調不良やsub dropの対処・予防として行われるplayに関しては特別にcare と呼ばれている。
まだパートナーのいない子供が保護者にcareをしてもらうということはよくあること。
オメガバースの運命の番ほど強力ではないが、本能的・遺伝子的な相性相性の良し悪しはある。
Side Toya 2人がパートナーになった日
「冬弥、大丈夫?なんか具合悪そうだけど」
不意に白石に声を掛けられた。だが、具合が悪そうと言われても、自覚症状など無い。俺は本当に体調を崩しているのだろうか。
「いや、そんなことはないのだが……そう見えたのか?」
「うん。なんか沈んでるって感じ。自覚が無いならどうしようもないかな……とにかく、無理はしないでね!ちょっとでも体調おかしくなったら、ちゃんと言うこと!」
「ああ、分かった」
白石がそう言うならそうなのかもしれない。気をつけておこう。
今日の練習はセトリやパート分けの話し合いが中心に行われ、激しい運動はしなかった。気を遣われたのか、それとも昨日は基礎トレーニングやダンスの練習が中心だったからというだけなのかは分からないが。
練習が終わって解散となったものの、未だに体調の変化は感じられない。見間違いだろうか。何にせよ、このまま特に何も無ければ良いのだが。
「君、なんか顔色悪いけど、大丈夫?」
「subだよな。もしかして欲求不満じゃね?」
路地裏を歩いていたら突然知らない人達に取り囲まれた。その人たちはビビットストリートでたまに見かけるが、話したことはない。
「あ、えっと、俺は大丈夫ですので……」
「いやいや、このまま帰るなんて良くないよ。ちゃんとplayしないと」
「え……?」
「君、まだ大した自覚は無いみたいだけど、やっぱ欲求不満なんじゃねーの?俺らがcommand出してやるよ」
「え、いや、結構です……その、パートナーいるので……」
パートナーがいるというのは嘘だ。俺がsub dropしかけたときに彰人がcareをしてくれたことは何度かあるが、それだけだ。パートナーではないし、なりたいとも思っていない。彰人はあくまで相棒だ。
「でも、こんな風になるまで放っておくなんて酷いパートナーだよね」
「固いこと言わないでよ。俺らが付き合ってあげるからさ」
「え、いや……っ」
「いーからいーから。ほら、『kneel』」
何も良くないのだが。抵抗も虚しく、commandを出されてしまった。それを聞いた途端、体が崩れ落ちた。知らない人とplayなんてしたくないのに。立とうとしても、力が入らない。どうしよう。
「おー、できたな。じゃ次、『strip』」
「へ……?」
「聞こえなかったか?『strip』だ」
「ひっ……ぁ……」
嫌だ。従いたくない。いきなり脱げなんて言われても。しかし、commandにはなかなか逆らえないのがsubの体質だ。耐え切れず、上着を脱いでしまった。でも、これ以上は、
「いっ……いやぁ、いやだ……っ」
「それだけじゃねえだろ。全部脱ぐんだよ!『present』ってことだよ!」
怒鳴りながら俺を睨みつけてくる。Glareが放たれた。血の気が引いていく。震えているのが自分でも分かるほどに、怖い。
「うぐ……っ、う、ぁ……」
「ぐだぐだ言ってないで、早くしてよ。ほーら、『strip』、『present』!」
「ひっ、はぁ、いぁ……」
こんなcommand、聞きたくない。内容も、高圧的な態度も、嫌だ。俺はこんな風にされて喜べるタイプのsubじゃないのに。こわい、やめて……!
「あーもう、できないならいいよ。じゃあ『lick』。舐めて」
「ぇ、へ……?」
「指舐めろっつってんの、早く咥えろよ!」
「~~~っ!」
そう言って指を口元に押し付けてくる。歯を食いしばってなんとか耐えているが、いつまでもつだろうか。諦めるしかないのだろうか。そう思いかけたとき、こちらへと近づく足音が聞こえた。光が、差し込んだみたいだ。
「ねえ、なにやってんの?」
救世主がGlareを放ちながら駆けてきたようだ。
「しら、いし……?」
その正体は白石だった。
「離しなよ。怖がってるじゃん」
「はっ、邪魔しやがって……何だお前!」
「“私の”なんだけど?」
「は、おま、えがこいつのパートナー……?体調、こんなに悪くなるまで、放置したくせに今更?」
「……悪化させてるのはどう見てもそっちじゃん。早く離れてよ」
白石はGlareを発した。普段見ることのない、怒りと軽蔑の混じった冷たい目で睨みつけている。俺を襲っていたDomらは皆震えている。
「早く、離れて」
その一言で、Glareがより一層強まる。Domらは一目散に逃げて行った。
「冬弥!!!」
先程までの冷たい視線とは打って変わって、今はいつもの白石らしい表情だ。
「ありがとう、白石」
「どういたしまして……もっと早く来られればよかったんだけどな」
「いや、来てくれただけで嬉しいぞ。白石が来なければ、どうなっていたか、分からない」
「そうだね。無事とは言えないけど、ここで止められて良かったかな。あ……急に”私の”とか言っちゃってごめんね」
「それは構わない。とにかく、ありがとう」
こうして話していると、少しずつ心が落ち着いてきた気がする。だが、少し、体が重いような。やはり、dropしかけたのか。
「見た感じ、sub dropはしてないみたいだけど……帰るのはもうちょっと落ち着いてからの方がいいかな」
「ああ。dropはしていないが、する直前みたいな感じがした。少し体が重い気もするし……あ」
「ん?」
「今朝、抑制剤を飲み忘れていた。体調が悪いように見られたのはそのせいだろう。確か、カバンの中にあるはず……」
抑制剤を取り出そうとしたところで、白石に腕を掴まれた。
「ねえ冬弥。抑制剤って欲求を抑えつけるだけで、根本的な解決にはならないんだよ?」
「確かにそうだが……playができないなら、」
「あのさ、冬弥」
「白石?」
「もし、よかったら……私に、careさせてくれないかな?」
「……いいのか?」
「もちろん。冬弥が嫌じゃなければね」
「なら、お願いしたい」
白石は優しい口調でplayの提案をしてきた。あのDom達みたいな怖い感じはせず、安心感がある。白石になら、コントロールを預けてもいい。きっと相性も良いだろう。理屈ではなく、本能でそう感じられた。
「やった!じゃあ、セーフワードを決めておこっか。好きに決めていいよ」
「分かった。『レッド』でいいだろうか。ありきたりだが、一番思い出しやすいだろう。使ったことはないけどな」
「確かにそうだよね!使ったことはない、ってことは……もしかして、他の人とplayしたことある?」
「ああ。俺がGlareを浴びて、sub dropしかけたときは彰人にcareをしてもらっている。だが、sub spaceにはなかなか入れないんだ。多分俺の体質のせいだろうから、今回入れなくても力量不足だとかはあまり考えないでほしい」
「なるほど……分かった。NGはある?そんなにきついcommandは出さないけどね」
「軽いものなら、特にないな。屋外ではやりづらいようなハードなものはやめてほしいが」
「オッケー、じゃあ、始めよっか。最初は、『look』」
自然と白石の方に目が行き、視線を逸らせなくなる。強制力はあるものの、恐怖はない。それどころか、ふわふわとした安らぎに似た感覚がする。『look』はかなり易しいcommandだ。なのに、こんなに気持ちがいい。
「うん、出来たね。」
「ふふ……っ」
「次はそのまま、『stay』」
きゅっと、体が締め付けられたような感覚だ。先程の『look』の効力もまだ切れておらず、ずっと白石を見つめている。白石もまた、こちらを見つめている。それだけで、胸の中が満たされていく。でも、早く、次のcommandがほしい。
「ま、まだか……?」
「あ~、ちょっと待たせすぎちゃったね。でも、よく待てたね、『Goodboy』。じゃあ最後は、『come』」
やっとだ。元々距離が近かったので、ハグするような形になった。白石は俺の頭をわしゃわしゃと撫で、何度も『Goodboy』『よくできたね』などと言って褒めてくれた。これまでにないくらいしあわせで、ふわふわして……
「……ん?もしかして、sub space?」
「ん……」
「完全にトんじゃったかな。さっきはなかなか入れないって言ってたのに。でも、良かった。もうちょっとだけ、このままでいよっか」
あれから何分経っただろうか。長いことspaceに入っていた気がする。隣には白石がいる。俺がspaceに入っている間、ずっとそばにいてくれていたのだろう。
「あ、もう出てきたんだね」
「ああ。すまない、結構長く待たせてしまっただろう」
「全然大丈夫だよ!spaceに入ってる冬弥見てると、私も満たされるし!」
「そうか、それなら良かった」
「ねえ、冬弥」
「どうした?」
「私達、パートナーにならない?」
「パートナー……?」
いきなりの提案に驚きを隠せなかった。でも、嫌な気はしない。
「前々からなんとなく思ってたんだけどさ、私達、相性良いみたいじゃん。私は、ずっと冬弥とパートナーになりたいって思ってた。さっきやったcareもすごく良かったし。だから……」
「白石も、そう思っていたのか」
「冬弥も……?」
「これまであまり考えたことは無かったが、助けに来てくれたときや、careをしてくれたときに思ったんだ。パートナーになるなら、白石みたいな人がいいと」
「なら……!」
「ああ。俺も白石とパートナーになりたい。よろしく頼む」
「うん!パートナーとしてもよろしくね、冬弥!」
そして、俺たちはそっと抱きしめ合った。
Side An 愛しいあなたへClaimを
冬弥とパートナーになってから1週間。交際は順調に進んでいる。
この頃、collarを贈りたいと思うようになった。初めのうちは軽いplayだけで満たされて、お腹いっぱいになったのに、欲求はどんどんエスカレートしていって、物足りなさを感じることが増えた。冬弥をもっともっと甘やかして、溶かして、私だけのものにしたい。
となると、思いつくのはやはりcollarを贈ること、つまりClaim。
「うーん、どういうのがいいんだろ……」
「白石、どうした?」
「!?」
まずはどんなものがあるか調べた方が良いかと思って、collarの通販サイトを見ていたところ、背後から急に冬弥が現れた。
「あ、すまない。覗くのは良くなかったな」
「いや、びっくりしただけだし、それは別にいいんだけど……むしろこれは見てもらった方がよさそうかな。collarについて調べててさ、」
さっきまで見ていたサイトを見せながら、話していく。Claimしたいということ、どんなcollarがいいのかを考えていること。興味津々で喜んでいる様子だったし、冬弥も前向きに考えてくれているみたい。
「冬弥はどういうのが良い、とか希望ある?あるならそこはちゃんと考えるけど」
「いや、特に無いな。白石に任せても、いいだろうか?」
「オッケー!じゃあ、私が冬弥に合うcollar、見つけてみせるからね!」
「ああ。期待している」
サイトをしばらく見ていると、なんとなくイメージが固まってきた。でもこういうのは、直接実物を見て買った方が良さそうだな。ちょうど明日はオフだし、ショッピングモールにある店をいくつか見に行こう。
2つ目の店で私は見つけた。最高に、冬弥に合いそうなcollarを。黒く、少し太めで、中央には星の飾りがついている。それは、私がいつも付けているピアスと同じ形の星だった。おそろいみたい、とも思ったけど、これはおそろいというより所有の証という感じだな。もともとcollarはそういうものだけど、共通するモチーフがあることによって主張がより強いものになっている気がする。このcollarに決定し、レジへ向かった。
隣の店はハーバリウムの店だった。普段はあまり見ることはないのだけれど、なぜか、とても惹かれてしまった。店内で、ふと目に入ったのはバラが5本入っているもの。すごくきれい。店内には花言葉を紹介するポスターが貼られている。5本のバラの意味は……今の私の気持ちにピッタリ!
そうだ、これもcollarと共に冬弥に贈ろう。幸い、財布の中身にはまだ余裕がある。こちらも購入し、ラッピングしてもらった。
翌日。練習後に冬弥を私の部屋に呼び、collarを渡すことにした。冬弥を部屋に招くのは片手では数えきれない回数になったけど、今日はClaimという一大イベントがあるので、めちゃくちゃ緊張している。そっと深呼吸し、冬弥の方を向く。
「冬弥、」
「白石……?」
「私からのcollar、受け取ってください!」
「collar……もう用意したのか」
驚きと歓喜の混じった表情で、頬を赤らめ私を見つめる冬弥。喜んでくれたのが嬉しくて、ずっと、大事にしたいって思いがまた強くなった。
「開けても、いいだろうか」
「もちろん!」
冬弥は壊れ物を扱うかのように箱をそっと開けた。
「こ……これが、俺の、collarなのか……!」
「どう?気に入った?」
「ああ、とても。素敵なcollarを選んでくれてありがとう、白石」
「喜んでもらえてよかった。そのcollar、私が着けさせてもいいかな?」
「……よろしく、頼む」
そっと、collarを巻く。正面の金具を留めて……できた。白い首筋に黒いcollarがよく似合っている。
「すごいな。collarを着けると、こんなにも満たされた気持ちになれるんだな」
「冬弥も?私も、今すっごく幸せ。ところで、もう一つプレゼントがあるんだけど……」
「……え?」
ここで、5本のバラが入ったハーバリウムを渡す。その意味は、
「あなたに出会えてほんとうに嬉しい!」
「これは……そういうことか。とても綺麗だな」
満面の笑みだ。どうやら冬弥も意味を分かっていたらしい。衝動買いではあったが、冬弥が喜ぶものを選べて良かった。
「俺は何も用意していないのに……いいのか」
「私があげたくてあげてるの!だから、深く考えなくていいよ」
「では、ありがたく受け取っておこう。『あげたくて』、か。俺も白石に、何か贈りたくなってきたな」
「へ?勝手にあげただけなのに……」
「白石につられただけだ。だから、期待していてくれ」
「……うん!楽しみにしてる!」
後日、冬弥から贈られたのはシザンサス、という花のブーケだった。
「『あなたと一緒に』という意味があるらしい。パートナーに贈るのにうってつけな花だと思った。プリザーブドフラワーだから、ハーバリウムと同じく枯れる心配はないぞ」
おまけ Claim翌日の杏と保護者彰人(会話文)
「杏、お前冬弥とパートナーになったって本当か?」
「うん。もしかして、冬弥から聞いた?」
「そうだな。ま、言われなくてもcollar見れば大体予想はつくけどな」
「えへへ……良いcollarでしょ?」
「おう。お前良いセンスしてるよな。パートナー組むってことは、相性も結構良いのか?」
「うん、そうだけど……あれ?からかってこないんだ」
「……」
「彰人?」
「冬弥のこと、幸せにしろよ。もちろん、お前にも幸せになってほしいけど」
「彰人どうしたの!?急にしんみりしちゃって……」
「オレと冬弥、第二性の相性あんま良くねえんだよ」
「ん?いきなり何?」
「冬弥って人のGlareに結構敏感でさ、dropはあんましねえけど、たまにdropしかけるんだよ。特に親父と和解する前はよくあった」
「え、そうだったんだ……」
「だから、オレが時々careしてたんだけど、どうしてもspaceには連れて行けなくて。だから、少し落ち着かせることはできても、それしかできなかったんだよな。多分相性の問題だろうけど、冬弥があんなに苦しんでたのに、全然力になれなくて悔しかった。……でも、杏がいてくれてよかったな。相性良いパートナーがいるなら、大丈夫だろ」
「うん。これからは、私に任せて。でも、彰人は平気なの?これまで冬弥とplayしてたなら……」
「あー、オレは欲求薄いタイプのDomだから平気。抑制剤もいらないレベルだから、心配すんなよ」
「なるほど、それなら大丈夫か」
「おう。そんなことより、冬弥泣かせたら杏でも承知しねえからな」
「分かってるって。嬉し泣きと、快楽で泣かせるの以外はしないから」