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    テツ譲「そういえば僕、あなたの半分を超えましたよ」
     空が白み始めていた。服を着けずにいたせいで眠りが浅かったのだろう。まどろみから目覚める気配をお互いに感じ取っていた。
    「何の半分だ。目方か?」
    「そっちはとっくというか追いつく勢いなのでもっと引き離してください」
     ぶすくれた視線がこちらを向いている。もちろん冗談のつもりだったが、かと言って正解が浮かばない。拗ね顔がシーツの海を泳いできたので応じる。汗はすっかり引いていたから、滑らかな布が肌の上をさらさらと溢れた。
     抱き合って体重と体温を分かち合う。素肌同士の触れ合いは熱量以上の喜びをもたらした。気を良くした譲介は徹朗の首すじに潜り肌をくすぐった。昨夜していたような触れ方ではなく、犬猫が戯れるようなものだった。毛皮もない喉元を掻き分けるように、鼻先を触れさせてゆっくりと胸板へ降りていく。伴侶を抱き留めるには充分すぎるくらいだが、往年と比べるとずいぶん嵩が減った。その理由がまさしく闘病の跡であることを2人はよく知っている。
    「でも誕生日は過ぎたろ」
    「日数計算だとちょうど昨日が半分でした」
     徹朗は得心する。ずいぶんご丁寧なことだ。ざんばらに散った伴侶の髪を直しながらそう思ったら。茶色くてやわらかくて自分とは似つかない。当の本人はくすぐったそうにしながら楽しそうである。
    「出会った時は三分の一だったクセにな」
    「ふふん。大きくなったでしょう」
    「待て、つまり出会った時の倍ってことだろ」
     そうなりますねぇ、なんて呑気に呟いてやがる。追いかける方は気楽なのだ。
     こんな付き合いをするようになったのはここ数年の話だが、そのずっと前から知っている相手だ。無論、もうあの不安定な15のガキではない。進学こそやや足踏みがあったものの、壮年のいい男だ。気力、体力に満ちあふれ、判断力や行動力もある。それだけの時間が経ったのだ。
    「そりゃ俺も歳を取るはずだわ」
     31歳を迎えられなかった誰かを思い出す。そうかこんな遠くまで来てしまったのか。ぼんやりとした思考のまま抱き寄せる。腕の中の譲介が不敵に笑った。
    「次は3分の2を目指すんで付き合ってもらいますよ」
     
    せ⚪︎きししか Link Message Mute
    2023/08/02 19:36:45

    テツ譲

    over half #テツ譲

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