泣いても
喚いても
誰もその手を引き上げてやくれないよ
自分で立ち上がって
自分で綱を編み上げて
それがどんなに頼りない綱でも
穴の向こうに放って
辛抱強く登り続けないといけないんだ。
けども
けどもね
そいつは
穴に落ちる前に手配しとかないと
いけないもんなのさ
やんないで落ちたやつは
気付いちまうんだ
自分が手に取れる綱はもう
外に出る為の綱じゃないってことに
人の世の盲点
落ちたら二度と這い上がれない
そういう淵があるんだよ
おんぶにだっこしてもらって
見知らぬ誰かの背の踏み台を渡って
まるで全部一人でやってきたような顔をして
俺は立派だなあとふんぞり返って
今なお顧みずに
他人踏み締めて歩いてるやつは
落ちることもない
深い 深い
深い 淵さ
あんたはきっと振り返っちまったんだろう
助けてと泣き叫ぶ甘えた声に
運の悪い ひょっとしたら自分だったかもしれない声に
無視も出来ないで立ち止まって
前を行く群れから離れちまったんだろう
そうしてお前は見付けちまった
暗い淵の下で
泣きじゃくる声をさ
なんでこの世は
良いやつばっかり貧乏くじを引くように出来てるんだろうね
ほんとの悪党は
自分が悪党だなんて気付いちゃいないで
俺は真っ当な人間だって
心底信じてるっていうのにね
そして胸を張って
お日様の下を歩いてる。