あ つ い
目を開けていられない まっくらだ
これ は
蒸気機関の あの石炭の あつさ
ト ンネル の 息 苦しい
はしらなきゃ どこま でも い きができない
(口づける)
(目を開ける)
ああ、なんだ。
きみもそうなのか。
情けないのは僕ばかりなのだと。
ただ(選ばれた)(望まれた)子供に偉そうに説教をして
すべて捨てて託したのに
それも自分が託されたものを 渡せただけなのに
いつまでも残熱のように燻り続ける
このこころにイラついて
いつまでも嫉妬して
そんな
女々しいままの自分が嫌で
押し殺しても
開き直っても
何ひとつ変えられないまま
そんな情けない自分を
信頼してくれるひとたちの
そんな想い(期待)から逃げたくなるような
それでも
そうでありたいと願う浅ましさが
捨てられないのは自分だけと思っていた
きみもそうか。
兄と慕って
朗らかに軽口を言い合える上もできて
清々しく
未練なく
みじめなことなどひとつもないように
それもどれも嘘ではないけれど
きみもそうか。
燻り続けるものを押し込めて、持て余してる振りをしてる。
本当はただ
消したくないのだ。
自分だけは持っていたいのだ。
無くしたくなどないのだ。
この胸に残る残炎を
決して消化することなどできやしないのだ。
「そっか」
「ねえ、物足りないでしょう?」
「君がこの位で足りるとは思えない」
「」
(手を胸にあて)
「こんなあつさじゃなかった」
そうだこんなあつさではなかった
「いいよ」
「きみならいいや」
惨めで 醜悪で どこまでも 綺麗な
唯一のもの
「きみならいいよ」