近代中国文学作家のひとり、老舎の作品から。
『黒白李』は李兄弟の兄弟愛を、兄である「黒李」の友人である「私」が一人称でつづる短編。
黒李は別に黒くはないが、ただ左眉の上に黒いあざがある、それで黒李なのだ。
弟にはそうした特徴がない、だから白李だ。
(中略)しかし彼らふたりの面はどちらも色白で、そして長じてはよく似ていた。
兄弟は同じ女性と恋愛関係になり、そうして黒李は身を引いてゆく。
一声私を呼んで、彼は「私は彼女を老四に譲るよ」と笑った、大排行(親戚一同の同世代男子の序列)で白李は四番目で、彼らの伯父の家に他にも兄弟がいるのだ。「女一人のために兄弟仲を失うわけにはいかんよ」
「だからおまえは現代人じゃないというんだ」私はハハと笑いながら言う。
「いや、老いた熊は新しい遊びを学べないのさ。三角恋愛は、気が向かない。彼女に言ったよ、彼女が誰を愛していようが、私はこれから彼女とやり取りしない。痛快な気分だ」
「そんな恋愛をしていたようには見えなかった」
「見えなかった?話していなかったか。彼女が去っても、老四と喧嘩はしない。先々この話をするとしても、君と終わりにしたくはないからね、そういうことにしよう」
「これにて一件落着というわけか?」
私たちは笑い出した。