これが無くなってしまったら、誰が毛利を必要とするだろう?<br>これが無くなってしまったら、誰が毛利を愛するだろう?<br>これが無くなってしまったら、誰がこの国を振り返るだろう?
毛利に無条件の愛を注ぐのは、毛利の人間だけ。<br><br>だから毛利を継ぐ息子には教えなくてはいけない。<br><br>「信じてよいのはおのれだけだ。<br> 毛利を恨みこそすれ、愛する者は毛利にしかいない。<br> 一歩、外へと足を踏み出したなら、そこには毛利を恨む者しかいない」<br><br>だから千代寿丸、それが弟たちであっても、心を許してはいけない。<br>三本の矢にはおまえが欠かせないのだと、よく心に刻みこめ。<br>そこには毛利が欠かせないのだと、よくよく心に刻み込め。<br><br>それが毛利に生まれた嫡男の運命。<br>おまえは父とは違う。<br>毛利にあるべき柱でなければならないのだと。<br>おまえは弟たちとは違う。<br>毛利を絶対的な権力で動かせなければならないのだと。