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  • 男と影と

    影に殺される夢を見た。
    毎日毎日、繰り返し見た。
    段々とそれが本当なのではないかと
    現実よりも真実なのではないかと思って
    汗みどろになって考えた。
    「殺されたくない」
    「殺されたくない」
    必死になって助かる方法を考えた。
    それで、そんな夢見がちで臆病な彼は
    いっそ影を自分から殺してしまえ、と思ったらしい。
    それで、ある秋の夕暮れ時に長く長く伸びた影に、ぐさりとナイフを突き立てた。
    影ば悶え苦しみながら小さく言った。
    お前が俺を殺したその時から、俺はお前でなくなった。俺は殺されて初めて俺になったよ。
    お前が世界の客になる日も、そう遠くは無いぜ。
    そして次の日から、彼に影は無くなった。
    彼は影の最期の言葉を不安に思いながらも、それ以外は心安らかに暮らしていた。
    なあに、あんなのは末期の強がりさ。
    そう思って、幸福をこれでもかと享受していた。
    不安も薄れ、平和が続いたとある日の事、夕暮れ時に影を殺した道を通った時だった。
    前から歩いて来る、真っ黒な奴が居る。
    彼とそっくりの背格好をした、陰鬱で凶暴な気配のする男だ。
    「やあこんにちは、俺を俺にした者よ」
    男は笑ってそう言った。彼はその男の正体に気付いて震え上がった。
    「お前は俺を世界の主にしてくれた。だからお前は世界の客になる。今までと入れ替えさ。さあ、お客人は世界にあれこれ口出ししちゃ失礼だろう」
    そうやって、彼は胸にぐさりとナイフを刺された。どばどばと溢れる血は、地面を真っ黒に染め上げた。男はにやにやと笑いながら、そのまま凝っと血を見つめていた。
    やがて、そろりと歩き出すと、血は影になって彼の足元にへばりついた。

    #創作 #オリジナル

    ***
    Tumblrから。

    ほしなみ Link Message Mute
    2018/06/04 1:24:31

    男と影と

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