鬱日記「花粉症になった忍足」みんな~~ひさびさやね~ ブッシュン!!
忍足や。ズビ。
どないしよう。
俺、とうとうデビューしてしもたんよ……。
……花粉症……。
涙も鼻もくしゃみもとまれへん。
春の地獄や……。
ティッシュ持ち歩くにも限度があるんで、しかたないからトイレットペーパーの持ち歩きや。
しかもこれ、安いやつやから、がさがさの生地なんよ。
お陰で鼻の頭と鼻の下、真っ赤やで。
鬱や……。
今日は風も花粉もひどいし、外におりたくないな……。
部活もイヤやな......。
跡部と岳人に捕まらんうちに帰ったろ。
こそこそ教室を出ようとしたら、聞き慣れた声がした。
「忍足」
ぶしゅ!ぶしゅしゅ!ブチチ-ン!!
涙でうるむ俺の視界に、黄色いふわふわが見えた。
ジローや。
あいつ、側に来たらすぐわかんねん。
くしゃみ連発するもん、俺。
絶対あいつの金パのふわふわ頭に大量の花粉が乗っかってるんや。
「忍足、大丈夫かよ」
「ジローこんといて......」
「何でだよ」
「俺これ以上鼻水だしたら、脱水してまうわ」
「俺のせいかよ」
「うん、お前のせい」
「ああ?なんでだよ」
「お前のふわふわ頭に、絶対花粉がめっちゃ付着してるんよ。お前がよって来たら俺、へ、へぶしゅ!ぶっしゅ!ぶちちーん!!」
「ひでえ何ソレ。つかさ何で決めつけんだよ。根拠ねえC。大体お前、俺の頭に花粉乗ってるって、見えてんのかよ。憶測だろそれ」
「あ~ 寄んな寄んな。俺の鼻下に頭ちかづけんな~~っぶし!!」
「てめえ」
なんか涙の視界の向こうで眉間に何十もシワが寄ってる、ぶれたジローが見える。
俺、いま涙目やからめっちゃ視力悪いんよ。
花粉の間はホンキ眼鏡にせなアカンかもな、ははは、へぶしゅ!
「...わかったよ、近寄んなきゃいいんだろ。近寄らねえから聞けよ」
「へぶしゅ!」
「あのさ、お前、ゴールデンウイークさ」
「うん?なんて?遠くて聞こえにくい。ずび~」
「あのさ!!お前、ゴールデンウイーク!」
「ああっペーパー切らした。慈郎ティッシュもってる?頂戴~~。あ、こんといて。そっから投げて。俺に1m以内に近付かんといて~」
「......」
「あ、ありがとありがと。ほんで?何?ゴールデンウイークが何?」
「......お前大阪帰んの」
「ううん、俺的には今、一歩も外に出たくない気分や」
「あ、そう。じゃあさ、4日か5日か空いて」
「ぶしゅーん!」
「あークソ!なあ、4日か5日!!空いてる?!」
「何もう。機嫌悪過ぎやでジロー。空いてるちゅうか、病人やから部屋で寝てる。花粉症っていう不治の病におかされてるもん。俺っぷし!」
「あのさ、じゃあ、5日空けてくれる?俺そっち行くからさ」
「えー!アカン、来んな!」
「何その即答マジむかつく」
しゃーないやん、お前の頭にアレルゲンわんさか乗ってるんやもん。
お前のせいで病状悪化するんやもん。
絶対お前の頭のせいやもん。
それでも来るっちゅーんか。
......しゃあない、俺はお前の親友やし?
重い病気をおしてでも、俺はお前の頼みをきいてやる。
友情の固まりの俺や。
浪速の男って、そうゆうもんやね、たかじん(※心の友)
「分かった、くるんやったら、頭に掃除機かけてから来て」
「キレていい。お前本気で俺のことハウスダストかなんかだと思ってるわけ」
ええー!事実やろ。
「ちゅうかお前きたら本気で俺鼻壊れたかな思うくらい鼻水ブッシュ-でてくんねんも、ぶしゅ!」
「くっそ!!帽子とか被ってけばいいだろ!」
「あ、それグッアイディア」
ティッシュを鼻に詰めながら、親指を立てた俺は、疑問を訊ねた。
「そんで、5日?来て何すんの?」
そのあと、俺、何か知らんけどキレたっぽいジローに突然飛びかかられて、かばん奪われて、勝手にかばん開けられて、今日もらったばかりの部活のスケジュール表に赤のボールペンで何か書き込まれて、それをまたかばんにつっこまれて、「ぜってーあけとけよ畜生!!」ってなんでか罵られて、再びかばんを持たされた。
わけわからんやっちゃ。
あれやで、まあ、犯罪に走りやすい今どきの若者って思われてもしゃーないんちゃうかな、あんな乱暴したら。
アカンよ。ほんまに。
心配やで。あいつ。
そんで、心配しながらちゃんと家に帰ってそのスケジュール帳みたら、
5月5日のとこ赤丸つけられて
「芥川慈郎生誕日」って書いてあった。
……ほんまジロー、
お前、さみしがりやさんなんやな……。
誕生日、俺と過ごすんや……。
やっぱり彼女おらんのやな…俺もやけど。
あいつのええ友達で居ったろうって思った。
俺、なんか胸痛いわ……。
あと、鼻もかみすぎてちょっと痛い 忍足侑士