Bogeyman's boogie #01Bogeyman's boogie #01
Operation 13 : So mad Nomad
――6月■■日、深夜。
毒ガスのような黄色い粒子が舞う無人の町並みを、一台の装甲車が走ってゆく。
コードネーム:[ブギーマン]こと俺、エイギル・ソーンは【南区】を進む装甲車の中で不安に揺られていた。
「……はぁ~~~~。ったく、冗談じゃねぇ」
誰に言うでもなく、大きなため息をついた俺は独り言ちる。
この世界――トイボックス――の中でも、調査の進んでいない区域とされる【南区】。
犯罪者、ならず者、ウルトラホールから供給されるエネルギーによって狂暴化した"
原型"――100mを超えるダイウォールによって隔絶されたこの地域には、そのような存在が我が物顔で闊歩しているのだ。
死地へと赴くに等しい俺の脳内では、これに至るまでの回想が行われる。
Checkpoint : 01
この
民間軍事会社の正社員になってまだふた月くらいしか経っていない新人の俺が、【南区】で行われる作戦に投入されることが決まったのはつい先日のことだ。
【イーストシェード】の騒動の後、つかの間のオフを謳歌していた俺の元に緊急招集が下された。そんな俺を含め、10人の兵士が集められたブリーフィングルームの中では物々しい空気が漂っていた。
「……よし、みんな揃ったな。まずはこの画像に注目してほしい」
時代遅れなカイゼル髭を蓄えた指揮官は、指示棒でスライドの一点を指し示す。
ホームシアターを見るには最適なサイズのスクリーンに映し出されていたのは、信号弾のものと思われる光源がビル群を照らしている場面だ。
「これは昨日、南区オールドオーサカ地区で観測された信号弾だ。当該地域には社員や民間人の立ち入りも確認されていなかったため、調査用ドローンの派遣を行った」
そして次のスライドに映し出されたのは、瓦礫の中に佇むある"人間"の姿だった。
その人間は、魔女のような青い帽子に黄色いジャケットを着用していた。
「信号弾の発射地点にこの個体の存在が確認された。性別は男性、種族はムゥマージと推測されるが、データベースには記録はないため、新たにこの世界に迷い込んだ者である可能性が高い。あの信号弾はこの個体が撃ったもので間違いないだろう」
スライドが切り替わっていくたびに、様々なアングルの画像が表示されてゆく。
胸元に光る赤い宝石は"ムゥマージ"を基として擬人化された人間のものに近いが、俺の知るそれの特徴とは違って、翠緑に光る奇麗な瞳を持っていたのが印象深い。
「指揮官、俺たちの次の任務はこいつの保護ですかい?」
「ふん、察しがいいな。こいつは南区に存在する個体としては理知的な行動が確認されている。君たちの仕事はこの個体と接触し、保護することにある」
「なんだ、話が分かりそうなやつじゃないか」
「南区での仕事って聞いてビビってたが楽勝そうじゃん」
この時ばかりは、俺も少し安堵したのを覚えている。
南区の連中の中にも話の通じそうなやつがいるんだな。そう思っていたのだが……。
「楽勝そう、か」
指揮官がわずかに俺たちから目をそらす。
そしてスライドを送り、埋め込まれていた動画を再生する。
「問題はここからだ」
俺はさっきまでの考えをすぐに改めることになった。
次のスライドに記録されていた映像には、このムゥマージが次々と南区の住人を殺害していく様子が記録されていた。
顛末としては、奴が撃った信号弾に南区の住人たちがおびき寄せられ、物資の奪い合いが発生したようだった。そうして、彼らが疲弊しきったところに介入し、安全に物資を回収する……という算段であることが分かった。ある者は背後からシャドーボールで撃ち抜かれ、ある者は胴体から下が消し飛び、ある者は身体の中身をぶち撒け――訓練課程でも【南区】での血なまぐさい実戦映像を見せられてはいたが、新人気分が抜けない俺にはかなりきついものがあった。
『――い、いやだ! 殺さないでくれぇ! 俺には家族が――』
言い終わるのを待たずに、情けなく命乞いをする男の頭がスイカのようにはじけ飛んだ。
『こいつで最後やな』
さんざん人を殺したのにもかかわらず、ヤツは平然とした様子で男の持っていた物資を物色する。
『こんな簡単な手に引っかかるなんてな…。お前らはさしずめ、誘蛾灯に吸い寄せられた羽虫のようなもんやな。……ま、悪く思わんとってくれ。生きるのに必死なだけや。お互いにな』
そう言い放ち、奴がいずこかへと去っていったところで映像は途切れた。
映像を見た俺も、さっきまで余裕の表情をしていた社員たちも、全員が言葉を失っていた。
「映像は以上だ。このように、この個体は戦略的な行動が可能であり、こちらに危害を加えてくる可能性がある。仮にこの個体が地下組織の手に渡った場合、大きな脅威になるとお偉いさん方は判断したらしい」
そして、指揮官は俺たちの目を見据えて伝える。
「改めて申し伝えよう。君たちの仕事は、他の勢力の手に渡る前にこの個体を保護――いや、捕獲することだ。状況によっては殺害しても構わん。なお、今後この個体は[ノーマッド]と呼称する」
その後は指揮官から作戦の詳細な説明があった気がするが、正直殆ど上の空だった。
え、何? 俺たちがこんな危険すぎるヤツの相手しなきゃなんねーの? ……いやいやいや、どう考えても無理じゃね?
「――以上だ。何か質問がある者はいるか」
俺はすげすげと挙手する。
「エイギル・ソーン。発言を許可する」
指揮官が俺に視線を向ける。
「じゃあ聞くんすけど……俺らが死んだら保険金どれくらい降りるんすかね?」
Checkpoint : 02
かくして、今に至るわけだ。
「おい[ブギーマン]、そんな辛気臭い顔すんじゃねぇよ。お前らしくもない。ま、その覆面のせいで顔見えないんだけどな」
「うるせぇ[ヴァイパー]! 生きるか死ぬかの瀬戸際で落ち着いてられるかってーの!!」
俺の向かいに座っている男は、コードネームで[ヴァイパー]と呼ばれる、ヒトの姿をとったの“ハブネーク”の男だ。やたらと目つきの悪いこの男は普段俺が所属しているチームとは別のチームの奴だが、何かの縁なのか俺によく絡んでくる。
「あーもうマジ死にたくねぇよ~~…。そりゃいつかは南区の仕事あるってのは俺だって理解してるよ! だけどよぉ、俺の南区での初仕事がこれなのはあんまりじゃねぇか!? なぁ!!」
「わかったわかった、落ち着けって。まだ俺たちが死ぬって決まったわけじゃねぇだろ? 資料見た感じでは俺らの装備のほうが強力だし、訓練だって受けてるし実戦経験も豊富だ。さすがにそんな連中10人で囲めばあいつも降伏するんじゃないか?」
「そううまくいくかねぇ……」
俺はまた大きなため息をつく。
不安だ。
生き残れる気がしねぇ。
お前らは慣れてるかも知んねーけど俺は新人だっつーの!!
あぁ、神様。どうか俺を無事に家まで帰らせてくれ。
幹線道路から外れ、繁華街跡を進んでいた装甲車は、ほどなくして開けたエリアに差し掛かった。汚水で淀んだ川には円形の橋が架かっており、対岸ではランナーが描かれた巨大看板が掲げられた建物が目を引く。
聞くところによれば、ここはかつて「ドウトンボリ」と呼ばれていた場所だったとか。
《本部より[グレイハウンド]。[ノーマッド]を追跡していたドローンが「エビスバシ」の先の商業施設跡に入っていくのを捉えた。施設の情報は各員の端末に送信する。「エビスバシ」を通過し、当該施設へ向かえ》
「[グレイハウンド]より本部、了解。現地到着後、直ちに作戦を開始する」
今回の作戦のリーダーである[グレイハウンド]――青髪のヘルガーの男――が本部に応答する。直後に手元のスマートタブレットに届いた画像を見ると、三階建ての建物に入ってゆく[ノーマッド]の後ろ姿が捉えられていた。
「皆、これからA班からE班までツーマンセルで人員を割り振る。前に映像を見た通り、[ノーマッド]は非常に戦闘力が高いことが予想される。相手が一人だからと言って油断は禁物だ。皆、心して作戦にあたってくれ」
「「了解」」
[ノーマッド]に感づかれないよう、装甲車は橋の付近の建物に隠れるように停車した。
周りには人気はなく、少なくとも第三勢力の介入が行われることはなさそうだ。
《こちら本部、追跡ドローンは当該施設の上空に移動させた。[ノーマッド]が建物から出た形跡も、屋上に上がった形跡もない。屋上の様子はこちらから確認している。速やかに建物内を制圧せよ》
「よし、作戦開始だ!」
後部ドアが開かれ、社員たちが勢いよく飛び出す。
「行くぞ相棒」
「誰が相棒だコラ」
「マスク付けるの忘れんなよ」
「ったりめーだ!」
軽口を叩きあい、俺と[ヴァイパー]も続いて車外へと飛び出した。辺りに充満しているウルトラホール由来のエネルギー粒子の影響を受けないように防塵マスクを装着し、俺たちは「エビスバシ」を駆け抜けてゆく。
三分もしないうちに俺たちは例の商業施設跡にたどり着いた。この廃墟は壁じゅうにグラフィティが描かれており……なんというか、大変エキセントリックな外見に仕上がっていた。看板を見るに、もともとはCD屋やカフェがなどが入っていたようだ。
作戦としては、まずはA班が正面から突入。彼らが各階のクリアリングを行い始めたところで、続いてB班が突入。C班は入口の見張り、俺と[ヴァイパー]が配置されたD班は非常口と非常階段の見張りを行う。そして、E班のグレイハウンドは外から指示を行い、もう一人は運転手として装甲車に待機……といった感じの内容だ。
俺は愛銃であるPP-19 Bizon 型の高水圧水鉄砲を構え、[ヴァイパー]と共に建物の裏側に回り込んだ。
ここは業務用の駐車場らしく、物品の搬入口が存在していた。非常階段も存在し、各フロアの踊り場にも扉が設置されているため、[ノーマッド]が裏から出てきても一目でわかるようになっている。
「あー、A班の連中は羨ましいねぇ。俺も突入したかったなぁ。ああいうの憧れるだろ?」
「無駄口叩くなよ。…ってまぁ、それについてはわからないでもねぇけどよ」
《一階、クリア!》
《よし、B班も突入しろ》
俺たちが無駄口をたたいている間に、無線からは突入したA班の報告、続いてB班の奴らの足音が聞こえる。
このまま中で事が済んでくれりゃぁ俺たちの出番は必要ないわけだ。
《二階、クリア!》
となると、三階に奴が潜んでいることになるのだろうか。俺はごくりと唾を飲み込み、交戦が始まるであろう瞬間を待っていたのだが……。
《三階、クリア! [ノーマッド]の姿を確認できません!》
俺たちが聞いたのは意外な報告だった。
《三階にもいないだと? A班、本当に部屋を全て確認したのか?》
《B班とも合流し、各階のスタッフルームやエレベーターの中、トイレの中も全て確認しました! しかし奴の姿が見当たりません!》
《C班、D班、正面や非常階段の様子は?》
俺と[ヴァイパー]はすぐに上を見上げた。俺たちの見張っている裏口や搬入口はやはり扉が開いた形跡がない。
即座に[ヴァイパー]が無線機に向かって叫ぶ。
「[グレイハウンド]! 非常階段にも奴の姿が見えない!」
《C班、正面側も異常なし!》
《バカな、奴はどこに消えたんだ…!?》
なぜだかものすごく胸騒ぎがする。
昔からそういうことだけのカンはよく当たるんだ。
心臓の脈動が早まり、愛銃を握る手にも力がこもる。
もし、あの[ノーマッド]が最初から俺たちの襲撃に気づいていて、この建物に何らかの罠を張っていたとしたら?
もしかして俺たちは今、非常にまずい状況じゃねーのか……!?
「おい[ヴァイパー]、絶対何かがおかしいぞ! 今すぐ建物から離れたほうがいい!」
「何!?」
俺がそう叫んだ瞬間だった。
真横から、凄まじい爆発音が響いた。
爆風で四肢を宙に投げ出された俺は、数秒後にフェンスに叩きつけられ……意識を闇の中に閉ざした。
Checkpoint : 03
《――こちらC班! [ノーマッド]だ! 奴の奇襲を受け――ぎゃあ!!》
《撃て撃て撃て! 奴を殺せ!》《11時方向!》《野郎!仲間を盾に…!!》
《こちら本部! ドローンが破壊されて映像を確認できない! 状況を報告しろ!!》
《A班、B班合わせて三名負傷!》《もうだめだ! こ、殺される! 神様――》
《作戦失敗! 撤退! 撤退だ! 装甲車を出せ!!》
《ぐわあぁぁああぁぁああああああっ!!!》
「!!!」
目の前には、崩落し、燃え上がる所業施設だったモノの瓦礫の山。
耳には、無線から流れてくる仲間たちの断末魔。
俺はそれを聞いて目を覚ました。
口の中には鉄の味が広まり、体中が痛む。
……そうだ、俺はさっき爆発でフェンスに叩きつけられて――
「!! [ヴァイパー]!? 無事か!? おい[ヴァイパー]!?」
痛む体を無理やり起こし、[ヴァイパー]の姿を探す。
そして俺とはそう離れてはいない位置。ひしゃげたフェンスの奥で奴の姿は見つかった。
「おい、ヴァイ――」
奴の体はピクリとも動かない。
両肩を掴んで揺さぶり起こそうとしたのだが、奴の頭は力なく垂れているだけだった。
よく見ると、奴の腹部には爆風で飛ばされたものと思われる鉄骨が深々と突き刺さっていた。傷口からはとめどなく赤黒い血液が流れている。奴の肌はすでに青白く、生気は全く感じられなかった。
ウザい奴だと思っていたけど、いざ死なれると様々な感情がこみ上げて来る。
「おいおい、クリアリングするならちゃんとエレベーターシャフトも見なあかんで。次は気を付けたほうがええぞ。次があるかは知らんけど」
チームメイトの死を悲しんでいたのもつかの間、俺は声のするほうに反射的に振りむく。
駐車場の入り口側に立っているのは、青い魔女帽を被り、黄色いジャケットを着用したあの“ムゥマージ”の男。銃を握る手にギリギリと力がこもる。
「[ノーマッド]……!」
「多分お前で最後やろ。一応聞いとくけど、お前らは何者や? なんで俺のことをつけ狙う? 目的はなんや?」
「この野郎ォッ!!」
俺はとっさにビゾン型高水圧水鉄砲の引き金を絞る。
ヘリカルマガジンに凝縮された水は水手裏剣へと姿を変えて、[ノーマッド]に向けて射出される。五発連続で打ち出された水手裏剣は[ノーマッド]の胴体を捉えたはずだったが、奴は軽い身のこなしで躱してゆく。
「チッ、話するだけ無駄やな。言っとくけど、先に仕掛けてきたんはお前らやからな!」
そして、お返しといわんばかりに、[ノーマッド]は手にしたショットガンでシャドーボールをぶっ放してきた。それは着弾寸前に七つに分かれ、俺の逃げ道を防ぐように展開される。
「うおおおっ!!」
とっさに動いたおかげで直撃こそは免れたが、着弾した時の爆風に吹き飛ばされ、瓦礫の上を跳ね転がり、「エビスバシ」のほうに弾き飛ばされた。
橋の中央部ではひしゃげて横倒しになった装甲車が炎上しており、中では運転手と[グレイハウンド]が恐怖の表情を浮かべて屍を曝していた。
「……う、うぅ……。完全に脚折れたかこれ……」
ズボンの上からもわかるほどに左足が腫れ上がり、耐えがたい痛みが駆け巡る。どうにかこうにか身体を引きずって欄干にもたれかかるが、その間に[ノーマッド]がすぐ傍まで迫っていた。クソ、絶体絶命じゃねぇか……。
「さて、最後にもう一回だけ聞くで。お前らは何者や?」
[ノーマッド]は俺の頭にショットガンを突き付けて問いかけてくる。
このシチュエーションはあれだ。答えても答えなくても殺されるやつだ。
どうせ死ぬなら最後に一矢報いてやるさ。俺は気づかれないように手榴弾型アシッドボムに手をかけ――
「!! なんや!?」
突然何かを察知した[ノーマッド]が飛びのくと、一瞬遅れて高圧水鉄砲の弾が数発足元に着弾する。弾が飛んできたほうに視線を向けると、片手で腹の傷を押さえながらAK型高水圧突撃銃を構える[ヴァイパー]の姿があった。
「チッ、油断したか…!」
[ノーマッド]の注意が俺から[ヴァイパー]へと向けられる。
奴は指の隙間からボタボタと血を垂らしながら苦し気な表情を浮かべて叫ぶ。
「[ブギーマン]! 今だ! 川に飛び込め!」
「くっ!!」
俺は頷くと、右足にありったけの力を込めて地面を蹴る。
放たれるシャドーボール。
口角を上げる[ヴァイパー]。
それを視界の端に捉えながら世界が反転した。
つかの間の自由落下の感覚の後、ざばんと水柱を上げて俺は淀み切った水の中に吸い込まれてゆく。
口から、鼻から、苦いという単語だけでは表すことができない水が容赦なく入り込んでくる。
想像以上に川の流れが早く、俺は汚水に揉みくちゃにされながら流されていった。
ここで俺の意識はまた、暗闇へと落ちていくのだった。
Checkpoint : 04
――それから約二週間後。
俺は【トイボックスセル】の中のでかい病院の病室に寝転がって、窓から空を見上げている。
「調子はどう?」
「おう、シノ。見舞いに来てくれたのか」
「一応チームメイトだしね」
病室の入り口には、俺の本来の所属チームのメンバーの一人、シノのんこと真山 慈乃――表情の乏しいサーナイトの少女――が相変わらずの無表情で立っていた。シノは緑のショートヘアを揺らしながら俺の傍らに座り、花瓶にユリの花を活けてゆく。
「[ノーマッド]…だっけ? あんなのと戦ってよく無事で帰ってきたね」
「これが無事に見えるか? 全身包帯ぐるぐる巻きだぞ俺」
結論から言えば、俺は助かった。
流された先の下流でゴミに引っかかっていたところを、GPSを頼りにやってきた回収部隊に助け出され、この病院に担ぎ込まれたらしい。
……あの後[ヴァイパー]は、やはりシャドーボールをまともに食らって殺されていたそうだ。回収部隊が到着したときには、当たり前だが[ノーマッド]の姿はすでになく、死んだ9人が持っていた装備や物資も一部なくなっていたそうだ。
しかし、[ヴァイパー]の奴は死に際に[ノーマッド]が戦う様子や装備をカメラに収めていたらしく、これは今後奴への対策に使われることだろう。俺もまた、退院後は本部で[ノーマッド]と交戦したときの様子について聴取を受ける予定だ。
「それじゃあ私は行くね。早く治してね」
「あいよ~」
ひらひらと手を振り、病室を去るシノを見送った。
そして、また窓から空を見上げながら俺は思う。
今後、南区での仕事が増えれば、[ヴァイパー]のようにシノやほかの仲間たちもいずれは命を落としてしまうかもしれない。そのためには、俺ももっと強くならなければならない。チームのみんなを守ることができるように。
「……いつまでも、新人気分じゃいられねーな」
あの[ノーマッド]の姿を瞳の奥に焼き付けつつ、俺はもっと強くなることを決意するのだった。
Operation 13 :Accomplished