物間寧流の出会い─弐─小さいころ僕は【いなくなるべき存在】だった。
コピーというあまりに自主性に欠ける個性を持って産まれた僕は近隣に住むとある家の人から忌避されていた。
その人の名前は拳藤さつき。武術家の娘らしい。
『やっぱりいやぁね、物間の娘は』
『その内うちの子の個性も《盗られる》んじゃないかって不安になっちゃうわ』
僕は個性を盗っている訳ではない。だがあの人にそんな事言ったって無駄だと、幼心に分かっていた。
とある日、本を抱えて近くの森を散歩していた。この森の奥には神社があって、そこの裏で僕はいつも本を読んでいた。
「よっと……ここちょっと危ないからなぁ……って」
急に立ちくらみが出てきた。この先は崖である。
(……え、これもしかして僕死ぬ?)
多分死ぬんだろうな…そう思いながらそっと目を瞑って迫りくる激痛に耐える。
………はず、だった。
ぽふっ。
と、あまりにも軽い音を立てて何かに受け止められた。当然激痛はない。
「………んぇ?」
「大丈夫か?」
上から声がする。ゆっくりと首を上げてみると、
(………え、もしかしなくても)
見た事ある。あのオレンジの髪の毛も青い目も。
彼は──
(拳藤……一?)