1 物間寧流は笑わない。「はぁ………」
穏やかに時が流れる春うらら。
私…小大唯はとある高校のヒーロー科、1年B組に入る事になった。
教室には色々な空気が流れている。
受かって良かったと安心する空気、A組に行ければ良かったと悔しがる空気、関係ないとばかりに自分の事に熱中する空気。
そして私の近く、窓際の席に座る一人の少女はといえば。
「………………」
黙ってただひたすらに、朝の空を眺めていた。
*◆*◆*
物間寧流は笑わない。
入学から数日たった今、その事はB組の中では周知の事実と化していた。
流れ落ちる長い金髪と翡翠色の瞳、白磁の様な肌とその態度が合わさりまるで西洋人形の様な雰囲気を醸し出している。
クラスメイトとはそれなりに仲良くしてはいるがA組は大層嫌いな様で、話しかれられなければ目もくれていないらしい。
「ねえ物間、」
「……寧流でいいよ、小大さん」
透き通るその声は、何かしらを見透かしているかの如く。否そんな事よりも、私もしやこの子にコミュニケーションを図られてる?これチャンスでは?
「……じゃ私も唯、でいいよ」
「…………ありがと。で、どしたの?」
「あ、そうそう。ここ分かんなくてさ」
「ああこれ?これは……」
聡明な彼女と親しくなれて、少しばかり顔が緩むのは仕方ない事だろう。
◆続く◆