ルカニアの噺
あんまりにも可哀想で、思わず抱き締めてしまった。そう心の中で。
普段は定規でも入れているのか?と聞きたくなるほど、しゃんとしたその背筋を猫のように丸めさせて
自らを外界から守るように足を抱えた彼女は、傍から見るとあまりにも普段の姿からはかけ離れていて、そして滑稽だった。
自らは素直にモノを求めないくせに、求めているモノを欲する欲張りな子。
自分の行動に嫌悪感を抱くくせして、幼少期の親の教育の賜物であろうその無駄なプライドが
無意識下で邪魔をするらしく、酸素を求めるかの層に藻掻く素振りを見せる姿は滑稽と言わず何と表現すべきか。
淡水魚は海水魚のように海で生活が出来るわけがないのに、何をそんなに変化しようと足掻いているのか。
笑止。
でもそれをずっと眺めていると、なんだかとても可哀想な哀れなものに見えてきて慰めを与えたくなる。
でもそれはきっとオレの役割では無いわけで。
「損な役回りだなー」
早く誰か、救ってくれないものか。
オレが触れたものでは無い。