そらのかがみはゆきのはて▼ ▲ ▼
例えば本心を言ったとき、ふとこれが本音だとバレてはいけないと思ったとき。
それは夏場に置いた菓子のようにどろっと溶けて、元の形に戻すことはできなくなる。
たとえその結果が分かったとしても、呼ばれたからといって引っさげで咥えて歩くことも出来ないし、その場に置いてくことしかできない訳で。
でも毎日毎日体の欲求にの飲まれて、その意識を海に投げ出して浮遊したとしても、その言葉は他でもない自分ではない誰か、そう例えば彼女のその頭に蓄積されて完璧にこの世から消し去ることはできない。
そうだないっその事彼女そのものを消すことが出来たらなんて、 ら く
「…何」
「いや、起こしに来ただけ」
頬に刺さる何かで目が覚める。
何かドロドロとした物に足を浸していた気がして夢見が悪い。全ては目の前で只管頬を指で突くルスのせいだということにしよう。
そうすることによって何かが保たれる。そうだな目の前の彼女のせいだ。それにしても地味に痛い。その白い指を折ったら
「…」
今自分が何を考えてたのか思え返せば恐ろしい。
夜中隙間に潜む何かを見つけてしまった時のような戦慄が体に走る。思考と視線をぐるりと1周。
うん、これはそろそろまずいかも知れない。
そう思案していながらも、身体は誰か知らない誰かに動かされる。
自分の頬に触れる指を摘みそれから任務でボロボロになったひとつの手を引き、もう片手でその先にある槐に話しかける首元に手をかける。
「槐?」
あぁ彼女から見たら“槐”の顔はどう映ってるかなんて考えたことないのに見たくないなぁ。その普段と変わらないキミの二つのガラス玉もうっとうしいな邪魔だな。槐の自分の陥っている現状も、蝕まれている現状も、自分自身がそう自分自身が一番分かっている理解しているというのに!なぜこうも他人からご教授頂かなければならないのさ。縛られるのも縫い付けられるのも線をはっきり引かれるのも嫌いだ。はっきりした物事も嫌い。
たとえばそうだな 死 とか。
とりあえず邪魔だしこの二つのガラス玉何とかしなくちゃ
駄目だ駄目だそう考えていることは、もう一方の思考の色に比べればそれはそれは淡く、混ざっては消えていった。
「ねぇ」
「…何」
果たして、またも変わらない表情を向ける女に槐は槐らしく槐として声を出せたのか。
「あのね、槐。苦しいわ」
「…あぁごめんって、ちょっと優雅な睡眠を邪魔されて苛立っちゃったよ。」
ようやく表情を見せた彼女にはっと、意識を手元に戻す。
無意識のうちに動いていた体は首を片手で締めるだけには飽き足らず、あの子…あの子?ルスを引きずり倒して組み敷いて体重を込めて締めてしまったらしい。困ったなァ。
「そう、今度から気を付けるわ」
なんでこんな状況でも君は俺の目をまっすぐ、濁りなく見てくれるのかな。なんだか泣けてくるね。情緒不安定なのかな。困っちゃうね?誰が?頭がぐるぐるしてきた。とりあえず呼吸を整えようと深く息を吐いてすう。うん、すい慣れたなんの匂いもしない部屋…って思えたら楽だったのに。すっごいおいしそうな壊したくなる溶かしたくなる匂いがする。あぁ呼吸を整えるのは間違いだった。嫌だなぁ。
「ふふっ」とおかしくもないのに、口から笑みがこぼれしょうがない。
手は離されたものの、上に乗られたままのルスが心底不思議そうにいや、違うな心配そうに?悲しそうに見てくるね。あぁ“かわいそう”だからひとつ教えてあげよう。体を折り彼女によぉく聞こえるように耳に近づく。聞き逃さないでね、今の自分のせいいっぱいのおねがい。
「ねぇルス、俺の首元につながった手綱よぉくしっかり握っておいて“俺”の事飼っておいてね」
まぁくびわをかみちぎっちゃうかもしれないけどね。