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    FM――いつものヤツら――⚠️シャーリーとゲッタの過去を追加した場合に起こる混乱
    ⚠️ジョリーの過去を追加した場合に起こる混乱
    ⚠️アルフレッドの過去を追加した場合に起こる混乱
    ⚠️あるいはFMの未来を見せた場合に起こる混乱







    ⚠️宇宙エレベーターを背景に

     この映画には興味があるんだけど、見る時間はないな……。
     
     巷では、学習型超人工知能搭載人形が話題だ。主人を虐める悪餓鬼を追っけるのに最高率だからって犬の__を真似るとか……マジありえねぇって。
    『かわいい女の子』はジョリー・バニスターに似てる。








    02時28分 ハフマンハイウェイ2号線


    3.1マイルにわたり盗難車と並走してきたフェニックスが65ヤード後方に離れた。ニュー・アヴェニューへ抜けるまで、1マイル。ほどなくして、ネオンが瞬く夜の歓楽街が見えてきた。





    02時32 フリーダム街

    ――ニュー・アベニューにはいった。
     左右を見やれば、娯楽の数々、格式高いホテル、高価レストラン、洒落たブティック、バーの発光パネルまでもが綺羅星のごとく爛々と瞬いている。
    『ラ・ピュタン・エノルム』はメーン・ストリート終点『Y』にある。2.5マイル先。






    02時41分 ラ・ピュタン・エノルム 監視ルーム

     見る人に鳥を彷彿させる男は監視モニタ画面から顔をほとんど向けない。すばしこい目は、路地を映したモニタ画面を横切る男と盗難車を確認していた。

     鳶色の目を路地から駐車場にめぐらせながら無線スイッチを入れた。相手のナイトクラブのオーナーは、『ケーペッド・マウス』のひとりでもある。
    ――チャールズ・バニスター。
    「チャーリー、男を確認した。ニケ停車確認」
     ギグス・メーカーの白銀のバイク――ニケ――がシャレた大理石の露地に停車した。
     客は長身で痩せぎすの陰気な男で年齢は24歳くらいか。
     風に逆撫でされた乱れた髪をもどそうと、男が暗褐色の頭を振った。
     つり目がちな猫目はじつに表情豊かである。ちょっとした照明の加減で印象がころころと変わってしまう。
    ――結局、手で整える。
     まぶたギリギリまでかっちり揃えた前髪は重たそうに見える。
     彼の左耳の一部は欠けており〈アニメのネズミ〉みたいだった。
     彼の異様さは""ある種の人間""には不快な印象をあたえるようだ。頭の悪い客から文句がはいるんだ。
     彼は唇に黒い紅を塗っているからニューコンチネントの人なんだろうな。
     ボクらはUSN軍の客絡みの苦情処理にほんとうに頭を悩ませているんだ。
     彼らは、戦場へ向かうのに黒い紅を持っていく必要はないと考えるべきだし、鉄製のパッドも肩に乗っける必要はないと気付いてくれてもいい。誰かあいつらをなんとかしてくれ。
     誰でも思うだろう。あの襲撃者みたいな姿で店内を歩いてほしくはないねってね。
     このモニターの男も。
     暗緑色の制服、おおきく開けた襟からのぞいてる黒も、ジェットも普通。
     悪いのは、左肩にはめてる意味不明なリベットが打ち付けられた鋼鉄肩パットと、おなじくらい意味のわからない数のリベットが打ち付けられたガード一式だが、ラ・ピュタン・エノルムに向かうのに全く必要がないとは考えつかないのだろうか。
     注意はした。彼は、あの子に夢中で話すら聞こうとしなかったよ。
     本人たちにその気がなくても、他のお客さんが入店を遠慮してしまうから控えてほしい。

    『ケヴィンが、彼のリベットが七つも小手についている話をしていた。それで、昔見た吸血鬼を題材にしたB級映画を思いだしたんだけど、あれは――』
     無線の相手は、溜め息を呑みこんだ。
     チャールズは、中背の洗練された男だ。品のあるアンティークゴールドの口ひげの下に極端に薄い唇がきゅっと結ばれた。退屈そうだった。アゴひげがベビーフェイスを縁取っている。人好きする薄緑の目は三角眼で、かまぼこを連想させる。自分の愛しい兄弟ジョリーに目配せをした。



    バイク泥棒が憂鬱そうに目を伏せる。
     響いていたエンジンが停止すると同時に、わずかに聞こえていた重低音がはっきりと確認できた。小刻みに、ゆっくりと上下に首を振る。曲がわかるらしい。
    ――フィーリング・ソー・ラブ――
     彼は路地に下り立った。 神々しい彩飾の建物を見上げる。何度観ても溜め息がでる。白く輝くブロックに雪を模した装飾、星々に見せるためだけに設置された照明……あげるときりがない。
     精緻な彫刻が施された扉――世界樹を掘った枠の中央にギリシアの(ただし、ミニチュアサイズの)三美神が踊っている。その扉の前には、筋骨隆々の黒人と東洋系のバウンサーが、今しがた入店する客に笑顔でもてなしている。客のIDの確認と料金を払ってもらってスタンプを押してやる、と。盗難車をそのへんに適当に放置し、彼らの笑顔のうちにと扉へ歩み寄ったが、堅くブロックされた。毎回ボディーチェックを受けている。扉が開いて足を踏みいれたとき、背中を押された。チッ、講習はきちんと受けてんだろうな?
     ここではバウンサーは3~4人体制だ。

     背丈20フィートだというバカラの巨大な招き猫――両手をうんと高くあげている――が中央に設置された意外と狭いフロントを抜けてメインホールへつづく通路へ進んだ。
     メインホールから抜けてきたおんなのこたちとすれ違った。かっちり軍服のまま入店してくる軍人をクスクスと笑った。
     メインホールに繋がる通路は、片側が一面ガラス張りとなっており、表面には今月の〈ケーペッド・マウス〉を焼きつけている。今月は9フィートもあるジョリー・バニスターだった。
     彼は巨大な娼婦に見えなくもない。
     内部は、上品な印象の表とは対照的に下品にライトアップされてる。
     グラデーションサングラスをかけた。
    ――ボーイが扉を開ける。

     大音量の音楽、多くの人の歓声と話し声が、赤いサーチライトが飛び込んできた。
     ついで、ダンサーたちの強めの甘い香りが鼻腔に拡がってきた。
     圧倒的な人気と名声を誇る〈ケーペッド・マウス〉の時間。

     ステージでは、若くて色気のある黒人トラヴィス・バーカーが甘い歌声を響かせている。
     ダンサー専用のステージでは〈ケーペッド・マウス〉の美青年の4人が水着の美女を映した大モニターの前で踊りを披露して観客を涌かせている。クラブに君臨する王族たち。
     オーナーの趣向により、ここでは魅惑的な女よりも""魅惑的な男""が求められる。
     ダンサーを確認する。美人、オーナー、シャーリー、振付け師。他は控えか。
     オーケー、ケヴィンは見たくない。
     スモッグカラーは、黒、白桃、赤、白桃、紫と変化していき、薬物音響に浸食された『いつものヤツら』は音響の波へ乗っていた。
     男は多少無理を強いて、人垣をかき分けていく。肩を掴む手、誘う口、俺はノー!と態度で示す。頭の声まで大声をだしている。
     ボーイがVIP席へ高級酒を運んでいった。高級席のスモッグ濃度が通常よりも高いな。島で活躍する大物が来ている。
     大方、政治屋だろう。
     EUより、いま圧倒的な人気を誇るケーペッド・マウスが島に来て根を下ろしてからというもの、戦争で質が下がっていた繁華街が魅惑的で活気に満ち溢れている。
     島民にそんな幻想をあたえている。

    ――曲が変わった。――ゲット・レディ

     出会いを求めて、男女互いに物色している。実際にトイレの自動販売機にはパンツとか避妊具が売られている。男はビッチに日常的な軽口を叩いて浮かれているが、大抵のビッチは、金目当てか、一時の性欲のためなら誰とでも寝る。
     思いだしたな。
     馬鹿げた噂があるよ。グルーピーでもなければ信じている訳でもないけど、ラ・ピュタン・エノルムのどこかに情事の部屋があるという。サークルなんだが〈ケーペッド・マウス〉を指名できるそうだ。部屋に招かれた時点でセレブも驚く料金が発生し、結局のところは彼らの都合上、専用の者に差し替えられるそうだ。
     いや、レアだけは例外だった。
     あの赤髪の色男は、『絶倫』マルコ・レテリエは、呼び名の通りなのだが、選り好みの激しさから魅惑的な女性と折り重なっていることに好んで時間を割いているという。
     実際に、営業開始直後に表舞台からいなくなる。だから客からレアキャラ扱いされている。

     客と言えば、客を装ったプッシャーも紛れている。アッパーやダウナーを持ち込んだ……。


     ダンスホールから黄色い口髭と顎髭を蓄えた童顔が、人混みを縫うように、意地にでもこちらに進んでくる軍人を見据えてつぶやいた。
    「ジョック、やつに返してやれ」
     無線の相手が今、外で""誰かさんの""を確認したので暗号を口にしたのだ。
    『――了解』返答を承けニケに跨がった彼は公道へでた。


     彼は〈いつものヤツら〉の間でかなり有名人となっていることを知らない。
     踊る女を押し退け最前列に顔をだすと、そのまま端に踊るひとりの青年に釘付けになった。
     ポケットのなかの指に、正確なリズムを刻ませ、グラデーションサングラス越しに""シャーリー""の一点を見つめる。

    ――バービー人形。

     まだ少年のあどけなさが残る青年がスティックみたいな女の前で小さく跳ねる動作を繰り返している。
     小さいおんなのこみたいにかわいく跳ねているだけだ。
     彼は全く踊れない訳ではなく、彼は求められる時にだけ仕事をする。するんだが、客に対する温度が匙加減に表れる。

     他のメンバーとそんなに大差ない均等に整った筋肉質な体だのに、おんなのこと見紛う顔立ちとその声。
     コミック調の西洋妖怪が首根っこから両手首にかけて身体改造が施されている。
     トレンド持ちの彼は、TwitterやInstagramで自撮り画像をあげてる。女の子だと思って一目惚れをした後男だと知った。
     コイツ目当てに来るヤツは多いと思う。
     童顔で顎が細いきれいな顔をしている。


    ――シャーリー、こっちを向け……

     もちろん、彼は男に関心はなく、視線先はいつも背が高めの痩せたブロンド女を見つめている。
     甘い香りが鼻を突いた。美人か。視線を向けなくとも香りだけで判別がつく。
     どうせペンライトが変なトコに向けられているんだろ。


    黙々と、踊り続ける美人から弾かれた汗が飛ぶ、観客席に落ちるだけで女たちが頬を弛めて黄色い悲鳴をあげた。
     ジョリー・バニスターが赤みがかった黄金の目を男にとめた。
     長身と体格を活かしたダイナミックかつ繊細でありながら表現力に富んだ踊りを披露してくれるいっぽうで、彼はそれに縛られるわけでもなく、徐々にその特質を破壊する動きを見せてくれる。
     だが、〈ケーペッド・マウス〉は気まぐれだ。
     センターで踊っている――西欧モデルを匂わす――美人が、彼の目の前まで歩み寄り、元々開いているジッパーをひろげ、局部の一部をみせる。さらに押しひろげ頭を指で隠した。

    ――踊らない常連。美人は当然、男の視線先に気づいている。相手へ向けた挑発も、沸き上がった黄色い悲鳴にも相手は気づいてさえいない。
    (横目で仲間を見る)
     シャーリーは自分好みの女の子をちまちまと見る癖がある。
     今、彼は特定の女を『ニッキー』と呼んだ。髪の傷んだ長髪のスティックみたいな女だった。いや、彼女ヤバいかも、と美人は思った。
    (視線を男に戻す)
     満たされない欲情。不満の微表情が表れていた。
     男から困惑の表情を読みとったジョリー・バニスターは男の顔から目を逸らし、大胆に開脚をして腰を落としながら踊った。
     蜂蜜色の睫毛に縁取られたとびきり綺麗な瞳は、男を視野の下に置き、男から後方三列辺りにいる観客たちを見ている。
     美人は『彼』が彼の耳元で囁いた言葉を思い出していた。『ナルシストの語源になったナルキッソスもあんたの前では頬を赤らめ、恥を知るさ』誰も見たこともないような稀代の美しい青年だ。後ろに撫でられた洒落た七三分けだってすごく似合う男だ。

     無言の注文を受け入れるとしよう。

     筋交いに黒髪のゲーオとポジションが入れ替わる。
     ゲーオ・ゲオルグ。躍りを知らない男の視線が彼に向けられた。
     彼のことは、つい、観てしまう。姿格好が自分によく似ているということもあるけど、彼には人を惹きつける魅力がある。
     いまも奇抜な踊りを披露している。その歌声はこのうえなく奇抜だ。
     彼はCM業界で振り付け師として活躍している。


     彼の左サイドでは、ラ・ピュタン・エノルムオーナーがキレ味のある動きを見せていた。
     白人なのだが、何処となく中東の国の面持ちがある。アンティーク・ゴールドの口髭とあご髭がチャーミングポイントだ。
     チャールズ・バニスターは、幅広い一般人に認知された""有名な悪癖""をいくつか持っている。薬物、暴力、交通違反、悪名高い露出魔である。
     この前は、泥酔していたのかもしれないが尻を丸出しにしてアナルを十円玉だいに拡げ大衆に披露していた。
     愚行が新聞の誌面一面に載り、プレスの餌になってさすがに不味いと思ったが、世間は笑って許してくれた。
     それだけにとどまらず、彼は男色家で超有名だ。義兄弟ジョリーとできてるという噂がある。事実だろうか。


     よそ見をした間に美人がシャーリーに指示をだした様で、ステージから降りた彼が、軽いステップで然り気無くこちらに歩み寄ってくる。
     顔が合う。
     彼が微笑みを投げた。
     造っているだろうが、自然に見えると男を誉めた。

     触れるか 声がかかるのか 今日は期待していいか
     いいや わからない
     彼はもう間近で、声がでかかった。
     そのとき、脇の女がカメレオンの舌みたいに伸ばした腕に頬を撫でられると引寄せられるように魅惑的な女に密着してしまった。
     視野の端で差し出された多額のチップを反射的に受け取るのを確認できた。そして、俺の視線を拒否するかのように背を向けた。

     ぼうっとシャーリーが歩んだ軌道(ステージ)を見つめたままだ。焦点がずれた。
     男臭い香りが鼻腔をくすぐった。
     狼狽する。相手は背を向けてもう受け付けない体勢にはいっていた。
     話は……したいのだが、なかなかに……

     俺と遊びたくはないから、そうやってやり過ごしているんだよな。
     俺の前にくれば、気付かせてやるのに。
     ここに通ってるのはなんで この俺が お前に惹かれてるのか 〔理由〕が知りたいからだ。
     俺はゲイじゃない。
     狭い尻とパンツの間に挟まるよう、チップを強引に突っ込んだ。
     彼の背中は強張り、帰れ!と強い主張をしてきたかのようだ。
     お前が歓ぶだけのチップなら持ってる。
     葛藤と愛情が表裏一体となって彼の中に存在する。彼と遊びたい夢を見る自己嫌悪、非現実的な個人に対する嫌悪。
     ピリピリした空間。
     躍らない男の視線はゲーオに向けられてはいるが何も見えていない。
     振動。彼は反射的にポケットのスマホに指を触れた。確認の必要はない。
    ――時間だ。
     シャーリーはアニメのねずみを横目で見た。
     泥棒は踊るクソビッチと男の間を割り、また人垣を分けながらホールから離れていく。
     たまにラジオで聞く耳障りな音が耳にはいる。政治屋だった。この耳は余計な音まで拾ってしまう。


    02時56分

    ――――ふぅ
     なま暖かい外気だ。わずかな重低音が聞こえるだけで、静かだ。
     外気を深くゆっくり吸い込んで呑む。
     戻るぞ。
     頭から女を撥ね飛ばす。彼の頭は一気に現実世界へ引きずり戻された。
     夜は寒かった。彼は駐車場を通って路地に戻ろうとしていた。
    ――ん?待て ギグスがないぞ。
     仕方ねえな。手頃なの盗るか。
     適当なバイクは直ぐに見つかった。これを弄るときだった。
     甘い香りが鼻腔をくすぐった。美人の香りだ。でも、どうして?

     歩み寄る影は やはり美人だった。
    「なにをしているんだ?」
     美人の問いに、ほぼ反射的に答えた。
    「何がだ」
     正直に言うとただただ驚いた。美人に話しかけられた。表情に出ていないだろうか。
     少しの間を置いて彼はバイクに触れ、これ(窃盗)と指を置いた。
    「それな、あんたが考える問題か」
     美人は首を僅かに傾けた。
     相当に相手の言葉がきついのだが、わずかに体勢を変えただけで表情を変えない。
     美人に、心の中を見抜かれているような感覚すらあった。このまま放って置いてくれるとも思えない。
     美人が口を開いた。
    「やめたほうがいい。黒い婦人は」
     ふむ。確かに〈黒い婦人〉のロゴだ。この車種はブレーキに致命的不具合がある。死亡事故を起こしていたが、会社ぐるみの改竄もあって、問題の発覚が遅れた。通称〈喪服〉で通る中国産のモーターバイクか。
    「お前の知るとこじゃない」
     多少は気後れしたものの、工具を取り出し、堂々不敵にバイクを手際よく弄りはじめた。
     この男、顔色を変えないな。だが、掴み所のない自分に対し、どうしたらよいものかと手を拱いている。ものの数秒でセキュリティーが解除された。
     椅子に腰かけた美人は無言で圧力をかけている。話して退きそうにないなら力づくで。
    「何か用か」
    「話せ」
     美人は軍人を真っ直ぐ見据えて口を開いた。
    「――実を言うと、誘いに来たんだ。遊ばない?」
    ――は?
     状況に困惑するしかなかった。
    「ゲームは好きか?まだ好きか?」
    「ゲームはすきだ」

    「いくつかの質問を用意する。わたしがひとつずつ質問するから きみは、最後の質問にイエスかノーと答えて」
     全てハマればイエスだな。
    「わかった。はやく始めてくれ。急いでるんだ」
    「どうしてヴァンツァーで来ないか当てようか」
     この男の挑発的な態度はなんだ?
    「事実なら わたしのすきにする」
     美人は意味ありな表情を浮かべた。
     このぷっくりくちびる。
    「待たせんな」

    「先ず、きみはUSN側の人間だな。専科は言うまでもない」
    「ニケは戦場で盗んだ。ラ・ピュタン・エノルムにはWAPで向かってもいいんだが、戦場で破損したWAPでは……問題あるよな。放置しているWAPは巧みに隠しているが、その赤い機体は特別目立つ、明け方までに帰還しないと、偵察隊に見つかるかもしれない」
    「……あと、数時間もないな、還ったほうがいい」
    「気になる男がラ・ピュタン・エノルムにいるが――そっちの趣味はない」
    「私たちのファンでもない」
    「きみらUSNは、規則を破ることに躊躇しない。気楽にここに来てる。」
    「取り分け規則を守らないのが彼らだから、と、USN客が噂たてているあれ」
    「わたしは、あなたたちを尊敬している」
    「ここに秘密はない。ゲッタ・セドリックくん」
     美人は、キャンプ地を言い当てた。美人の長い脚がバイクとゲッタの間を割る。
    「どうか」
     不敵な勝ち誇った顔を見せた。
    「オレのバイク返せよ」
     すげない態度ではねのけた。そもそも相手のルールに乗ったつもりはないし。
    「諦めが悪いな」
     一瞬、満足気に口角をあげ、不敵な笑みを一瞬完成させた。
     美人は路地におりて彼の背を押し半回転させ、関係者専用の裏口へ向けて歩いた。
    「遊ぼうか。ほら」

    「これからなにをする気なんだ? 金はない」
     美人は、人好きのする完璧な笑みを浮かべていた。
    「大丈夫」

    ――本当にジョリー・バニスターはジェフかもしれないな。






    ジョリーは今にも『私の運命だテレビ』に切り替わろうとするモニターを冷たい眼差しで見た。この男、俺も苦手だ。
     この司会者にはゾッとするなにかがある。かつて戦争を誘発し全世界に悪名を轟かせた新聞王を彷彿とさせるなにかが。新聞王は目だった。こいつのは、まだ見れない。でも、どこかイッてるんだ。

    「皆様『私の運命だテレビ』にようこそ!私はヘンリー・ゴールドリッチです!」
    「本日は、皆様に悲しいお知らせがあります。実は、地球は私たちと同様に年を取り、体の機能も衰えることはご存知ですね。エネルギーが衰えるということです」
    「地球の内側__は年々冷えている傾向にあることは、百年前にはわかっていました。内に吸収される海水の量が増えている」
    「どういうわけかと言いますと、海が蓄えている水は、海底の岩盤に染みてマントルへ移動します。水蒸気となり地上へ戻ります。水が通る道は水圧で岩盤が圧縮されるのでとても狭いんですが」
    「いつかはすべての水が失われるでしょう。それは数億年の間に必ず起きることです。地球は、火星のような乾ききった星になるでしょう」
    「困ります!そうでしょう?」
    「さて、__が海の道を作りましょう!という__氏の案を採用されましたね!」
    「__氏の地球日傘計画にも応用できそうだ!」

    ――そんなの信じない。





    「すでにあるあれの経年劣化にどう対処する気なんだ」
    「私たちは、特別な機械生物を開発した。材料を取り込み自力で鉄を生産できる」ジョリー
    「それは3Dプリンターみたいに?」シャーリーが入ってきた。
    「……ふたりには金がある、なぜダンサーを?その気になれば一生を、それも派手に遊んで暮らせる」ゲッタ
    「蟻と蟻塚みたいな都会に疲れたかな。田園都市で丘や木々に囲まれる__でね、愛人の肩にのった木漏れびの数をかぞえたり、豚や七面鳥の面倒を見るのが夢なんだ」
    「ステキ」ケヴィンが入ってきた。

    「ふぅん、これ――息抜き――をしないと倒れてしまう」
    「同じ」ケヴィン「足の裏も恥骨も痛むわよ」
    「それはしかたない。あの歩きは恥骨をねじる」
     シャーリーは容赦なくチャンネルをアニメ番組に変えた。











    ⚠️現代からはじまる、後半は過去へ移行する癖をつけた物語にすれば混乱は起きにくいかもしれない。







    ねず Link Message Mute
    2019/11/10 18:17:22

    FM――いつものヤツら――

    #いつものヤツら #フロントミッション #地獄の壁
    ねずが小説を書くとこうなるよ。

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