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    [ツイステ]帰還した監を迎えに来るレオ監 とある春の日曜日。私は商店街の中を全速力で走っていた。
    「あっ、やっと来た!」
    「ユウ~!こっちこっち!」
     私は肩で息をしながら友人たちの元へ駆け寄った。
    「ご、ごめん……」
     今日は友人たちと出かける約束があったのだが、私が乗るバスが大幅に遅れてしまい、約束の時間より30分も遅刻してしまった。
    「いいよいいよ~。スイパラの予約時間までまだちょっと時間あるし、デパートの中ちょっと見ながら行こうよ」
    「うぅ~……。ありがとう2人とも~。今度なんか奢るわ……」
     私は2人をぎゅっと抱きしめた。
    「えっ、じゃあ今度焼肉でも行っちゃう?」
    「あ~いいね!この間テレビでやってた所行こうよ!」
    「あぁ、食べ放題の?あそこ高いのに~」
     私たちはお互いにくすぐったり頬をつついたりし合いながらデパートまでの道を歩いた。
     卒業式も終わった高3の春休み。この親友たちと一緒にいられるのも、あとほんの数日である。


     デパートに入って少し中を歩いていた時、おもちゃ屋にあったひとつのパズルに気づいて足を止めた。サバンナの草原に佇む、雄ライオンのパズルだった。黒い鬣に輝くエメラルド色の目。それは、今は会えない私の恋人にそっくりだった。


     遡ること2年前。ウィンターホリデーが明け、文化祭も終わり、ようやくナイトレイブンカレッジでの生活にも慣れてきた頃。私は急に学園長に呼び出され、元の世界に帰る手段が見つかったことを知らされた。
     『異世界から来た貴方がこの世界に居続けるのはまずい』、『この方法もいつまで使えるか分からない』、『帰れるならすぐにでも帰った方がいい』。学園長にそう告げられた私は、仲良くしてくれていた同級生やお世話になった先輩方にお礼を言うため、心の準備期間として貰った3日間で7寮全てを訪問して回った。
     最初に訪れたのは同じクラスのエースやデュースも所属するハーツラビュル寮。元の世界に帰ることになったと伝えると、『最後にとっておきのひとときを』と、トレイ先輩のタルトやケーキを振舞ってくれた。
     次にイグニハイド寮。帰ってしまうなら、と3人で未クリアのゲームを朝までやった。
     スカラビア寮。『祝いの宴なのに、こんなに悲しいのはなんでだろうな』とカリム先輩は泣いていた。
     ディアソムニア寮では、4人全員が贈り物をしてくれた。
     ツノ太郎からは瞳の部分に緑色の宝石がはめ込まれた龍の形の置物。リリア先輩からはどこかの国の怪しげな仮面。シルバー先輩からは沢山の動物たちが描かれたしおり。セベクは『元の世界に帰っても、若様のことは忘れるんじゃない!!』と、小さな額に入ったツノ太郎の写真をくれた。
     オクタヴィネル寮。
    『これが、貴方との最後の契約だ』
     そう言ってアズール先輩が契約書と共に渡してきたのは、珊瑚の海の砂が入った小瓶。対価は、『ここでのことを一生忘れないこと』。
     ポムフィオーレ寮。『なんて顔してんのよ』と、泣き出してしまった私の髪をヴィル先輩が綺麗に整えてくれた。
     そして最後に、サバナクロー寮。
    『今までお世話になりました』
     そう言って頭を下げると、ラギー先輩は『ほんとっスよ』と私の頭を撫でた。
    『元気でな』
     そんな短い言葉だったけれど、そう呟いたジャックの声は明らかに沈んだ様子だった。
     レオナ先輩は……『そうか』と短く返しただけだった。ベッドに寝そべった体を起こすことも、こちらに向けることもしなかった。少し寂しかったけれど、あのオクタヴィネル寮での事件といい、フェアリーガラの時といい、レオナ先輩には迷惑をかけてばかりだった。きっと『清々した』とでも思っているんだろう。

     彼のことが、大好きだった。普段はやる気もなく気だるげだけど、なんだかんだ言って優しいところ、面倒見のいいところ、仲間思い、後輩思いなところ。
     もちろん、意地悪されることもあった。しかしそれ以上に、彼の素敵な所を見つける度、大好きな気持ちがどんどん膨らんでいったのだ。私は怖がりだし、結局最後まで想いを伝えることは出来なかったけれど。
     そして、私が元の世界に帰る当日。とりあえずその日は授業を全部受け、放課後、1人で鏡舎に向かった。誰かが引き止めたりしないように、という『優しい』学園長の計らいだった。
     私が鏡舎に着くと既に学園長が鏡を用意していて、もういつでも帰れるという状態だった。念の為学園長も鏡舎の外に出て、私が鏡をくぐろうとしたその時──


    『ユウッ!!』


     鏡舎に並んでいた鏡の中の1つが強い光を放ち、その中から私を呼ぶ声が聞こえた。
    『……?』
     声の方を振り返ると、そこには息を切らしたレオナ先輩がいた。
    『ど、どうしたんですか、先ぱ──』
    『あの時……。あの時、何も言えなくて悪かった』
    『えっ?』
     あの時……とは、サバナクロー寮に挨拶に行った時のことだろうか。
    『そんな……私、レオナ先輩には迷惑かけてばっかりでしたし。あれが当然の反応だろうなって思ってたので気にしてないですよ』
     そう思って、自分を納得させていた。
    『……ユウ、俺は……』

     ピシッ

     レオナ先輩が何か言おうとしたその時、鏡から不穏な音が響いた。何かが、割れるような音。恐る恐る振り返ると、案の定鏡にヒビが入っていた。
    『っ……!な、なんで…?』
    『鏡にかけられた魔法が強すぎるんだろ、このままだとあと5分ももたねえぞ』
    『そ、そんな……』
     まだ、1番言いたいことが言えていない。言って……言え、私……!
    『れ、レオナ先輩、私──うわっ!?』
     レオナ先輩は私の言葉を遮り、私の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。そして先輩の腰に巻かれていたスカーフを、私の腕に結んだ。
    『え……先輩、これ……!』
    『ごちゃごちゃうるせえ。これ割れたら帰れなくなるんだろうが、早く行け!』
     先輩は私の肩を掴み、そのまま鏡の中へ押し込んだ。手を掴もうとしたけれど、届かなかった。……しかし。
    『──好きだ、ユウ!』
    『…………!』
     鏡から放たれている光で顔はほとんど見えなかったけれど、先輩のよく通る綺麗な声だけは、私の耳にはっきり届いた。
    『2年だ。2年後に必ずお前を迎えに行く!それまでそれ持っとけ!!』
     それを聞いた瞬間、涙が溢れた。はっきり聞こえていた声も、だんだん遠くなっていく。私は大きく息を吸った。
    『わっ……私も好きです!待ってます……ずっと……!たとえ2年後じゃなくたって……その先も、ずっとずっと先輩を待ってます!!』
     やっと、言えた。
     先輩に聞こえたかどうかは分からない。聞こえていたらやっぱり恥ずかしいけれど、聞こえていなかったらそれはそれで悲しい。遠ざかっていく先輩の影を見ながら、もう一度、はっきりと口にした。

     私は、貴方のことがどうしようもないくらい大好きです。



     目が覚めると、私はナイトレイブンカレッジの制服を着たまま、自室のベッドに寝ていた。時間は夜中の0時過ぎ、周りから音はほとんど聞こえない。どうやら私の部屋にあった姿見がこの世界とツイステッドワンダーランドを繋げていたらしく、粉々になった鏡の破片が床中に散らばっていた。
     ハッとして周りを見回すと、ここへ帰ってくる前に皆から貰ったものは私と同じくベッドの上に転がっていた。鏡を通る直前にレオナ先輩に預けられたスカーフも、その時のまま私の腕にしっかりと結ばれている。それは、私が今さっきまで体験したことの全てが夢ではないということの証明であった。
    (本当に、帰ってきたんだ……)
     ツイステッドワンダーランドに行ってすぐの頃はあんなに帰りたいと願っていたのに、いざ帰ってくるとやっぱり寂しい。
     腕に結ばれたスカーフからは、レオナ先輩の匂いがする。もう会えないかもしれないと思うと、勝手に涙が溢れてきた。こんなに愛しているのに、会えないなんて。私は、声を殺して朝まで泣いた。


     私が向こうの世界で約半年ほど過ごしている間、こちらの時間はほとんど進んでいなかったらしく、私は次の日から普通に学校へ行った。
     レオナ先輩に預けられたスカーフは、ヘアアクセサリーとして使わせてもらっている。ポニーテールにした髪のゴムの上からスカーフを結び、肌身離さず持っていた。それは休みの日も変わらず、もちろん今日もつけている。
    「ユウ、今日もそのスカーフつけてるんだね」
    「あ、それ私も思ってた。2、3年でクラス離れちゃったからあんまり気にしてなかったけど、それずっとつけてるよね。貰い物?」
     じっとパズルを眺めていた私に、友人2人が声をかけた。まさか異世界で貰ったものだなんて言う訳にもいかないので、私はこのことを聞かれた時はいつも曖昧に答えるようにしていた。
    「あ~……うん、まあね。綺麗でしょ」
    「うん、シミとか全然なくてすごい綺麗」
     毎日手入れしているのだから当たり前である。これは元々先輩のものだし、好きな人から貰ったものなら尚更傷つけたり、汚したりはしたくない。
    「これなんて書いてあるの?さ……さばな、くろー?なにこれ、ブランド名か何か?」
    「えっ!?いや、えっと……。あっ、時間!ほら、もう10分前だよ!早く行こう!!」
     まさかここまで聞かれるとは思っていなかった……。私は半ば無理やり話題を変え、2人を引っ張って目的の店まで歩いた。



     数時間後。辺りはすっかり暗くなり、街灯がつき始めた。
    「もうこんな時間……。そろそろ帰んないとね」
     友人の1人が、時計を見て呟いた。
    「あ~~、帰りたくないなぁ。もうしばらく遊べないじゃん。私とユウは東京どころか関東から離れて生活だしさぁ」
     私は東京ではなく、他県の大学を受験し、合格した。来週から寮生活になる。
    「そうだね……。お互い生活が落ち着いたらまた遊ぼうよ」
     レオナ先輩とは違って、この2人とはいつでも連絡が取れるのだから──予定さえ合えば、いつでも会えるのだから。

     『必ずまた遊ぼうね』。そう約束して、私たちはそれぞれの帰路に着いた。人も街灯も少ない路地を、1人で歩く。これで来週からは、いつでも会えた友人たちとも滅多に会えなくなってしまう。
     不意に、ゴオッという大きな音と共に強風が吹いた。その風で、結びが緩くなっていたスカーフが吹き飛ばされた。ジャンプして取ろうとしたが、届かなかった。
     あのスカーフだけは、絶対に失くす訳には行かない……。そう思って追いかけていると、そのスカーフは月明かりに吸い寄せられらるように空へ向かって上昇し、黒い手袋をつけた大きな手の中に収まった。
    「よぉ……久しぶりだな。嫌われ者の第2王子に魅入られた、可哀想なお姫サマ」
     聞き覚えのある声が、頭上から低く響いた。黄色いスカーフを握っている手から、視線を徐々に上に移していく。
    「れ…レオナ、先輩」
     レオナ先輩は月をバックに、箒の上に立っていた。ギラギラ光るエメラルド色の目が、夜闇によく映えている。レオナ先輩は箒を操り、私の側まで降りてきた。
    「約束通り、迎えに来たぜ」
     そう言ってレオナ先輩が後ろを振り返った途端、先輩のうしろに大きな鏡が現れた。鏡の向こうには、どこまでも続く広い草原が見える。
    「わぁ……!」
    「この向こうにあるのは、俺の故郷──夕焼けの草原。兄貴にも事情は説明済みだ。……ほら、俺と来る気があるなら、早く手を取れ」
     そう言って、レオナ先輩は私に手を差し出した。
    「俺がお前を世界で1番幸せな女にしてやる。どんな物語に出てくるプリンセスより、な」
     優しい声と笑顔に、胸が熱くなる。私は、レオナ先輩の手を通り越し、彼の大きな胸に飛び込んだ。先輩は一瞬驚いた顔をしていたけれど、すぐに抱き締め返してくれた。
    「迎えに来てくれて、ありがとうございます。…でも、幸せになるのは私だけじゃないですよ。いくつもの困難を乗り越えた王子様とお姫様は、必ず幸せになれます」
    「あぁ。……幸せになろう、2人で」
     たとえこの先どんな苦難が待っていようと、この人と幸せになる。そんな誓いの言葉の代わりは、彼からの優しい口付けだった。
    ささかまのお試し垢 Link Message Mute
    2022/06/18 20:30:00

    [ツイステ]帰還した監を迎えに来るレオ監

    初めまして、ささかまと申します
    pixivでは笹という名前で活動しております
    今回はとりあえずお試しということで、pixivの方で反響が大きかった小説を投稿してみる企画第1弾です
    タイトルのまんまレオ監ですがだいぶ夢要素が強いので苦手な方は閲覧をお控えください
    設定資料集が届く前に書いたものなので独自設定多めです
    推しのNLって尊いですね(自給自足)
    ※デフォ名監♀セリフあり
    ※監の友人モブが喋ります

    #ツイステ
    #レオ監
    #レオナ・キングスカラー
    #女監督生

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