『おあいこ』シエテの髪を小さな手が往復する。
程よいリズム加減と力加減で眠気を呼びそうだ。
でもこの手の人物の心は、きっと今の自分ほど長閑なものではないだろう。
いつもそうだ。
表面上では穏やかでいることを自分に課している。
どんなに心が苛んでも、常に平常でいることが自分の義務だというように。
「ねぇウーノ、たまには俺の前であんたの心にあるものを吐き出してもみたら?」
そう言ってみても、
「そうだね。」
としか返ってこない。
こうなると俺としては何も言うことがない。
とは言え、俺は俺でウーノにだって言っていないことがある。
俺の視界を覗き見している奴のこととか・・・・・。
心にあるものを吐き出せていないのは自分自身だって同然だった。
「せめて今だけは・・・」
黙ったままだった俺に対して、ウーノが口を開いた。
「こうしていることが私たちにとって必要だと思っているよ。」
そうしてフッと目元を和らげて笑む。
俺はそれにつられて、
「うん!」
と声を張り上げてうなずいてしまった。
なんだかはしゃいでいるようで、面映くなり急いで目を閉じた。
目を閉じたぶん、ウーノの体温をより感じてしまう。
眠ってしまったと思ったのだろう。
彼が俺の腕に手を回す。
彼の手では回し切れない腕の太さだが、互いの体温を享受しようと言うようで。
ならば俺はと彼の背中に手を回す。
俺の手の大きさに収まりそうなほどの小さな背だ。
これなら少しは触れ合う範囲が広がるだろう。