雨に降られ小屋に逃げ込み火を熾し ポップは目の前の火を見つめていた。
雨に降られ逃げ込んだ小屋で焚き火に当たり、体が乾き暖まるのを待っている。
後ろの男に髪から肩へと落ちた水滴を舐め取られ、思考が収束していく。
――困ったなー……
それが正直な気持ちだった。
後ろの男は許可が下りるのを待っているのか、子犬のような目でじっとこちらを伺っているようだった。
スコールに見舞われ小屋に辿り着いた時には下着まで雨に濡れていた。
一緒に小屋へなだれ込んだ男の頭を見て、濡れ鼠という言葉が頭をよぎる。
ずいぶん大きな鼠だな、と少し笑った。
薪がある火を焚こう、その前に濡れた服を脱げと、どちらともなく言い合い上着に手が掛けられた。
剥がすように脱がされ、お返しにとヒュンケルのベルトに手を掛けた。
硬いベルトにもたついていると、ベルトだけ外してくれる。
濡れて貼り付く服を一気に捲りあげてやると、薄暗い小屋の中に突如として立派な筋肉が現れた。
それはつついてやろうかと思ってしまうほどに濡れて光っていた。
脱いだ服で頭を拭き、濡れた服は火に当てて乾かし、小屋の毛布にくるまって雨が過ぎ去るのを待とう。
――毛布は一枚しか無かった。
雨音と薪の爆ぜる音しかしない小屋の中で大の男が二人、肌を寄せ合っている。
膝を抱えるポップを後ろから抱き締めるようにして座り、毛布を被っていた。
火に当てられた顔を熱さに背けると、後ろの男が視界に入った。
「顔熱くねえ?」
「いや……」
「なんかの本に背あぶりって」
「それではおまえが暖まらん」
離れればいいじゃん。と言ってやっても良かったが、なんだかんだと理由を付けて離れないのだろう。
熱くなる顔を火から隠すように手をかざしながら間をもたせるために適当に口を動かす。
耳に入っているのかいないのか生返事しか返ってきていない気がするが、あまり気にならなかった。
それよりもこの状況がよろしくない。
もうヒュンケルとしたくない、できれば逃げたい気持ちがあった。
痛かったのだ、最初の――ほんの少しの酒からなんとなく始めてしまった性交が、とてつもなく痛かった。それなりに慣らしたはずだったが痛かった。制止してもこの男が動くものだから――
もうしたくない、そもそもそういう事をしていい関係ではない。
まだマァムの返事待ちで、兄弟子で、弟弟子……
"まだ"ってどういう意味だ……自分の思考に言い訳している暇なんて無かったのに。
髪から肩へと落ちた水滴を唇と舌で舐め取られた。
「おれおまえデカいからやりたくないんだけど!」
「慣れれば好くなると言うだろう」
end
「熾し」は「おこし」です。