予告的な何か↓
――全部終わったんだ
新しく広がった大団円のこの場所に
俺に割り当てられる役目も居場所も存在しない
手を伸ばしてくるのは
ろくでもない連中ばかり
器なんか透過して
中のものが欲しいだけだろう?
何より忌々しい呪い
擦り付けられるものなら擦り付けてやる
だがそれがお前たちの望みなら
死んでもくれてやるものか。
――ああ
でも。
誰か居ないのかな。
同じ場所で
この渦中に
未だ取り残された者。
――一人。
胸に支えるしこりがあった
何度も手繰っては
砂のように擦り抜けて行った
それは御伽噺。
虚飾に塗れた作り話。
けれど一片の、事実の命を包む物語。
ーー君なら
君なら、もしかして。
肉とも骨ともつかない残骸、その上澄みを蹴り上げて、<歪み>はそれを睨めつける。
「ハンデだよ。不愉快だからね。どうせあんた死にはしないんだしこれくらい我慢してよ」
闇とも光ともつかない歪んだ輪郭から、人の声音に似た音が空間に満ちる。
自分の体を感知出来ず、意識だけがぼんやりと漂う中、その声は不快に辺りに飽和する。
「全く…ガゼルときたら…ほんと情に流されやすいんだから」
そう、揺らぎながら、<歪み>は続ける。
「…だけどさ。ほんと驚いたよ。まさかあんなのに渡してるだなんてね。
……前代は一体何考えてんだか」
そして侮蔑と、嘲笑の滲む言葉を押し出す。
「……でもさ、あんた達も血迷ったよね。
籠で育てた出来の悪い鳥を逃がしても、すぐに喰われて終わるのに。
僕には殺すつもりなんて始めからなかったんだ。
あっちで野垂れ死んだらあんたたちが殺したのとおんなじだよ、分かってんの?
そしたら次に生まれてくるまで随分待たなきゃならない。
腹が立つよね」
そのままにしておけない発言だった。
動かす唇もあるか無いかの中、それでもこれだけは、譲れない。
「……あいつはおまえが考えてる程簡単に終わらない…」
この身を挺して逃がした、可能性に満ち溢れた奇跡の命を、何も知らないこの<歪み>のような者たちが見くびるように再び定義、限定される訳にはいかない。
その身に秘めた力を開花させるかどうかは、彼自身が決めること。
そう――…あの子はこれから、己の意思で物を見聞きし、決定する為に――…“ウィルド”と、成る旅に出るのだから。
飼い殺された無為の日々に、終止符を打って、“自分”を始めるのだ。
その為の時間を稼ぐのは、あの子を引き受けた俺の役割だろう。
嘗て自分が貰った、得がたい時間を、今度はあの子が享受する番だ。
<歪み>は馬鹿馬鹿しいと呆れを含ませた棘のある声音を作る。
「は!出来損ないに何が出来るのさ。
外のことなんて何にも知らない、年だけ食った、赤子より質の悪い惨めな生き物だ。
あれを持ってたとしても、豚に真珠ってやつだ。どうせ使いこなせやしない。
使い方だって、碌に教えてないんだろ?」
「何が、殺さない、だ。
お前は…あの子を捕まえたら殺すより惨いようにするつもりだろう……
ただの、道具に…」
今度はこちらが相手を嘲笑する番だ。
惨めなのは、一体どちらだ。
赤黒く塗れ潰れた役に立たない視界の先に、それは居る。
自分の喉笛が鳴っているかも確認出来ない有様だが、内容は平行線ながら会話が成り立っているということは、きちんとその<歪み>に受け渡されているようだった。
<歪み>は唾棄すべきことだと切り捨てた。
「役立たずはね、道具にもなれないよ。
第一あんたたちだってそう変わりない。
家畜のように慣らしてただけじゃないか。
少なくとも僕からはそうとしか見えなかったけど。
だって何にも教えてない。
それで守ってやってるつもりなの。
言葉なんて覚えても、経験のない、知識だけのからっぽな存在を、野に放ってどうしろっていうのさ」
「…」
この者には何を言っても無駄だ。
高みに住まう者は、それが長く続けば、必ず何時か耳を失う。
親友たるあの方の言葉ですら、もう届きはしない。
指摘された物事、そこに潜ませた毒を、今理解させる訳にもいかない。
沈黙に充足し、<歪み>は穏やかに揺らぎながら会話を締めにかかる。
「まあいい。きっとすぐに捕まるさ。
そんであんたたちの前で、首に縄を掛け直してやるよ。
折角吹き込んだ生まれる必要の無い自我が壊れる様を、道具になる様を、拝ませてやる。
心配なら後を追って守ってやれば?
まあでも…」
「…出て来れやしないね。
幾らあんたでも掛かりきりにならないと解けない程組成をぐちゃぐちゃにしてやったから、組み直すまでに随分時を要すだろうよ
――…僕の、勝ちさ」
バチン
<歪み>は収束し、俺はそこで意識さえ途絶えた。
番外編「極東線を越えて」
は
これにて
終了
です!
打ち切りじゃないよ
まだだらだら続くんだ…多分
この話を通して毎コマ小さくて新しいことを色々試していたよ
誤魔化しや味付け以前のもっと基礎的な「描く」ということを意識した方が良いのは変わらないけど
当たり前だけど逃げすぎ
特に動き…
最後に、いらっしゃるか分かりませんが、共にたったこんだけ描くのに一体何時終わるのかと苦しんでお付き合い下さった方感謝します。
ちなみにこの最後らへん(?)が一枚絵【独白】に該当します。
2018/6/29
文章挿入しました
台詞だけは当初からあったんですけど、絵に起こすの楽しそうじゃないな…これ文章かな
でも、文章という形で上げるにしても、当時全く以って文章浮かばない期だったので長く放置しておりました
やっと向き直ったところです。
さてGALLERIA久し振りでぼちぼち触ってみてるけど、この記事内の文章や絵をアップロードした後で上げ下げ出来るの相変わらず素晴らしい機能で、残っててくれてマジ良かった
最初に描いてたり描いて無かったりするピースのあるパズルをぶちまけて、順番はおいといて出来るとこから上げて、段々埋めてく系の話の作り方する自分には、本当に助かる機能
で、やっぱ困るなってのは、強制中央揃えかな
詩っぽいのは良いんだけど、小説?みたいなのは中央揃えはなかなか見目
が堪える…ヨミヅライテイジーン♪
これってスマホ対応なんかしら