「Sくん、ろうそくはこれでいいかしら?」
Yさんは片手でケーキを運びながらもう片方の手にピンクのろうそくを持って言う。
「ああ、それでいい…というかあるなら最初からそれにしないか
さっきの怪しげで大きなろうそくなんて出さずに」
Sくんはシャンパンとグラスをテーブルへ置く。
「だって初めての生誕祭だもの、大きいのがいいと思ったの」
「生誕祭ではなく誕生日だ、変な言い方するんじゃない」
「それよりSくん、プレゼント何にしたの?」
「魔法少女のコンパクトと変身タンバリンだ」
「一歳でそれははやくないかしら?…アナタの趣味を押し付けないでちょうだい」
「失礼だな、こういうのは早い方がいいと科学的に証明されているんだ」
「科学?…アナタ相変わらずそんなものばかり信じているのね」
「君こそオカルト脳のまま母親になってしまって…この子の将来が心配だよ」
「それは私のセリフよ…って、泣いてしまったじゃないの」
Yさんはキッズチェアにもたれている我が子を抱き上げる。
「お父さんとお母さんが喧嘩してしまって泣いてしまったのね
でもこれは喧嘩でなく言い愛なのよ」
「言い愛ではない!!」
そう言いながらも、SくんはYさんの肩を寄せて二人を包み込んだ。
「君も、お母さんもお父さんもみんな一歳になったんだ」
…っていう妄想。