流ロク短文ログ■蟹の日(漫画・ゲーム・アニメ)◎背中
「兄貴!」
「どうしたの?」
名前を呼べば必ず振り返ってくれる。
兄貴の背中は大きくてとっても優しい。
いつもその背中でオイラを守ってくれる、大好きな大好きなオイラの兄貴の背中。
でもいつかは追い越してみせるっす!
その背中を追い越して、今度はオイラが兄貴を守って引っ張ってあげる番!
◎手
楽しいとき、悲しいとき、いつもポンポンとオイラの頭を撫でてくれたその手。
なんだか子供扱いされてるようでムッとしたけど、本当は大好きだった。その手は暖かくて、不思議と元気をくれた。
オイラはお前が大好きだったんだなって今更だけど思う。
もうお前はいないけど、お前との思い出はずっとこの胸に大事に閉まってある。
あのときの笑顔も、その手の暖かさも大事なオイラの宝物。
そして今度はきっとその暖かさをオイラがミソラッチにあげる番だと思うブク。
オイラも頑張るから、また会える日まで。
◎思い
喧嘩っ早くて乱暴者でいつも周りの子から避けられていた。
自分の気持ちの伝え方が分からなくていつもイライラしていた。
そんなときアンタが現れた。
見た目は弱っちそうなのに実はスッゴく強くて、気づいたらオイラは負けていた。
でも、負けたのに凄くスカッとしたんだ。
心に溜まっていたモヤモヤが一気に晴れたようで。
全力で戦ったからこそなんとなく分かる熱さとか、照れくさいけどそんな感じ。
だから今日もアンタが来てくれるのを待っている。
でも次は、喧嘩じゃなくて釣りに誘えたらいいなって!!
◎◎◎
真っ暗闇の中、ずっとひとりぽっちだと思ってた。
寂しくて怖かった。
でもそんなとき現れたあなた。
お星様のように暖かくて煌めいていて。
また真っ暗闇が来ても大丈夫。
あなたと一緒ならどこまでも!
■スクラップ島の王様(漫画) ある任務で地球という星にやってきた。
任務というのは地球を侵略すること。
しかし電波体のままではこの星においては十分な力を発揮することはできない。だからわしは人間の体を乗っ取って電波人間になることにした。
そこでであったのがジャン・クローヌ・ヴェルモンド・ジョルジョワーヌ14世という貴族の男じゃった。
クローヌはなかなかに変な男じゃった。
わしの姿を見ても全然驚きもしないし挙げ句の果てに宇宙人の友達が出来たと喜びおる。いつの間にか奴のペースに乗せられ気づいたら地球を侵略する気などとっくに失せていた。
任務がどうでもよくなるぐらい、奴と過ごした日々が楽しかった。
城の従者達にこっそり悪戯してみたり、電波の道を通って世界中を飛び回ったり。本当に楽しい日々じゃった。
──何時までも続くと思っていた。
しかし、しかし人間の寿命はFM星人より遥かに遥かに短かったのだ。
出会ってから数年後、クローヌは病床についた。あの頃の医療技術では治せぬ病じゃった。
そして奴は子供が作れない体で跡継ぎがいなかった。貴族として何代も続いてきた血が彼で途絶えたのだ。
「口惜しいのう…口惜しいのう…!」
彼は病床でそう泣き続けた。
そう泣き続けながら死に絶えていってしまった。彼は最後まで貴族の誇りを失わず、故に無念のままに死んでいってしまったのだ。
だからわしは、彼の無念を少しでも晴らすため、この島に残ることにしたのだ。彼が、彼の先祖達が代々支配してきたこの島に。FM星人も不死な訳ではない。
ただ、わしにできる唯一の抵抗じゃった。
クローヌの遺体に取り憑き電波変換し、わしはクローヌが住む城に住み着いた。
勿論持ち主がいなくなったこの城を自らの物にしようと沢山の人間が来たが幽霊の振りをして追っ払った。そうしたらいつの間にか「幽霊屋敷」という噂がたっていた。
人間が来なくなったのでよかったよかったと思っていた矢先。
沢山の重機がやってきた。そして城を取り壊し始めたのだ!
止めようとしたが多勢に無勢じゃった。城は呆気なく姿を失ってしまった。
その代わり、沢山のゴミが輸送機で運ばれてきた。あっという間にこの島はゴミだらけになりスクラップ島になっていた。
沢山のゴミに囲まれとても虚しくなった。しかしこの島を離れるわけにはいかなかったのだ。
この島は──
「奴との思い出の土地なんじゃ」
わしは幽霊のふりをしていたがいつの間にか本当にこの土地の思い出に取り憑く地縛霊みたいなもんになってたらしい。
地縛霊で結構。この土地にいる限りやつとわしの絆は途切れない。
そんな気がしたから。
■■■(アニメ) 頭の、いやほぼ体と言うべき王冠に熱が突き刺さる。痛みすら飛ぶような強烈な一閃。
同士討ちなんて、今まで無情に殺戮を重ねてきた自分にはお似合いな虚しい最期だろうか。
しかし──
「逃げろっ…早く!!」
キャンサーは振り向くことなく泣きながら一目散にこの場から離れる。
今心を埋めるのは虚しさだけではない。かすかな希望が確かにある。
あの子が一分でも一秒でも何年でも、生きていてくれることが自分にとっての希望なのだ。
こんな自分でも何かを愛しむことが出来るのだと彼を通じて知ることが出来た。たったそれだけでも人生に色を与えるのだ。
きっと彼はしぶとく生き残れるだろう。勘だが──。
せいぜい生き延びて自分が出来なかったぶんだけ世界を堪能すればいい。
それが自分の最後の希望だ。
■月夜の晩酌(アニメ)「しかし皆して私の番組を潰しにかかるなんて酷いんじゃないかっ?」
月が綺麗だからとリブラとクラウンはお酒を呑むことに。
酔いが回ってきたリブラがそんな愚痴を一つ。
「……確かに私にも非はあったが、ロケ弁貰えるし人間の調査もできるし貢献してないわけではないだろう?なのに皆して酷すぎるだろう」
先日リブラが司会をやっている番組をFM星人総出で潰しにかかったのをまだ根にもってるらしい。
「あんときは悪かったって。お前さんも少し調子にのってたしお互い様じゃろ?」
「しかしなあ……」
「皆内心お前さんがいないのは寂しかったんじゃよ」
「……寂しい?まさか。俺の人気を妬んだだけだろ?」
「しかしいつもいるメンバーが欠けるとどこか不調は起きるものじゃよ」
歯車が一つでも欠けると動かなくなってしまうのと一緒で。
いないと知りつつウッカリ皿を六人分用意してしまったり。
空いてる一つの席に妙にイライラや寂しさを覚えたり。
何より晩酌の相手がいないのはつまらないというもの。
「一人欠けるぐらい無問題だと思うがな」
「欠ける側だからそう思うんじゃよ。逆の立場に回ってみればいい。なんなら余が欠けてみようか。ちょうどミソラちゃんが全国ツアー中じゃし」
「勘弁願いたいな。晩酌は一人より話し相手がいるほうが楽しい」
「じゃろう?余も一人の晩酌は好きではない。お前さんがいない間の晩酌はなかなかにつまらんかった。しばらくは付き合ってもらうぞ?」
そう言って空になった陶器に酒を注ぐ。
夜はまだまだ明けない。久々の二人の晩酌をゆっくり楽しもうじゃないか。