紋白蝶の羽は脆い幼少期に一度、死にかけたことがある
全身の血を入れ替えて肌は青白く血色が落ち
ICUの角砂糖みたいに真っ白な何もない四角い部屋で
点滴の針で太ももや腕をまるで蝶の貼り付けみたいに刺し止められて
少しの食べ物を口にすることも許されず、ただ真夜中に乾いていく唇に保湿のために塗られた蜂蜜を
舐めるときだけ潤される舌先のことを思えば私はあの時本当に生き返った蝶の標本のようだった
蝶は正しく保存されなければ死んだあとは直ぐに破れて汚く切れ切れになってしまう
私も病院につくのがあと数時間遅れていればそうなっていただろう
人は死に近づくと蝶になる