垢抜けるということ(Nānā no moe)
高校に入学してから今日で1年。
友達も出来て、でも隠れ家が大切でずっと通っている僕。
高校で起きた出来事を親でも友達でもなく、隠れ家に集まる、境遇や性別が謎につつまれている所謂「大人」な人達に話すのがとても楽しかった。
年下だからだろうけど、みんな笑顔で聞いて、可愛いと褒めてくれるのが嬉しくて。
……
今思った。
入学式で知り合った友達はみんな日に日に垢抜けて、綺麗になったりかっこよくなっていったけど、僕だけはずっと地味だな。
隠れ家での生活が楽しくて、色んな人達を見ていた僕はこう決意した。
そうだ、髪を染めよう、と。
幸いにも成績さえ良ければ髪を何色にしようが怒られない高校で、調子に乗った友達は血迷って金髪や青色に染めていた。
僕も本当は花屋さんみたいに薄いブルーとか、カルマさんみたいな金髪にしたい。
ラフさんみたいに自分の好きな色を薄く入れるのにも憧れる。
だけど、自分で染めるのも無理だし、美容室に行く勇気もなかった僕。
そんな僕を助けてくれたのがマーガロさんだった。
「アレルギー反応出なかったね、よし!お洒落な色に染めちゃおっか!」
明るいマーガロさんの声。
耳の奥にまで響く鼓動に、カラー剤の独特な匂い。
洗い流すと、鏡の中には今まで見たことのない僕がいた。
「嗎~!お前髪染めたのか!」
「うん、茶髪にしてみた」
「なんだ?好きな人でも出来たか?」
「……まあ、ね」
本当に、低レベルだ。