昔学習雑誌でちょっとした推理クイズやトリック豆知識などが特集されていたことがある。その中の殺害方法一覧には幼心にびびったものだが、中でも怖かったのは、生木の蔓で被害者を縛ると乾燥するにつれて蔓が食い込み絞め殺すというのと、被害者を固定して水滴が垂れる音を聞かせ続けると気が狂って死ぬというものだった。当時雨の音が聞こえる部屋で寝ていた自分は恐れ慄いた。水滴の音を聞き続けると死ぬ？ほんと？まだ死んでないけどラッキーだっただけ？スタングレネードだって一瞬の音だけじゃ人は死にやしないらしいが、騒音による健康被害は実際あるわけだし要点は「水滴の音」じゃなくて「長く聞かせる」ことなのだろうか。どんだけ長く聞かせ続ければいいのか。何の音でもそれは可能なのか。ちなみに雨音では今のところまだ死んでいない。

ところで風鈴である。夏の風物詩であり時には故人を思い出す縁よすがにもなるあのちっこいあれは、東京都では生活騒音の一つと規定されているほどの破壊力を持つ（個人的に金属製のそれはより一層破壊力が強く感じられる）。風鈴の良さって時々遠くでりんと鳴っているから風流なのであって、顔の周りに大量にぶら下げてのべつ幕なしに鳴りっぱなしでは死なないまでも確かに気が触れてしまいそうだ。ところがそれを心地よいまたは落ち着くと感じる人がここにいる。鬼をも驚愕させる度を越した過集中と実の両親をも辟易させる度を越した癇癪、自分の目的に没入し他人を顧みない傍若無人さ。マンガであるとはいえ、鬼滅キャラはみんなそうだがある種の真に迫るリアルさがある。鋼鐵塚蛍三十七歳、名前は可愛い♡

こういう人としてどうなんだそれは的なキャラも魅力的な（だいたい主人公にしてからが完全無欠の善人ではないし）鬼滅ではあるが、それにしても折るのはまだしも刃毀れさせて刀鍛冶に切れられるってどういう？時代物を通って来た方はお分かりだろうが、鱗滝さんやすみちゃんの言う通り日本刀は割と折れる。戦えばだいたい刃は欠ける。しかしこの日輪刀は普通の刀とはちょいと違うのである。風の呼吸以外の型は全て物理的な斬撃の筈なので、巨大な岩も、炭治郎の刀を折った累の糸を切った凪（めんどくせえ）も、直接刀でやっちゃってる訳だ、欠けもせず。鬼も鬼なら刀も刀である。どんだけ硬いんだ。いやもとい呼吸やばい。呼吸が一番やばい。（ちなみにこの項の最初のタイトル案はかたいかたなであった。すぐ寄せたくなる）それからまた「折れるようななまくらを作ったあの子が悪いのや」と言い放つ里の長。いや折れるよ。もう何だか変な刀に変な刀鍛冶、また、そうであればこそ守ってこれたものというのがそこにはある。折れない刀、誰かの為にその究極の「ないもの」を求め続けること、これは鬼滅の刃に通底する人の想いであろう。ことほど左様に最近は隙あらば原作をリピートしてその時に備えてウォームアップしているが、早く動く刀鍛冶編が見たいなあ。ちなみに鋼鐵塚さんのことは鬼滅男子中ではちょっと上位のハンサムだと思っている…のである。

実は今回「女子と冨岡」（その女性関係ではない）の項をアップするつもりで準備していたのだが、時節柄（）急遽差し替えを用意した。急ごしらえ感ありありであるね。これはまたいつかのために寝かせておくが、しかし考えてみたら中の人のやらかしという点では余り変わらなかったのかもという気も……。