イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    日常の隣で ふと気付いたらそこに女の子がいた。
     彼女はここで何をしているのだろう? と僕は不思議に思って、首を捻らせながら、女の子に声をかけた。



    「そこでなにをしているの?」
     声をかけると彼女が勢いよくふりむいた。目をいっぱいに開き、ひどく驚いた顔をしている。

    「な……と、止めても無駄よ!」
     呆けた顔をさらに焦らせ、叫んできた。
     遠目でも汗を大量に流しているのが見える。
     混乱しているらしい。
     何を言っているのかさっぱりわからない……まあ、僕に気付いた事で察しはつくけど。
     少し、口の端を上げる。眉はハチノジでええと困惑した声音で。わかるよね。
    「止め? ……なにを?」
    「あたしのことはほっといて!」
     僕の話は完全無視なんだね? 別にいいけどね。うん、別にいいよ、別にね。少しだけ僕はムッとしたけど、別に気にするほどの事じゃない。気にしていないってば。
     脈絡がない相手に怒るだけ無駄だ。
     さて、
    「自殺でもするの?」
    「……うぅ」
     うなっているし目も泳いでいる、どうやら図星らしい。嘘のつけない子だなと思う。場違いだけど。可哀想に、ダダ漏れだよと涙がでそうだ。でないけど。
     ここは上手に誤魔化すか、気にしないかの方がいいと思うけど……開き直り万歳。




     現在地は比較的高いビルの屋上、下はコンクリ……落ちれば高い確率で死ねる。だからなのか、ここには彼女のような考えの人がよく来る。
     笑える現状だと思い、口の端をくっと持ち上げる。愉快だ。神経がんばれ。


     ここは――自殺の名所だ。




    「で? 飛び降りないの?」
     ここに立っていても死ねないし、何も起こらない。時間はたつけど。それだけだ。
     ずっと飲まず食わずで居続けるならわからなくもない。
     餓死、凍死、あとはなんだっただろうか。
    「は?」
     彼女は眼を丸くさせた。口も半開きになっている。はっきり言ってまぬけな顔だよね。せめて口は閉じたほうがいいと僕は思う。……いや忠告はしなかったけど。
     僕はそこまで親切じゃないからね。
     ただ冷たいだろう視線を一瞬投げかけるだけである。あれれ、僕ってば、なんて親切なんだろう。


    「だから飛び降りないの?」
     話が流れた感を修正するために、もう一度言ってみた。彼女は自分の耳を疑っているのかもしれない。眉をよせ、おまえは変態か? と問いかける要領で声を出してきた。
    「……止めないの?」
    「うん」
     特に理由もないしね。そんな言葉が真っ先に浮かんだ。
    「止めなさいよ!」
     ……怒られた。えー、止めても無駄って言ったり、止めなさいって言ったりで僕にどうしろと?
     この場合理不尽なのは誰だろう。


     困惑が顔に出たらしい。


    「あ! いや、どうやれば確実に死ねるのかなって思っていたのよ!」
     なぜか弁解らしきものを彼女は言ってきた……別に僕は聞いていないんだけどなぁ。というかついていけない。爆弾を投げつけたい気分だ。誰にだ? もちろん彼女にだ。

     そうだ、ここはひとつ、名案が。
    「……うーん、じゃあお手本見せようか?」
    「はあ? 何言って……」
     彼女が言い終わる前に僕は走って、そして飛び降りた。
     今さらだし、もう怖くはない……いや、怖いのかもしれない。
     どちらであっても、僕には関係ない。
    「……!!」
     彼女は声も出なかったらしい。声に出していたなら、どれほどの恐怖を感じていたのかわかったかもしれない。
     くすくすと笑う。ああ、やっぱり愉快だ。



     彼女は僕が飛び降りた場所に駆け寄って叫んだ。
    「いやあぁぁぁ! 死なないで!」
    「えーと、ごめんね、それは無理なんだ」
     そんなこと言われてもねぇ。もう遅いよ?
    「え?」
     彼女が後ろを振り返った。
     目を見開いた彼女が見える。





    「どうして」




     僕を見ながら、青ざめた顔で怯えたように言う彼女。
     なんてそそる表情なんだろろう。
    「だって……」
     僕が言いながら近寄る。
    「いや」
     彼女は首をふる。目も潤んでいる。
    「……来ないで」
     後ろにさがる彼女。
     お人形さんは糸が切れても動けるの?
    「どうしてさ?」
     ふわふわと笑う。
    「ねえ」
    「来ないで!」
     僕から逃げるように勢い良く、彼女は落ちていく。
     底へ。






    「きゃあぁぁぁ!」
    「誰か落ちたぞ!」
    「救急車!!」
    「死んでいるわ……」
    「女の子が……」
     下にいた人達の声が聞こえた。
     ああ、今は、何時だろう?




     僕は彼女を見下ろす。
    「死ねてよかったね」
     僕の顔にはこれ以上ないほどの笑みが浮かんでいることだろう。


     これで君も、僕の仲間になったんだね
    ムム Link Message Mute
    2020/12/18 11:00:12

    日常の隣で

    ##創作文
    だいぶ昔の出テスト投稿・

    昔書いたものを新しく直して投稿してみました。(当時)
    かるいホラー要素に自殺騒ぎがあります。
    ほかにも載せてます

    more...
    作者が共有を許可していません Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    NG
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品