【瀬々総】あなたに書いて欲しい物語哉都さんには「探し物はここにあるのに」で始まり、「ほら、朝が来たよ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば11ツイート以内でお願いします。
https://shindanmaker.com/801664
TwitterにUPしたテキストと同じ物になります。
手書きブログの企画、【瀬々総】に参加させて頂いている、鬼原と木原の物語になります。
『探し物はここにあるのに』それはいとも簡単にこの手から零れていく。
中学二年生の時、いつものメンバーとサッカーをした帰り道、それは突然起こった。
目の前にサッカーボールが転がってくる。
横を見ると男児が道路に飛び出そうとしていた。
目の前にはトラック…考えるより先に身体が動いていた。
「大丈夫か!?」
とっさに彼の無事を確認した後に、右足に痛みが走る。
イヤな予感は当たった。
【靭帯断裂】
医師からは「以前のようにサッカーをすることは難しいでしょう」と言われた。
小さい頃からずっと追っていた自分の夢が、手のひらから零れた瞬間だった。
それでも、チームメイト達は普段通りにサッカーを続ける。
自分がいてもいなくても…それは変わらない。
絶望とはこう言う事を言うのだろう。
彩りを失った世界が目の前に広がる。
しばらくサッカーとは距離をあけ、推薦が決まっていた高校にも行かない事にした。
病院のベットの上はとても退屈だ。
ボーと窓の外を見ていたら、ドアを開ける音がした。
「瀬々総に行くのやめたって本当?オレ、一緒に高校行ける事楽しみにしてたんだよ!」
よく知った声が病室に響く。
「おい…ここ病院だぞ?もう少し静かに…」
言い切る前に、胸倉を捕まれた。
「そんな事より、なんで高校変えるんだよ!一般でも行けるだろ!?」
「サッカーが出来なくなったオレに、瀬々総に行く意味なんか無いだろ」
「はっ?オレは一緒の高校にお前と行きたかったって言っただろ!」
その台詞にオレは言葉を失った。
「絶対、瀬々総に来るって信じてるからな」
そう言い残すと陽史は病室から去って行った。
陽史のあんな取り乱した姿は初めて見た。
「そんな事…言われても…な」
不意に力なく零れた台詞とは逆に、心の中で力強い何かが生まれたのを感じる。
逆転不可能な状態で、なおも勝ちを穫りに行くような感覚だ。
負けたくない。
あの後必死にリハビリをして、何とか人並みには動けるようになった。
勉強も陽史の家に転がり込んで、必死に受験勉強をしてどうにか高校に受かった。
脚もプロになることも可能なくらいには回復した。
それでも一度零れた夢を、再びすくい上げる気にはなれなかった。
その代わり、カメラ屋の祖父の影響で、カメラをいじる事が多くなっていた。
しばらくした後、陽史から「GKが足りないからサッカーをしないか?」と誘いが来た。
最初は戸惑ったが、その誘いに乗ってみると、やはりサッカーは楽しく好きだと感じた。
「征君、サッカーしに行こう」
今日も陽史はオレを誘いに来る。
自分の世界に色が戻る。
迷いは、もう無い。
『ほら、朝が来たよ』