あなたに書いて欲しい物語哉都さんには「優しい嘘なら許されますか」で始まり、「世界は限りなく優しい」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば11ツイート以内でお願いします。
https://shindanmaker.com/801664
TwitterにUPしたSSと同じ物です。
手書きブログ企画の、拙宅、ギルバートとツバキの物語で、ギルバート視点です。
BLですので、苦手な方は自衛をお願い致します。
『優しい嘘なら許されますか?』
なぜ私はあの人のことを好きになったのでしょう?
初めて会ったのは未だ子供の時…。
同じくらいの歳の子達にいじめられていたのを見かけた。
その子の父親はとても良い人とは言えなくて、自分の親もひどい目に遭っていた…だから私のその場を見て見ぬ振りをしようとしたのだ。
けれども、彼が抵抗しないのを見て、思わず人がいることを示してみたのだった。
私の陰を見た彼らはその場を離れていった。
その時、私たちは互いに会うことは無く数年がたった。
母から、借金返済の為に住み込みで働いて、彼の父親の懐に入れと言われたのだ。
いやな気持ちはあったが、私は母の言葉を跳ね返すほどの力は無かったので従うしか無かった。
「初めまして、今日から此方の家の執事として住み込みで働くことになりました」
私のその言葉に彼はニッコリと笑って応えた。
「無理はしなくて良いよ。どうせ父の被害者なんでしょ?」
ドキリとした…そして同時に彼に同情のような物を感じた。
きっと会う人の殆どの人が、彼をそう言う目で見ていたのだろうと。
「一応そうなりますね…でも、仲良くしたいと思ったのは本当です」
…とっさについた嘘だった。
「そっか、宜しくね」
そう言って、彼はまたニッコリと笑った。
彼との関係は良好だ。
彼の父親のことはやはり好かないが、彼は裏表が無く捻くれてる私も素直になれた。
親友。
誰から見てもそう見えただろう。
ある日、彼が青ざめて部屋から出てくるのを見かけて声をかけた。
「顔色が優れませんよ。大丈夫ですか?」
彼は口元を押さえたまま、何処かへ走り去って言ってしまった。
答えは聞けなかった。
彼の部屋の方へ目を向けると、乱れたシーツのベットの上に女性が座っていた。
無言で女性の手を引きベットから下ろすと、彼女は「残念」と言う言葉を残して去って行った。
二人の間に何があったのか察しがついて、私の中で何かが引いていくのが分かった。
そして、急いで彼が向かった方向に足が向いていた。
彼は私が見た時よりもさらに白い顔で、息をするのも苦しそうだった。
「今すぐタオルと着替えをを持ってきます」
大丈夫とは言えない状況で彼は「ありがとう」と笑って見せた。
自分が苦しいときでも、相手を心配させまいとするその姿に、私は放っておけなさを感じた。
彼はその後も普段は変わりは無かったが、極力女性に関わらなくなるようになっていた。
私は、彼を意識すると、触れるのに戸惑うようになっている事に気がついた。
触れたい…のに、触れられない…。
自分自身ではコントロール出来ない思いが膨らんでいく。
この気持ちは初めてだが、この思いがなんなのか、何となくわかっていた。
私は彼の事を好きだったのだ。
しかし、この気持ちを彼に気がつかせる訳にはいかない。
私は彼の親友であることを徹底した。
やがて季節は巡り、彼の父親が亡くなった。
彼は今まで父親がしてきた事を清算する事にし、全てを終えてから何もかも手放して、何処か遠くへ行くことにしたらしい。
私も放っておけない事を理由に、彼について行くことにした。
その間、何度彼に触れる事を戸惑っただろう?
未だ私は彼にとらわれたまま身動きが出来ずにいる。
「…い…おい」
何時もの声にハッと気がつく。
目の前には彼の顔があった。
「おまえがボーとするなんて珍しいな…ギル」
彼は私を不思議そうな顔で覗いていた。
「そうですね…昨日は少し遅かったので眠気が残っているのかも知れません」
「ふーん?まぁ、無理はしないようにな」
私の答えに彼はそう言って、昔と変わらない笑顔を見せる。
「えぇ…有り難うございます…ツバキ」
彼はきっと、私の気持ちに気がついている。
それでも気がつかないふりをして、変わらず私と接し続けてくれる。
今日もこの『世界は限りなく優しい』。