ペタルデス/ハロウの経歴ペタルデスの経歴
旧名「コッペリア」。
かつての彼女は優秀な冒険者である姉に憧れ、正義の味方になることを夢見ていた。
しかしある時姉は逆恨みした同業者の裏切りによって罠に嵌められ、同行していたコッペリアを逃すために重傷を負い、命を落とすことになる。
その事実を受け入れられなかった彼女は、無意識下で姉についての記憶を封じる。
その後漠然とした恐怖と不安を感じたまま冒険者となったものの、当然ながら結果を出せずにいた。
姉譲りの強さと優しさは持ち合わせていれど、臆病で優しさが仇となり強さを発揮できない彼女が正義の味方を名乗るにはあまりにも中途半端だった。
やがて半端者が辿った末路は仲間からの裏切りだった。騙され濡れ衣を着せられ、彼女の中で何かが壊れた。
善人になれないならいっそ悪人になろうと、裏切られるなら裏切ろうと、もう何も信じないと。
仲間を殺害し逃亡した彼女は、「ペタルデス」と名乗るようになりとあるギルドに身を寄せることになる。
彼女は人が変わったように好んで人を騙し、人を傷付けた。悪として自由に振る舞うのは楽しかったが、やはり中途半端だった。
結局自分を嫌い、知られることへの恐れから偽っていただけだ。そして封じ込めた記憶は湧き出し、彼女の精神はさらに不安定になっていく。
やがて善にも悪にもなり切れなかった彼女は、いつしか美しく死ぬ事だけがただ一つの希望だと考えるようになっていた。
だが、何も無いと嘆いて死に急いだその姿に怒ってくれる人がいた。
だからこそ瀬戸際で踏みとどまり、自分の愚かな行動を示す青い花の病に罹患していながらも自ら命を絶つことはなかった。ことごとく大切なものを奪う世界は嫌いだったが、恨み続けるには疲れ過ぎていた。
全てが終わったあと、彼女は人を助けて回った。遅過ぎた罪償いと共に旅をするように、ふらりと世界を見て回るために。
最後に平和を取り戻しつつある姿を見届けながら、彼女は相棒と共に別世界への切符を切った。
なにか目的があるわけではなかったが、ただ生きていたかった。
誰も自分を知らないどこか別の世界に渡って、もし自分と同じように道を外そうとする者がいたなら、手を差し伸べるくらいはしてやろうと。
そう、名も知らぬ世界へ一歩を踏み出した。
*
ハロウの経歴
彼女は外界と隔絶された世界で育った。
海に沈み、神の力に頼ることでしか生きることのできない島。そこではその神の力を絶やさぬよう、生贄を捧げるのが当たり前だった。
そんな島の腐った空気に染まっていたのか、彼女の両親は酷い人だった。機嫌を損ねれば暴力を振るわれるため、ハロウは親の機嫌を損ねないよう他人の気持ちを考える事が得意になり、思考を察する能力も高くなったが、そもそも彼らには娘の存在がただ不快だったらしい。彼らが娘を愛さなかったように、ハロウも両親を愛することはなかった。
だからこそ両親が生贄に選ばれた時も、彼女は何も思わなかった。
別の家族に引き取られた後、今まで抑圧されていた分を解放するかのように彼女は相手の気持ちを考えることを徹底的にやめ、他人の目を気にしなくなりいつでも自分の言いたいこと・やりたいことをする問題児になった。何をしても理不尽に怒られるならば、と吹っ切れていた部分もあるらしい。次の家族も彼女の事情を考え、強く注意することができなかったためにその身勝手さはどんどん悪化していくことになる。
やがて島が海上に浮上しても、生贄の文化は続いていた。
島民達は外界から現れた冒険者やならず者を生贄にしようと考え、ハロウもそれに漏れずに加担した。彼らを歓迎するふりをしつつ睡眠薬を混ぜた酒で酔わせ眠らせ、神のいる場所まで運ぶ。実に簡単な計画ではあるものの、運悪くハロウ達がもてなそうとしたのは酒嫌いの猜疑心が強いならず者…ペタルデスだった。
島民を信用しなかったペタルデスは彼らを毒で返り討ちにし、命の危機を感じたハロウは元々の仲間を見捨て、彼女の仲間になる代わりに解毒を頼み込んだ。
それ以来ハロウはペタルデスの相棒を自称しながら彼女について回り、サポートを続けていた…のは事実だが、あくまで根本にあるのは利己主義であり、"彼女のため"などということは一つも考えていない。
一緒にいるのも指示に従うのも生き残りたいから。結局のところペタルデスの相棒という立ち位置が1番楽に生きれるから、という理由でついて回っているため、もしもより良い生き方ができる方法が見つかればすぐさまそちらに鞍替えするだろう。
「過去は考えたくないし未来にも希望は抱けないから」今のことしか考えず、「酷い半生だったけど今は幸せだから」と人生を楽観視しているのも、面倒事は考えるのすら嫌な彼女の思考放棄である。
*
おまけ
"トイボックス"という新しい世界に慣れた頃。気まぐれにとある賞金首を捕まえたペタルデスとハロウは、そいつを突き出す前にポケットの中身を少々頂戴することにした。しかし金目のものや大したものはほとんどなく、ペタルデスが興味をなくした頃にハロウが見つけたのは携帯型のラジオ。
ハロウが興味津々でラジオをつけると、聞こえてきた声はよく聞き覚えのあるものだった。ハロウは思わず興奮気味にペタルデスに捲し立てるが、話しかけられているのも聞かず彼女は真顔で硬直する。
その声はかつての世界で身を寄せていたギルドのリーダー、ベクターにそっくりだったのだから。
死んだはずの彼がなぜこの世界にいるのか?そもそも本当にベクターなのか?自分の知っている、あの世界の彼なのだろうか?
そんな疑問を持ちながらも、2人は彼のことを知ろうと行動を始めた。
ペタルデスは彼に再び謝罪と礼を伝えたい一心で、ハロウは暇潰しにそれに付き合う形で。
ギルドタトゥーに通信機能があるのは分かっているものの、直接会って伝えたいというペタルデスの意向からどうにか接触しようと試行錯誤を続けている。あくまで最終手段。
半端者として生きることを受け入れてはいるのだが、なんだかんだで律儀な、生来の妙なところで真面目な性格が抜けていないらしい。