櫻木真乃はレモンケーキの味俺はアイドル事務所283プロのプロデューサーをしていて、職場の同僚達にはできるだけ隠し事無しでいきたいと思っている、たった一つのある事を除いて──
俺は普段は味覚を全く感じないが“ケーキ”という体質の人間の体液、髪、肉体その物など全ての部位でのみ味を感じる“フォーク”と呼ばれる体質を持っている。
“ケーキ”である人間の排出物や、怪我をさせたり殺したりして得た部位を食す者の集まりであるため“フォーク”は危険視されていて、この体質に気づいてからずっと隠してきたのだ
だが、ある日恐らく“ケーキ”のアイドルである櫻木真乃に俺が“フォーク”である事を勘づかれてしまったようだ
「そういえばプロデューサーさんは私をまるで食べ物かのような目線で見てますよね……“フォーク”はこういう人が多いと“ケーキ”のインタビューで見ました」
「ははっ、それは真乃をちょっとエッチな目で見ているだけだ……言っちゃなんだが男ならそういうのも割と普通だぞ?」
俺は冗談めいたノリで真乃をからかうかのように話す
「……この間、プロデューサーさんが灯織ちゃんの作ったお弁当を食べていた様子があまり美味しくなさそうに見えました」
「ちょっと仕事のストレスで味覚障害になってしまってな……真乃達には心配をかけるだろうから黙っていたんだ」
「私、見ちゃいました……プロデューサーさんが練習した後の汗まみれの床を舐めている所を」
これは誤魔化しがもう効かないと感じたのか俺が後ずさりしてしまったタイミングで真乃が俺の手をガシッと掴む
「プロデューサーさんが“フォーク”だって事、誰にも言いません……一緒に居たいですから」
「真乃、逃げろ……俺と一緒にいると危険だ……」
真乃の強い匂いにくらりとしてしまう
こんなに真乃が近づいてきたのは初めてだ
彼女はレモン……の匂いと味がするはずだ、多分……
俺は中学の時には既に“フォーク”になっていたので味を“ケーキ”以外に感じたのは遠い昔でありぼんやりとした記憶しかない
「プロデューサーさん、私の全部、食べてください」
俺は真乃に押し倒され、そしてキスをされる
その味は、幼い頃食べたケーキを彷彿とさせる。
確か甘酸っぱいレモンクリームとレモンピールの味であり、彼女の唾液を飲み込んだはずなのにふんわりした食感と不思議な食感を感じる
キスを終えた後、俺は真乃の額を舐める
すると、さっきのより更に甘めの同じくふんわりしたものが同じように口の中で踊る
次に彼女の耳たぶを噛むとクリームとは別のフワフワした食感と何かサクサクした物の感触を感じる。
幼い頃食べたお菓子を思い出し、これはケーキのスポンジとチョコレートなのではないかと気づく
スポンジはふんわり、チョコレートはサクサクしている点は相反しているがいいコンビネーションだ
そして彼女の汗を舐めると再び甘酸っぱくふんわりしたレモンクリームとスボンジケーキの味と食感を感じる
そこに確かな存在感を感じるレモンジャムが加わってきた
それはまるで真乃との初めての出会いの時のようなときめきを感じさせる
これだと感じた一目惚れ……アイドルとしての素質を感じさせる輝き……
俺は真乃と出会った日のことを思い出していた
ふんわり、しっとり、ほわほわ……その味から彼女のおっとりとしていながら力強い人柄を思い浮かべる
「真乃、えっと……その……すまなかった……」
傍目から見るとイチャイチャ、実態は俺が真乃を捕食しているという状態が終わる
「いえ、大丈夫です、私も気持ちよかったので……どんどん味わってください、プロデューサーさん!」
すると、部屋のドアの向こうから足音が聞こえてくる
「ほわっ……ちょうど今、灯織ちゃんにめぐるちゃんとの約束の時間でした」
「え!?このハンカチでサッと拭いた後いつも通りにしてくれ」
「あ、ありがとうございます……」
渡したハンカチでサッと俺が舐めた部位を真乃が拭いて、カバンにサッとしまう
そして、その瞬間に扉が開く──