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    第1話 #41 Call どうしてこうなったんだよ、暗雲立ち込める中、少年は叫んだ。

     事件が起きたのは、少年が塾を終わらせ帰路についた時であった。いつものビル、いつもの街灯、いつもの信号機。それらが織りなすいつもの光景が、突然一変したのだ。何もかも破壊された平穏な風景。原因は、街を襲う大きな怪物達であった。どこからやってきたのか、いつ着たのか、何故ここを襲うのかは誰も検討がつかなかった。突如現れた非日常に、車はクラクションを鳴らしながら暴走し、人々は宛もなく逃げ惑い混乱する。逃げ遅れた犠牲者もいた。少年も例外ではなかった。別所べっしょ 羅門らもんと書かれた名札のついたバッグを抱え、モンスターの暴虐から彼は半泣きで逃亡していた。
    「来るぞ!」
     誰の声かはわからないが、その言葉を合図にするように、巨大な鬼のようなモンスターが腕を振り上げる。破壊される道路。上がる悲鳴、怒号。地獄絵図と化した街から必死に逃げ、走り疲れた彼は路地に隠れた。どうか見つかりませんように、獣の雄叫びに怯えながら羅門は祈るように自分の手を組んだ。すると。

    「俺を呼び出せ、主よ!」
     どこからともなく、心に響いた男の声。
    「だ、誰?」
    「質問の答えは後だ、死にたくないのか!」
     声を荒げた男に、なんだよ急にと不満を口にした彼。だが反抗する暇はなかった。モンスターが気づいたのか、大きな腕で自動車を掴みそちらに投げつけてきたからだ。羅門はしゃがみ込み、間一髪で避けきったが、崩れた瓦礫に閉じ込められてしまった。幸い鉄骨がうまく絡まりドーム状に覆ったため、怪我はせずに済んだが、次はないなと腹をくくった。
    「おい、大丈夫か! ……全く、心配をかけさせるな」
    「うるせーな! んだよ、わかったよ! でもどうすればいいんだよ!」
     涙目で羅門は声を上げた。誰かが分からなくても、その声に何故か安心感を得ていた。
    「いいか、君の携帯から通話画面を開いて、シャープ、41と入力する」
     だから、彼は声を信じた。すかさずスマートフォンを取り出し、電話番号を打つ羅門。
    「あー、それで発信するとかそういうやつか?」
    「そうだ。物分りの良さは、やはりあの方の一族だな」
     そりゃ当たり前だろ、だってそのための機能だぞと言おうとしてやめる。一族という言葉に首をかしげつつ、彼は発信ボタンを押した。瞬間、丸の中に独特の模様が書かれた青く光る魔法陣が、近くの地面に浮き上がった。驚きから羅門はしりもちをつき、更に目を見開いた。光を纏い、一人の男が現れたからだ。マントを羽織り、白い胸までの丈の軍服のような上着を黒いインナーの上に着ていて、同じく白いズボンは太腿の外側が半分露出し、ただでさえ背丈がありそうなのにハイヒールのサイハイブーツを履いていた。魔法陣の光を受け、舵の形をしたピアスと錨をぶら下げた飾緒が黄金に輝いている。青いベレー帽を被りそこから羅門と同じ髪色の、濡羽色の短髪が覗いていた。そして凛とした顔立ちは、初見であるはずの羅門をどこか懐かしい気持ちにさせた。片膝立ちの姿勢から立ち上がると、彼の方を向く。
    「な、なになになに」
     彼は驚くしかなかった。モンスターに襲われたと思ったら、突然心の中から声がして、言うことを聞いたら魔法陣が現れて、奇天烈な格好の男が現れれば、剣も魔法もない日常を謳歌する人間誰もがそう思うだろう。
    「喚起してくれて有難う、主。」
    「かんき? なにそれ。それにしても……にいちゃん、でっかいな」
     君に比べればそうかもしれないな、ヒールも相まって190cm近くの男は軽く口角を上げた。
    「俺はフォカロル。ソロモンの操りし序列41の、」
     そして敵軍の方に向き直り、こちらに気づいたモンスターたちを睨んだ。
    「……悪魔だ。」

     露出した太腿に青く浮かんだ紋章、それは『ソロモンの小さな鍵』に刻まれたものであった。地面の魔法陣の光った部分から水が勢いよく現れた。それは瓦礫の壁をいとも簡単に破壊し、落ちてきた破片を包み込み、羅門の頭上を守った。何が起きたのか、彼の理解が追いつかない。
    「え、悪魔? なんで、悪魔がおれを庇ってくれるんだ?」
    「……言っただろう、君はソロモンの一族であると。話は後だ。主、指示を渡してくれ。」
    「え、えっ、あ、……うん。じゃあ、さっきの水を動かすやつでモンスターをぶっ潰してくれ!」
     ソロモンという聞き慣れない言葉に、悪魔という初めて見た人のような人でないものに動揺する羅門。だが、妙な安心感も得たのか、彼は悪魔に比較的冷静に指示を出した。水が男の身を包むように覆ったかと思えば、敵目掛け矢のように撃ち放った。両目を貫かれ、唸り倒れるモンスター達。
    「すっげー! フォカロル、だっけ? お前かっけーじゃん!」
     抱いた感情は人ならざる者に対する恐怖ではなく、危機を脱せる希望であった。目を輝かせて悪魔を見る少年。だがその先には、まだモンスターがいる。悪魔は敵陣を睨み、様子を伺っていた。
    「第二波がくるぞ、下がれ主!」
     何だよ、折角褒めたのによ。羅門は不服そうに向こうを見つめて、後ろに走って下がった。
    「やっちゃえ、フォカロル!」
     応援する少年の言葉に悪魔は呼応した。真っ直ぐ手を前に差し出すと、魔法陣経由で水を生み出し、再び敵に被弾させる。だがモンスターは軽く怯んだだけで、不気味な声……恐らく勝利を革新した笑い声を上げ、悪魔の方に突進し襲いかかった。すかさず悪魔は投擲に用いた水を呼び戻し、盾のように扱ったが、割が合わなかった。いとも簡単に水の壁を突き破り、悪魔を掴むとそのまま地面に叩きつけた。舌打ちした悪魔の口には、血が滲んでいた。モンスターが獣の呼吸で、とどめを刺そうと彼の胸ぐらを持ち上げる。
    「フォカロル!」
     羅門は彼の名前を叫ぶ。衝撃を受けた。自分を助けてくれた悪魔が、あっさりと劣勢に回ったからだ。多勢に無勢だった。このままでは、彼も自分も命が危ない。最悪の事態に羅門は再び泣き出しそうになる。しかし、天啓ともいえる『二人目』の声が、再び羅門の心に響く。
    「聞こえるか、えーと、羅門! 御託はいい。オレちゃんを喚起しな。フォカロルのあんちゃんが死ぬのを見届けたくはねぇだろう?」
     絶体絶命の状況にうん、と少年は素直に従った。この声は、味方だ。彼は信じていた。
    「シャープ、30。あとは分かるな?」
     陽気で、なおかつ真剣な男の声色。分かったという返事の代わりに、羅門は願うように再び携帯を取り出し、番号を発信した。もう一つの青い魔法陣の光が、勝機の兆しであることを望むように。
    濃霧 Link Message Mute
    2020/05/18 8:18:21

    第1話 #41 Call

    ##ソロモンの5人艦隊 #オリキャラ #オリジナル #一次創作 #創作 #小説 #悪魔 #現代ファンタジー
    シリーズもの小説です。ソロモン王の一族の子孫が、悪魔とともに邪悪な敵と戦う物語。

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    ソロモンの5人艦隊
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