謎のサボタージュ 1「何だ…これ…?」
寝床で溶けるように倒れると男から渡されたチップが封入されたクリスタルを眺めていた。
あの後、俺はコートの男を見送った後、酒場を後にし、その日はそのまま近くにあった簡素な作りの木造の安宿の2階に泊まった。今回の依頼を受ける以前、酒呑みの間で酔い醒ましとして食されるサレサの木の実を摘んでいたのを思い出し、数個つまんだ。
明日は共有ハンガーからマハトガを回収してメンテナンスに出さなければならない。修繕費用と弾薬費を精査しても、それでも収支は十分プラスだ。
唯一、気掛かりといえば、まさにこのクリスタルだ。
噂で耳にしたことがあるが、その通りなら、これは一部で用いられる記憶媒体の類らしい。専用の機器を用い、内蔵チップのデータを特定の波長の光を当て、反射させることで読み取る事が出来る暗号化技術が施されているとか…
(まぁ…護身用の銃とナイフの新調でもするか…)
うつらうつらと意識は遠のき、そのまま眠りに落ちた。
(何か辛気臭いけど?)
女将の言葉を反芻した。
【死者を蘇らせるもの(コープスリバイバー)】
あのカクテルに何か希望や期待を託してるような、そんな自分が居る。
瞼の裏で笑う彼女の復活を。渇望してやまない自分が。
その夜、重たい瞼は遂に上がることなく、朝を迎えた。
目覚めは実に心地良かった。強めの酒であったはずのコープスリバイバーのアルコールが綺麗サッパリ分解されたようで、二日酔いのような頭痛や吐き気などはなく、いつもより、頭も冴えが良いように思える。
サレサの実、恐るべしといったところか。
身支度を済ませると、宿からハンガーへと向かった。一日銀貨5枚ほどで格納スペースを貸してくれるのは経済的に助かる。元は企業が地下スペースの活用に悩んでいたところ、その解決案として始まったようだが、結果としてビジネスモデルは成功。今では数多くの放浪者ワンダラーの拠点である、ここミルフェイスを支える重要インフラ設備の一つだ。
俺がマハトガを預けたのは宿から徒歩10分程の6番地下ハンガーだ。他にも多くの放浪者ワンダラー達が愛機と再び旅に出る為に訪れているようだ。
もう何人か機体を回収したのか、地下ハンガーが既に地表へ突出していた。
ハンガー正面にはコンソール付きのアームが伸びており、任意で定めた6桁の暗証番号を入力する事で、ハンガー内にある、機体足底部のロックが解除され、搭乗できる仕組みだ。俺は暗証番号を入力する為、コンソールに触れた。
その時。
ピピピッビーッ!!ビーッ!!
あの時のZ.A.K.O.のコンポーネント起動音…!
「まさか!」
危機を察知した俺は、すぐさまハンガーから飛び退き、地に伏せた。
ボボン!ドゴ…ボボン…
爆発音とともに、俺のマハトガからは炎が上がっていた。